2018年06月07日
現場の技術者が告白・・・原子力発電の実態
原発がどんなものか知って欲しい 平井憲夫
上記のブログより引用させて頂きます・・・
私は原発反対運動家ではありません。二十年間、原子力発電所の現場で働いていた者です。原発については賛成だとか、危険だとか安全だとか色んな論争がありますが、私は「原発とはこう云うものですよ」と、殆どの人が知ら無い原発の中のお話をします。
そして、最後迄読んで頂くと、原発が皆さんが思っていらっしゃる様なものでは無く、毎日、被曝者を生み大変な差別を作って居るものでもある事が好く分かると思います。
私は原発反対運動家ではありません。初めて聞かれる話も多いと思います。どうか最後迄読んで、それから原発をどうしたら好いか、皆さんで考えられたら好いと思います。原発に付いて、設計の話をする人は沢山居ますが、私の様に施工、造る話をする人がいないのです。しかし、現場を知ら無いと原発の本当の事は分かりません。
私はプラント、大きな化学製造工場等の配管が専門です。20代の終わり頃に日本に原発を造ると云うのでスカウトされて原発に行きました。現場監督として長く働きましたから原発の中の事は殆ど知って居ます。
「安全」は机上の話
去年（1995年）の1月17日に阪神大震災が起きて、国民の中から「地震で原発が壊れたりしないか」と云う不安の声が高く為りました。原発は地震で本当に大丈夫かと。しかし、決して大丈夫ではありません。国や電力会社は、耐震設計を考え固い岩盤の上に建設されて居るので安全だと強調して居ますが、これは机上の話です。
この地震の次の日、私は神戸に行ってみて、余りにも原発との共通点の多さに改めて考えさせられました。まさか新幹線の線路が落下したり高速道路が横倒しに為るとは、それ迄国民の誰1人考えてもみなかったと思います。
世間一般に、原発や新幹線・高速道路等は官庁検査によって厳しい検査が行われて居ると思われて居ます。しかし、新幹線の橋脚部のコンクリートの中には型枠の木片が入って居たし、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良でした。一見溶接がされて居る様に見えて居ても、溶接そのものが為されて居なくて溶接部が全部外れてしまって居ました。
何故、この様な事が起きてしまったのでしょうか。その根本は、余りにも机上の設計ばかりに重点を置いて居て、現場の施工・管理を怠った為です。それが直接の原因では無くてもこの様な事故が起きてしまうのです。
素人が造る原発
原発でも原子炉の中に針金が入って居たり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管を繋いでしまったり、所謂人が間違える事故・ヒューマンエラーが余りにも多過ぎます。
それは現場にブロの職人が少なく、幾ら設計が立派でも設計通りには造られていないからです。机上の設計の議論は、最高の技量を持った職人が施工する事が絶対条件です。しかし、原発を造る人がどんな技量を持った人であるのか、現場がどう為って居るのかと云う議論は１度もされた事がありません。
原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官迄総素人によって造られて居るのが現実ですから、原発や新幹線・高速道路が何時大事故を起こしても不思議では無いのです。
日本の原発の設計も優秀で、二重、三重に多重防護されて居て、何処かで故障が起きるとちゃんと止まる様に為って居ます。しかし、これは設計の段階迄です。施工・造る段階で可笑しく為ってしまって居るのです。
仮に、自分の家を建てる時に、立派な一級建築士に設計をして貰っても、大工や左官屋の腕が悪かったら、雨漏りはする建具は合わ無く為ったりしますが、残念ながらこれが日本の原発なのです。
一昔前迄は、現場作業には、棒心（ぼうしん）と呼ばれる職人、現場の若い監督以上の経験を積んだ職人が班長として必ず居ました。職人は自分の仕事にプライドを持って居て事故や手抜きは恥だと考えて居ましたし、事故の恐ろしさも好く知って居ました。
それが十年位前から、現場に職人が居なく為りました。全くの素人を経験不問と云う形で募集して居ます。素人の人は事故の怖さを知ら無い、何が不正工事やら手抜きかも全く知ら無いで作業して居ます。それが今の原発の実情です。
例えば、東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転して居て、１歩間違えば世界中を巻き込む様な大事故に為って居た処でした。本人は針金を落とした事は知って居たのにそれがどれだけの大事故に繋がるかの認識は全然無かったのです。
そう云う意味では老朽化した原発も危ないのですが、新しい原発も素人が造ると云う意味で危ないのは同じです。
現場に職人が少なく為ってから、素人でも造れる様に工事がマニュアル化される様に為りました。マニュアル化と云うのは図面を見て作るのでは無く、工場である程度組み立てた物を持って来て現場で１番と１番、２番と２番と云う様に、唯積木を積み重ねる様にして合わせて行くんです。
そうすると、今、自分が何をして居るのか、どれ程重要な事をして居るのか全く分から無いままに造って行く事に為るのです。こう云う事も、事故や故障が頻繁に起こる様に為った原因の一つです。
又、原発には放射能の被曝の問題があって後継者を育てる事が出来無い職場なのです。原発の作業現場は暗くて暑いし防護マスクも付けて居て、互いに話をする事も出来無い様な所ですから身振り手振りなんです。これではちゃんとした技術を教える事が出來ません。
それに、所謂腕の好い人程、年問の許容線量を先に使ってしまって中に入れ無く為ります。だから、余計に素人でも好いと云う事に為ってしまうんです。
又、例えば溶接の職人ですと目が遣られます。30歳過ぎたらもう駄目で細かい仕事が出来無く為ります。そうすると、細かい仕事が多い石油プラント等では使いものに為りませんから、だったら、マア日当が安くても原発の方にでも行こうかナアと云う事に為ります。
皆さんは何か勘違いして居て、原発と云うのはとても技術的に高度なものだと思い込んで居るかも知れ無いけれど、そんな高級なものでは無いのです。ですから、素人が造る原発と云う事で、原発はこれから先本当にどうしようも無く為って来ます。
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名ばかりの検査・検査官
原発を造る職人が居なく為っても、検査をキッチリ遣れば好いと云う人が居ます。しかし、その検査体制が問題なのです。出来上がったものを見るのが日本の検査ですから、それではダメなのです。検査は施工の過程を見る事が重要なのです。
検査官が溶接なら溶接を、「そうでは無い。好く見て居なさい。この様にするんだ」と自分で遣って見せる技量が無いと本当の検査には為りません。そう云う技量の無い検査官に真面な検査が出来る訳が無いのです。
メーカーや施主の説明を聞き、書類さえ整って居れば合格とする、これが今の官庁検査の実態です。
原発の事故が余りにも頻繁に起き出した頃に、運転管理専門官を各原発に置く事が閣議で決まりました。原発の新設や定検（定期検査）の後の運転の許可を出す役人です。私もその役人が素人だとは知って居ましたが、ここ迄酷いとは知ら無かったです。
と云うのは、水戸で講演をして居た時、会場から「実は恥ずかしいんですが、まるっきり素人です」と、科技庁（科学技術庁）の者だとハッキリ名乗って発言した人が居ました。その人は、
「自分達の職場の職員は、被曝するから絶対に現場に出さ無かった。折から行政改革で農水省の役人が余って居ると云うので、昨日迄養蚕の指導をして居た人やハマチ養殖の指導をして居た人を次の日には専門検査官として赴任させた。
そう云う何にも知ら無い人が原発の専門検査官として運転許可を出した。美浜原発に居た専門官は三か月前迄は、お米の検査をして居た人だった」
と、その人達の実名を挙げて話して呉れました。この様に全くの素人が出す原発の運転許可を信用出來ますか。
東京電力の福島原発で、緊急炉心冷却装置（ECCS）が作動した大事故が起きた時、読売新聞が「現地専門官カヤの外」と報道して居ましたが、その人は、自分の担当して居る原発で大事故が起きた事を次の日の新聞で知ったのです。
何故、専門官が何も知ら無かったのか。それは、電力会社の人は専門官が全くの素人である事を知って居ますから、火事場の様な騒ぎの中で子供に教える様に一々説明する時間が無かったので、その人を現場にも入れ無いで放って置いたのです。だから何も知ら無かったのです。
そんな好い加減な人の下に原子力検査協会の人が居ます。この人がどんな人かと云うと、この協会は通産省を定年退職した人の天下り先ですから全然畑違いの人です。この人が原発の工事のあらゆる検査の権限を持って居て、この人の0Kが出無いと仕事が進ま無いのですが、検査の事は何も知りません。ですから、検査と言っても唯見に行くだけです。けれども大変な権限を持って居ます。
この協会の下に電力会社があり、その下に原子炉メーカーの日立・東芝・三菱の三社があります。私は日立に居ましたが、このメーカーの下に工事会社があるんです。詰まり、メーカーから上も素人、その下の工事会社も殆ど素人と云う事に為ります。だから、原発の事故の事も電力会社では無く、メー力−で無いと詳しい事は分から無いのです。
私は現役の頃も辞めてからも、ずっと言って居ますが、天下りや特殊法人では無く本当の第三者的な機関、通産省は原発を推進して居る所ですから、そう云う所と全く関係の無い機関を作ってその機関が検査をする。
そして、検査官は配管の事等経験を積んだ人、現場の叩き上げの職人が検査と指導を行えば、溶接の不具合や手抜き工事も見抜けるからと一生懸命に言って来ましたが未だに何も変わって居ません。
この様に、日本の原発行政は、余りにも無責任でお粗末なものなんです。
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好い加減な原発の耐震設計
阪神大震災後に、慌ただしく日本中の原発の耐震設計を見直して、その結果を九月に発表しましたが、「どの原発も、どんな地震が起きても大丈夫」と云う呆れたものでした。私が関わった限り、初めの頃の原発では、地震の事等真面目に考えて居なかったのです。それを新しいのも古いのも一緒くたにして大丈夫だなんて、飛んでも無い事です。
1993年に、女川原発の一号機が震度４位の地震で出力が急上昇して自動停止した事がありましたが、この事故は大変な事故でした。何故大変だったかと云うと、この原発では、1984年に震度５で止まる様な工事をして居るのですが、それが震度５では無いのに止まったんです。
判り易く言うと、高速道路を運転中、ブレーキを踏ま無いのに、突然、急ブレーキが掛って止まったと同じ事なんです。これは、東北電力が言う様に、止まったから好かったと言う様な簡単な事ではありません。５で止まる様に設計されて居るものが４で止まったと云う事は、５では止まら無い可能性もあると云う事なんです。詰まり、色んな事が設計通りに行か無いと云う事の現れなんです。
こう云う地震で異常な止まり方をした原発は、1987年に福島原発でも起きて居ますが、同じ型の原発が全国で10もあります。これは地震と原発の事を考える時非常に恐ろしい事ではないでしょうか。
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定期点検工事も素人が
原発は1年位運転すると、必ず止めて検査をする事に為って居て、定期検査・定検と言って居ます。原子炉には70気圧とか150気圧とか云う物凄い圧力が掛けられて居て、配管の中には水が、水と言っても300℃もある熱湯ですが、水や水蒸気が凄い勢いで通って居ますから、配管の厚さが半分位に薄く為ってしまう所もあるのです。
そう云う配管とかバルブとかを、定検でどうしても取り替え無くては為ら無いのですが、この作業に必ず被曝が伴う訳です。
原発は一回動かすと、中は放射能・放射線で一杯に為りますから、その中で人間が放射線を浴びながら働いて居るのです。そう云う現場へ行くのには自分の服を全部脱いで防護服に着替えて入ります。防護服と云うと、放射能から体を守る服の様に聞こえますが、そうでは無いんですよ。放射線の量を計るアラームメーターは防護服の中のチョッキに付けて居るんですから。
詰まり、防護服は放射能を外に持ち出さ無い為の単なる作業着です。作業して居る人を放射能から守るものでは無いのです。だから、作業が終わって外に出る時には、パンツー枚に為って被曝して居ないかどうか検査をするんです。体の表面に放射能が着いて居る、所謂外部被曝ですと、シャワーで洗うと大体流せますから、放射能がゼロに為る迄徹底的に洗ってからやっと出られます。
又、安全靴と言って、備付けの靴に履き替えますが、この靴もサイズが自分の足にキチッと合うものはありませんから、大事な働く足元がチャンと定まりません。それに放射能を吸わ無い様に全面マスクを付けたりします。
そう云う格好で現場に入り、放射能の心配をしながら働く訳ですから、実際、原発の中では好い仕事は絶対に出来ません。普通の職場とは全く違うのです。そう云う仕事をする人が95％以上丸っ切りの素人です。お百姓や漁師の人が自分の仕事が暇な冬場等に遣ります。言葉は悪いのですが所謂出稼ぎの人です。そう云う経験の無い人が怖さを全く知ら無いで作業をする訳です。
例えば、ボルトをネジで締める作業をする時「対角線に締め為さい、締め無いと漏れるよ」と教えますが、作業する現場は放射線管理区域ですから、放射能が一杯在って最悪な所です。作業現場に入る時はアラームメーターを着けて入りますが、現場は場所によって放射線の量が違いますから、作業の出来る時間が違います。分刻みです。
現場に入る前にその日の作業と時間、時間と云うのは、その日に浴びて好い放射能の量で時間が決まる訳ですが、その現場が20分間作業が出来る所だとすると、20分経つとアラ−ムメーターが鳴る様にしてある。だから、「アラームメーターが鳴ったら現場から出なさいよ」と指示します。
でも現場には時計がありません。時計を持って入ると時計が放射能で汚染されますから腹時計です。そう遣って現場に行きます。
そこでは、ボルトをネジで締めながら、もう10分は過ぎたかな〜15分は過ぎたかなと、頭はそっちの方にばかり行きます。アラームメーターが鳴るのが怖いですから。アラームメーターと云うのはビーッと飛んでも無い音がしますので、初めての人はその音が鳴ると顔から血の気が引く位怖いものです。これは経験した者でないと分かりません。
ビーッと鳴ると、レントゲンなら何十枚も一編に写した位の放射線の量に当たります。ですからネジを対角線に締めなさいと言っても言われた通りには出来無くて、唯締めれば好いとどうしても好い加滅に為ってしまうのです。すると、どうなりますか・・・
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放射能垂れ流しの海
冬に定検工事をする事が多いのですが、定検が終わると海に放射能を含んだ水が何十トンも流れてしまうのです。ハッキリ言って、今、日本列島で取れる魚で安心して食べられる魚は殆どありません。日本の海が放射能で汚染されてしまって居るのです。
海に放射能で汚れた水を垂流すのは定検の時だけではありません。原発は凄い熱を出すので、日本では海水で冷やしてその水を海に捨てて居ますが、これが放射能を含んだ温排水で一分間に何十トンにも為ります。原発の事故があっても、県等が慌てて安全宣言を出しますし電力会社はそれ以上に隠そうとします。それに、国民も殆ど無関心ですから日本の海は汚れっ放しです。
防護服には放射性物質が一杯着いて居ます〜、それを最初は水洗いして全部海に流して居ます。排水口で放射線の量を計ると凄い量です。こう云う所で魚の養殖をして居ます。安全な食べ物を求めて居る人達は、こう云う事も知って、原発にもっと関心を持って欲しいものです。このままでは、放射能に汚染されて居ないものを選べ無く為ると思いますよ。
数年前の石川県の志賀原発の差止め裁判の報告会で、八十歳近い行商をして居るお婆さんが、こんな話をしました。
「私は今迄原発の事を知ら無かった。今日、昆布とワカメをお得意さんに持って行ったら、そこの若奥さんに『悪いけどもう買え無いよ、今日で終わりね、志賀原発が運転に入ったから』って言われた。原発の事は何も分から無いけど、初めて実感として原発の事が分かった。どうしたら好いのか」
って途方に呉れて居ました。皆さんの知ら無い所で日本の海が放射能で汚染され続けて居ます。
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内部被爆が一番怖い
原発の建屋の中は、全部の物が放射性物質に変わって来ます。物が全て放射性物質に為って放射線を出す様に為るのです。どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです。体の外から浴びる外部被曝も怖いですが、一番怖いのは内部被曝です。
ホコリ、何処にでもあるチリとかホコリ。原発の中ではこのホコリが放射能を浴びて放射性物質と為って飛んで居ます。この放射能を帯びたホコリが口や鼻から入るとそれが内部被曝に為ります。原発の作業では片付けや掃除で一番内部被曝をしますが、この身体の中から放射線を浴びる内部被曝の方が外部被曝よりもずっと危険なのです。体の中から直接放射線を浴びる訳ですから。
体の中に入った放射能は、通常は、三日位で汗や小便と一緒に出てしまいますが、三日なら三日、放射能を体の中に置いたままに為ります。又、体から出ると言っても人間が勝手に決めた基準ですから決してゼロには為りません。これが非常に怖いのです。どんなに微量でも体の中に蓄積されて行きますから。
原発を見学した人なら分かると思いますが、一般の人が見学出来る所はとても綺麗にしてあって、職員も「綺麗でしょう」と自慢そうに言って居ますが、それは当たり前なのです。綺麗にして置か無いと放射能のホコリが飛んで危険ですから。
私はその内部被曝を百回以上もして癌に為ってしまいました。癌の宣告を受けた時、本当に死ぬのが怖くて怖くてどうしようかと考えました。でも、私の母が何時も言って居たのですが「死ぬより大きい事は無いよ」と。じゃ死ぬ前に何か遣ろうと。原発の事で私が知って居る事を全て明るみに出そうと思ったのです。
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普通の職場環境とは全く違う
放射能と云うのは蓄積します。幾ら徴量でも十年なら十年分が蓄積します。これが怖いのです。日本の放射線管理と云うのは、年間50ミリシーベルトを守れば好い、それを越え無ければ好いと云う姿勢です。例えば、定検工事ですと三ケ月位掛りますから、それで割ると一日分が出ます。でも、放射線量が高い所ですと一日に五分から七分間しか作業が出来無い所もあります。
しかし、それでは全く仕事に為りませんから、三日分とか一週間分を一編に浴びせながら作業をさせるのです。これは絶対に遣ってはいけ無い方法ですが、そう遣って10分間なり20分間なりの作業が出来るのです。そんな事をすると白血病とかガンに為ると知って呉れて居ると未だ好いのですが・・・電力会社はこう云う事を一切教えません。
稼動中の原発で、機械に付いて居る大きなネジが一本緩んだ事がありました。動いて居る原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人三十人を用意しました。
一列に並んで、ヨーイドンで七メートル位先にあるネジ迄走って行きます。行って、1、2、3と数える位でもうアラームメーターがビーッと鳴る。中には走って行ってネジを締めるスパナは何処にあるんだ？と言ったらもう終わりの人も居る。ネジを足った1山、2山、3山締めるだけで百六十人分、金額で四百万円位掛りました。
何故、原発を止めて修理しないのかと疑問に思われるかも知れませんが、原発を一日止めると、何億円もの損に為りますから、電力会社は出来るだけ止め無いのです。放射能と云うのは非常に危険なものですが、企業と云うものは人の命よりもお金なのです。
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「絶対安全」だと五時間の洗脳教育
原発など、放射能のある職場で働く人を放射線従事者と言います。日本の放射線従事者は今迄に約27万人ですが、その殆どが原発作業者です。今も9万人位の人が原発で働いて居ます。その人達が年一回行われる原発の定検工事等を、毎日、毎日、被曝しながら支えて居るのです。
原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約五時間掛けて行います。この教育の最大の目的は、不安の解消の為です。原発が危険だとは一切教えません。
1 国の被曝線量で管理して居るので絶対大丈夫なので安心して働きなさい
2 世間で原発反対の人達が、放射能でガンや白血病に冒されると言って居るが、あれは“真っ赤な、大嘘”である
3 国が決めた事を守って居れば絶対に大丈夫だ
と五時間掛けて洗脳します。こう云う「原発安全」の洗脳を、電力会社は地域の人にも行って居ます。有名人を呼んで講演会を開いたり、文化サークルで料理教室をしたり、カラー印刷の立派なチラシを新聞折り込みしたりして。
だから、事故があって一寸不安に思ったとしても、そう云う安全宣伝に直ぐに洗脳されてしまって「原発が無く為ったら、電気が無く為って困る」と思い込む様に為るのです。
私自身が20年近く現場の責任者として働く人にオウムの麻原以上のマインド・コントロール「洗脳教育」を遣って来ました。何人殺したか判りません。
皆さんから現場で働く人は不安に思って居ないのかと好く聞かれますが、放射能の危険や被曝の事は一切知らされて居ませんから、不安だとは大半の人は思って居ません。体の具合が悪く為っても、それが原発の所為だとは全然考えもし無いのです。
作業者全員が毎日被曝をする。それを如何に本人や外部に知られ無い様に処理するかが責任者の仕事です。本人や外部に被曝の問題が漏れる様では、現場責任者は失格なのです。これが原発の現場です。
私はこの様な仕事を長く遣って居て、毎日が居たたまれ無い日も多く夜は酒の力を借り、酒量が日毎に増して行きました。そうした自分自身に問い掛ける事も多く為って居ました。一体何の為に、誰の為に、この様なウソの毎日を過ごさねば為ら無いのかと。気がついたら、20年の原発労働で、私の体も被曝でボロボロに為って居ました。
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誰が助けるのか
又、東京電力の福島原発で現場作業員がグラインダーで額（ひたい）を切って大怪我をした事がありました。血が吹き出て居て、一刻を争う大怪我でしたから直ぐに救急車を呼んで運び出しました。
処が、その怪我人は放射能塗れだったのです。でも、電力会社も慌てて居たので防護服を脱がせたり体を洗ったりする除洗をし無かった。救急隊員にも放射能汚染の知識が全く無かったので、その怪我人は放射能の除洗をし無いままに病院に運ばれてしまったんです。
だから、その怪我人を触った救急隊員が汚染される、救急車も汚染される、医者も看護婦さんもその看護婦さんが触った他の患者さんも汚染される、その患者さんが外へ出て又汚染が広がると云う風に、町中がパニックに為る程の大変な事態に為ってしまいました。
皆が大怪我をして出血の酷い人を何とか助けたいと思って必死だっただけで、放射能は全く見えませんから、その人が放射能で汚染されて居る事なんか誰も気が付か無かったんですよ。 一人でもこんなに大変なんです。それが仮に大事故が起きて大勢の住民が放射能で汚染された時、一体どう為るのでしょうか。想像出來ますか。人事では無いのです。この国の人、皆の問題です。
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吃驚(びっくり)した美浜原発細管破断事故！
皆さんが知ら無いのか無関心なのか、日本の原発はビックリする様な大事故を度々起こして居ます。スリーマイル島とかチェルノブイリに匹敵する大事故です。一九八九年に、東京電力の福島第二原発で再循環ポンプがバラバラに為った大事故も世界で初めての事故でした。
そして、1991年2月に、関西電力の美浜原発で細管が破断した事故は、放射能を直接に大気中や海へ大量に放出した大事故でした。
チェルノブイリの事故の時には、私は余り驚か無かったんですよ。原発を造って居てそう云う事故が必ず起こると分かって居ましたから。だから、アア、偶々チェルノブイリで起きたと、偶々日本では無かったと思ったんです。
しかし、美浜の事故の時はもうビックリして、足がガクガク震えて椅子から立ち上がれ無い程でした。この事故はECCS（緊急炉心冷却装置）を手動で動かして原発を止めたと云う意味で重大な事故だったんです。ECCSと云うのは、原発の安全を守る為の最後の砦に当たります。これが効か無かったらお終りです。
だから、ECCSを動かした美浜の事故と云うのは、一億数千万人の人を乗せたバスが高速道路を一〇〇キロのスピードで走って居るのに、ブレーキも利か無いサイドブレーキも利か無い、崖にブツケてやっと止めたと言う様な大事故だったんです。原子炉の中の放射能を含んだ水が海へ流れ出て、炉が空焚きに為る寸前だったのです。
日本が誇る多重防護の安全弁が次々と効か無くて、後0.7秒でチェルノブイリに為る処だった。それも、土曜日だったのですが、偶々ベテランの職員が来て居て、自動停止する筈が停止し無くてその人が咄嗟の判断で手動で止めて世界を巻き込む様な大事故に至ら無かったのです。日本中の人が、嫌世界中の人が本当に運が好かったのですよ。
この事故は、2ミリ位の細い配管に着いて居る触れ止め金具、何千本もある細管が振動で触れ合わ無い様にしてある金具が設計通りに入って居なかったのが原因でした。施工ミスです。
その事が二十年近い何回もの定検でも見つから無かったんですから、定検の好い加減さがバレた事故でもあった。入ら無ければ切って捨てる、合わ無ければ引っ張ると云う、設計者がまさかと思う様な事が現場では当たり前に行われて居ると云う事が分かった事故でもあったんです。
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もんじゅの大事故
去年（1995年）の12月8日に、福井県の敦賀にある動燃（動力炉・核燃料開発事業団）のもんじゅでナトリウム漏れの大事故を起こしました。もんじゅの事故はこれが初めてでは無くそれ迄にも度々事故を起こして居て、私は建設中に六回も呼ばれて行きました。
と云うのは、所長とか監督とか職人とか、元の部下だった人達がもんじゅの担当もして居るので、何か困った事があると私を呼ぶんですね。もう会社を辞めて居ましたが、原発だけは事故が起きたら取り返しが着きませんから放っては置け無いので行くのです。
或る時、電話が掛って「配管がどうしても合わ無いから来て呉れ」と云う。行って見ますと、特別に作った配管も既製品の配管も全て図面通り寸法通りに為って居る。でも、合わ無い。
どうして合わ無いのか、色々考えましたが、ナカナカ分から無かった。一晩考えて要約分かりました。もんじゅは、日立・東芝・三菱・富士電機等の寄せ集めのメーカーで造ったもので、夫々の会社の設計基準が違って居たのです。
図面を引く時に、私が居た日立は0.5mm切り捨て、東芝と三菱は0.5mm切上げ、日本原研は0.5mm切下げなんです。足った0.5mmですが、百カ所も集まると大変な違いに為るのです。だから、数字も線も合って居るのに合わ無かったのですね。
これではダメだと云う事で皆作り直させました。何しろ国の威信が掛かって居ます〜、お金は掛けるんです。
どうしてそう云う事に為るかと云うと、夫々のノウ・ハウ、企業秘密と云う事があって全体で話し合いをして、この0.5mmについて、切り上げるか切り下げるかどちらかに統一しようと言う様な話し合いをして居なかったのです。
今回のもんじゅの事故の原因と為った温度センサーにしても、メーカー同士での話し合いもされて居なかったんでは無いでしょうか。
どんなプラントの配管にも、あの様な温度計が付いて居ますが、私はあんなに長いのは見た事がありません。恐らく施工した時に危ないと分かって居た人が居た筈なんですね。でも、他所の会社の事だからホットケば好い自分の会社の責任では無いと。
動燃自体が電力会社からの出向で出来た寄せ集めですが、メーカーも寄せ集めなんです。これでは事故は起こるべくして起こる、事故が起き無い方が不思議なんで起こって当たり前なんです。
しかし、こんな重大事故でも、国は「事故」と言いません。美浜原発の大事故の時と同じ様に「事象があった」と言って居ました。私は事故の後、直ぐに福井県の議会から呼ばれて行きました。あそこには十五基も原発がありますが、誘致したのは自民党の議員さんなんですね。だから、私はそう云う人に何時も「事故が起きたら貴方方の所為だよ、反対して居た人には責任は無いよ」と言って来ました。
この度、その議員さん達に呼ばれたのです。「今回は腹を据えて動燃とケンカする、どうしたら好いか教えて欲しい」と相談を受けたのです。
それで私が先ず最初に言った事は「これは事故なんです、事故。事象と云う様な言葉に誤魔化されちゃあ駄目だよ」と言いました。県議会で動燃が「今回の事象は……」と説明を始めたら、「事故だろ！ 事故！」と議員が叫んで居たのがテレビで写って居ましたが、アレも、黙って居たら軽い「事象」と云う事にされて居たんです。
地元の人達だけでは無く、私達も、向こうの言う「事象」と言う様な軽い言葉に誤魔化されてはいけ無いんです。 普通の人に取って「事故」と云うのと「事象」と云うのとでは、捉え方が全く違います。この国が事故を事象等と言い換える様な姑息な事をして居るので、日本人には原発の事故の危機感が殆ど無いのです。
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日本のプルトニウムがフランスの核兵器に？
もんじゅに使われて居るプルトニウムは、日本がフランスに再処理を依頼して抽出したものです。再処理と云うのは、原発で燃やしてしまったウラン燃料の中に出来たプルトニウムを取り出す事ですが、プルトニウムはそう云う風に人工的にしか作れ無いものです。
そのプルトニウムがもんじゅには約1.4トンも使われて居ます。長崎の原爆は約八キロだったそうですが、一体、もんじゅのプルトニウムでどの位の原爆が出來ますか。それに、どんなに微量でも肺ガンを起こす猛毒物質です。
半減期が2万4千年もあるので、永久に放射能を出し続けます。だから、その名前がプルートー、地獄の王と云う名前から着けられた様に、プルトニウムはこの世で一番危険なものと言われる訳ですよ。
しかし、日本のプルトニウムが去年（1995年）南太平洋でフランスが行った核実験に使われた可能性が大きい事を知って居る人は余り居ません。フランスの再処理工場では、プルトニウムを作るのに核兵器用も原発用も区別が無いのです。だから、日本のプルトニウムが、この時の核実験に使われてしまった事は殆ど間違いありません。
日本がこの核実験に反対をキッチリ言え無かったのには、そう云う理由があるからです。もし、日本政府が本気でフランスの核実験を止めさせたかったら、簡単だったのです。詰まり、再処理の契約を止めれば好かったんです。でも、それをしなかった。
日本とフランスの貿易額で二番目に多いのはこの再処理のお金なんですよ。国民はそんな事も知らないで、幾ら「核実験に反対、反対」と言っても仕方が無いんじゃ無いでしょうか。それに、唯一の被爆国と言いながら、日本のプルトニウムがタヒチの人々を被爆させ綺麗な海を放射能で汚してしまったに違いありません。
世界中が諦めたのに、日本だけは未だこんなもので電気を作ろうとして居るんです。普通の原発で、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料（MOX燃料）を燃やす、所謂プルサーマルを遣ろうとして居ます。
しかし、これは非常に危険です。分かり易く言うと、石油ストーブでガソリンを燃やす様な事なんです。原発の元々の設計がプルトニウムを燃す様に為って居ません。プルトニウムは核分裂の力がウランとはケタ違いに大きいんです。だから原爆の材料にして居る訳ですから。
幾ら資源が無い国だからと言っても、余りに酷すぎるんじゃ無いでしょうか。早く原発を止めて、プルトニウムを使う何て事も止めなければ、アチコチで被曝者が増えて行くばかりです。
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日本には途中で辞める勇気が無い
世界では原発の時代は終わりです。原発の先進国のアメリカでは、2月（1996年）に2015年迄に原発を半分にすると発表しました。それに、プルトニウムの研究も大統領命令で止めて居ます。アンナに怖い物、研究さえ止めました。
もんじゅの様にプルトニウムを使う原発、高速増殖炉も、アメリカは勿論イギリスもドイツも止めました。ドイツは出来上がったのを止めて、リゾートパークにしてしまいました。世界の国がプルトニウムで発電するのは不可能だと分かって止めたんです。
日本政府も今度のもんじゅの事故で「失敗した」と思って居るでしょう。でも、未だ止め無い。これからも遣ると言って居ます。
どうして日本が止め無いかと云うと、日本には一旦決めた事を途中で止める勇気が無いからで、この国が途中で止める勇気が無いと云うのは非常に怖いです。皆さんもそんな例は山程ご存じでしょう。
兎に角日本の原子力政策は好い加減なのです。日本は原発を始める時から後の事は何にも考えて居なかったその内に何とか為るだろうと。そんな好い加減な異で遣って来たんです。そう遣って何十年も経った。でも、廃棄物一つの事さえどうにも出來ないんです。
もう一つ、大変な事は、今までは大学に原子力工学科があってそれ為りに学生が居ましたが、今は若い人達が原子力から離れてしまい、東大を初め殆どの大学から無く為ってしまいました。机の上で研究する大学生さえ居なく為ったのです。
又、日立と東芝にある原子力部門の人も三分の一に減って、コ・ジェネレーション（電気とお湯を同時に作る効率の好い発電設備）のガス・タービンの方へ行きました。メーカーでさえ、原子力はもう終わりだと思って居るのです。原子力局長を遣って居た島村武久さんと云う人が退官して『原子力談義』と云う本で、
「日本政府が遣って居るのは、唯の辻褄合わせに過ぎ無い、電気が足り無いのでも何でも無い。余りに無計画にウランとかプルトニウムを持ち過ぎてしまった事が原因です。
ハッキリノーと言わ無いから持たされてしまったのです。そして日本はそれ等で核兵器を作るんじゃないかと世界の国々から見られる、その疑惑を否定する為に核の平和利用、詰まり、原発をもっともっと造ろうと云う事に為るのです」
と書いて居ますが、これもこの国の姿なんです。
廃炉も解体も出来無い原発
1966年に、日本で初めてイギリスから輸入した16万キロワットの営業用原子炉が茨城県の東海村で稼動しました。その後はアメリカから輸入した原発で、途中で自前で造る様に為りましたが、今では、この狭い日本に135万キロワットと言う様な巨大な原発を含めて51の原発が運転されて居ます。
具体的な廃炉・解体や廃棄物の事等考え無いままに動かし始めた原発ですが、厚い鉄で出来た原子炉も大量の放射能を浴びるとボロボロに為るんです。だから、最初、耐用年数は10年だと言って居て、10年で廃炉・解体する予定で居ました。
しかし、1981年に10年経った東京電力の福島原発の一号機で、当初考えて居た様な廃炉・解体が全然出来無い事が分かりました。この事は国会でも原子炉は核反応に耐えられ無いと問題に為りました。 この時、私も加わってこの原子炉の廃炉・解体についてどうするか、毎日の様にアアでも無いコウでも無いと検討をしたのですが、放射能だらけの原発を無理矢理に廃炉・解体しようとしても、造る時の何倍ものお金が掛る事や、どうしても大量の被曝が避けられ無い事等、どうしようも無い事が分かったのです。原子炉の直ぐ下の方では、決められた線量を守ろうとすると、足った十数秒位しか居られ無いんですから。
机の上では、何でも出來ますが、実際には人の手で遣ら無ければ為ら無いのですから、飛んでも無い被曝を伴う訳です。ですから、放射能がゼロに為ら無いと何にも出来無いのです。放射能がある限り廃炉・解体は不可能なのです。人間に出来なければロボットでと云う人も居ます。でも、研究はして居ますが、ロボットが放射能で狂ってしまって使え無いのです。
結局、福島の原発では、廃炉にする事が出来無いと云うので、原発を売り込んだアメリカのメーカーが自分の国から作業者を送り込み、日本では到底考えられ無い程の大量の被曝をさせて原子炉の修理をしたのです。今でもその原発は動いて居ます。
最初に耐用年数が10年と言われて居た原発が、もう30年近く動いて居ます。そんな原発が11もある。草臥れてヨタヨタに為っても動かし続けて居て私は心配で堪りません。
又、神奈川県の川崎にある武蔵工大の原子炉は足った100キロワットの研究炉ですが、これも放射能漏れを起こして止まって居ます。机上の計算では、修理に20億円、廃炉にするには60億円も掛るそうですが、大学の年間予算に相当するお金を掛けても廃炉には出來無いのです。先ず停止して放射能が無く為る迄管理するしか無いのです。それが100万キロワットと言う様な大きな原発ですと本当にどうしようもありません。
「閉鎖」して、監視・管理
何故、原発は廃炉や解体が出来無いのでしょうか。それは、原発は水と蒸気で運転されて居るものなので、運転を止めてそのままに放置して置くと、直ぐサビが来てボロボロに為って穴が開いて放射能が漏れて来るからです。
原発は核燃料を入れて一回でも運転すると、放射能だらけに為って、止めたままにして置く事も廃炉・解体する事も出来無いものに為ってしまうのです。先進各国で、閉鎖した原発は数多くあります。廃炉・解体が出来無いので、皆「閉鎖」なんです。閉鎖とは発電を止めて核燃料を取り出して置く事ですが、ここからが大変です。
放射能塗れに為ってしまった原発は、発電して居る時と同じ様に水を入れて動かし続け無ければ為りません。水の圧力で配管が薄く為ったり部品の具合が悪く為ったりしますから、定検もしてそう云う所の補修をし放射能が外に漏れ出さ無い様にしなければ為りません。放射能が無く為る迄発電して居る時と同じ様に監視し管理をし続け無ければ為ら無いのです。
今(その当時)、運転中が51建設中が3全部で54の原発が日本列島を取り巻いて居ます。これ以上運転を続けると、余りにも危険な原発も幾つかあります。この他に大学や会社の研究用の原子炉もありますから、日本には今、小さいのは100キロワット、大きいのは135万キロワット、大小合わせて多くの原子炉があります。
しかし、日本の電力会社が、電気を作ら無い金儲けに為ら無い閉鎖した原発を本気で監視し続けるかどうか大変疑問です。それなのに、更に新規立地や増設を行おうとして居ます。
その中には、東海地震の事で心配な浜岡に五機目の増設をしようとして居たり、福島ではサッカー場と引換えにした増設もあります。新設では新潟の巻町や三重の芦浜、山口の上関、石川の珠洲、青森の大間や東通等幾つもあります。それで、2010年には70〜80基にしようと。実際、言葉は悪いですが、この国は狂って居るとしか思えません。
これから先、必ず遣って来る原発の閉鎖、これは本当に大変深刻な問題です。近い将来、閉鎖された原発が日本国中至る所に出現する。これは不安と云うより不気味です。ゾーとするのは私だけでしょうか。
どうしようも無い放射性廃棄物
それから、原発を運転すると必ず出る核のゴミ、毎日出て居ます。低レベル放射性廃棄物、名前は低レベルですが、中にはこのドラム缶の側に五時間も居たら、致死量の被曝をする様なものもあります。そんなものが全国の原発で約80万本以上溜まって居ます。
日本が原発を始めてから1969年迄は、何処の原発でも核のゴミはドラム缶に詰めて、近くの海に捨てて居ました。その頃はそれが当たり前だったのです。私が茨城県の東海原発に居た時、業者はドラム缶をトラックで運んでから、船に乗せて千葉の沖に捨てに行っていました。しかし、私が原発は一寸可笑しいぞと思ったのはこの事からでした。海に捨てたドラム缶は一年も経つと腐ってしまうのに、中の放射性のゴミはどう為るのだろうか、魚はどう為るのだろうかと思ったのが初めでした。
現在は原発のゴミは、青森の六ケ所村へ持って行って居ます。全部で300万本のドラム缶をこれから300年間管理すると言って居ますが、一体、300年も持つドラム缶があるのか、廃棄物業者が300年間も続くのかどうか。どう為りますか。
もう一つの高レベル廃棄物、これは使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出した後に残った放射性廃棄物です。日本はイギリスとフランスの会社に再処理を頼んで居ます。去年（1995年）フランスから、28本の高レベル廃棄物として返って来ました。
これはドロドロの高レベル廃棄物をガラスと一緒に固めて金属容器に入れたものです。この容器の側に二分間居ると死んでしまう程の放射線を出すそうですが、これを一時的に青森県の六ケ所村に置いて、30年から50年間位冷やし続け、その後、何処か他の場所に持って行って地中深く埋める予定だと言って居ますが、予定地は全く決まって居ません。余所の国でも計画だけはあっても、実際にこの高レベル廃棄物を処分した国はありません。皆困って居ます。
原発自体に付いても、国は止めてから五年か十年間密閉管理してから粉々に砕いてドラム缶に入れて、原発の敷地内に埋める等とのんき言って居ますが、それでも一基で数万トン位の放射能塗れの廃材が出るんですよ。
生活のゴミでさえ捨てる所が無いのに一体どうしようと云うんでしょうか。兎に角日本中が核のゴミだらけに為る事は目に見えて居ます。早く何とかしないといけ無いんじゃ無いでしょうか。それには一日も早く、原発を止めるしか無いんですよ。
私が五年程前に、北海道で話をして居た時「放射能のゴミを50年、300年監視続ける」と言ったら、中学生の女の子が手を挙げて、
「お聞きして好いですか。今、廃棄物を50年、300年監視すると言いましたが、今の大人がするんですか？そうじゃ無いでしょう。次の私達の世代、又、その次の世代がするんじゃないんですか。だけど、私達は嫌だ」
と叫ぶ様に言いました。この子に返事の出来る大人は居ますか。それに、50年とか300年とか云うと、それだけ経てば好いんだと云う風に聞こえますが、そうじゃありません。原発が動いて居る限り終わりの無い永遠の50年であり300年だと云う事です。
住民の被曝と恐ろしい差別
日本の原発は今までは放射能を一切出して居ませんと、何十年もウソを着いて来た。でもそう云うウソがつけ無く為ったのです。 原発にある高い排気塔からは放射能が出て居ます。出て居るんでは無くて出して居るんですが、24時間放射能を出して居ますから、その周辺に住んで居る人達は、一日中放射能を浴びて被曝して居るのです。
ある女性から手紙が来ました。23歳です。便箋に涙の跡が滲んで居ました。
「東京で就職して恋愛し、結婚が決まって結納も交わしました。処が突然相手から婚約を解消されてしまったのです。相手の人は、君には何にも悪い所は無い自分も一緒に為りたいと思って居る。でも、親達から、貴女が福井県の敦賀で十数年間育って居る。原発の周辺では白血病の子供が生まれる確率が高いと云う。白血病の孫の顔は不憫で見たく無い。だから結婚するのは辞めて呉れと言われたからと。私が何か悪い事しましたか」
と書いてありました。この娘さんに何の罪がありますか。こう云う話が方々で起きて居ます。この話は原発現地の話では無い、東京で起きた話なんですよ、東京で。皆さんは、原発で働いて居た男性と自分の娘とか、この女性の様に、原発の近くで育った娘さんと自分の息子とかの結婚を心から喜べますか。
若い人も、そう云う人と恋愛するかも知れ無いですから、全く人事では無いんです。こう云う差別の話は、言えば差別に為る。でも言わ無ければ分から無い事なんです。原発に反対して居る人も、原発は事故や故障が怖いだけでは無い、こう云う事が起きるから原発は嫌なんだと言って欲しいと思います。原発は事故だけでは無しに、人の心まで壊して居るのですから。
私、子ども生んでも大丈夫ですか? 例え電気が無く為っても好いから私は原発は嫌だ!
最後に、私自身が大変ショックを受けた話ですが、北海道の泊原発の隣の共和町で、教職員組合主催の講演をして居た時のお話をします。何処へ行っても、必ずこのお話はして居ます。後の話は全部忘れて下さっても結構ですがこの話だけは是非覚えて置いて下さい。
その講演会は夜の集まりでしたが、父母と教職員が半々位で、およそ300人位の人が来て居ました。その中には中学生や高校生も居ました。原発は今の大人の問題では無い、私達子どもの問題だからと聞きに来て居たのです。
話が一通り終わったので、私が質問はありませんかと云うと、中学二年の女の子が泣きながら手を挙げて、こう云う事を言いました。
「今夜この会場に集まって居る大人達は、大ウソ着きのええかっこしばっかりだ。私はその顔を見に来たんだ。どんな顔をして来て居るのかと。今の大人達、特にここに居る大人達は農薬問題、ゴルフ場問題、原発問題、何かと言えば子供達の為にと云って運動する振りばかりして居る。
私は泊原発の直ぐ近くの共和町に住んで、24時間被曝して居る。原子力発電所の周辺、イギリスのセラフィールドで白血病の子供が生まれる確率が高いと云うのは本を読んで知って居る。私も女の子です。年頃に為ったら結婚もするでしょう。私、子供生んでも大丈夫なんですか？」
と、泣きながら300人の大人達に聞いて居るのです。でも、誰も答えてあげられ無い。
「原発がそんなに大変なものなら、今頃で無くて何故最初に造る時に一生懸命反対して呉れ無かったのか。まして、ここに来て居る大人達は、二号機も造らせたじゃないのか。例え電気が無く為っても好いから、私は原発は嫌だ」
と。丁度、泊原発の二号機が試運転に入った時だったんです。
「何で、今に為ってこう云う集会して居るのか分から無い。私が大人で子供が居たら、命懸けで体を張ってでも原発を止めて居る」
と言う。
「二基目が出来て、今迄の倍私は放射能を浴びて居る。でも私は北海道から逃げ無い」
って、泣きながら訴えました。私が「そう云う悩みをお母さんや先生に話した事があるの」と聞きましたら「この会場には先生やお母さんも来て居る、でも、話した事は無い」と言います。「女の子同志では何時もその話をして居る。結婚も出来ない子供も産め無い」って。
担任の先生達も、今の生徒達がそう云う悩みを抱えて居ることを少しも知ら無かったそうです。これは決して、原子力防災の8キロとか10キロの問題では無い、50キロ、100キロ圏でそう云う事が一杯起きて居るのです。そう云う悩みを今の中学生・高校生が持って居ることを絶えず知って居て欲しいのです。
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原発がある限り、安心出来無い
皆さんには、ここ迄の事から原発がどんなものか分かって貰えたと思います。 チェルノブイリで原発の大事故が起きて原発は怖いなーと思った人も多かったと思います。でも、「原発が止まったら、電気が無く為って困る」と、特に都会の人は原発から遠いですから、少々怖くても仕方が無いとそう考えて居る人は多いんじゃないでしょうか。
でも、それは国や電力会社が「原発は核の平和利用です」「日本の原発は絶対に事故を起こしません。安全だから安心しなさい」「日本には資源が無いから、原発は絶対に必要なんですよ」と、大金を掛けて宣伝をして居る結果なんです。もんじゅの事故の様に本当の事はずーっと隠して居ます。
原発は確かに電気を作って居ます。しかし、私が20年間働いて、この目で見たりこの体で経験した事は、原発は働く人を絶対に被曝させ無ければ動か無いものだと云う事です。
それに、原発を造る時から、地域の人達は賛成だ反対だと割れて心をズタズタにされる。出来たら出来たで、被曝させられ何の罪も無いのに差別されて苦しんで居るんです。皆さんは、原発が事故を起こしたら怖いのは知って居る。だったら、事故さえ起こさ無ければいいのか。平和利用なのかと。そうじゃ無いでしょう。
私の様な話、働く人が被曝して死んで行ったり地域の人が苦しんで居る限り、原発は平和利用なんかでは無いんです。それに、安全な事と安心だと云う事は違うんです。原発がある限り安心出来無いのですから。
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それから、今は電気を作って居る様に見えても、何万年も管理し無ければ為ら無い核のゴミに膨大な電気や石油が居るのです。それは、今作って居る以上のエネルギーに為る事は間違い無いんですよ。それに、その核のゴミや閉鎖した原発を管理するのは私達の子孫なのです。んな原発が、どうして平和利用だなんて言えますか。
だから私は何度も言いますが、原発は絶対に核の平和利用ではありません。だから、私はお願いしたい。朝、必ず自分のお子さんの顔やお孫さんの顔を確りと見て欲しいと。
果たしてこのまま日本だけが原子力発電所をドンドン造って大丈夫なのかどうか、事故だけで無く、地震で壊れる心配もあって、このままでは本当に取り返しのつか無い事が起きてしまうと。これをどうしも知って欲しいのです。
ですから、私はこれ以上原発を増やしてはいけない、原発の増設は絶対に反対だと云う信念で遣って居ます。そして稼働して居る原発も、着実に止め無ければ為ら無いと思って居ます。原発がある限り、世界に本当の平和は来無いのですから。
優しい地球 残そう子ども達に
筆者「平井憲夫さん」について
1997年１月逝去。１級プラント配管技能士、原発事故調査国民会議顧問、原発被曝労働者救済センター代表、北陸電力能登（現・志賀）原発差し止め裁判原告特別補佐人、東北電力女川原発差し止め裁判原告特別補佐人、福島第２原発３号機運転差し止め訴訟原告証人。「原発被曝労働者救済センター」は後継者が無く、閉鎖されました。
以上
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