道歌にこうあります。
『身を思う 心ぞ身をば 苦しむる 身を思わねば 身こそ安けれ』
病は忘れることによって治ります。
哲人、中村天風師は、著書 『運命を拓く 天風瞑想録』 (講談社文庫)の中で、このことについて、次のように述べています。
「 正直な話、私が病になりたてには、ちっとも神経が昂ぶらなかったのに、医学を研究してから、よりいっそう、弱くなったのである。
つまり、知らなくてもいいことを知ってしまうからだ。
だから、医者がその仕事のために覚える医学は必要だから、ぜひ天職を奉仕するために覚えなくてはならないけれども、素人が知る必要はないのである。
中には、素人のくせに、医者よりも自分の病を詳しく知っている“馬鹿”がいる。
こんなのは、私にいわせるならば、本当に“馬鹿野郎”だ。
現に、天風会副会長の安武貞雄が大学生の時代に、今から約五十年前になるが、私に対して、ぬけぬけとこういった。
『 こと、腎臓に関するかぎりは、私は博士にも負けません。』
『なにしろ、私は幼少の折から、この病をわずらっているのだから、この病に関しては、トコトン研究しています』 と。
『偉いなあ、偉いけれども、お前、もう少し馬鹿になったらどうだ』 といったのである。
『いろんな知識を知っていて、それでいてちっとも治ってないじゃないか。
治ってもない知識ならあらずもがな。
止めてしまえ。
お前、もう少し馬鹿になれ! すべて忘れてしまえ!』 と。
それで彼は、馬鹿になって忘れたから、立派に大学を出てこの年まで、元気で活きていて、そして副会長をやっているじゃありませんか。
あれが、利口になっていたら、駄目だ。」 (182頁〜183頁)
「 どんな時代が来ようと、どんなに齢をとろうと、我々は進化向上の自然法則の中で活きている。
特に、現在、病のある人、あるいは運命のよくない人も、決して、その病や、運命に、心をこだわらせないことだ。
こだわれば、こだわるほど、病も癒りが遅いし、運命だって、挽回するときが遅いのだ。
人間というものは、浮き沈み、波の高低のあるところに活きている。
晴天の日もあれば、雨の日もあれば、風の日もある。
そのたびに、自分の心を苦しめていたらどうなるか。
病のときに、病にこだわれば、病に負けてしまう。
運命のよくないとき、運命にこだわれば、運命に負けてしまうではないか。
だから、病でも運命でも、消極的な気持ちにしないこと。
そうするのには、まず相手にしないようにすることが一番である。
病は忘れることによって治る!」 (191頁〜192頁)
病のある人は、決してその病に心をこだわらせないことが肝心です。
病のときに、病にこだわれば、病に負けてしまいます。
まず相手にしないようにすることが一番です。
病は忘れることによって治ります!
瀬戸内寂聴さんは、著書 『寂聴 九十七歳の遺言』 (朝日新書)の中で、病についてこう述べています。 (103頁〜104頁)
「 私はちょうど六十歳の時に急に体調が悪くなったことがありました。
当時、寂庵には看護婦をしていたいとこがいました。
彼女が 『すぐお医者さんに行きましょう』 と、お腹を診ることでは東京でも一、二というお医者さんに連れて行ってくれた。
いろいろ診てもらったら、結局 『腸が悪い』 とのこと。
『あなたはもう仕事しちゃいけません、講演なんか絶対しちゃいけません、家でじっとしていなさい』
といわれたんです。
びっくりして、
『私は毎日、何をするんですか』
と聞いたら、
『六十歳の老人らしく庭の草むしりでもしなさい』 って。
困ったなと思いました。
私は草むしりなんか好きじゃないし、当時はまだ寂庵にちゃんとした庭もありませんでした。
お医者さんは何々しちゃいけない、何々を食べちゃいけない、これを飲みなさいと、山のように処方箋を出してくれました。
でも、私はそれを全部やらなかった。
どうせ死ぬなら好きな物を食べて、どんどん仕事をしてやれと思って、仕事も倍に増やしました。
そうしたらいつの間にか治ったのです。
そして二、三年したら、そのお医者さんの方が死んでいました。
人の命なんて案外そんなものなのでしょう。」
おわかりいただけましたでしょうか?
中村天風師曰く、
『 心が肉体に消極的に注がれると、肉体の生きる力の受け入れ態勢が妨げられ、本来の強さを発揮することができない。
したがって可能な限り、消極的な気持ちで肉体を考えないようにすることが何より大切である。
特に病のときは病を忘れる努力をすべきである。』 〔『運命を拓く 天風瞑想録』 52頁〕
身体のことは、自然治癒力に任せましょう。
できるだけ身体のことを考えないようにしましょう。
『楽天思考 口ぐせで夢がかなう――脳の想像力が人生をつくる』 (著者 佐藤富雄 講談社+α文庫) に自律神経系にゆだねることの重要性が説かれています。 (115頁〜116頁)
「 生きる目的のためにからだの反応を“自動的に”コントロールしているのが自律神経系です。
たとえば、室温が上昇したり下降したりしても体温はいっさい変化しません。
それは微妙な温度の変化を皮膚のセンサーが読み取って、自律神経系のコントロールタワーである神経中枢にフィードバックして調節を図っているからです。
『生きる』 という目的をもったわれわれのからだの六〇兆を超えるひとつひとつの細胞は、すべて、こういう力をもっているのです。
この生きるという目的を達成するために、二二億年という長い歴史をもったこのメカニズムは、とにかく強力に働きます。
すべてをこの自律神経系にゆだねておけば、人間は病気になることはありません。
ましてや自律神経系を中心に生きている動物ならなおさらです。
裏山のタヌキがノイローゼになったとか、ガンになったというような話を聞いたことがないのはそのためです。
ところが人間は大脳によって何かを恐れたり、思い悩んだりするために、病気になったりしているのです。」
身体のことはすべて、自律神経系にゆだねましょう。
そうすれば、病気になることはありません。
『身を思う 心ぞ身をば 苦しむる 身を思わねば 身こそ安けれ』
ということで結論はこうなります。
『病は忘れることによって治る!』
『運命を拓く 天風瞑想録』
(著者 中村天風 講談社文庫)
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『寂聴 九十七歳の遺言』(著者 瀬戸内寂聴 朝日新書)
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『楽天思考 口ぐせで夢がかなう―脳の想像力が人生をつくる』(著者 佐藤富雄 講談社+α文庫)
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