山の音楽家

十数年前、佐久市にある

「あさま名曲堂」という、

小さな楽器店の音楽教室で

トランペットを数年教えていたことがあります。


ど田舎の楽器店にしては珍しく、

オーディオ機器の販売もやっていました。






私が教える前に、

友人がこの楽器店に勤めながら

音楽教室でもトランペットを

教えていました

(ブライダルの仕事の紹介をしてくた友人です）。

その友人は、一応トランペットでは

プロとして活躍されていた方

（バブルの頃は相当に稼いでいたようです）

でしたが、バブル崩壊後、

それだけでは生活が出来なくなり、

この楽器店で働いていました。

しかし、将来のことを考えて、

楽器店を辞めて高校の英語

の教員になりました

（教員免許は大学で取得していたそうです）。

ある日のこと、

その友人から突然電話がかかってきました

（何時ものパターン）。

「トランペット教室で数人の生徒が

残っているので、

自分の後を引き継いで教えて欲しい」

とのことです。

またまた、不吉な電話です。

私としては「自分自身が習いたいくらい下手なのに、

とても出来ない」とお断りしました。

しかしながら「一人３０分程度だし、

音出し程度で終わる。

それにその数人もすぐに辞めると思う」

ということなので、

仕方なく引き受けることにしました

（何時ものパターン）。

最初は本当に数人の生徒だったのですが、

最初の話とは違い、その数人も

そのまま続けることになり、

生徒数も10人くらいに増えました。

私自身専門教育を受けたことが無い

（高校時代に数ヶ月習っただけ）ので、

教えると言っても、

どのように教えていいか分からず・・・

とりあえず「大人のトランペット」という、

ＣＤ付きの簡単な教則本（今は廃版かな）

を教材として教えていきました

（何とか自分でもこなせそうなものを選びました）。

生徒さんは、全くの初心者がほとんどでしたが、

中には、総合病院の外科医の方

がいらっしゃいました。レッスンの途中で、

急に電話がかかってきて

「今、急患が入って、

緊急に手術しなければならない」とかで、

急に病院に呼び出されることもありました。

それでも、その人は私が音楽教室を

辞めるまで、ずっとレッスンに通い続けました。

一番困ったのは、

多分40歳くらいの方だったと思うのですが、

全くの初心者でＪａｚｚを演奏したいという

生徒さんがいらっしゃいました。

驚いた事に、全く吹いた経験が無いのに、

いきなり音がまともに出る。

しかし、そこからが悲劇です。

音階を教える段階になって、

ドレミファソラシドが分からない。

ドの次の音がレという感覚がわからない。

ソの一つ上の音がラだと言っても分からない・・・・

困った・・・全全半全全全半どころではない・・・

半音と全音の違いも分からない・・・で、

Ｊａｚｚをやりたいと・・・

参った・・・・

それでも、私が吹いた音を真似して吹けば、

同じ音が出せたので

まるっきり音痴というわけでもなさそうでした。

ま、教えるのは大変でしたが、

音楽発表会では、Ｆのブルースを

何とか一曲吹ききるようにはなりました

（アドリブはコピーしたものですが）。

その方はやる気満々で、

ある時、急にＶ．Ｂａｃｈのトランペットを

もってきました。

東京に出張で出かけた時に

買ってきたそうです。

とりあえず、音楽教室の方は、

自分自身も勉強しながら続けていくことに

なりました。

ところが、それだけで話は終わらず・・・

その楽器店と取引のある小中学校の

ブラスの指導をしてくれ、

と頼まれて・・・

これにはマジで困りました。

ブラスの指導なんて、

中学高校時代に後輩を教えた

程度の経験しかない・・・

こんな人間が、

果たして教えて良いものなのか？

などと考える余裕もなく、

何校か教えに行くことになりました

（何時ものパターン）。

この時も、

一体どのように教えて良いのか分からないので、

色々な資料を調べて、

自分で教材を作りました。

今まで、ずっと、自分は下手だ下手だと思って

逃げていましたが、

逃げられないような状況に追い込まれる

ということは必要なことですね。

自分は下手でも、

全くの初心者には教えることが出来る。

「教える限りは自分も勉強しなければいけない」

ということを実感しました。

この「アサマ名曲堂」も、

大手の島村楽器などの進出によって、

現在では無くなってしまいましたが、

良い経験をさせて頂きました。

その後、教えていた生徒さんの希望もあり、

自宅で、しばらくトランペット教室を

やることになりました。

最初から教えていた小学生の生徒さんは、

中学→高校と教えることになり、

めでたく薬科大学に合格して・・・

今頃はどうしているかな？

ちなみに、

自宅のトランペット教室の生徒さんと、

今のカミさんのピアノ教室の生徒さんとの

合同の音楽発表会を始めたのがきっかけで、

カミさんと結婚することになりました。

今年で、結婚10周年になります。

もし、トランペットを続けていなかったら、

現在のカミさんと出会うことも無かったでしょう。

今からでも楽器を始めるのは遅くありませんよ。

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出会いは何処にあるか分かりませんよね。

家族で共通の趣味を持つということは

素晴らしいことです。




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