初めての小児科らしいですね。
来院1時間前 腹痛。
来院理由：今朝、孫の具合が急に悪くなった。
東京にいる娘の子を来院5日前、祖父と祖母が預かった。
車で来る途中、嘔吐。
新潟大学医歯科大学病院、小児科医、斉藤先生
小児感染症のエキスパート。
あかねちゃんの主訴
５才、１１０ｃｍ、１６ｋｇ。
主訴：突然の高熱と腹痛
お腹の真ん中を押さえると痛い。
右を向く、左向くと首を触ると痛い。
右のリンパ節が腫れているかもしれません。
右の鼓膜の内側に水が溜まっている。
来院前の状況
来院5日前はいつもと変わった様子はなかった。
生ものは食べてません。
飼い猫がいる。
ホームシックにならないように好物ばかり食べさせていた。
祖父が竹をナイフで削るときに指を怪我した。
その竹は流しそうめんをするための竹。
血の付いた指で流しそうめん。いとこも呼んだ。
夜尿症があるのでオムツをしていた。
レントゲンから帰ってきたら かなり気分が悪いみたいです。
昨日から少し首が痛いといっていた。
昨日はマス釣りに行った。養殖所の釣堀で魚を手でつかんだ。
手が怪我した指で、マスを捌いて焼きマスをした。夜の8時くらい。
採血を済まして今夜は入院しましょうか。
バイタル
体温３９．３
血圧９２・５８
脈拍１１０回・分
呼吸数２２回・分
親が感じることと、祖父祖母が訴えることは違う。
これも大きなサインになる。
一回目の鑑別診断
腸重積
腸の一部が同じ腸の中にもぐりこみ詰まったり血行障害。
生後4ヶ月から〜2歳起こりやすい。
腸の中にポリープがある場合2歳以上でも起こる。
進行していくと腸が壊死する命に関わる危ない病気。
ムンプスウイルス感染
おたふく風邪、耳下腺が腫れる。合併症で膵炎、髄膜炎、難聴などが起こる。
急性の発熱とともに唾液を作る耳下腺が腫れる。
右の耳下腺あたりに痛み、上腹部を抑えて痛かった。
約５％が合併症で膵炎になる。だが首の腫れが引いてから2週間後に起こることが多い。
説明できないことは経過がすべて急すぎる。
虫垂炎
盲腸、大腸に有る虫垂という小さな袋に炎症が起きる病気。
子供は症状が進みやすい。
炎症でやぶれると腸の中の筋がお腹に広がり腹膜炎などを起こす。
腹痛の後に嘔吐した、合わない所見は首の痛み。
あかねちゃんの症状
発熱、腹痛、嘔吐、首の痛み。
小児は高齢に比べれば薬を飲んでないし元の病気もないし、全て一つの病気で説明できるのかもしれない。なかなか難しい。
その後の経過を観察しながら他の病気が起きていることも考えられる。
腹痛、嘔吐で胃腸炎の可能性は？
下痢の訴えがなかったので典型的ではないのかもしれません
細菌の感染性胃腸炎の可能性は？
竹を切るとき祖父の指を汚した、その指で料理した。
ブドウ球菌、食中毒を起こす原因になる
黄色ブドウ球菌は皮膚や消化管などにいる常在菌（じょうざいきん）で傷口、繁殖、毒素を出す。潜伏期間は短く、１〜５時間。
膀胱炎、腎盂腎炎の可能性は？
まだオムツをしている、尿が溜まるのでそこから菌が膀胱、腎盂腎炎で尿路感染症。
腎盂腎炎はばい菌が膀胱から腎臓まで進入した状態。背中が痛くなったり熱が出たりする。
尿道から入ったばい菌が膀胱まで行く。尿道の短い女の子に多い。
頻度が高い病気。
大人になると頻尿、おしっこする時痛いなどがあるが、子供の場合の尿路感染症はお腹が痛いという。
アレルギー性紫斑病の可能性は？
アレルギー性紫斑病 血管に炎症 腸に起きることも有る
皮膚 関節 消化器 腎臓 血管に炎症が起きる 学童期の子供にかかりやすい
風邪の後に起こりやすい 発疹 関節痛 激しい腹痛 嘔吐
猫ひっかき病の可能性は？
バルトネラ菌を持つ猫、日本の猫の1割が持っている。
わきの下や首のリンパ節、潜伏期間５〜２０日。
猫の爪は鋭い、 かまれたら 菌が奥まで入る。
あかねちゃんは引っかかれたりしてない？
来院1時間後、母到着。
今日は入院と聞いてびっくりした。
子供は飲んだり食べたりしないと脱水を起こしやすいので点滴で様子を見ているのです。
血液結果は白血球が正常値を大きく上回る。
肝臓、胆道の数値高い。
中耳炎をよく起こしますか？慢性的な中耳炎です。
中耳炎によりリンパ節は腫れるが、通常痛みはでない。
夜尿症で月に２〜3回おねしょをしてしまう。
共働きで夫は中国に単身赴任。
おねしょは精神的なことかなと思っている。
普段は保育園に通っている。
今日もうんちはでませんでした。
夜尿症と便秘 尿路感染症になりやすい。
尿の検査をして見ましょう。
実は来院5日前、猫にひっかかれた。
来院24時間後、熱がまだ下がらない。
体にヘンなぶつぶつがお腹に発疹がでてきた。
尿検査は白血球が尿に混じっていた
尿路感染症かもしれないので抗菌薬を点滴で投与しています。
血液培養もしています。
採取から48時間見ないといけない。
ウイルス感染症、風疹、麻疹はワクチン接種していたのでその可能性は少ない。
あかねちゃんの発疹は押すと消える
アレルギー紫斑病の発疹の位置、典型的な場所下肢。
重力がかかるのがおこりやすい。押しても色が消えないのが特徴。
紫斑 おしてもきえない。
紅班 おすときえる。
あかねちゃんはおすと消える紅班だった。
紫斑病の可能性は低い。
猫引っかき病バルトネラ菌は腹痛 、嘔吐が起きる。可能性がでてきた。
ブドウ球菌や他の菌によるリンパ節の炎症も考えられる。
腸重積は肝臓、たんどうの酵素は上がらない。
ムンプスも虫垂炎も考えにくい、血液検査から可能性は下がった。
おしっこに白血球は尿路感染症の可能性を示す数値。
点滴している。これで症状が改善すれば尿路感染症です。
全身に炎症が回っている可能性
血管炎は体内の血管に炎症が起きる病気。原因不明。
体の一部に生じるものなど様々。
血管炎で小児で起こるものといえば「川崎病」が小児に多い。
目の充血、イチゴ舌、舌が真っ赤になる、首が腫れる、手がパンパンに腫れる。
全身に起きる血管炎は5歳未満に多く、5日以上高熱、全身の発疹、唇や下が赤くなるのが特徴。
心臓の冠動脈が腫れたあとにコブができる、それが破裂したりして、心筋梗塞が起きることもある。
あかねちゃんの頚部痛、発疹、皮疹、ほかは典型的ではないかな。
川崎病でもおしっこに白血球がでるのはありえる。
全身血管炎は肝臓や胆道の数値が高いのありえる。
川崎病の主な６つの症状
- 5日以上続く原因不明の発熱
- 目の充血
- 四肢の末端が赤くなり堅く腫れる
- 皮膚の不定型発疹
- 口唇が赤く腫れる、いちご舌
- リンパ節が腫れていたい
培養結果をみます。
来院48時間後、熱が全然下がらない、お腹も痛くなっている。
血液と尿の培養検査で細菌は出ませんでしたので感染症ではない。
病気は絞られてきました。もう少しで明らかになります。
答えは川崎病
根拠、熱が続く、抗生剤投与して熱が下がらない。
培養で細菌がでなかった。敗血症より川崎病を疑いました。
一回の培養で陰性だからといって 全ての感染が陰性ではない。
川崎病の６つの症状に腹痛はない。
CTを撮りたい。
胆嚢が張っている、腫れている。
胆嚢水腫が腹痛の原因だと考えられる。
川崎病の１０％で胆嚢水腫が起こる。
このあと他の症状が出てくるはず。
来院72時間後、目が赤い、唇も赤い、舌も赤い。
5歳未満の子供で年間1万人以上が川崎病にかかる。
冠動脈のこぶ予防で免疫グロブリン製剤。
入院10日目で帰宅。
腹痛の原因の胆嚢水腫改善し、すぐに見つかったので後遺症無し。
日本人の川崎富作先生、１９６０年代、現在も生きていて電話相談している８９歳。
１９６１年に従来の病名に当てはまらない患者を見つけた。
4歳3ヶ月の男の子。
1年後の当直で急患で来た患者は1年前診断がつけられない症状の患者だった。
患者が2人存在することを見つけた。
一緒に出来ない症状をどうやって一緒にするのか。
ピースをあわせて合わせれない時 患者のベッドサイドでもう一度確認。
まず患者を見に行け、研修医で言われる言葉。
川崎病性冠動脈瘤（子供で川崎病）の疑い
【このカテゴリーの最新記事】
