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ν賢狼ホロν
「嫌なことなんて、楽しいことでぶっ飛ばそう♪」がもっとうのホロです。
ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド2
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2009年02月05日
『闇に抗う自動人形(オートマタ)』(前編) part4
ハクとコクは自分たちに背を向け振り向こうともしない科学者に帰還の報告をした。
「………、帰ってきたか」
ハクとコクの声を聞き、科学者はキーボードを打つ手を止めてくるりと椅子をまわして二人のほうを向いた。
髪の毛や髭は伸び放題、頬はげっそりと痩せこけて肌の色は日に当っていないからなのか病的なまでに青白い。
その容姿からは年齢は想像も出来ないが、40を越えているということはなさそうだ。
「創造主、食料を調達してまいりました」
ハクが手に持った鞄からどさどさと缶詰を床に落とした。中にはドッグフードとかとんでもないものも混じっていたりするが科学者のほうは特に気にすることも無く、よりによってドッグフードの缶詰を掴むと待ちきれないかのようにわしわしと食い始めた。
「…まったく、ちゃんと人間の食い物を持ってこい。この不良品め」
とか言いながらも科学者はたちまちドッグフードを食べ尽くし、次にパイン缶を開けてぐびぐびと汁を飲みはじめた。
「申し訳あリません。創造主からは食料を探して来いとしか言われていませんでしたので」
ハクは科学者に向けて深々と頭を下げた。が、その表情は全然変わっていない。
科学者はそんなハクに目をくれることなく、用意された缶詰を瞬く間に食べ尽くし、空の缶詰を部屋の隅へと投げ捨てた。
「ハク、ちゃんと片付けておけよ」
「承知いたしました、創造主」
まるで嫌がらせのように遠くへ投げられた缶詰をハクは嫌がることなく拾い上げ、部屋の片隅にガラガラとほうり捨てた。
それを見て、科学者は微動だにせず突っ立っているコクへと向き直った。
「…で、コク。今日は何人殺した」
「今日は戦闘員三体。淫怪人一体を抹殺しました。創造主」
その数を聞き、科学者の顔がみるみる不機嫌になっていく。
「チッ!最初の頃に比べると随分効率が悪くなったな。この能無しが!!」

バァン!

科学者は手に持った錆びたパイプでコクの頬を強かにぶっ叩いた。傍目から見ても相当に痛いはずなのだが、コクは顔色一つ変えないで科学者へと向き直った。
「申し訳ありません。最近、ダーククロスとの遭遇率も相当に低下しており……」
「言い訳するなーっ!このボケーッ!!」

バキィッ!!

再び科学者のパイプがコクの頬を直撃する。普通これだけ強烈な一撃を喰らえば歯を折るか肌を傷つけるのだろうがコクの体には生傷一つ生まれはしない。
「お前らがこの世に生まれた理由を忘れるな!
お前らが生きる意味はただ一つ!一体でも多くのダーククロスの屑どもを殺し、俺の復讐を果たすことなんだぞ!!そもそも…」
「………」
科学者の上ずった怒声を、コクはただ静かに聞いていた。


ハクとコク。
彼女達は純粋な意味で普通の人間とは違っていた。
彼女達が生まれた経緯は、この世界にダークサタンの魔の手が伸びてきた時まで遡る。
さる生物施設の一研究員だった鎧健三は、ダーククロスの淫略によりそれまでの人生を全く狂わされてしまった。


まわりの人間は次から次にダーククロスに囚われ、ある友人は他人を犯すことしか考えられなくなり、ある先輩は全身に鱗を生やして後輩を咥え込んでいた。
阿鼻叫喚と化した施設から命からがら逃げ出した健三だったが、家に帰ったときに目に入ったものは完全に燃え落ちてガラクタになった自宅と、どこを探しても見つからない妻と娘という現実だった。

「おのれ……おのれ!ダーククロスめ!!」

この瞬間、鎧健三は温厚な研究員から狂気の復讐者と化した。
健三は己の持てる知識のすべてを使い、遺伝子操作、薬物投与、生体改造などのありとあらゆる手段を使ってダーククロスに対抗しえる生物兵器を創り上げんとした。
が、そううまく都合よいものが作れるはずが無く、最初の数年はどうしようもない出来損ないや全くの失敗作が軒を連ねる結果になった。
中にはより良いサンプルを得るために子供を拉致同然に連れ去って強化改造を施したこともあるが、成功したためしはなかった。
だが健三はめげることなく、次から次へと生体改造に手を出し…、数え切れないほどの犠牲者を作り出した。
そして、その夥しいほどの犠牲の果てに創られたのが…、ハクとコクだった。

今まで生体改造に失敗したのは、出来上がった個体を無理に改造しようとしたのが原因と悟った健三は、今度は受精卵の状態から生物兵器を作り上げようと試みた。
それまでに手に入れたサンプルからめぼしい卵子を取り出し、自分の精子と受精させて作り出した受精卵にそれまでに得たノウハウの全てを詰め込み、改造に継ぐ改造の果てに遂に実用に足る対ダーククロス用生物兵器、ハクとコクが誕生したのは実にダーククロスへの復讐を誓ってから5年後のことだった。
ハクとコクの製造に関して健三が一番考慮したのは、いかにしてダーククロスの淫力に対抗するかだった。
どんなに意思の強い人間ですら容易く堕落させてしまう淫力。それに抗するために健三が考え付いたのは、ハクとコクに快楽を感じる感覚を全く取っ払ってしまうことだった。
いかに淫力が強力であったとしても、快楽を感じられないのであれば全く意味をなさない。
健三はそのためにプラント内で受精卵状態のときからハクとコクの身体から快楽を感じる器官、神経を徹底的に取っ払っていった。
それがいかに非人道的なことであったとしても、健三にとっては関係の無いことだった。
彼の脳内あったのはただ一つ。ダーククロスを滅ぼせる兵器を作り上げることだけだった。
そして、彼の結果は実を結び、ダーククロスの淫力を全く寄せ付けない脅威の身体能力を持ったハクとコクは誕生した。
しかし、その代償としてハクとコクには快楽を感じなくなっただけでなく、人間の感情というものを全く持ち合わせなかった。
しかし、これは健三の望んでいた通りになったといえる。
彼が欲しかったのは前述の通り、友人を、妻を、娘を奪ったダーククロスを滅ぼせる力を持った兵器だ。
決して彼を癒す心温まる家族を作ったわけではないのだから。


「ハク!!コク!!貴様らはこの世にいるダーククロスの連中を一匹残らず滅ぼすために生まれたんだ!
ダーククロスには決して容赦するな!淫怪人も戦闘員も、淫隷人も容赦なく抹殺しろ!ただ一人の例外もなくだ!
もしダーククロスの連中を殺せる機会があるなら、俺の身がどうなっても構いはしない。
どんな手を使おうが、どんな犠牲を払おうが、絶対絶対にダーククロスを抹殺しろ!いいな!!」
明らかに狂気が宿っている狂乱の科学者であり、自分たちの創造主であり、ある意味血の繋がった父親ともいえる鎧健三の檄に、哀しい生物兵器であるハクとコクは何も言わずこっくりと頷いた。
彼女達に疑問を提起する思考は無い。創造主である健三の命令こそが絶対のものだからだ。
「…まあいい。今日はもう狩りにいかなくてもいいぞ。
その代わり、今から調整層の中に入るんだ。さっき、とても面白い強化プランを思いついたんでな。早速改造してやろう」
健三は二人に対し、後ろの妖しい液体を湛えたプラントを指差して中に入るように命令した。
「「はい」」


もちろん逆らう意思など無い二人は纏っている服を脱ぎ捨てると、そのままとぷんとプラントの中へと入っていった。
青白く貧弱な光に黒と白の裸体が映し出される様はなんとも蟲惑的だが、復讐の鬼と化している健三にそんなものを愉しむ心はない。
「待っていろよダーククロスめ……、俺の全てを奪った忌まわしい屑どもめ!!
この俺の最高傑作が、いつか必ず貴様ら全員地獄へと送ってくれる!その日を楽しみに待っていろ!!」
何かに取り付かれたかのようにキーボードを打ち続ける健三を、ハクとコクはガラス越しにその金銀妖瞳で見つめていた。
二人に感情は無いはずだが、健三を見る二人の瞳は何故か酷く悲しそうな色を湛えていた。





文責 いなづまこと


後編へ続く!



今回も編集のため、今まで頂いた画像を追加しました。
何か変更点があれば、コメントにどうぞお書きください。
できれば作者様にご感想があれば、コメントにお書きください。
作者様も、ご感想のお返事をだしてもらってもかまいません。

by ホロ

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