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パークレンジャー VS 僕

アメリカで働いてた時によく訪れた職場近くの公園での話。


ベンアフレック監督・主演で「The town」という映画が日本でも

近々公開される。銀行強盗の話だ。予告編をみて面白そうだなと思っていたら、

なんと舞台が僕が働いていたチャールズタウンではないか。(ボストンの隣町)

ナレーション:

「年に300件以上の銀行強盗が起こるボストン郊外のチャールズタウン。

全米一、銀行強盗発生率の高い街である。。。」


ほざけ。


これは僕の知っているチャールズタウンではないぞ。

チャールズタウンは金持ちしか住んでいない田園調布的なイメージなのにぃ。

街も綺麗だし、そもそもボストン郊外というが、

ボストン市内まで歩いて5分だぞ。むしろボストンと言っちゃっていいくらいだ。

どういうこっちゃ。


とまあ、そんなチャールズタウンにある会社に4年間勤めていたのだが、

会社の目の前にバンカーヒルモニュメントという記念塔があった。

なんでもバンカーヒルの戦い(Battle of Bunker Hill)でイギリス軍と

勇敢に戦った植民地軍を讃えたものらしいが、その塔はちいさな丘に

聳え立っていて、塔のふもとは小さい公園となっているのだ。

朝ちょっと早く会社に着いてしまった時なんかはその公園にいって、うろうろしたり、

ストレッチしてみたり、本を読んだり、はたまた、天気がいい日はお昼を

そこでたべたり、たまにやってくる途方にくれた日本人観光客に道案内を

したりと、とにかく僕は、その公園のヘビーユーザーだった。


そんでもって、ある日のこと、いつものようにお昼に公園に座って

ぼーっとしていたら、目の前にパークレンジャーが通りすぎた。

パークレンジャーとは国立公園やら州立公園に常勤していて、

公園を守る警備員みたいひとだ。

日本の警備員と違うのは銃を携帯しているという点だ。

さすがアメリカ。レンジャーの名にふさわしい。

(銃を持っていないパークレンジャーも公園によってはいるらしい)


パークレンジャーはチラっと僕を一瞥して通りすぎたのだが、

そのときドサッと鍵の束を落としていった。

ジャランっと結構な音をたててたから、気づくかなと思ったが、

彼は気づかずズンズン進んでいく。

鍵の束って結構重要なんじゃないか。

無くしたら大問題になるんじゃないのか。

あぁ、おっちょこちょいだなぁ。まったくしょうがないなぁ。

と重い腰をあげ、彼に声をかける。

「エクスキューズミー!」

完全に良心からのエクスキューズミーだ。

イチローに負けじと、日本人の株をあげてやるんだという意気込みだ。

が、しかし、それに対して彼が取った行動は、

そんな僕の良心をズタズタに切り裂いた。

僕の呼び声にビクっとした彼は、すかさず中腰になり、

銃に手をかけてるではないか。。。

てめぇ。。

人がせっかく教えてあげようとしてたのによぉ。

さては、最初に僕を一瞥したときから不審者あつかいしていたな。

(コノ、アジアジンモンキー、キケン、キケン ヨウチェック)

的な一瞥だったんだな。チキショウ。


「か、鍵おとしたけど。。。」

へたれな僕は疑惑を晴らすべくすかさず応対。

そしたらレンジャーったら

「アア、サンキュー」

だってさ、僕に気づかれないようにそっと手を銃から腰に移しながら。。。

「気づいてますよ。。。大いに憤慨してますよ。。。」

しかし、ひどいなぁ。昼時にうろうろしてるアジア人を

はなから不審者扱いするなんてさ。

彼の目にはそんなに怪しく映ってるのかしら。

 

もしかしたら、あれだ。彼だけじゃなく、この辺の住人はみんな一瞬そういう目で

みてるのかもしれんぞ。そりゃ薄汚い格好してるし、寝癖もそのままだったり

するけどさぁ。

素敵なチャールズタウンに影を落としているのは、

実は、素敵な町並みをなぜか毎日うろついて浮かれ気分で堪能している

僕みたいな中途半端な外国人なのかもしれん。


おしまい。


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