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2021年02月06日

ブルガリアの赤いバラ@ 【旅にインスピレーションを得た短編小説】


 敵は、すぐ近くに迫っていた。
「シプカ峠は目の前だ。その先にエタルの同志が待っている。包囲さえ突破できれば…!」
 青年が言い終わる前に、激しい銃撃音が辺りの空気を震わせた。モスクの扉から駆け込んできた男が、祭壇の前にいた男女に向かって怒鳴る。
「ヴァシル、ここはもうもたん!裏口から逃げるんだ!」
 モスクの前では数名の同志が迫り来るトルコ兵に銃で応戦している。アルシアは、ヴァシルと呼ばれた青年の胸から自らの体を引き剥がして言った。
「私は峠越えの足手まといになるわ。早く逃げて!」
「アルシア、君を置いていけるわけがないだろう!」
「父さんと母さんが捕まっているのよ。見殺しにはできない!」
 尚もアルシアの手を離そうとしないヴァシルの手を振り払うようにして、彼女は気丈にも笑顔を作った。
「大丈夫。私のことはセリクが助けると約束してくれた。だから早く行って!」
 その言葉に、セリクがブルガリア人の味方だと信じて疑わないヴァシルは、後ろ髪を引かれながらも最後のキスを残して仲間と共にモスクの裏の出口へと消えていった。
 数分後、勢いよく扉が蹴破られ、トルコ兵がモスクの隠し部屋に押し入って来た時、聖母マリアの絵が飾られた祭壇の前には、一心に祈りを捧げるアルシアの姿だけがあった。

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タグ:ブルガリア

2021年02月26日

ブルガリアの赤いバラA 【旅にインスピレーションを得た短編小説】




 夜明け前。まだ世界が薄闇に覆われ、人の動く影だけが目に映る頃、バラ畑に到着した女たちは大きめのバスケットを片手に提げ、バラの海の中へと泳ぐように分け入っていく。早朝の澄んだ空気は昨夜の雨の余韻を残して瑞々しく、肌をしっとりと包む。
 十数名の女たちがバラの花摘みを始める頃、ようやく周囲の山々がぼんやりと形を成し、その山々の遥か東にやがて昇りくる太陽の赤味を仄かに反映した空では、藍色と橙色がせめぎ合いを始める。

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タグ:ブルガリア

2021年03月16日

ブルガリアの赤いバラB 【旅にインスピレーションを得た短編小説】



 しかし、トルコ軍が残党狩りの手を緩めることはなかった。
 バラの収穫が終わりに近づく頃、戦争の足音は日に日に高まりつつあった。救世主であるロシア軍はすでにドナウ河の手前まで迫ったという噂だ。カザンラクやカルロヴォといった、バラの谷ではとりわけ大きな村とは違って小さなこのロザヴォの村にもトルコ兵の姿が増えた。元締めはカザンラクから派遣されたセリクの父親だ。

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タグ:ブルガリア

2021年04月06日

ブルガリアの赤いバラC 最終回【旅にインスピレーションを得た短編小説】



 明け方、アルシアはトルコ兵に脇を固められ、涙で頬を濡らしたまま村の教会へ戻ってきた。無事に戻ったアルシアを両親が涙で迎えたのも束の間、すぐに彼女だけがセリクの屋敷へと移された。兄とヴァシルの消息は、夜が明けても伝わってこなかった。
 
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部屋の片隅で、アルシアは一心に神に祈りを捧げていた。彼女が軟禁されているのは広場とは反対側、三階の最も北側の小さな部屋で、窓の下は川になっている。容易に逃げ出すことのできない位置だ。

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Izumi
少し前までスコットランドのコミュニティ、フィンドホーンで暮らしていた、さすらいびとです。 I'm a wanderer who were living in Findhorn community in Scotland till recently.
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