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2016年10月16日

義足でランウェイを歩く「バリコレ」の誕生・・・その秘密とは?


リオデジャネイロパラリンピックの閉会式セレモニーには、様々な障害のある人たち、義足のファッションモデルやダンサーがいた。その義足をファッションのひとつとして表現し、障害者がみずからモデルとなるショーがある。
義肢装具士の臼井二美男さんの著書「転んでも、大丈夫 ぼくが義足を作る理由」(ポプラ社)で構成を担当したライターの高樹ミナさんが、バリアフリーなファッションショーが生まれ、広がったこれまでを振り返る。

gisokuparikore.jpg


10月10日・体育の日に東京都港区の六本木ヒルズで異色のイベントが開かれた。その名も「バリコレ2016」。パリコレならぬバリコレとは、障害者をモデルに起用したバリアフリーコレクションの略称だ。

NHK Eテレで2012年にスタートした障害者の情報バラエティー番組「バリバラ」から派生したもので、身体、視覚、知的障害者や発達障害の子どもたち、LGBTに代表されるセクシャルマイノリティーなど、現代社会で“生きづらさ”を抱える人々がモデルを務める。
その中には記憶に新しいリオデジャネイロパラリンピックの日本代表選手や過去のパラリンピックのメダリスト、2020年東京大会期待の若手選手らの姿も。障害をあえて前面に押し出した個性あふれる衣装を着た総勢50人が堂々のランウェイで会場を沸かせた。

◆スポーツ義足で知られる義肢装具士の発想がもとに

一見、突拍子もないこの企画は、もとをたどれば一人の義肢装具士の発想に行き着く。彼の名は臼井二美男(60)。日本におけるスポーツ義足づくりの第一人者だ。

義肢装具士として33年のキャリアを持つ臼井さんは、病気や事故で足を失った人の義足を作り続ける中で、ユーザーの希望を叶える数々の義足を考案してきた。
例えば、好みの絵柄にできる義足や走れる義足、ミニスカートやハイヒールが履けるリアルコスメチック義足や妊婦も履けるマタニティー義足などがそう。
いずれも障害があってもおしゃれを楽しみたい、好きなスポーツを続けたい、お腹が大きくなっても人の手を借りずに生活したいという、ポジティブな女性たちの思いを大切にするためだ。

「足をなくして生きる希望を失った人の多くが、一度は死にたいと言います。そんな患者さんたちが何とか立ち上がるきっかけを義肢装具士として作ってあげたい。
一番いいのは自分を表現できる場所があること。それはスポーツでも芸術でも、ファッションでもいいのです」

そう話す臼井さんの周りには、義足をあえて露出することで、「障害は隠すもの」という世の中の偏見を打ち破りたいという女性が何人かいた。
そんな勇気ある彼女たちの思いを形にすべく、臼井さんは2000年シドニーパラリンピックから障害者スポーツを撮り続けている写真家の越智貴雄さんに、義足の女性をモデルにした写真を撮らないかと持ちかけた。

◆衝撃の写真集がファッションショーへ発展

臼井さんに共感した越智さんは2013年、OLやアーティスト、アスリートら義足の女性たちにフォーカスした撮影プロジェクトを開始。
手始めに写真展を開くと国内外で話題となり、翌年5月には『切断ヴィーナス』というセンセーショナルな写真集の発行にもこぎつけた。モデルの中にはリオデジャネイロパラリンピックの閉会式に出演した日本初のアンピュティー(四肢切断者)モデルのGIMICOさんもいる。
「臼井さんの義足じゃなかったら、モデルをやろうとは思わなかった」とGIMICOさん。それほど臼井さんの作る義足は障害者に生きる希望を与えている。

『切断ヴィーナス』発行の翌年、繊維業が盛んな石川県中能登町から声がかかり、夏祭りの華やかな舞台に11人の義足の女性たちが立った。これが、このほど六本木で行われたバリコレの原型だ。

「こんなファッションショー、世界中を見わたしてもないよね。どのモデルさんもかっこよかったし、観客の皆さんも大歓迎してくれた。切断ヴィーナスから始まったプロジェクトが義足の人だけでなく、いろいろな障害を抱えた人たちに伝染していったのもいい現象だと思う」

障害があっても臆せず社会に出ていけるようにという機運は近年、高まりを見せている。バリアフリーファッションショーのような事例は、障害者と健常者が同じ目的を共有し団結することで、自然と障害の壁を取り払える良い例だ。
「心のバリアフリー」とも呼ばれる多様性を認め合う社会の実現は、こうした環境をいかに作り出せるかにかかっていると言えるだろう。

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