柱のきずは おととしの
五月五日の 背くらべ
粽(ちまき)食べ食べ 兄さんが
はかってくれた 背の丈(たけ)
きのうくらべりゃ 何のこと
やっと羽織の 紐(ひも)のたけ
近年、童謡や唱歌が音楽の教科書に採用されなくなリました。海野厚作詞・中山晋平作曲のこの「背比べ」も昭和28年から小学校3・4年生の教科書に掲載されていたのですが、平成3年を最後に姿を消してしまいました。
この曲は、私が幼い頃、両親と一緒に縁側でよく口遊んだものです。縁側から見えるのは山ばかりでした。新緑が初夏の光線に美しく映える故郷の長閑な山村風景でした。母親が作ってくれた粽(ちまき)を食べ、父親が準備した菖蒲湯に浸かり、家族で端午の節句を祝ったものです。
端午の節句は、五節句の一つで5月5日(こどもの日)。菖蒲の節句、重五(ちょうご)ともいいます。粽(ちまき)や柏餅(かしわもち)を食べ、菖蒲湯に浸かる端午の節句は、もともと田植えをする女性のための厄除け行事だったといわれます。江戸時代に菖蒲が尚武(武道を重んじること)に通じることから武家の間に広まって、いつしか男子向けの行事になり、鯉のぼりを掲げて背比べをする風習も加わったようです。
ある団体の活動で、こどもの日に「柏餅を作って子どもたちに食べさせてあげたい」ということになりました。今から5月5日までに準備をすれば上手く行きそうです。しかし、会員の中には柏餅の作り方や柏餅を包む葉のことを知らない方が結構大勢いらっしゃるのです。それで、先ずは柏餅を包む葉、サルトリイバラを探しに野山に出かけることになりました。今週の週末になりそうです。久々に自然の中で美味い空気が吸えそうです。
柏餅は平たく丸めた上新粉の餅を二つに折り、間に餡(あん)をはさんでカシワまたはサルトリイバラなどの葉で包みます。カシワの葉は、新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、子孫繁栄(家計が途切れない)という縁起を担いだものとされています。四国地方などの関西圏以南では、カシワの葉が自生していないなどの理由により、手に入りにくいため、サルトリイバラの葉で作ることが多いです。
私の母親が作ってくれた柏餅はサルトリイバラの葉でした。
「落し蓋ってどんな豚?」 笑い話にもならないような話を耳にする昨今です。況しては、柏餅を知らない方がいるのも不思議なことではないでしょう。
晴れの日の食事、褻(け)の日の食事も関係無くなってしまった現代日本の飽食社会。その片方で素朴な伝統食が忘れ去られて行くのでしょう。日本の食文化の危うさを思わずにはいられません。
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