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2019年10月19日
【みの虫の鬼の子伝説】
内容
その形から鬼が生んだとされる伝説があり、枕草子や和歌などに見られる
枕草子より
『みのむし、いとあは(わ)れなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれもおそろしき心あらんとて、親のあやしききぬひき着せて、「いま秋風吹かむ(ん)を(お)りぞ来(こ)んとする。まてよ」といひ(い)おきて、にげていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」とはかなげに鳴く、いみじ(じゅ)うあは(わ)れなり。』
「みの虫は、とてもあわれさを感じさせる虫である。鬼が生んだというので、親に似てこの子もおそろしい心を持っているのだろうと、親が粗末な着物を着せて、「そのうち、秋風が吹くようになったら迎えに来るから。待っていなさいよ」と言いおいて、逃げていったのも知らず、秋風の音を聞きつけて、八月(陰暦・仲秋)の頃になると、「ちちよ、ちちよ」と心ぼそそうに鳴いているのを聞くと、とてもあわれに感じられてならない。」
古今和歌集より
『秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる』
夫木和歌集より
『ちぎりけむ を(お)ぎの心も知らずして 秋風たのむ みのむしの声』(寂蓮法師)
※をぎはおや(親)の誤りと言われるが、おに(鬼)の誤りかもしれない
図書
『枕草子』竹下政雄著