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化粧の効果

化粧を「顔に何かを塗る行為」と定義すると、顔に何かを塗ることが、自分や周囲にどのような影響を及ぼすのかということが重要になる。先にも述べたが、顔は、構造を変更することが難しく、かつ持続的にその人の特徴を示すものであるため、他者が外見的特徴から相手を理解する際の重要な手がかりとなる。したがって、顔に何かを塗る行為は、外部への自分のアピールであり、向社会的な行動であると考えられている。この節では、人が化粧をすることの効果について、社会心理学の側面から考えてみたい。

1 .化粧の対自的効果
この項では、化粧をする本人への対自的効果について考える。
余語・浜・津田・鈴木・互(1990)は、化粧のもたらす最もはっきりした心理的効果は、当人の自信度や満足度の上昇であることを示している。些細なことであれ、自己にとっての欠点を改善すること、また隠すことは、持続的な心理的効果をもたらす。そのため、化粧をすることで心理的な安定が得られ、社会的積極性が増すと考えられる。また、鏡に向かうことによって自己意識が高まることも内省的傾向を高める効果を持つといえる。
また、女子大生を対象とした調査(春木:1993)では、化粧経験のない学生は化粧をすることで活動的、女性的気分が増し、自信の向上を示したのに対し、ふだん化粧をしている学生の化粧を除去した場合には、否定的な感情を示すという報告がある。ふだん化粧をする学生にとっては、日常的に行われる化粧が自己表現の一部として組み込まれており、
その「操作」をしないことによって、ふだんは対外的にはあらわにならない部分が露呈するために一種の不安を感じることになるといえる。

2 .化粧の対外的効果
次に、他者から見た場合に感じられる化粧の効果について考える。この点については、化粧をする本人が期待するとおり、化粧をすることで身体的な魅力が増すことが考えられる。このことは多くの研究で裏付けられている。1981年のグラハムとファーンハムの研究では、化粧をした女性は女性的で、心地よく、身体的魅力があり、成熟しているとみなされ、さらに、誠実で、社交的、自信があり、努力する人と周囲(28歳から41歳までの男女)から認知されると報告されている。

3 .化粧の総合的な効果
松井(1986)は、化粧の効用について、自己に対する効用として創造的行為を通しての満足感があり、対人的な効用として役割遂行や自己呈示を通じての自尊心の向上・他者からの評価の向上による満足感があるとまとめている。したがって、化粧には、他者との関係を前提としながらも、「自己」の価値を高めることを目指した動機による行動結果の「満足」と、化粧行動によって他者を介した「満足」をつくり出す効果があると考えられる

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