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丸八屋
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2008年05月15日
チンパンジーの「アイ」と「アユム」

チンパンジーはどれ程ヒトに近いのか?2005年にチンパンジーのゲノム解析が完了したが、それによるとヒトのゲノムとの間には、1.23%の違いしかないそうである。ヒトは98.77%チンパンジーだともいえる。


京都大学霊長類研究所は30年にわたって「アイ」という名のチンパンジーを研究してきた。目的は「心の進化」を探ることだ。これを「アイ・プロジェクト」と呼ぶ。「進化の隣人」といわれるチンパンジーが何を見て、何を理解しているのかを調べることで、化石には残らない心を明らかにしようとしているのである。2000年にアイが生んだ息子の「アユム」は2008年4月24日で8歳になった。


今月号の科学雑誌ニュートンに、「天才チンパンジー アイの今 息子アユムに受け継がれる知性」が掲載されている。協力は京都大学霊長類研究所の松沢哲郎教授。松沢教授の著書に関心があり、読む機会が多い。チンパンジーへの興味は尽きないが、今回は主にュートンの記事からいくつかを紹介させていただく。


@子どものチンパンジーは驚異の記憶力を持っている。でたらめに並べた九つの数字、892371643をアユムはわずか0.7秒でほぼ完璧に記憶する。


A母子で昼寝をするとき、アイは片時も息子のアユムをはなさない。


B多くの動物では、目と目を合わせることは威嚇を意味するが、チンパンジーの母子は見つめあう。


Cアイが積んだ積み木をアユムが悪戯して壊してしまってもアイは叱ることはしない。


Dかつては、声を立てて笑う動物はヒトだけだと考えられていたが、チンパンジーも笑う。口の端(口角)をあげて微笑むだけではなく、「ハハハハハ」と声を立てて笑う。


E人間の赤ちゃんを高い高いすると笑って喜ぶが、チンパンジーも同じである。


F子どもチンパンジーはみずから学ぶ。


●母親のアイが勉強するのを横から眺めているうちに、アユムは課題をクリアする方法を発見した。


●チューブなどの道具を使ってハチミツをなめる装置がある。アユムは自分でハチミツをなめられるようになるまで、合計630回、母親やほかの大人の行動を観察して85回目の挑戦で成功した。勉強と同じく、母親が積極的に道具の使い方を教えることは無い。そのかわり、アユムが道具を横取りするのを許したり、自分がなめ終わったあとのチューブを子どもの口元にそっと持って行ったりする。


●野生のチンパンジーは石器を使ってアブラヤシの種をたたき割り、その中身を食べる。子どもは大人が割る方法をじっと観察していて、3〜5歳くらいになると、親や仲間の様子をまねて石器を使うようになる。


Gこの30年で、心の進化はどこまで解き明かされたのか?「多くのことがヒトとチンパンジーで同じであることがわかってきました」と松沢教授は語る。道具をつくる、図形文字のようなシンボルを使う、自己を認識する(鏡に映った自分を自分だとわかる)、まねる、だます、協力する、友好的に見つめあうといった行動は、チンパンジーでも見られるものだったのである。


松沢教授の著書で読んだ記憶があるが、それは野生のチンパンジーを観察していた時の話である。子どもを亡くした母親が、子どもの死骸がボロボロになって干からびても手放すことなく一緒だったそうである。



モラルの低下による非行、生きがいの喪失、無気力化、犯罪などが深刻な問題になりつつある人間社会。先般、このブログで「家庭をよくする」のテーマで綴ったが、家庭教育や親子関係も含め、人間はチンパンジーから学ぶことが多いのではなかろうか。


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Posted by 丸八屋 at 23:43 | この記事のURL
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