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ν賢狼ホロν
「嫌なことなんて、楽しいことでぶっ飛ばそう♪」がもっとうのホロです。
ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド2
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2008年12月23日
『闇の狭間の淫略〜淫機人ナコルル』 Part1
はい! いなづまこと様の第2作目です。
それではどうぞ♪

注意! この文章には官能的表現が含まれております。
(ご覧になる方は、自己判断でお願いします。)



『闇の狭間の淫略〜淫機人ナコルル』

いなづまこと様作


昼間とはいえ一寸先も見えないような濃霧が立ち込める蝦夷地の森林。巨大な倒木や泥濘で覆われた湿地。そして弱肉強食の理の中に生きる動物達。そのいずれもが、脆弱な人間の侵入を拒み続け、何百何千年もの間静寂な空間を作り続けていた。
ところが、その中を今一人の少女が息を切らしながら走っている。その姿は蝦夷地に住む土着民族・アイヌの服を纏い、艶やかな長い黒髪に赤いリボンを締め利き腕には切れ味鋭そうな短刀を握り締めている。

「ハアッハアッハアッ……」

少女はまるで何かに追われるかのように時折後ろを振り返りながら、まるで原野を走るが如くの速さで森を駆け抜けていた。
普通に考えれば、何も知らずに森に迷い込んだ哀れな少女が手痛い大自然の報いを受けている図に見えるだろう。
だが、彼女はいわゆる『普通の少女』ではなかった。
彼女の名前はナコルル。アイヌの大自然のカムイ(精霊)に仕える巫女であり、彼女の一族はカムイの声を聞くことが出来る能力を代々受け継いできた。
そんな彼女は大自然と心を通わせることが出来、彼女は草木や動物達を守るためにその剣を振るい、替わりに草木や動物達も彼女のことを守ってきていたのだ。だから、森の中は彼女にとって安らぎを得られる空間であるはずなのだ。
が、今のナコルルは明らかにこの森の中から逃げようとしている。まるで、ここが敵地であると言わんばかりだ。

「なんで……なんでこんな……」

逃げるナコルルの顔には明らかな戸惑いの表情が浮かんでいた。彼女自身、いま自分の身に起こっていることが信じられないのだ。

『ギャース!!』

その時、横の茂みを割って体長1.5mを越えそうな大鹿が角を振りかざしてナコルルに飛び掛ってきた。
「くっ!」
ナコルルは体を捻って鹿の体当たりをかわし、体勢を立て直しつつある鹿に神剣チチウシを構えて対峙した。
『グルル…グルルル……』
低く唸りながらナコルルを睨む鹿は、明らかに普通ではなかった。
普段、鹿は異常なまでに臆病で出来る限り争いごとを避けるはずなのだが、目の前の鹿は眼は異常な
までにぎらつき全身の毛がざわざわと逆立ち、今にもナコルルに襲い掛かろうとしている。
それが邪魔者を排除するという行為に基づくならまだ説明もつく。だが、牡鹿の股間に粘液を滴らせ
ながらそそり立つ巨大なペニスは、あきらかにそれをナコルルの中に突っ込まんという欲望を示している。
「やっぱり……この子も……」
ナコルルは自分への獣欲を隠そうともしない牡鹿を見て、思わず呟いてしまった。

ナコルルがこのような獣に相対したのはこれが最初ではない。
それはつい一刻(訳二時間)ほど前のこと、大自然の声が突然聞こえなくなったかと思うと、羆やら狼やらがまるで自分を犯さんと襲い掛かってきたのだ。
中にはナコルルが見知っている動物達もいたが、それらは一つの例外もなく欲望に身を支配されナコルルにその身を埋めようとしてきたのだ。
いくらナコルルが話し掛けても答えることはなく奇声を発しながら襲ってくる動物達に、ナコルルは迷わずその場を逃げ出した。万が一にも動物を傷つけることは出来ない。自分がカムイの巫女であるという自覚が、ナコルルに剣を振るうのを躊躇わせていた。
だから、今目の前にいる鹿にもチチウシを構えてはいるがそれを振るう気はなかった。剣の気配に感づき、できることなら鹿に逃げて貰いたかったのだ。

だが、鹿はそんな真似はしなかった。
なにしろ鹿の目的はナコルルの体なのだ。そんな一振りの剣に尻ごみして目の前の肉体を逃すなんてもったいないことをするわけがない。
『ギエーッ!』
どう考えても鹿が発することはないと思われる雄叫びを上げ、鹿はナコルルに覆い被さろうと跳躍してきた。
一旦捉えられたらナコルルの小さな体では鹿を跳ね飛ばすことは不可能だ。為すすべなくその身を蹂躙されてしまうことは疑いの余地は無い。
「今!」
しかし、ナコルルも鹿の行動を見越していた。
ナコルルは身を低く構えると、チチウシを前に突き出しながらカムイの力を借り一足飛びに跳躍した。
「アンヌムツベ!」
普段なら相手の足元を刈る技なのだが、今回はそのまま茂みへと突進し鹿の視界から一瞬にして離れることを目的にしていた。
『ガ?!ガッガッ!!』
案の定、鹿はナコルルの居場所を見失いおろおろと首を回しながらナコルルを探し当てようとした。
が、そのときナコルルはすでに鹿から20m以上も大きく離れ、安全圏へと避難していた。
「ふぅ…、もう大丈夫ね……」
牡鹿を撒いてナコルルは安堵の吐息を吐いたが、同時に言いようの無い不安がその身をよぎっていた。
「こんなことが、いきなりおこるなんてありえません……
きっとこの地にウェンカムイ(悪神)が降りて、何かを狂わせているのね……」
だとしたら一刻も早く元凶を探り当て消滅させないと、この狂った森は永遠に元に戻らない。
カムイの声が聞こえなくなっているナコルルにとって、この広大な森からその原因を探すのは容易なことではない。ただでさえ未踏の地が多くある上に、普段は自分の味方である動物達はいずれも恐るべき敵と化しているのだから。
「でも…弱音を吐くわけにはいきません!」
だが自分はこの自然を守る巫女。例えどんな困難であろうと、この身にどんな禍が降りかかろうと自然を害する輩を放っておく訳にはいかないのだ。
ナコルルは周囲を警戒しながらその気配を出来る限り小さく搾り、前に進まんと一歩踏み出した。
その時

「あははっ!さっすがは姉様。一刻以上も淫獣の襲撃から逃げることが出来るなんて!」

ナコルルの後ろから、妹であるリムルルの声が聞こえてきた。
「えっ?!」
これはナコルルにとって全くの予想外だった。今日家を出るとき、確かにリムルルはまだ部屋の中でくぅくぅと寝息を立てて眠っていたはずなのだ。
まさかあの後、自分の後を追いかけてきたのだろうか。だとしたら、この危険な森の中に入れておくのは危険すぎる!
「リムルル!!すぐにこの森から………っ?!」
慌てたナコルルはリムルルにすぐにこの森から出て行くようにと釘を刺そうとして振り返り…言葉を失った。
「うふふっ。どう?姉様…。リムルルのこの姿……」
ナコルルの目の前にいるリムルルは、ナコルルが知っているリムルルではなかった。
ナコルルと違い、淡い栗色をしていた髪の毛は赤橙色に染まり、こめかみの後ろあたりから先端が黒くなっている狐を思わせる耳がにょっきりと生えている。
5月とはいえまだ寒い森の中で、その身には一糸も纏わず手足と胸、下腹部は頭髪と同じ色の長毛が生えそろい、お尻からはやはり狐のようなふさふさの尻尾が伸びていた。
その姿はどう見ても、人間と狐が融合したものにしか見えない。
「あ、ああ……リムルル、どうした の……。それ は……」
「ふふ…すごいでしょ。リムルルがね、姉様の後を追って森の中に入ったらね……



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