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留学生 VS アメリカのクリスマス。其の二(ホーリー編)

アメリカで学生だった時に過ごしたクリスマスの話。其の二(ホーリー編)


アメリカではクリスマスの日は家族と過ごす。

なので、僕ら、日本人留学生は路頭に迷う。


と 前回 書いた。

そんでもって、サンタは街へやってこないし、

人もいないということを学習したはずなのに、

前回のは気のせいだ。なんつって、

翌年のクリスマス、またもや街へ繰り出した。


しかし案の定、どこの店も閉まってる、でもでも、おやおや、

数少ない人を観察すると、皆が同じ方向へ向かってるではないか。

きっとどこかのダンスクラブで、

クリスマスオールナイトパーティーが行われているに違いない。

DJサンタが「ホーホーホー!マンモスウレピー!」てな具合に

雄たけびあげながら、ハッスルしてるに違いない。


そんなわけで、僕も期待を胸に秘めながら皆と同じ方向に向かった。

その目的地に近づくにつれ、前回なぜ気付かなかったんだ?

街へ繰り出したのが早すぎたのか?なんて思うくらいの人だかり。


あれ、でもなんか様子が違う。

ヤング層もいることはいるが、圧倒的に年配層が多い。

そうか、今回はOLD-SCHOOLな選曲なのかもしれないなぁ。

A Tribe Called Quest(※1)あたりかな。午前0時にCan I KIck It? なんつってね。

それも、ありだな。期待はマスマス深まる。おおぉ建物内から光が満ち溢れてるぞ。


で、着いた先は、

そう、そこは、 それはもう、巨大な、巨大な。。。


教会。 。 。


ジーザスクライスト。 。 。


なんてこった。しかし、あれだ、考えてみれば、

これがクラブだったとして、

気持ちはジャミロクアイ、でも踊ると盆踊りな僕が

果たして楽しめるのか。

そもそも、これぞ正真正銘のホーリーナイトな過ごし方ではないか。

貴重な体験になるぞと、この事実を前向きに捉え、とにかく中へ。

「クリスチャンじゃないんですけど、クリスマスを誰よりも大事にしてます。」

的な僕を、門に立つ牧師は快く迎え入れてくれた。


導かれるまま、僕は席に着きまわりを見渡せば、数百人いるのではないか

というくらいの人の数。教会すげー。キリスト教すげー。

なんて関心しているうちに、儀式はスタート。


どういう順序で儀式が行われたか記憶があいまいだが、

牧師の説教から始まったような気がする。

雰囲気に圧倒されていたのと、乏しいリスニング力の結果、

内容は覚えていない。 祭壇に立つ牧師は穏やかに

時折聖書から文を引用したりしながら、

なにかいいことを話していたに違いない。


そしてそんな説教が終わるやいなや、唐突のアーメン。

数百人が一声にアーメンって言うもんだから、

それが高いヴォールト状の天井に反響し木霊する。

HOLYな空間はなお一層演出される。

それを崩すのは出遅れた僕のアーメンのみだ。

前に立つ少女が僕を一瞥。おお、どうかお許しを。


そんでもって次は歌だ。合唱だ。賛美歌だ。

今度は歌詞(たしか一人一人の席の前に用意された聖書の中だったような。)

もあるから僕は名誉挽回ってなことで、躊躇なくおおいに歌う。

こりゃ気持ちいい。合唱コンクール以来だ。

聖なる合唱がパイプオルガンとともに教会中に響き渡る。ああ素敵。


歌が終わりしばらくすると、なにやら人々が祭壇にむかって並びだした。

無宗教で不届き者な僕が「何で並んでるんのですか?」

などと聞けるわけもなく、ただただ、皆に倣い列に加わる。

数十分後、ようやく祭壇にたどり着いた。

そして、なぞが解けた。

牧師がぶどう酒とパン一切れを迷える子羊たちに与えてるではないか。

パンだ!

ぶどう酒だ!

うぉー超ホーリィー!

なんて書くと熱心な信者に怒られそうだが、

とにかくそう思ったのだからしかたがない。僕は感動しているのだ。


パン一切れをありがたく頂戴した後、席に戻り、もう儀式は終わりかな

なんておもっていると、何人もの牧師たちが、金の皿を手にし、

皆の座る席の間を歩き廻りはじめた。

そして皆はお札をその皿の上に置いてゆく。

あぁ、あれだ、お布施だ、これは。 。 。

やべぇ。いくらだ。いくらが妥当なんだ。パニくる僕。

牧師が微笑みながら迫ってくる。

急いで廻りを観察。うぉ、あのおじさん、30ドルくらい寄付してらぁ。

そんなにもってないぞ。どうしよう。観察ターゲットを若者にすぐさま

変更。よしぃ。彼は5ドルだ。多分あれは5ドルだ。5ドルならあるぞ。

そんでもってぎりぎりセーフの5ドルお布施。ボロボロだけど。

こんなときは日本みたいに新札が礼儀なのかしら。

とにもかくにも切り抜けた。ああよかった。


そんなわけで最後は、ドタバタだったけど、ホーリーナイトを

十二分に堪能した。貴重な体験ができた。でも、もうお腹いっぱいだ。

どっとつかれたわ。これがアメリカで最初で最後のホーリー体験になるだろうなぁ。

でもまあ、去年よりはクリスマスらしくすごせたのではないかしら。

なんて思いつつイソイソ家路についたのでした。


おしまい。

※1 A Tribe Called Quest:
   1988年に結成されたアメリカのヒップホップグループ。

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