噂話はお好きですか?害を成さない噂話ならどうってことはありませんが、人を、傷つけてしまうような噂話はあまりよろしくはありませんよね。しかも、噂のほとんどは事実とは違っていたりもします。面白がって話に尾ひれがつきすぎて、もとの話とは全く違ってしまうこともあります。噂は真実を知らない場合、あまり広めない方が良いかなと思います。そんなフェイクの話を信じ込んだ集団が起こした悲惨な事件がメキシコで起きたことがあります。
SNSで拡散されたフェイク
メキシコ中部プエブラ州の小さな町アカトランでこの事件は起こりました。8月29日の正午過ぎ、警察所の前に人だかりができていました。最初は数十人でしたが瞬く間に100人以上の人たちが集まってきたのです。なぜ、こんなに人が集まったのかというと、誰かがSNSである情報を拡散したからです。メキシコではメッセージアプリ、ワッツアップというのがあり、このアプリを通してフェイクのでっち上げられた話が広まり、それを信じた人たちが警察の前に集まったというわけです。
そのフェイク話の内容はこのようなものでした。
「どうか、皆さん気を付けてください。誘拐犯が大勢この国に入国したようです。この犯人たちは、臓器売買にかかわっているらしいです。ここ数日の間に、4歳、8歳、14歳の子供たちが姿を消しています。死体で見つかった子もいるし、内臓が抜き取られた形跡のある子もいたという事です。腹部が切り裂かれて中は空っぽだったらしいです。」
何故、こんな嘘の話が拡散されたのかはわかりませんが、それと同時期に軽犯罪で捕まった男二人と、この嘘話がリンクしてしまったのです。つまり、この軽犯罪で捕まった男性二人が誘拐犯であり、臓器売買をして子供を殺した犯人だという事になってしまったのです。二人の男の名前は「リカルド」と「アルベルト」と言います。
警察官がこの二人は軽犯罪で捕まえたのだと言っても、すでに拡散された話を信じ込んでいた群衆は聞く耳を持っていません。すると、一人の男がフェイスブックでライブ配信を始めたのです。そのライブ配信を見た人たちはリカルドとアルベルトが犯人だという話を信じ込んでしまいます。別の男が警察署の横にある町役場の屋根に上り、更に群衆を焚きつけました。「警察は、この二人を釈放するつもりだ!」と。
恐ろしい群集心理
臓器売買の誘拐犯を釈放されたら大変だとばかりに群衆は危うい方向に向かっていきます。3人目の男が、今度は拡声器で群衆を焚きつけます。二人の犯人扱いされたリカルドとアルベルトにガソリンを撒いて火をつけろ!というようなことを言い始めます。それに同調した別の男が群衆からガソリンを買うお金を徴収し始めたのです。もう、こうなっては群衆のパワーを消すことは至難の業です。
群衆はすでに暴徒化し、二人を引きずり出したのです。それを写そうと携帯を高く掲げる人々。そして二人は、集団にはげしく殴られガソリンをかけられてしまいます。警察も助け出せないような状態になってしまいました。リカルドさんは、暴徒に殴られたせいですでに息をしていなかったようですが、アルベルトさんは火をつけられた時にもまだ生きており、映像にはアルベルトさんが炎の中で手足を動かしている様子が撮影されていたようです。二人の黒焦げの遺体は、そのまま2時間も放置されていたという事です。
どうしてこんな事件が起きたのか?
もともと、誘拐事件や誘拐犯臓器売買の話は真実ではありません。この町の人は貧しく、生まれた土地を離れていく人も多かったようです。そんな毎日の中で、人々は不安や怒りを心の奥底に積み上げてしまい、暴発してしまったのかもしれませんね。心理状態が不安定な時には、判断能力も低下してしまうのでしょう。このような群集心理は革命や戦争の時にも、しばしば見受けられます。冷静さを失ったとき、人は何をするかわからない危うさがありますね。
2021年11月18日
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