借金生活２０００

今年もこの時期がやってきた。
年末が近づくとギャンブルをする人であれば有馬記念や競輪グランプリなどが頭をよぎるだろう。
競艇が好きな人であれば、もちろん賞金王決定戦の事が気になってしょうがないであろう。
実は私も一回だけ賞金王決定戦を当てた事がある。
今から２年前、私がちょうど西成を出ようかと思い始めた時の事でした。
西成の日雇いの仕事はクリスマス前から激減し、１月の８日、９日くらいまではほぼ全く無いに等しい。
それもあってか西成の宿も年末年始に関しては、先に10日分くらい払わなければいけないという変なルールが存在する。
私の住んでいたサンプラザという宿も、年末年始先払いだったので、とりあえず宿代を払ってしまい、残金は29000円である。
明日は賞金王決定戦に行くことは決めていたが、朝からは絶対にやめようと思っていた。
メインレースの前に買いたくなるようなレースを見つけて、負けて金が無くなることも無くは無いからである。
ギャンブルである以上熱くなった瞬間、気がついたら残り２、３千円などよくある話である。
しかし、賞金王決定戦の予想は難しい。その節のレースが少ないから、今一つ絶好調なのかたまたま前レース勝ったのかも見極めにくい。
私の買い方としては、６コースでない限り、その節絶好調な選手から買うことにしてる。
競輪、競馬みたいに強い者、技術のある者が競艇の場合勝つとは限らない。展開も相当重要であるが、それ以上にその節、モーター、ボートと完全に一体化し、抜群の整備で仕上げた絶好調男は普段の技術、勝率など関係無しに、その節では圧倒的強さを見せつける。
考えれば考えるほど荒れるのか、インが勝つのかわからなくなってきた。
ちなみに2014年は６コースから茅原が来て、超大荒れである。
とりあえず玉出に酒を買いに行くことにした。
チューハイ４本とスナック菓子３袋買い、ついでに魚のフライ３枚パックが128円だったので、大丈夫かなと思いつつ、冬なので買うことにした。
これで予想の準備は整った。最高の予想ができそうだ。
しかし、考えれば考えるほど迷う今年のレース。
その原因の一つが、去年６コースで勝った茅原がまた今年も６コースにいることである。
２年連続で１着はさすがに無いだろうが、２着、３着はあり得なくもない。
４コースの池田も気になるところである。昔ほどの実力はあるとは思ってないが、カドからの池田の差しは無視することはできない。
５コースの篠崎元も来ないだろうと思い、外して買ったら、うわ、来たよ。という記憶が何回かある。
しかし、やはり今年はインが勝つであろうと思う。
１号艇の山崎智也は2015年圧倒的な強さをみせていた。特に勝負どころのレースでは、勝った記憶しかない。野球より競艇の方がもし、人気があったなら神ってるという言葉は山崎智也の物だったであろう。それくらい神がかっていた。
頭は智也だろうと思いつつも２コース石野と３コース毒島も強烈である。
結局、今年は面白みも何もない、1‐2‐3。1‐3‐2。という固い予想になってしまった。
気付けば翌日の４時３０分になっていた。
やれやれ、全く競艇はどれだけ俺の事を熱くさせるんだと思いつつ、とりあえず寝ることにした。
目が覚めると１２時を回っていた。
とりあえず、まんぷくにカツカレーを買いに行き、体を立ち上げ心を落ち着かせた。
ふと、今から住之江競艇場に行って入れるのかという疑問が浮かんだ。こないだ、おっさんが整理券がどうのこうのと言ってたのも気になるし。
実際に賞金王決定戦を生で見たことはないのだが、テレビで見るといつも超満員である。
果たして第１ターンマークは見えるのだろうか？もし、見えないのであれば面白くもなんともないだろう。
迷ったが結局尼崎に行くことにした。
生では見れないが、超満員で見えなければ意味が無い。
尼崎も人でごった返していた。
さすが賞金王決定戦、普段見ないような顔ばっかである。
若く健全な顔がいっぱい見受けられる。今日だけは競艇場も健全な賭場であろう。
普段の定位置をキープできなかったおっさん達はうろうろと徘徊している。
さすが賞金王決定戦である。熱気が普段とまるで違う、チューハイを３本空けたら、サッカースタジアムと勘違いする人が出そうなほどの熱気である。
とりあえず締切直前に買えなくなるかもという心配から早めに舟券を買うことにした。
熱気に後押しされ一口１万円勝ってしまった。２口で二万円、負ければ寝正月である。
買う前にオッズを見て意外につくなと思い欲が出たせいもあったのだが。
とりあえずビールとおでんを買い、人のいないところに移動しようとしていたら、どよめきが起こった。
おっさん）茅原ボケ！
おっさん）石野入れさすなボケ！
おっさん）買うてもうたわ！茅原ボケ！
どうやら茅原がスタート展示でインに入ったようだが・・・
私も買ってしまったのである。競艇はこれがあるので侮れない。
もしかしたら、２年連続茅原の優勝の可能性さえ出てきた。
まさか、このメンバーでインに入るなんて思ってもみなかった。
もう買ってしまったものはしょうがない、本番ではコース通りにスタートすることもよくある話だ。
しかし、本番も茅原が２コースに入ってしまい、いざスタートである。
石野がスタート前から茅原に猛アタックしている。
たぶん山崎智也が勝ったなとは思ったが、石野も来なければ意味が無い。
第１ターンマークを回り山崎智也が先頭に立った。後ろはというと毒島も石野も残っている。
理想的な展開である。
次のターンマークを回り山崎智也の優勝はほぼ間違いない。
後続も石野と毒島がつけている。
これは決まったかもしれない。
胸が高鳴りはじめた。
次のターンマークを回り勝負はほぼ決した。
1‐3‐2か1‐2‐3であろう。
来た来た！ｷﾀ━(ﾟ∀ﾟ)━!
大声をあげたいのをグッと我慢し、久しぶりに羽振りのいい正月を頭にちらつかせながら、まだ決まってない油断するなと自分にいい聞かせる。
最終ターンマークを前にして前から１−３−２の順である。最終オッズは見てないが安くても15万にはなるだろう。
このまま決まってくれと思いつつ、ドキドキしながらレースを見守った。
そのまま勝負はきまり山崎智也の優勝となった。
やったぜ！やってやったぜ！
冷静を装いながら、買い間違えてないかちらっと舟券を見る。
間違いない。今年はいい正月が約束された瞬間である。
舟券を入れると小さな画面に20万いくらと表示された。そんなについたのかと一瞬びっくりした。
全く競艇はこれだからやめられない。
おし！
やったぜ！やってやったぜ！
帰りの空はそこまで天気はよくなかったが、どこまでも高く見えた。
何回も負けて競艇を恨んだこともあった。
でも今日は本当にありがとう。
なんかそんな気持ちでいっぱいになったのを今でもよく覚えている。
今年はどんなドラマが起こるのであろうか。
今から楽しみで仕方がない。