一緒に学ぼう世界史のポイント　102　《日本の開国》 : 素敵な「自転車と家庭水族館」

2018年09月28日

一緒に学ぼう世界史のポイント　102　《日本の開国》

　世界史講義録より
　　
　一緒に学ぼう世界史のポイント　102　《日本の開国》

　日本の開国

　　【楽しいアクアリウムの世界】

　

　

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　ペリーの来航と明治維新

　西欧列強の勢力は、トルコ⇒インド⇒中国と徐々に東に向かい、いよいよ日本に本格的に遣って来ました。これが1853年　アメリカ海軍提督ペリーの来航です。時期的には、アヘン戦争終結10年後で太平天国の反乱が始まって２年目のことです。
　ペリーの来航によって「幕末」が始まります。徳川幕府が崩壊して明治維新によって新政府が成立する激動の時代ですね。

　徳川時代の外交政策と云うと鎖国と云う言葉が直ぐに浮かびますが、実際には、中国、朝鮮、オランダとは貿易を行い使節の来訪がありました。インドや中国がイギリス等の為にどの様な目に遭っているか、武士階級を中心とする日本の読書人たちは長崎に遣って来るオランダ人や中国人からの情報で知っていました。それ処か徳川幕府の為政者たちは、アメリカのペリーが日本に遣って来る事もオランダ人からの情報で知っていたのです。

　

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　ペリーが来航する50年以上前の18世紀末から、徳川幕府に貿易を要求するロシア船が来航していました。1792年にはエカチェリーナ２世がラクスマンを根室に派遣、1804年にはレザノフが長崎に来航し、貿易を求めて拒否されています。
　19世紀に入ると、イギリスの捕鯨船の乗員が燃料や水を求めて鹿児島や茨城に上陸したりする事件が起きたり、日本人漂流者を乗せたアメリカ船を日本側が砲撃して追い払うと云うモリソン号事件もありました(1837年）。
　
　当初、幕府は長崎以外の場所に近づく外国船は砲撃して追い払うと云う方針を取って居ましたが、アヘン戦争の成り行きを知ると、燃料不足、食糧不足で困っている外国船には便宜を与えてお引き取り願うと云う方針に転換します。
　しかし、鎖国の方針は変え無い。1844年、オランダ国王は世界情勢を説き鎖国を辞める様幕府に忠告する国書を送るのですが幕府はこれを無視しています。

　　　

　ペリー提督

　

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　こう云う流れの中で遣って来たのがペリーです。ペリーの目的は日本を開国させることです。開国させたかったのは何故かと云うと、第一には、日本をアメリカの捕鯨船の補給基地として利用したかった。
　当時、アメリカは北太平洋で捕鯨を盛んに行っていた。目的は鯨油です。石油が使われる前は鯨油が燃料として利用されたのです。使うのは油だけで鯨肉は食べずに捨ててしまっていた。勿体無い話です。年平均100隻の捕鯨船が操業していたと言います。

　もう一つは、蒸気船でアメリカから中国へ直行する為の中継基地として日本を利用したかった。既に、蒸気船が遠洋航海に利用されていましたが、当時は未だ太平洋横断に必要な石炭を蒸気船に積め無かった様です。
　だから、ペリーが日本に来航した時に通った航路は東回りです。何となく太平洋を渡って日本に来た様にイメージしている人が多いと思いますが、ペリーはアメリカ東海岸のノーフォーク港を出発して、大西洋を横断後、アフリカを回ってインド洋、香港、上海、琉球を経由して遣って来たのです。アメリカを発ったのが1852年11月24日、浦賀沖到着が53年6月3日ですから約半年掛かって居る。

　　　　

　ペリー来航図巻

　ペリーは、半年以上掛けて日本へ開国を要求しに行く訳ですから、鎖国だからダメですと言われてハイそうですかと簡単に引き下がる積りは無かった。だから、この交渉を成功させる為に、事前に日本について研究しました。オランダ人の著作など、日本に関する研究書を40冊以上読み込んだ。長崎に行って開国を要求しても、江戸からの回答が来るのを散々待たされた挙句に鎖国の国是を理由に拒否されている先例も知っています。
　研究の結果、ペリーが得た結論はこうです。「日本人は礼儀正しいが、権威に弱いから脅すに限る」そして、江戸から遠く離れた長崎では無く、江戸湾の入り口にあたる浦賀に現れ大砲で脅したのです。

　

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　オランダ情報で、ペリーが遣って来る事は知ってはいましたが、実際に浦賀沖に現れたアメリカ船を見て、幕府の役人は驚いた。役人だけで無く日本中が驚きました。
　先ず、遣って来た船は１隻では無かった。４隻の艦隊で遣って来ている。しかもその内の２隻、ペリーが乗っている旗艦サスケハナ号とミシシッピ号は、世界でも未だ珍しい蒸気船です。西欧人に取ってもマダマダ珍しかったのです。大きさも、世界最大級でした。要するに、世界最新鋭の軍艦が目の前に現れた訳です。　

　しかもこの２隻は、木造船ですが船体に鉄が張ってある。日本人には鉄の船が浮かんで居る様に見えたのでしょう。他の２隻も防腐の為黒く塗装されていた為、日本人は黒船と呼んだ。黒い蒸気を吐き出している姿はいかにも恐ろしかったに違いありません。
　序に言って置くと、蒸気船と言いますが、当時は未だスクリューが発明される前なので、船の両脇にデッカイ水車の様なものを着けてグルグル回して走る外輪船です。蒸気の力だけには頼れ無いので帆も付いている帆走併用型です。

　　　　

　ペリーの航路

　「日本人は脅すに限る」と云うペリーの作戦通り、黒船の威力に押されて、浦賀に上陸したペリーから開国を要求するアメリカ大統領の親書を受け取った幕府は、取り敢えず時間稼ぎに翌年の回答を約束しました。ペリーは日本を去りますが、アメリカへは帰らずに上海で半年間待機した後、54年1月浦賀に再び姿を現しました。この時には、遅れて遣って来た船を加えて７隻の大艦隊に為って居る。
　幕府は、遂に開国に踏み切りました。横浜に上陸したペリーと交わしたのが日米和親条約　
　・下田と函館の二港の開港と
　・領事の駐在
　・アメリカに対する最恵国待遇の付与などがその内容です。
　上海には列強各国の艦隊が寄港しており、ここでペリーが日本を開国させた情報は西欧列強に直ぐに知れ渡りました。同じ年には、イギリス艦隊やロシア軍艦も長崎に来航しました。最早鎖国を理由に断ることが出来ない幕府は、同様の条約をイギリス、ロシア、オランダと結んで行きました。

　

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　日米和親条約は、単に日本の開国を決めただけで貿易に関する規定はありませんでした。この為、日米和親条約に基づいて来日したアメリカ総領事ハリスと幕府の間で貿易に関する条約交渉が始まり、1858年に日米修好通商条約が結ばれました。これは、日本の関税自主権が無くアメリカの領事裁判権を認めると云う不平等条約でした。この後、幕府はオランダ、ロシア、イギリス、フランスとも同様の条約を結びました。

　ペリーの来航から、日米修好通商条約を結ぶまでの過程で、それ迄独裁政治を行って来た幕府が自信を失い、朝廷に経過報告をしたり条約調印の許可を求めたり諸大名に意見を聞く様に為りました。幕府の外交政策に対するこの様な自信の無さは、幕府を恐れて政治的意見を控えていた諸大名や一般の武士階級を一気に勢いづかせた。又、幕府の権威の低下に伴い朝廷の権威が急上昇する事に為りました。
　外交問題に対して世論は沸騰しました。この中で主流と為った意見は、幕府の弱腰を非難し鎖国を守り外国勢力を撃退せよと云うものでした。幕府が弱腰ならば朝廷を押し立てて外国人を追い払えと云う「尊皇攘夷（そんのうじょうい）」のスローガンが広がって行きます。
　しかし、実務を担当する幕政担当者にとって見れば、強大な軍事力を持つ欧米列強を拒絶出来るものではない。それはペリー艦隊を見れば一目瞭然。ペリー艦隊が江戸湾に進入し砲弾を撃ち込めば、江戸の町は壊滅します。あの中国でさえ何千里も彼方から遣って来たイギリス軍にアヘン戦争で敗れ、アロー戦争でも敗れつつある。

　

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　反対派を大弾圧して日米修好通商条約を結んだ大老井伊直弼は「条約を拒否して戦争に為り、敗れれば領土を割かれ賠償金を支払い、国辱を受けることに為る。実害の無い方を選択するのは止むを得ない」と語っています。中国の二の舞、植民地化されることを恐れていたのです。
　この後、尊皇攘夷運動は討幕運動へと展開します。政権担当能力を無くした徳川幕府を倒し世界情勢に対応出来る新政府樹立を目指したのです。下級武士層が、尊皇攘夷運動で世の中を揺り動かし、その運動を上手くすくい取った薩摩藩や長州藩が中心となって幕府を倒すことに成功しました。これが1868年の明治維新。

　　　　　

　長州藩の高杉晋作

　

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　薩摩藩や長州藩は、幕末の時期に実際に攘夷を実行しイギリスなどと戦い敗れています。その実力を知ってからは、幕府を倒し新政府を樹立し、大胆な開国政策で欧米文化を取り入れていかなければ日本が滅びると考えるようになっていました。
　早くも明治維新が成功する前から、長州藩も薩摩藩も独自に留学生をイギリスに派遣している程です。前回紹介したように長州藩の高杉晋作などは上海に密航して中国の現状を実際に見た。攘夷（外国人を追い払う）など出来る筈がない。欧米に対抗するには、欧米文化を取り入れなければなら無いと考えたのは無理はありません。
　1861年には、ロシアが約半年間対馬の一部を占領するという事件も起きており（ロシア艦ポサドニック号による。イギリス軍の圧力で退去）、植民地化の恐れというのは、今われわれが想像する以上に、せっぱ詰まったものだったと思います。

　

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　日本の改革

　徳川幕府に代わって成立した明治政府は、次々と大胆な改革を断行し近代的な、言い換えるとヨーロッパ的な国民国家を作り始めました。

　1871年には、廃藩置県によって藩を無くし中央集権制度を確立します。1872年には徴兵令を公布し国民皆兵の原則を確立。その前年1871年には解放令で被差別身分を解放し平民と同様とします。現実には人々の意識が急に変わら無いので差別は続くのですが、国民国家を作る為には身分差別を法的に認めるわけにはいかないのです。
　徳川時代の士農工商のうち農工商は平民とし、それまでは許されていなかった苗字を許可し、他の身分との結婚、職業選択、移住の自由を認めました。旧藩主や公家は華族、武士階級は士族となります。華族、士族、平民と云う区別があるなら平等じゃ無いのではないかと云う考え方もありますし、華族は確かに特権階級なのですが、身分間の通婚が自由と云う処がポイントなんだと思います。
　現実に、この後、士族と平民という違いは何の意味も無くなっていきます。人口に占める割合が極少でも華族身分があるので「四民平等」はまやかしと言えばまやかしなのですが、この言葉自体は実感を伴って広まり受け入れられたように思います。

　

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　明治政府の目指すところは、西欧列強と互角の国造りですから「殖産興業」と云うスローガンのもと、近代工業の育成に力を入れた。工業化によって国を豊かにして強力な軍隊を創る。「富国強兵」です。そうすれば、植民地化を免れる。
　この明治政府の様々な改革の方向性を一言でズバリと現した言葉が「文明開化」中国の洋務運動の「中体西用」と比べてみるとその特徴がハッキリします。中国では飽く迄中国の文明が変更不要のもの「体」として中心に据えられています。日本の場合は、西洋化によって「文明」が開くのですから、それ以前の徳川時代までの日本の文化を全面否定していると言って好い。だから徹底的に変えてしまう。

　　　　

　岩倉使節団

　見た目で一番判り易いところで言えば服装。女性の服装が変化するのはユックリですが、男性の公的な場面での服装が一気に替わる。1871年に条約改正の為に欧米を歴訪した岩倉使節団の写真がありますが、正使の岩倉具視は着物（和装）を着ていますが、大久保利通や木戸孝允など他の副使以下は全て背広にネクタイ姿です。明治維新の３年後ですからね。この変化の速さは凄い事です。
　明治政府は西洋化をすすめる為、公務員には洋服を着用させました。役所の部屋に入室する時も靴を履いたままで居る様に命じるのが1871年です。　

　　　　

　伝統であり慣習である服装という文化を一気に変えるのは難しい。そこで、政府は天皇にも洋装させます。明治天皇の若い頃の写真で、伝統的な装束を身に着けたものを一枚だけ見たことがありますが、それ以外全て洋装、軍服を着けての写真や肖像画ばかりですね。天皇ですら洋装なののだから役人は全て洋装に為る訳です。
　只、庶民のプライベートの時間まで完全に洋装に為るにはマダマダ時間がかかっています。私の子供のころ、1960年代ですが、父親は会社から背広姿で帰って来ましたが帰ると直ぐに着物に着替えていましたね。母親も着物姿に割烹着を着て家事をしている写真がありました。只、1960年代後半から70年代には完全に着物を着なくなって行った様に記憶しています。

　

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　余談ですが、この1871年には裸体禁止令というのも出ています。スッポンポンで出歩く人がかなりいて、外国人の目にはまさしく野蛮そのものに見えたのが恥ずかしかったのでしょう。昭和の初め頃の地引き網を引いている漁師の写真を見ると、素っ裸の人が結構います。
　夏目漱石が学生時代に、瀬戸内の友人の家に遊びに行って、ふんどし一丁で海に遊びに行き海岸で貝をたくさん捕った。両手に持ちきれ無いので、ふんどしを解(ほど)いてこれに貝を包んで素っ裸で宿に帰ったと云う話もあります（伊藤整『日本文壇史』）。浮世絵を見てもふんどし姿の男だらけです。日本の文化の根っこは裸に寛容だと思います。

　福沢諭吉を初めとして啓蒙思想家が、ヨーロッパの思想や制度をドンドン紹介する。そういう中で、民主主義的な考え方も徐々に広まって来る。明治政府は基本的には、薩摩・長州出身者による藩閥独裁政治です。これに対して、自由民権運動が湧き起こるのが1870年代半ばから。今風に言えば民主化運動です。
　明治政府も一定の譲歩を示し徐々に民主化をして行きます。1881年には「国会開設の詔」を発表し、10年後の国会開設を約束、1889年には大日本帝国憲法を発布1890年には国会を開設しました。政治制度も完全に西欧式に変えたわけです。明治政府の中心である薩長藩閥グループに取っては、民主化自体は余りやりたくなくても、西欧列強に日本を文明国として認めて貰うには、憲法を制定し国会を開かなれればならないと云う事は強烈に意識していました。

　

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　明治政府の対外政策

　明治政府による国境の確定は次のように進められました。1872年、琉球王国を滅ぼし琉球藩を設置、琉球藩は1879年には沖縄県となり完全に日本の領土と為ります。
　北方に関して、徳川幕府が1855年にロシアと結んだ日露和親条約では、樺太は日露雑居地、択捉（エトロフ）島以南が日本領とされました。1875年には、樺太・千島交換条約によって樺太はロシア領、シュムシュ島以南の全千島列島が日本領と為ります。領土の大きさから言えば圧倒的に樺太が広い。
　中国との関係では、1871年清朝との間に日清修好条規を結びました。これは、ヨーロッパのルールに基づいた条約。日本が中国を中心とした従来の東アジアの国際秩序から抜け出したと云う事、ヨーロッパ風の国として中国もそれを認めたと云う事です。この条約で日本と清は対等です。

　　　

　台湾出兵の新聞錦絵や「国民」意識

　1874年には台湾出兵と云う戦争を行っています。約3000名の日本兵が台湾を占領した事件で２つの意味があった。

　・ひとつは、この戦争の原因は琉球の漁民が台湾に漂着して現地民に殺されたと云う事件だったのですが、日本政府が清朝政府に抗議すると、清朝はこれに対して「殺したのは台湾の原住民で清朝の国民では無いから関知しない」と言った。実は、清朝は日本からの抗議そのものを受け付け無いと云う選択肢があったのです。
　琉球はこの時点で日本によって琉球藩とされていますが、徳川時代からこの時点までずっと清朝に朝貢していた。日本と清に両属して居る訳です。だから清は、琉球は我が国の属邦である、日本にこれを抗議する権利は無いと云う事が出来た。だけど清はそう云う回答をしなかった。詰まり、日本が琉球を領土として居る事を事実上認めたと云う事。しかも、責任は無いと云うのなら、台湾の原住民に責任を取らせる為に出兵しても文句ありませんねと云う事になる。
　・幕末維新で活躍した武士・士族階級は、明治に為って様々な特権が奪われ、こんな筈では無かったと云う不満が溜って居ました。特に、薩摩を初めとする九州や長州の士族に不満が多い。明治政府としてはこの不満を逸らす為に戦争をやって彼等の不満を逸らす必要があった。だから、台湾遠征軍には薩摩士族が多く従軍しています。

　こうして行われた台湾出兵でした。台湾を占領したものの日本はここを領土として維持して行くだけの準備も力量も無かったし、イギリスの調停もあってやがて撤兵しました。そして、日本の近現代史にとって大きな意味を持つ朝鮮との関係ですが、これは次回に詳しく話しましょう。

　