大図鑑に載ってないクワガタたち（主に）

ラオスから記載された L.formosusと
新種（2012記載）を含む近縁種についてです。

近年ではL.formosus＝L.cyclommatoidesとする傾向がありますが、
当方はその見解には違和感を持っています。
ちゃんと違いが見られ、それぞれを区別することができます。
もっともよく似ていることは確かなので亜種くらいなものなのかもしれません。（交尾器未見）

それと系統が違いますが、
ラオスから似た種類が得られているので
L.hewenjiaeも合わせて載せておきます。

a-1：L.formosus　Holotype Zilioli,2012より
a-2：L.formosus　Zilioli,2012より
a-3：L.formosus
b-1：L.cyclommatoides　Holotype Zilioli,2012より
b-2：L.cyclommatoides　Zilioli,2012より
b-3：L.cyclommatoides　Fujita,2010より
b-4：L.cyclommatoides　Yunnan　Huang&Chen,2010より

Lucanus formosus Didier,1925:220
[Type Locality] Indo-Chine

北東ラオスに分布する、やや珍品の種類。
基準産地は記載文にはインドシナとしかありませんが、
タイプのラベルにはシェンクアンと書かれています。
L.cyclommatoidesによく似ていますが、
歯型が異なる他、体色やケイ節の色がやや明るく、
耳状突起の張り出しが弱く、頭頂部の突起はなだらか、など違いが見られます。


Lucanus cyclommatoides Didier,1928:51-53,figs.1-2
[Type Locality] Chapa(Tonkin)

ベトナム・サパ周辺と雲南省に分布。
L.formosusのシノニムとされる傾向がありますが見分けることはできます。
少なくとも、サパ周辺の個体群と全く同じ特徴のものは
ラオスからは得られないので当方は別物として扱ってます。
よく似ていることは否めないので、せいぜい亜種くらいなものかもしれませんね。



1：L.takakuwai Types Fujita,2010より
2：L.sp.　Laos F氏所蔵
3：L.sp.　Laos
4：L.marazziorum Types Zilioli,2012より
5：L.marazziorum Fujita,2010より（L.sp.)

Lucanus takakuwai Fujita,2010:12,101,figs.267(1-3)
[Type Locality] Sapa(Chapa),Lao Cai Prov.,N.Vietnam

サパ周辺で得られる、通称「キイロホソミヤマ」。
通称の通り、明るい体色で、体形は細いです。
また、同所のL.cyclommatoidesとは
端歯が大きく開くこと、耳状突起の張り出しが弱いこと、符節が長いことでも区別できます。
L.cyclommatoidesとは発生時期がずれ、やや得にくいです。


Lucanus sp.

[Distribution] N.Laos

ラオスから極稀に得られます。
L.formosusに混ざっているのですが、色が明るく、端歯の形状が異なること、
体型は細身、符節は長い、などで見分けられます。
全体的な特徴はL.takakuwaiに近いですが、
端歯の開きが弱い、頭部は幅広、耳状突起の張り出しは強いなどで区別できます。
亜種？


Lucanus marazziorum Zilioli,2012:268-272,figs.1,2(A-C)
[Type Locality] NE Laos - Houa Phan Prov., Xam Neua, Ban Saleui, Mt. Phu Pan

ラオスから最近になって記載された種類で、産出量は少ないような感じです。
赤みが強い体色で、顎は直線的で、端歯は小さい、耳状突起の張り出しは弱い。



1：L.fujitai　Paratype Katsura&Giang,2002より
2：L.fujitai I氏所蔵
3：L.fujitai ssp.?　Huang&Chen,2013より

Lucanus fujitai Katsura in Katsura et Giang,2002:10
[Type Locality] Mt.Fan Si Pan,Lao Cai Prov.,N.Vietnam

サパ周辺で得られる珍品。
L.cyclommatoidesよりやや早い時期に発生するようです。
基部が強く張り出した大顎が特徴的で、顎付け根には小さな内歯を備える。
体色は赤味が強く、耳状突起の張り出しは強い。
頭部は平滑で幅広、上翅接合部の黒帯は広い。


Lucanus fujitai ssp.?
[Distribution] Yunnan

3♂1♀のみしか確認したことはないのですが、
顎が短く、顎中央部から先端部に向けて細かい内歯が並ぶ。
頭楯の突出は弱く、胴体は幅広。ケイ節と符節もやや太い、などの違いは見られました。



1：L.hewenjiae　F氏所蔵
2：L.hewenjiae　Types Huang&Chen,2013より
3：L.sp.　Laos

Lucanus hewenjiae Huang et Chen,2013:33-34,pl.8-figs.xxxviii(1-4)
[Type Locality] CHINA: Guangxi province: Guilin City,Xing-an County, Maoershan Nature Reserve

L.formosusとは系統が異なりますが、
本種によく似た不明種がL.formosusに混ざってラオスから得られているので今回載せました。
シセンミヤマ（L.fairmairei）によく似た種類で、広西・雲南に分布しています。
端歯の形状がやや異なり、顎基部や耳状突起の張り出しは弱く、頭頂部の突起はなだらか。


Lucanus sp.　　
[Distribution] N.Laos

画像は問題があるので模写しました。
ラオスから1頭のみ確認できた種類です。サイズは38�o。
L.hewenjiaeの小型によく似ていますが、
顎先は内側に向かず、複眼上部の形状は双山状。
前ケイ節の棘は3つ。
腹部は大きく、体色はこげ茶色で、ケイ節は黄褐色。
L.hewenjiaeやL.formosus及び近縁種との最大の区別点は、本種のみ触角が6節。