2017年06月10日
ソフトバンクの中南米スカウト萩原健太氏に訊く キューバ野球の現状と未来
リバン・モイネロ(左)の才能を信頼する萩原健太氏(右)
Juventud Rebelde、2017年6月10日、Norland Rosendo記者
萩原健太はキューバの太陽を嫌がらない。ほかの観客たちが日陰を求めてスタンドの柱や壁を探しているとき、彼はいつの時間であれ、ベンチの後ろの観客席に座っている。
帽子とサングラスを身につけている。スピードガンを手に持ち、手帳とペンを用意している。審判のプレーオフの声がかかる前から選手たちのチェックを始めている。彼をラテンアメリカでの熱心な研究者に変えた作業だ。
健太はキューバを我が家のように出入りする唯一の外国人スカウトである。彼はキューバ野球の家族である。日本からはときおり彼の同僚たちがキューバリーグを見にやってくるが、それはほんの短期間だ。彼はいろんな時期に、もっと長期間滞在している。
彼が観客席にいると、選手たちは自分たちが福岡ソフトバンク・ホークスに選ばれる可能性があるとわかる。同チームではアルフレド・デスパイネがプレーしており、最近ピナールの左腕リバン・モイネロとサンティアゴの若手オスカル・ルイス・コラースも加入している。
米国でスポーツ市場について学んだ彼は、日本プロ野球リーグのチーム、日本ハムで英語通訳として働いたあと、2007年にスペイン語を学ぶためにドミニカ共和国へ行き、そこに定住することを決めた。福岡ソフトバンクの幹部陣は、ラテンアメリカでのスカウトをおこなわせるために彼をここキューバに滞在させた。
- 才能の見つけ方は知ってましたか。
じっくり観察しながら少しずつ学んでいった。米国では野球をしていたし、ドミニカ共和国ではメジャーのスカウトがたくさん働いていて、彼らと仲良くなった。
- どのような選手のスカウトを依頼されていますか。
若い選手。25歳以下で、二軍・三軍から始めることのできる選手。
- その特徴は。
投手は、腕が長く、すぐれた球速を持っていること。打者は、パワーがあること。私のチームはデスパイネのようなパワーのある選手を求めている。
- 投手陣ではほかに何に注目しますか。
自然なフォームで、なめらかで、しかし素早く、あと足をどのように使っているか。
- 球種については。
注目はするがそれほどでもない。もっと気になるのは投球フォームだ。それは変えるのがもっと難しいから。そのために若い選手を探す。25歳を過ぎると変更はさらに効かなくなる。
- 球速について、契約にむけての理想の目安はありますか。
年齢や体力にもよるが、18歳で90マイルだ。キューバの選手は痩せ型だが、その体重が増えたら球速も増える。
- 技術・戦略的思考は評価しませんか。
その年齢の若者にそれらはほとんどない。彼らはこれからたくさんのことを学ばなければならない。球速と変化球についてはほかの選手が教えることができる。
- 打者について少し話しましょうか・・・
打撃では強振しミートしたときのスイングのパワーには注目している。なぜならそれは学んで得られるものではないから。腕をもっと早く引くことは教えられるが、パワーは生まれ持ったものだ。
- キューバの野球選手たちはバッターボックスでの練習をほとんどおこないませんが・・・
彼らと多くのことに取り組まなければならない。日本にはカーブやスライダー、直球を投げる機械がある。そこで変化球を打つことを学ぶ。
- 最近の契約はモイネロとコラースでしたが、彼らは何が特別でしたか。
コラースにはとんでもないパワーがある。ノレル・ゴンサーレスよりもパワーがあり、一方で90マイル以上の重い球を投げる。まだ19歳だ。球速はもっと増えると思う。モイネロは3年前から知っている。カリビアン・シリーズに出ていて、90マイル以上の速球を投げるだけじゃなく、すぐれたカーブも持っている。
- キューバでは投手と打者のどちらを多くチェックしますか。
ここでは打者のほうが豊富だ。キューバはとてもすぐれた野球選手の土地だ。
- チェックした中ではどの選手に興味を持ちましたか。
ノレル・ゴンサーレス、ヨスベル・スルエータ、ヨシマル・コウシン、ヨアルキス・ギベルトたちを追っている。
- 著名な野球専門誌において直近のWBCでの才能ある10人に選ばれた2選手、ビクトル・ビクトル・メサとヨエルキス・セスペデスの名前が出てきませんでしたが・・・
その2選手はとてもすぐれている。野球界でひじょうに有望な選手たちだ。成功するのに必要なすべての要素を兼ね備えておりスターになるのは間違いない。でも私の球団はもっとパワーがあり多くの本塁打を打てる選手を求めている。
- ほかには誰かいますか。
フリオ・パブロ・マルティネスは見てみたい。国内リーグを見にキューバに戻るつもりだ。あと年齢は少し上だがユリスベル・グラシアルはさらにチェックを続けていく。
- 捕手は興味ありませんか。
それはちょっと難しい。というのは日本人投手と理解しあわなければならず、言葉の問題がある。
- 最も必要とされることの多いポジションはどこですか。
一塁手、三塁手と外野手を探している。
- あなたの球団はキューバでアカデミーの開校を考えたことはありませんか。
私たちの計画にそれはない。興味ある選手がもっとたくさん出てきたらまたわからないが。いまのところ、日本に連れていくほうがよい。
- 契約するまでの作業の流れは。
レポートとビデオを送り、球団の決定権を持つ人と話して、可能性があると思う選手たちを推薦する。推薦がなければその書類はチェックされない。
- あなたの仕事で一番楽しいことは何ですか。
隠れた才能を見つけるのが好きだ。世界中誰もが知っているデスパイネをピックアップするのとは違って、名も無き若者を発掘し、少しずつ有名になっていくのを見る。
- コラースのような?
その通り。あの若者は将来有望だ。ああいう選手が私は好きだ。軌跡を楽しめる。2年前に私はメキシコでベネズエラの投手ロベルト・スアレスを見つけた。去年日本の一軍で投げたが、米国では一度も投げたことがない選手だ。今季は負傷したが100マイルを投げる。現在メジャーの複数のチームが彼に注目している。
- あなたにとって、キューバ野球の主な欠点はどこにあると思われますか。
子どもたちは野球の基礎の習得が足りない。どうやってトレーニングしているか私は知らない。才能はある。でももっとよくなるはずだ。技術を完成させる必要がある。
「さらに年長の選手たちはあまり多くのことを考えていない。投手は変化球の習得が足りない。打者はバッターボックスでの基本を向上させなければならない。送球がひじょうに悪い。」
36歳の健太にとって、日本はそれほど恋しくない。彼は最終的に島から島に移り、ここで多くの時間を過ごしている。日本における寿司のように、コングリと豚肉が楽しめるもうひとつの島、キューバで。
彼はスピードガンを手にして人生を追い求めている。キューバで野球が尽きることは決してないだろう、と彼は言う。大事なのは、狙いを定めて、しっかり観察することである。
Un japonés con los ojos más abiertos que una peseta
http://www.juventudrebelde.cu/deportes/2017-06-10/un-japones-con-los-ojos-mas-abiertos-que-una-peseta/
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