山に入る時レインウェアは携帯してますか?
特に経験や情報の少ない方は正常バイアスが働いて
「自分は大丈夫!」
という根拠の無い理由で携帯しない方がいらっしゃいます。
しかし、登山の三種の神器はハイカーの身を守る装備なので極力携帯しましょう。
今回はそんな方にスタイル別に失敗しないレインウェアの選び方を解説します。
もくじ
@防水と撥水の違い
A防水素材の種類
B防水ウエアの見極め方
Cスタイル別レインウエア
ハイキング、観光地めぐり(コースタイム3時間程度)
トレッキング・軽登山(コースタイム6時間前後)
重登山・縦走登山(コースタイム8時間以上)
Dまとめ
@防水と撥水の違い
雨対策の水に強いウェアの素材は基本的に「防水」と「撥水」に分かれます。
この2つの機能は似て非なるものですが、混同しいる方もいますので、ちょっと解説します。
●防水加工【英;water proof】
これは生地の内側を防水加工することで、雨などが衣服内に浸水しないようにしています。
この加工により生地表面が濡れていても、浸水しないため、衣服内は濡れないようになります。
加工方法は、防水フィルムを生地にラミネート(圧着)するタイプと防水素材をコーティング(塗布)するタイプに分けられます。
この加工により防風機能も備わるのですが、衣服内の湿気が排出しにくくなりますので、合わせて「透湿機能」が加えられています。
●撥水加工【英;water repellent】
撥水加工とは、生地に水をはじく成分を付着させること。水を玉状にしてコロコロと転がり落ちるように加工します。
この「水をはじく成分」は表面に付着しているだけなので、繊維には隙間が残っている状態。だから「強い雨」や「水滴が小さい霧雨」が降ると、この隙間から水が浸透してしまいます。
撥水加工は水を完全に遮断できませんが、空気や蒸気がこの隙間から通り抜けるため、蒸れにくいのが長所です。
A防水素材の種類
防水性を比較する上で「耐水圧」という指標があります。
これは、生地に染み込もうとする水の圧力にどれだけ耐えられるかを数値化したものです。
生地の上に1cm円柱を立てて、筒の中に水を入れて何メートルの高さの水の水圧に耐えられるかという実験をして防水圧を算出しています。
目安としては、
20,000o以上:嵐…台風、暴風を伴った大雨。
10,000〜20,000o:大雨…傘の下で雨音がする。水たまりに激しい飛沫が上がる。
2,000〜10,000o:中雨…傘が必要。水たまりができる。
300mm --- 小雨:短距離なら傘をさすのをためらう。
※ビニール傘の耐水圧:250mm程度、布帛傘は約5,000o
※※体重75kgの人が濡れた場所に座った時のお尻かかる圧力は約2,000mm
※※※濡れた場所へ膝まずいている時の膝頭への圧力は約11,000mm
これを目安にすると、
通勤・通学に使用するレインウェアは、250〜5000o
ゴルフやキャンプなど野外でのスポーツやレジャーで使用するなら10,000o前後
状況によって命の危険に係わる登山で使用するなら20,000o以上
になります。
以上を踏まえて、アウトドアブランドで使用されている素材を10選ご紹介します。
未公表もありますが、基本的に耐水圧は20,000o以上です。
1.ゴアテックス
アメリカのゴア社が開発した透湿防水素材。
ゴアテックスメンブレンという多孔性フィルムを使用。防水性と透湿性のバランスが最も高く、市場で信頼されている素材。基本的素材メーカーなので、各アウトドアブランドで採用されている。
アウトドアでの透湿防水素材の代表的存在。
2.ベルグテック
ミズノ社の製品に使用されている素材。
登山用として開発された防水透湿素材で、約30,000mm以上高い耐水圧と優れた透湿性が特長。激しい動きの中でも雨の侵入を防ぎます。
3.オムニテック
コロンビアスポーツ社の製品に使用されている素材。
オムニテックはゴアテックスと同じくメンブレンを表地裏地で挟み、防水透湿性を実現。用途に合わせて2〜3層を展開しています。
4.ドライテック
モンベル社の製品に使用されている素材。
防水性を高めると透湿性が低下する問題を高いレベルで解決した素材。ストレッチ性がある「ストレッチ ドライテック」もあります。
5.ハイベント
ノースフェイス(ゴールドウィン社)の製品に使用されている素材。
メッシュ状の特殊コーティングが施されたフィルム。多孔性フィルムと比較すると耐久性が下がるが、製品は比較的安価になる。
6.フューチャーライト
ノースフェイスブランド(ゴールドウィン社)の製品に使用されている素材。
通気性を備えた素材で蒸れにくいので、運動量の多いアクティビティ向き。軽量で柔軟性が高く、ストレッチ性も備えており、アウトドアのみならずタウンユースまでカバーします。
7.エバーブレス
ファイントラック社の製品に使用されている素材。
長期間耐水性と透湿性を維持するのが特長。経年劣化も抑えているので、長く使えます。
8.H2No
パタゴニア社の製品に使用されている素材。
h2noは生地にポリウレタンコーディングすることで防水透湿性を実現。ゴアテックスのようなメンブレンではないので表地でカバーする必要がありません。構造が簡単で軽く耐久性が高いのが特長です。
9.ティフォン50000
ミレー社の製品に使用されている素材。
ティフォン50000は、高い防水透湿性を持ちながら柔らかで肌触りが良いので、自然な着心地と風合いが特長です。
10.パーテックス アンリミテッド
イギリスのパーセバランスミルズ社が開発した素材。
もともとパラシュート向けの生地を制作していた同社が、軽くて丈夫な性質を生かし、様々な素材を制作。各アウトドアブランドに提供している。
B防水ウェアの見極め方
商品の下げ札を見ても、防水なのか撥水なのか見分けがつかないことが多いですよね。
また、洗濯成分表示を見ても、そこには防水に関しては触れられていません。
しかし、一発で見分ける方法があります。
それは、”アウターの裏の縫い合わせを見る”です。
表地がナイロン製で見た感じあまり差がないと、撥水は確実だが、防水用に仕立ててあるのか縫製加工を見ると一目瞭然です。
〇防水ウェア…裏の縫い合わせ箇所にシームテープ処理をしている
〇完全防水ウェア…シーム処理した上に、ポケットの裏地もメッシュではなく、表地と同素材を使用してる
〇撥水ウェア(ウィンドブレーカー)…縫い合わせはそのまま、特に加工なし
理由は、衣類を縫い合わせすると針を通すため、生地には実は穴が開いています。
そのため長時間または強い水圧がかかると、その縫い合わせ箇所から漏水します。その漏水を抑えるために上からシームテープを張って防水処理をします。
したがって、ゴアテックスを使っても裏側の縫い合わせにシームテープ処理をしてなければ、レインウェアとは言えません。
Cスタイル別レインウェアの選び方
ハイキング、観光地めぐり(コースタイム3時間程度)
〇耐水圧は5000〜10,000o
〇スタイルは、基本セパレートタイプですが、ポンチョやレインコートも状況によっていいと思います。
〇おススメ素材は、パーテックス、ハイベント、オムニテック
トレッキング・軽登山(コースタイム6時間前後)
〇耐水圧は10,000〜20,000o
〇スタイルは、動きやすいセパレートタイプ。
山頂を目指すならポンチョやレインコートは下半身の濡れに対処できないし、稜線での風に耐えられないのでお勧めできません。
〇おススメ素材は、ベルグテック、フューチャーライト、ドライテック、H2No
重登山・縦走登山(コースタイム8時間以上)
〇耐水圧は20,000o以上
〇スタイルは、絶対セパレートタイプ。
〇おススメ素材は、ゴアテックス、ティフォン50000、エバーブレス
Dまとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
レインウェアに必要性にも別記事にて紹介していますが、個人的には、余程のことがない限りレインウェアは携帯しています。なぜなら、初心者時代に携帯せず、痛い目を何度も味わったからです。
携帯することのデメリットと携帯しないことのリスクを天秤にかければ、携帯するの一択です!
ちなみに今回はレインウェアの耐水圧をフォーカスして解説しました。透湿防水素材ですので、当然衣服内の蒸れを逃がす機能はあります。
ここで、メーカー側と使用者の認識にずれがあります。
レインウェアの生地は防水なので「水の液体」は通しませんが「水の分子」は通します。
よって、「汗の液体」や「結露の液体」は通しません。
運動量が高まって発汗した場合、この汗はすぐに解消されません。また外気温差で発生した結露も同様です。
体温などで徐々に蒸発した「水の分子」が衣服外に放出されますが、若干時間がかかります。
特に初心者の方は、汗濡れの状態を指して「漏水した」と勘違いをしてしまいがちです。
この場合の対処法もありますが、それは別記事にて解説します。
この記事が皆さんの一助となれば幸いです。
それでは、安全安心装備でクライムオーーーーン