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2021年02月21日
2019年10月26日
【忘れ草】わすれぐさ
語釈
もとめること、植えることで、ある事が忘れてしまえる草
万葉集より
『忘れ草 垣(かき)もしみみに 植ゑ(え)たれど 醜(しこ)の醜草 なほ(お)恋ひ(い)にけり』
「忘れ草を垣いっぱいに植えたけど、この草はダメな草だ、やっぱり恋しくて恋しくてしかたがないよ」
※醜は悪くいう言葉でダメなという意味。醜草=ダメな草
単調な日々を送る万葉人にとっては、日々の出来事が絶えず頭に残っている、悲しいこと、苦しいことも、いつまでも頭から去らない。それをなんとか忘れようとして忘れ草を求めるのです
忘れ草は、今の「かんぞう」という花だろうといわれ、初夏にかぼちゃによく似た花を咲かせています
「万葉のふるさと」より
図書
『万葉のふるさと』清原和義著(1973年出版)
雑記
忘れたいけど忘れられない、恋しくて恋しくてしかたがないなんて、そんな気持ちになれることがある意味うらやましい
【忘れ貝】わすれがい
語釈
この貝を拾うと、ある事が忘れてしまえる貝
万葉集より
『わが背子に 恋ふれば苦し 暇(いとま)あらば 拾(ひり)ひて行かむ(ん) 恋忘貝(こいわすれがい)』
「あの人を恋していると苦しいので、もしひまがあったら、恋を忘れられるという忘れ貝を拾っていこう」
この忘れ貝は、何か特定の貝ではなくて、どんな貝でもよい、どこの海辺でもすぐに見あたる、あの波打ち際に打ち寄せられた、二枚貝の片方を指してそう呼ぶのです
「万葉のふるさと」より
図書
『万葉のふるさと』清原和義著(1973年出版)
雑記
恋に対して情熱的だった万葉人にとって「忘れ貝」で忘れたい「恋」はいったいどれほどあったのだろう
2019年10月08日
【わかなつみ】若菜つみ
語釈
『正月七日』七種の菜(な)の羹(あつもの)を食べると万病(まんびょう)をまぬがれるという中国の慣習(かんしゅう)にならって、朝廷(ちょうてい)の儀式(ぎしき)となった。
枕草子から
七日、雪まのわかなつみ、あを(お)やかに、例はさしもさるもの、目ちかからぬ所に、もてさわぎたるこそを(お)かしけれ。
七日は、雪の消えたところから芽(め)をだした若菜(わかな)をつむ行事(ぎょうじ)の日だが、青あおとした若菜(わかな)を、いつもはそんなものは見むきもしないような宮中(きゅうちゅう)で、もてはやしているのはなかなかおもしろい。
古今和歌集から
『君がため 春の野に出(いで)て 若菜(わかな)つむ わが衣手(ころもで)に 雪はふりつつ』(光孝天皇)
朝廷をはじめ、一般家庭に至るまで、七種(なずな、はこべら、せり、すずな、ごぎょう、すずしろ、ほとけのざ)の羹(あつもの)を食べ、万病邪気(まんびょうじゃき)を追いはらおうとしたものである。われわれの祖先(そせん)の願(ねが)いがそぼくな形となってあらわれているのを感じる。公害(こうがい)のない新鮮(しんせん)な生野菜(なまやさい)である若菜、さぞかしビタミン類もたっぷりと含まれていたことだろう。祖先(そせん)の生活の知恵の一端(いったん)がうかがえる。(著者談)
図書
『枕草子』竹下政雄著