2018年11月26日
忘れ物ノート
友人に聞いた話。
友人が小学生の頃、クラスにいつも忘れ物をする男の子がいた。
見兼ねた先生は「忘れ物ノート」というものを作り、
男の子が忘れ物をする度にそのノートに記録を書かせていた。
男の子は先生に殴り飛ばされ、先生はいつも言っていた。
「いいか、俺はお前が憎くて殴っているんじゃない。
お前が少しでもちゃんとした人間になるように、お前のためを思って殴っているんだ」
しかし、男の子は忘れ物などしていなかった。
忘れたのではなく、ちゃんと前日に持ってきたのに無くなっているのだ。
ロッカーやランドセル、机の中を探しても無い。
ある日、男の子は近くの踏み切りで自殺をした。
バラバラになった男の子の遺体の中には何故か頭が無かった。
警察や処理班の人が周辺を探し回ったが、どこを探しても見つからない。
頭が発見されないまま男の子の自殺は近所に知れ渡り、数日後に先生の耳にも入った。
先生は呟いた。
「何も自殺までしなくても良いのに…」
男の子の物を隠していたのは、先生だった。
嫌な事や気に入らない事があると、その憂さ晴らしのために、忘れ物を理由に男の子を殴っていたのだ。
男の子から盗んだリコーダーやコンパスなどを片付けながら、
次の標的は誰にしようか…と考えていると、ふと背後で人の気配がした。
「だ、誰だ…!?」
秘密を知られれば、憂さ晴らしが出来なくなる…。
先生は慌てて振り返り、そしてもう一度手元を見て驚愕した。
男の子の頭があったのだ。
頭を放り投げ、逃げ出そうと後ろを向いてまた叫び声をあげた。
先生の後ろには、首の無い男の子が「忘れ物ノート」を抱えて立っていた。
翌日、職員室で変死体となった先生とあの「忘れ物ノート」が発見された。
警察が忘れ物ノートを開くと、そこには震えた字でこう書かれていた。
忘れたもの:ぼくのあたま、せんせいのいのち。
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