2008年04月19日
グッド・ラック!
「YS-11 世界を翔けた日本の翼」(中村浩美:著 祥伝社新書)を読み終えた。
思い出したのがある人物。偶然にその人と行きつけのスナックで会って意気投合し、杯を重ねたのだった。三年ほど前の桜が満開の頃のことである。
その人物は、パイロットの制服に身をめ、サングラス姿でやって来た。航空カバンも携えている。○○○エアラインズのパイロットだと名乗る。
似非パイロットであることは誰もが看破しただろうが、彼のジェット機に関する薀蓄は天下一品。高度で専門的な勉強をしていると察した。飛行機好きの私はついつい調子に乗って意気投合した次第である。客の殆どが彼に胡散臭そうな視線を投げかけるのを、何故か可哀相に思い、今夜は付き合ってやろうと決めたことにも由る。一夜だけでもパイロットにしてあげたかった。
酒が美味いと思った。窓越しに見る夜桜が綺麗だった。
1週間後に又そのスナックに顔を出した。似非パイロットとの再会を仄かに期待して・・・。しかし、彼は来ずじまいだった。酒が不味かった。2週間後にも彼の姿はなかった。
馴染み客の話では、最近、誰も彼の姿を見掛けていないとのこと。どこかを低迷飛行しながら制服姿で得意の薀蓄を語っているのだろうか。それとも不時着したのだろうか。
遠くから彼の声が聞こえる様な気がした。「こちらHAL777便。ニューヨークに向け順調に飛行中」
私は空を見上げながらで叫んでいた。「似非パイロット野郎にグッド・ラック!」
桜の季節、ジェット機の音が響いて来ると思い出すのが彼のことである。
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