2019年10月08日
【わかなつみ】若菜つみ
語釈
『正月七日』七種の菜(な)の羹(あつもの)を食べると万病(まんびょう)をまぬがれるという中国の慣習(かんしゅう)にならって、朝廷(ちょうてい)の儀式(ぎしき)となった。
枕草子から
七日、雪まのわかなつみ、あを(お)やかに、例はさしもさるもの、目ちかからぬ所に、もてさわぎたるこそを(お)かしけれ。
七日は、雪の消えたところから芽(め)をだした若菜(わかな)をつむ行事(ぎょうじ)の日だが、青あおとした若菜(わかな)を、いつもはそんなものは見むきもしないような宮中(きゅうちゅう)で、もてはやしているのはなかなかおもしろい。
古今和歌集から
『君がため 春の野に出(いで)て 若菜(わかな)つむ わが衣手(ころもで)に 雪はふりつつ』(光孝天皇)
朝廷をはじめ、一般家庭に至るまで、七種(なずな、はこべら、せり、すずな、ごぎょう、すずしろ、ほとけのざ)の羹(あつもの)を食べ、万病邪気(まんびょうじゃき)を追いはらおうとしたものである。われわれの祖先(そせん)の願(ねが)いがそぼくな形となってあらわれているのを感じる。公害(こうがい)のない新鮮(しんせん)な生野菜(なまやさい)である若菜、さぞかしビタミン類もたっぷりと含まれていたことだろう。祖先(そせん)の生活の知恵の一端(いったん)がうかがえる。(著者談)
図書
『枕草子』竹下政雄著
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