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2020年04月09日
最近のプライム・ビデオ見散らかし【2020年3月〜4月】
photo:Vidmir Raic@Pixabay
ねらわれた学園(1981・日本)
とにかくヘン。ただただヘン。子どもの頃見てへんちくりんな映画だと思っていたがやっぱりヘンだった。序盤からツッコミどころ満載だが、終わり間際に怒涛の笑いどころがやってきた。飲み物を飲みながらの鑑賞には注意されたい。90分。
イヴ・サンローラン(2014・フランス)
伝記もの。フランスの伝説的ファッション・デザイナー、イヴ・サンローランの波乱の生涯を描く。「時代の寵児」ともてはやされた後は、酒、薬、男、とお決まりの転落コースですが、とにかくおしゃれです。本人激似の主演俳優に驚きました。105分。
金田一耕助の冒険(1979・日本)
何これ。金田一耕助が盗まれたお宝探しに奔走する話だが、終始どんちゃん騒ぎを見せられている感じで何がなんだかさっぱりわからない。カメオ出演している横溝正史がポツリとつぶやくセリフがこの映画のすべてを物語っていると思う笑。東千代之介とか、久々に懐かしの名俳優たちをたくさん見れたのはよかった。114分。
追憶の森(2016・アメリカ)
米俳優マシュー・マコノヒーと、いつのまにかすっかりハリウッド俳優(二時間ドラマで鍵師とかやってたころが懐かしい)な渡辺謙がW主演の、日本の青木ヶ原樹海を舞台にしたスピリチュアルなお話です。海外の映画祭では酷評だったらしいがなんでだろ?死生観とか宗教観とかの違いなのかしら・・・?110分。
アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男(2015・ドイツ)
史実もの。孤立無援。独りひたむきに巨悪と戦った男の記録。
どっかの国にも今すぐこんな人が現れてくれないかしら。105分。
感染列島(2009・日本)
海外由来の恐ろしいウイルス感染症が日本に蔓延する話。フィクションゆえに色々とツッコミたくなる部分もあるが、感染のメカニズムや、トリアージなるものがどのようにして行われるか(そしてそれはとても悲劇的)など、感染症に関するさまざまな基礎的知識がわかって勉強になった。
自己の戒めのために鑑賞。138分。
翔んで埼玉(2019・日本)
爆笑&拍手。パタリロみたいと思ったら、作者が一緒(魔夜峰央さん)だった。知らなかった。
伊勢谷友介演じる千葉代表、阿久津のお父さんのキャスティングに笑いました。随所に小技が光ります。
106分。
8時だヨ!全員集合(バラエティ)
1981年1月17日放送分。メインは教室コント。
少年少女合唱団は早口言葉で、後半コントは志村けん&桜田淳子の夫婦コント1本のみ。ゲストの歌はフィーバー(3人組グループ。キャンディーズの後釜的存在だったらしい)「デジタラブ」、桜田淳子「化粧」、太田裕美「さらばシベリア鉄道」、岩崎宏美「胸さわぎ」。折しも志村けん氏の突然の訃報が世間を駆け巡り、泣き笑いでの鑑賞となった。これまでたくさんの笑いを日本中のお茶の間に届けてくださったことに心から感謝したい。イラスト画像:by acworks-san@イラストAC
2020年03月14日
プライム・ビデオ見散らかし【お茶の間クラシック名画劇場】
photo:Rudy and Peter Skitterians@Pixabay
嘆きのテレーズ(1953・フランス)
Thérèse Raquin
マルセル・カルネ監督による傑作サスペンス。妻とその愛人による亭主殺しを描く。ふとしたはずみで不倫相手とともに夫を死に至らしめてしまった妻。自首しようとする愛人を思いとどまらせ、妻は隠蔽工作することを決意する。けして悪人とはいえない人々が引き起こす罪の物語。ラストにはとんでもない結末が待ち受けている。テンポ良く、物語に引き込まれる。102分
犯罪河岸(1949・フランス)
Quai des Orfevres
戦後まもないフランスのショービジネス界を舞台に繰り広げられるコメディタッチのサスペンス。ピアノ弾きのモーリスは、一躍劇場のスター歌手となった妻ジェニーのもとに下心丸出しの男たちが群がってくるのがいやでしかたない。そんな中、ジェニーが好色で知られる業界の大物と親密になった。ジェニーの浮気を疑ったモーリスは、二人の密会現場を取り押さえようと殺しも辞さない覚悟で相手の男の家へ乗り込むが・・・。サスペンスというより人間ドラマ。さりげなく同性間の恋愛要素なんかも盛り込んであったり、地味におもしろい。106分
三人の狙撃者(1954・アメリカ)
Suddenly
サドンリー(Suddely:突然)という名の平和な田舎町で”突然”巻き起こる大事件を描く。短いながらにスリルとサスペンスがギュッと凝縮されている感じでおもしろい。フランク・シナトラが憎たらしい敵役。72分
マルタの鷹(1941・アメリカ)
The Maltese Falcon
ダシール・ハメット原作。伝説の秘宝「マルタの鷹」をめぐる、欲に駆られた人間たちの醜いお宝争奪戦を描く。ハンフリー・ボガートが女好きでちょいワルの二枚目探偵役。個人的にはどうにもこうにもキザなおっさんにしか見えないのだけれど(ごめんなさい)。100分
見知らぬ乗客(1951・アメリカ)
Strangers on a Train
ヒッチコック監督のサスペンス。パトリシア・ハイスミス原作。列車でたまたま相席になっただけの見知らぬ男にどういうわけか執拗につきまとわれ、知らず知らずのうちに思わぬ犯罪に巻き込まれていく男性の恐怖を描く。主人公を追い詰めるストーカー男”ブルーノ”がとにかく不気味。100分
過去を逃れて(1947・アメリカ)
Out of the Past
美しい花には棘以上のものがあるお話。フィルムノワールの傑作だそうです。おもしろい。登場人物が美男美女ぞろいでそれだけでも見がいありました。96分
タグ:PrimeVideo
2020年02月29日
最近のプライム・ビデオ見散らかし【家事のついでのながら見編】
photo:Vidmir Raic@Pixabay
マスカレード・ホテル(2019・日本)
殺人事件を阻止するため、キムタク演じる刑事が一流ホテルでスタッフになりすまし潜入捜査。来る客来る客みんな怪しく見える。明石家さんまが友情出演しているらしいが気づかなかった。
スマホを落としただけなのに(2018・日本)
スマホをタクシーに置き忘れてそれはそれはもうとんでもないことになる話。最初のうちはドキドキハラハラしながら見ていたが、終盤に近づくにつれちょっと照れくさい展開。
天河伝説殺人事件(1990・日本)
探偵が金田一耕助から浅見光彦に変っただけで後は何もかもひところの角川の金田一シリーズにそっくりな映画。岸恵子さまが出てきた時点でもうだいたいの見当が・・・
もはや謎解き云々というより、ただひたすらに市川崑の世界を堪能する作品だと思った。
オルフェ(1950・フランス)
監督ジャン・コクトー、出演陣にはマリア・カザレス、ジュリエット・グレコなど、私にとっては歴史上の人物のような名前が次々並ぶ。動くジャン・マレーを初めて見た。死神の女性と人間の男性が不倫の恋に落ちるなんだか摩訶不思議な話。ギリシャ神話の「オルフェウスの竪琴」がモチーフになっているそう。
MAMA(2013・スペイン/カナダ)
ホラー映画。父親が起こした殺人事件に巻き込まれ、行方不明になっていた幼い姉妹が5年後、奇跡的に生きた状態で見つかるのだけれど・・・オオカミに育てられた少女の話を思い出した。子役の演技には舌を巻きました。
怒り(2016・日本)
サスペンス。実在の事件のことが思い出される。いい人だと思っていた人が実はとんでもなく悪い人だったり、はたまたその逆パターンだったり・・・。「人を見極める」「人を信じ切る」というのはやはりとても難しいことのようだ。役者陣は若手、ベテランとも演技派といわれる人が勢揃いし、見ごたえがある。坂本龍一による音楽も美しい。
MAGI 天正遣欧少年使節【ドラマ】(2019・日本)
史実もの。戦国時代にキリシタン大名の名代としてローマに派遣された少年使節団の物語。日本出発から苦難の末ローマにたどり着き、再び帰国の途につくまでを描く。全10話。1話30分ほどなので見やすい。プライムビデオでのみ見れるドラマらしい。脚本は鎌田敏夫氏。もはやこの手のドラマも地上波だけにこだわる時代ではなくなったのだなとしみじみ痛感。
8時だヨ!全員集合(バラエティ)
1979年3月3日放送分。志村けんと桜田淳子の名物夫婦コント「私ってダメな女ね」が見れる回。ゲストの歌は 桑江知子「私のハートはストップモーション」、桜田淳子「サンタモニカの風」、由紀さおり「愛を切り札にして」、小柳ルミ子「雨」。由紀さおりはバカ殿同様ここでも安定のオババ扱い。ルミ子も志村けんによるいつものバストいじりと、セクハラも何もあったもんじゃない自由な昔。おおらかな時代でした。イラスト画像:by acworks-san@イラストAC
タグ:PrimeVideo
2020年01月10日
ドラマ「ミス・マープル」/カリブ海の秘密(1989)
ミス・マープル カリブ海の秘密
A Caribbean Mystery
放送:1989年
主演:ジョーン・ヒクソン(ミス・マープル)
内容
病後の静養のため、甥っ子のすすめでカリブ海に浮かぶバルバドス島へとやってきたミス・マープル。美しい若夫婦が経営する海辺のホテルに一人で滞在することになったが、平穏すぎる毎日にすっかり退屈していた。
ある日彼女は、ホテルの滞在客の一人である退役軍人のパルグレイブ少佐から、妻殺しの疑いがあるという男の話を聞かされる。少佐の話によると、その男はこれまでに二度、自分の妻を自殺に見せかけて殺した可能性があるという。しかも少佐はその人物が写った写真を持っていると言い出し、財布から出してミス・マープルに見せようとした。しかしミス・マープルの肩越しに何かを見たとたん、あわてて写真を隠し話題を変えてしまう。結局ミス・マープルはその写真を見ることはできなかった。
そしてその翌朝事件は起きる。なんとパルグレイブ少佐が自室で亡くなっているのが発見されたのである。
主な登場人物
ミス・マープル
- 推理好きのスーパーおばあちゃん。一見編み物好きのごく普通のお年寄りだが、警察も一目置くほどの鋭い観察眼を持つ。
ホテルの関係者
ティム・ケンドル
- ミス・マープルが滞在するリゾートホテルの若きオーナー。
- ティムの妻。夫とともにホテル経営に携わっている。ブロンド髪の痩身の美女。
- 現地人のホテルの客室係。親切で頭が良い。退屈そうにしているミス・マープルを何かと気にかけてくれる。
ホテルの宿泊客
ジェイソン・ラフィール
- 車いすに乗った大金持ちの老人。気難しく毒舌家。仕事と休暇を兼ねて秘書らとともに島に滞在している。
- ラフィールの女性秘書。ラフィールに日々憎まれ口を叩かれながらも健気に職務をこなしている。ブロンド。
- ラフィールの使用人。いつも体を鍛えている。ひげマッチョ。
- 昆虫学者?グレッグ・ダイソンに雇われ蝶の研究をしている。物静かな男。
- エドワードの妻。浅黒の肌に黒い髪。知的で落ち着いた雰囲気。
- エドワードに資金を提供し蝶の研究をさせている男。アメリカ人?薄毛のふとっちょ。ふてぶてしい雰囲気。
- グレッグの妻。派手で妖艶。したたかな雰囲気。髪はブロンドだがヘアカラーか?
- 年老いた退役軍人。片目は義眼。無類のおしゃべり好きで常に話し相手を探しているが、話がおもしろくないので、皆に迷惑がられている。
その他
グレアム医師
- ホテルに出入りする親切な医師。
- 現地の有能な警察官。今回の事件の捜査にあたる。
- ホテルの客室係ヴィクトリアの伯母。姪から話を聞き、ホテルで退屈しているミス・マープルを自宅に招いた。
- 現地の行政官。
- グレッグの先妻。病気で亡くなっている。
ひとくち感想
どの登場人物にも疑いの目がいく、なかなか飽きのこないつくりになってます。いかんせん、人間関係の細かいところなど、字幕だけではなかなか読み取れないところもあったので、こんど原作を読んでみてからもういちど見てみようと思います。
細かいあらすじ
ここからはネタバレ&長文です
事件のまとめ
一連の犯行はすべてティムによるもの。
少佐は過去に事故で片目をつぶし、左目が義眼だった。少佐が例の写真をあわてて隠した時、ミス・マープルは、少佐が自分の右肩越しに何かを見ているものとばかり思っていたが、よくよく考えるとそちらは失明した義眼の方の目。見える方の目は実は全く違う方向を見ていて、その方向にいたのがテラスでモリーとともに帳簿付けをしていたティムだった。ミス・マープルは少佐が義眼だったことをラッキーの遺体の目を見て思い出した。
ティムは結婚相手を次々自殺に見せかけて殺す「妻殺し」の常習犯。いつもの与太話だと誰も真剣に取り合わなかったが、パルグレイブ少佐の話していたことは本当だったのだ。少佐はティムの正体に気づいてしまったために殺された。
今回の犯行の動機はラフィールの遺産。ティムは近い将来、秘書のエスターにラフィールの莫大な遺産の一部が転がり込むことを知り、次の妻にしようといち早く彼女をたぶらかし愛人にした。用済みになったモリーは、いずれ自殺か事故に見せかけて殺すつもりで日々薬漬けにし、神経症が疑われる状態にした。本人にも自分は病気なのだと思わせるため、部屋にわざと心の病気に関する本を置き、暗示をかけた。
ヴィクトリアには少佐の部屋に入っていくところを見られてしまったため、口封じのために殺した。
ラッキーは「人違い殺人」。ティムはモリーを溺死に見せかけて殺すつもりで、彼女を夜の海で泳ごうと沖合に浮かぶいかだに誘い出した。しかしそのいかだがラッキーとエドワードの夜ごとの密会場所になっていることをティムは知らなかった。不運なことにラッキーはモリーと同じ水着を着ていた。髪の色もブロンドで似ている。それでモリーと間違えられティムに殺されてしまったのだ。モリーがいかだに泳ぎ着いたのはラッキーが殺された後だった。
セント・メアリー・ミードの自宅に戻ったミス・マープルは、雨に濡れそぼつ庭を見てひとこと。「ここがいちばん!」
おしまい
- 自室で死亡していたパルグレイブ少佐は、元々高血圧だったことや、前の晩に大量の飲酒をしていたことなどから、病気による自然死と判断される。身寄りのない少佐は現地で埋葬されることになった。
- 少佐の部屋を片づけていた部屋係のヴィクトリアが、浴室の棚に少佐が亡くなる前にはなかったはずの薬の瓶が置かれているのに気づく。
- 前日の元気な様子から、少佐が病死したとはどうしても思えないミス・マープル。写真のことも気かがりだった。そこで一計を案じたミス・マープルは、少佐の遺体確認をしたグレアム医師に「昨日少佐に自分が見せていた写真を間違って持ち帰られてしまった」とうそをつき、病院にあるという少佐の遺品から写真を持ってきてもらうことにした。
- ミス・マープルが島郊外の村にあるヴィクトリアの伯母・ジョンソンおばさんの家に招待された。ホテルで寂しそうにしている彼女を気にかけ、ヴィクトリアがお膳立てしてくれたのだ。彼女はそこで思いがけなくホテルの経営者であるケンドル夫妻の妻・モリーの来歴を知る。 ジョンソンおばさんの話によると、モリーはこの島にも広大な農園を持つイギリスの大富豪の娘。実はモリーには好きな人がいたが、その男性との交際を家族に猛反対されていた。そこに今の夫であるティムが現れ「前の男よりはまし」という理由で結婚を許されることになったのだという。
- ヴィクトリアが少佐の部屋にあるはずのない薬があったことをモリーに報告する。記憶力に優れている彼女は、少佐の部屋にどんな私物があるかをすべて覚えていたのだ。彼女はその薬が少佐の死と何か関係があるように思っているようだった。ティムとモリーは、ミス・マープルと私的な交流を持ったことも含め、好奇心が強く、気も利きすぎてときに職務以上のことをしてしまうヴィクトリアのことを不安視する。ヴィクトリアに薬のことを口外されてはたまらないと、ティムは薬の一件をグレアム医師に相談することにした。
- グレアム医師から写真はなかったと報告をうけたミス・マープルは、実はこないだの自分の話はうそだったと白状したうえで、少佐が亡くなる前に自分に殺人犯の写った写真を見せようとしたこと、しかしその寸前で誰かの姿に気づき、あわてて写真を隠してしまったことをグレアム医師に話した。「最初は半信半疑だった。でもその晩少佐が亡くなり、そして写真までもが消えてしまった」と・・・。不審な薬のこともあり、自身も少佐の死に事件性を感じ始めていたグレアム医師は、ミス・マープルの話を受けてますますその疑いを深め、官邸に顔見知りの行政官ネイピアを訪ね、無理を承知で少佐の墓地の掘り返し許可を願い出る。最初こそ手続きが面倒だと渋るネイピアだったが、最終的には警察に通報。死因再調査のため少佐の遺体は掘り返されることになった。(ウェストン警部の登場)
- 日常的な仕事のストレスに加え、少佐の死以来ますます気が休まらない様子のモリー。彼女はこのところ自分の身に起きる数々の不調を自覚し人知れず悩んでいた。特に健忘症のような症状が日に日に酷くなっていた。モリーは心配して声をかけてくれたヒリンドン夫妻の妻・イーブリンにその苦悩を打ち明ける。
- ヴィクトリアがダイソン夫妻の夫・グレッグのもとに薬の瓶を持ってやってきた。薬はグレッグのものだったのだ。ヴィクトリアは「この薬はある人がある男性の部屋に置いた薬です。そしてその男性は亡くなった。きっとお墓の中で悔しがっているでしょう」と意味深な言葉を残して去っていく。そしてその夜、ヴィクトリアは庭で刺殺体となって発見された。第一発見者は夕食後散歩に出ていたモリーだった。ヴィクトリアの遺体の傍らで血まみれのナイフを手に取り乱すモリー。
- ヴィクトリア殺害をうけ、警察はホテルに取り調べ室を設置。ウェストン警部が本格的捜査に乗り出した。ウェストン警部はまずモリーから事情を聴こうとしたが、モリーは鎮静剤を打たれて眠っており、聴取は翌朝に持ち越された。一方、宿泊客の間でも新たな動きがあった。これまでミス・マープルに対して洟もひっかけないような態度をとっていた大富豪のラフィールが、事件のことについて語り合いたいと彼女に歩み寄ってきたのだ。なんでもミス・パープルが当初からパルグレイブ少佐の死に他殺の疑いを持っていたことをどこかで聞きつけてきたらしく、思いのほかの切れ者だと彼女に興味を持ったらしい。
- 翌朝、ミス・マープルはラフィールの部屋に招かれ、お互いの推理を語り合った。二人は少佐の死と今回のヴィクトリアの事件は何らかの関連があるという点では意見が一致していたが、肝心の犯人像というところでは意見が食い違った。ミス・マープルは「誰も少佐の話を信じようとしなかったが、彼が言っていたとおり、このホテルには本当に『妻殺し』がいるのかもしれない」と考えていた。しかし、ラフィールは妻殺しなど突拍子もない話だと信じようとしない。いずれにしても、犯人の真の目的はまだ果たされておらず、このままでは第三の殺人が起きる可能性があると危惧するミス・マープルは、それを阻止するためにも、非力な年寄りの自分に代わって、社会的信用のあるラフィールから、自分の推理を警察に伝えてもらえないだろうかと頼む。しかしミス・マープルの推理にどうにも納得がいかない様子のラフィールに協力を断られてしまう。がっかりして部屋を出ていくミス・マープル。
- ホテルではウェストン警部による宿泊客の取り調べが進んでいた。警部は、少佐の部屋に置かれていた薬がグレッグのものだったことから、まず彼を聴取。しかしグレッグは事件への関与を否定する。
薬のこと以外にもウェストン警部は、グレッグと少佐は過去にも接点があった可能性があると考えていた。まだ現役の軍人だったパルグレイブ少佐がセント・キッツという島で植民地警察の任務に就いていた頃、時を同じくしてグレッグもまたヒリンドン夫妻らとともに蝶の調査のため同地に滞在していたからである。さらにウェストン警部は、グレッグに死別した妻がいたこともつきとめていた。
そこで警部は、当時の状況にくわしそうなエドワードを尋問。セント・キッツにグレッグの妻として同行したのは先妻のメアリーだったこと。しかしメアリーは当時がんに侵されていて、セント・キッツに行った頃にはすでに余命幾ばくもない状況だったこと。そのメアリーを現地で看病していたのが今の妻ラッキーだったこと。そしてグレッグとラッキーは、メアリーの死後、数ヶ月足らずで結婚していることを聞きだした。
- グレアム医師立ち会いのもと、モリーの聴取が行われた。しかしモリーはヴィクトリアを抱き起してナイフを抜き取ったこと以外ほとんど何も覚えていなかった。モリーは聴取のプレッシャーに耐え切れず、再び情緒不安定に陥った。
- ヴィクトリアとパルグレイブ少佐の遺体解剖の結果が出た。 ヴィクトリアは切れ味のにぶい刃物で胸部を二度刺されて殺されていた。女性でも若くて体力があれば殺害は可能だという。少佐の死因はやはり毒殺だったが、自然死と判断を見誤られてもしかたがないほど功名な手口で殺されていた。
- ウェストン警部は、グレッグとラッキーが共謀して先妻のメアリーを病死に見せかけて殺したのではないか?そしてその証拠をパルグレイブ少佐に握られていたのではないか?と疑い、取り調べの席でその疑惑を直球でラッキーにぶつける。が、一筋縄ではいかないラッキーにのらりくらりと詰問をかわされる。しかしラッキーは明言こそ避けたものの「苦しむ姿を見ていられなかった」「自分のしたことを恥じてはいない」と、メアリーに大量のモルヒネを投与したことは否定しなかった。(未必の故意?)
- ラッキーがエドワードのもとに乗りこみ、警察にメアリーの話をしたことを激しく責めたてた。実は二人はもう長いこと不倫の関係にあり、この旅行中も人目を忍んで何度も密会を重ねていた。イーブリンも二人の関係を知っており、そのせいでエドワードとの夫婦仲はもうだいぶ前から破綻していたのだった。「あなたのせいで人殺し呼ばわりされた」と憤るラッキーに対し、「でも結局は殺した。僕まで巻き込んで。妻とも仲違いさせられて」と、静かに恨み節をぶつけるエドワード。(どうやらメアリーの死の真相を知っているようだが、詳しくは語られない)しかし二人はもはや切るに切れない奇妙な絆のようなもので繋がっていて、この先も今の関係を断ち切るつもりはないようだった。
- ラフィールがウェストン警部のもとを訪ねた。あれからミス・マープルの言っていたことはやはり正しいと考え直し、彼女の推理を警察に伝えにきたのだ。ウェストン警部はラフィールの口から「ミス・マープル」の名前を聞くと、驚きで目を輝かせた。いくつもの難事件を解決している凄腕の人格分析者として、警察学校時代の講義でも話題にのぼらない日はなかったほどの有名人だという。ラフィールはすっかり驚いてしまう。
- ミス・マープルがヴィクトリアのお葬式に参列した。ヴィクトリアには幼い娘がいた。内縁の夫との間に生まれた子どもだという。ヴィクトリアが母親だったという事実を知り、悲しみを新たにするミス・マープル。
ヴィクトリアの埋葬を見届け、墓地から帰ろうとするミス・マープルを、ラフィールから話を聞いたウェストン警部が迎えに来ていた。(ミス・マープルとウェストン警部の初対面)
ヴィクトリアは鞭を手に持たされて埋葬された。ウェストン警部によると、これは現地の風習で、通夜がとり行われる9日目の晩に、死者が恨みを晴らせるようにとの意味が込められているという。「復讐の夜です」とウェストン警部は言った。
- モリーが大量の睡眠薬を摂取する事故を起こしたが、幸い一命はとりとめた。グレアム医師はモリーが妄想神経症の初期段階にある可能性を示唆する。しかし、何か思うところがあるのか「ティムは反対するだろうが、彼女の場合はその原因をよく調べてみる必要がある」と慎重な姿勢を見せた。モリーに付き添うことになったミス・マープルは、彼女の部屋で心の病気に関する本を見つけた。
- モリーに付き添ううちについうとうとしてしまったミス・マープルは、人の気配を感じてハッと目を覚ました。窓の外に目をやると、ジャクソンが早足で立ち去っていくのが見えた。ジャクソンは二人が眠っているうちに、こっそりモリーの部屋に忍び込み、浴室にある薬品を物色するという謎の行動をとっていた。
- 事件のことで何か思うところがあるらしいミス・マープルは、「個人的なことで恐縮だが」と断ったうえで、ラフィールに、死後、エスターとジャクソンへの財産分与をどのように考えているかをたずねた。彼は二人の給与に関することは日頃から手厚い待遇をしてやらねばならないと考えているようだったが、遺産を分け与える考えは持っていないようだった。それより彼らは高給取りなので、私が長生きした方が二人にとっては得だろうとラフィールは言った。
- 「9日目」の夜が来た。ミス・マープルはイギリスへの帰りを明日に控え、モリーは何事もなかったように仕事に復帰していた。ラッキーは相変わらず自由奔放に振舞い、グレッグは昼間に妻の浮気現場を目の当たりにしてしまったことがよほどこたえたのかあまり元気がない。子どものためを思って長いこと仮面夫婦を続けてきたエドワードとイーブリンは、いよいよ離婚に向けての話を本格化させていた。
- 夕食後、部屋に戻っていたミス・マープルのところへジャクソンがラフィールからの伝言を携えてやってきた。モリーが行方不明になり、皆が探しているという。しかしジャクソンはそれより大事な話があると言って、昼間、ラフィールがしていた遺産の話はうそだと言い出した。二人の会話を盗み聞きしていたという。ジャクソンは「ラフィールはエスターに遺産として5万5000ポンド渡すつもりでいる。この目で遺言書を確かめたので間違いない」と言った。そしてそのことはエスターにも話してあると言った。ミス・マープルは「なぜラフィールは私にうそをついたのだろう」と訝しがる。(→この遺産のくだりは続編につながる伏線のようです)
- なおも強気な態度で今度は「モリーに何か起こると思うか?」と迫ってくるジャクソン。しかし一枚上手のミス・マープルに「あなたこそどう思うの?モリーの浴室を探っていたでしょう?」とあっさり切り返される。不意をつかれた格好のジャクソンはさすがに観念した様子で「彼女は薬物中毒です」と言った。実は薬に精通しているジャクソンは、前々からモリーの異変に気づいており、それが薬物によるものではないかとひそかに探りを入れていたのだった。
時を同じくしてホテル前のビーチでは再び騒動が起こっていた。ラッキーが溺死体となって発見されたのだ。生気が消え今やただのガラス玉のようになってしまったラッキーの遺体の目を見てハッと何かに気づくミス・マープル。
- 「急がなければまた事件が起きる!」ミス・マープルは殺人を防ぐため、急ぎラフィールに助力を仰いで屈強なジャクソンを助っ人に借り出し、二人で事件が起きるだろう場所へと急行した。決定的瞬間を待つ間「実は遺産の話をエスター以外の人にも話してしまった」とおもむろに打ち明けるジャクソン。「そんなことだろうと思った」とすべてお見通しな様子のミス・マープル。
- 一方、行方不明になっていたというモリーはふらふらと水着姿で自室に戻ってきた。ティムと真夜中の海で泳ぐ約束だったが、すっぽかされて一人で泳いできたらしい。ティムは部屋におり、約束を破ってしまったことをモリーに謝った。モリーは遊泳中にラッキーの死体を見てしまったらしい。怯え泣くモリーを落ち着かせようとティムが飲み物を運んできたところに、物陰に隠れていたジャクソンが勢いよく飛びかかった。飲み物はおそらく毒物。犯人はティムだったのだ。しかしもう一人意外な人物がそこに現れる。ラフィールの秘書エスターだった。「この人はそんな人じゃない」と必死にティムをかばうエスター。彼女はいつのまにかティムの愛人になっていた。
警察隊に取り押さえられたティムにジョンソンおばさんが叫ぶ。(いつのまにか登場)
「ヴィクトリアが復讐に来たのよ!」かくして9日目の夜に復讐は果たされたのだった。
事件のまとめ
一連の犯行はすべてティムによるもの。
少佐は過去に事故で片目をつぶし、左目が義眼だった。少佐が例の写真をあわてて隠した時、ミス・マープルは、少佐が自分の右肩越しに何かを見ているものとばかり思っていたが、よくよく考えるとそちらは失明した義眼の方の目。見える方の目は実は全く違う方向を見ていて、その方向にいたのがテラスでモリーとともに帳簿付けをしていたティムだった。ミス・マープルは少佐が義眼だったことをラッキーの遺体の目を見て思い出した。
ティムは結婚相手を次々自殺に見せかけて殺す「妻殺し」の常習犯。いつもの与太話だと誰も真剣に取り合わなかったが、パルグレイブ少佐の話していたことは本当だったのだ。少佐はティムの正体に気づいてしまったために殺された。
今回の犯行の動機はラフィールの遺産。ティムは近い将来、秘書のエスターにラフィールの莫大な遺産の一部が転がり込むことを知り、次の妻にしようといち早く彼女をたぶらかし愛人にした。用済みになったモリーは、いずれ自殺か事故に見せかけて殺すつもりで日々薬漬けにし、神経症が疑われる状態にした。本人にも自分は病気なのだと思わせるため、部屋にわざと心の病気に関する本を置き、暗示をかけた。
ヴィクトリアには少佐の部屋に入っていくところを見られてしまったため、口封じのために殺した。
ラッキーは「人違い殺人」。ティムはモリーを溺死に見せかけて殺すつもりで、彼女を夜の海で泳ごうと沖合に浮かぶいかだに誘い出した。しかしそのいかだがラッキーとエドワードの夜ごとの密会場所になっていることをティムは知らなかった。不運なことにラッキーはモリーと同じ水着を着ていた。髪の色もブロンドで似ている。それでモリーと間違えられティムに殺されてしまったのだ。モリーがいかだに泳ぎ着いたのはラッキーが殺された後だった。
セント・メアリー・ミードの自宅に戻ったミス・マープルは、雨に濡れそぼつ庭を見てひとこと。「ここがいちばん!」
おしまい
タグ:Prime Video
2019年12月13日
最近のプライム・ビデオ見散らかし(2019年12月)
三度目の殺人(2017)
しまった。難しかった。気を抜いて"ながら見"してしまったことを後悔。単なる「真犯人は誰だ?」的な話ではなく、なんとなく原罪とか贖罪とかそういうキリスト教的観念が漂っている感じのお話だった。終盤の役所広司の姿もどことなく十字架にかけられる前のキリストのよう。時間と気持ちに余裕があったらもういちど見てみよう。
日本で一番悪い奴ら(2016)
実話を基にしたお話。警察組織の腐敗を描く。タバコの一本も上手く吸えないほどバカ真面目で純朴だった新米警官が、先輩刑事にそそのかされたのをきっかけに悪徳警官となり、次々汚職に手を染め、ついには薬物中毒者に成り果てるまでに身を持ち崩してゆく。過激なシーンが多くてどっと疲れたが、面白い映画だった。
娼年(2018)
いやはやこれは・・・
久々にとんでもないものを見てしまった気分。
タイトルがタイトルだし話題にもなっていたのでなんとなく察しはついていたが、正直ここまでとは思わなかった。役者陣の捨て身の演技はすごかった。
愛の化石(1970)
石原プロモーション製作。ファッション業界とその周辺を背景にさまざまな人間模様が描かれる。ストーリーはかなり地味だが、鑑賞後にはなにか不思議な余韻が残る。パリ帰りのテキスタイルデザイナーを演じる主演の浅丘ルリ子がバタ臭くてとにかく美しかった。これはもうルリルリを見るためだけにある映画といっていいと思う(たぶん)。
郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942)
犯罪映画。子供の頃からタイトルだけは知っていたが見たのはこれが初めて。てっきり人妻が郵便屋さんと不倫して悪さをする話だと思いこんでいたが、全然違った。不倫相手は流れ者のプーだった郵便配達人なんかどこにも出てこない。タイトルはことわざ的意味合いを含んだもので、物語と直結しているわけじゃなかったのネ・・・。これまでに何度も映画化されてるとのことだが、今回見たのは1942年のイタリア映画版。巨匠ヴィスコンティ監督のデビュー作とのこと。
郵便配達は二度ベルを鳴らす(字幕版)
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サイコ2(1983)
前作「サイコ」(1960)の続き。モーテル殺人事件から22年。犯人のノーマン・ベイツが社会復帰を許されるところから物語が始まる。名作も2作目、3作目ともなれば得てしてつまらなくなることも多いが、この「サイコ2」はなかなか面白いと思った。ノーマン・ベイツ演じるアンソニー・パーキンスが相変わらず不気味でいい味出していた。
サイコ2 (字幕版)
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8時だヨ!全員集合(バラエティ)
懐かしすぎる。まさかアマゾン・プライムで全員集合が見れるとは(感涙)今回見たのは1980年1月の放送分。メインのコントは教室もの。途中「少年少女合唱隊」をはさんで、後半にショートコント2本。うち1本はひげダンスだった。おたのしみのゲストの歌は 新沼謙治「木枯の詩」、アン・ルイス「恋のブギウギ・トレイン」、森昌子「ためいき橋」、由紀さおり「たそがれタペストリー」。アン・ルイスは歌にコントにと大活躍の回でした。イラスト画像:by acworks-san@イラストAC
タグ:Prime Video
2019年11月01日
2019年10月のプライム・ビデオ見散らかし
誰も知らない
前々から見たいと思っていた作品。気づいたらAmazon プライムの会員特典Prime Videoに追加されていたので、この機会を逃さぬうちにとさっそく。
その昔実際に起きた子供置き去り事件を題材にしたお話。主役の男の子(柳楽優弥)がカンヌ映画祭の最優秀主演男優賞をとったことで一躍話題になった。よくよく考えたら(そもそも考えるまでもないのだけど)とんでもない出来事を描いてるのだが、そんなことを忘れてしまうぐらいに妙に自然でリアリティがあって、日常に起こるすべてのことが淡々と進んでいく感じはどこかフランス映画のタッチに似ている。カンヌ映画祭の審査員はいつもほとんどが欧米系の人たちだけれど、なるほど彼らの好みに合ってたのかもしれない。
さて、この映画で育児放棄する母親を演じているのがタレントのYOU。あなたをおいて他に誰がありましょうというぐらいの圧巻のはまり役。無戸籍で小学校にも通わせてもらえず「早く学校に行きたい」とせがむ息子に「学校なんか行かなくたってエラくなれる。田中角栄もアントニオ猪木も行ってないし。たぶん」みたいなことを言ってむりやり息子を諭すシーンではたまらず笑ってしまった。ほんとにそんなこと平気で言いそうだ。
気になって実際の事件のことをちょっと調べてみた。亡くなった子供もいるというのに事件を起こした母親は驚くほどの軽い量刑ですんでいる。およそ30年程前に起きた事件らしいが、昨今も痛ましい児童虐待事件は起き続けている。しかもその刑罰は今もってなお驚くほど軽い。我が国はこの方面ではまだまだどうしようもなく後進国なのだとしみじみ感じた。
そして誰もいなくなった
1945年のアメリカ映画。モノクロ。原作はアガサ・クリスティーの同名小説。絶海の孤島を舞台に「十人のインディアン」という不気味な童謡の歌詞になぞらえて次々人が殺されていく。原作とはちょっと異なる展開。どうやらこの作品は小説の他にクリスティ女史自身が書いた戯曲版もあるらしくて、この映画はそっちの方がベースになっているらしい。「密室状態の孤島で起こる連続殺人」というそら恐ろしいテーマのわりには、コメディタッチに話が進んでいくので怖くない。それにしても1945年といえば終戦の年。日本は焼け野原状態で大変な状況だったろうときに、アメリカは戦争してる間も変わらずこんな娯楽映画をばんばん作っていたことに驚いた。国力の差を見せつけられた感じでため息。
22年目の告白−私が殺人犯です
時効を迎えた連続殺人事件をめぐる話。残念ながらキャストの顔ぶれを見た段階でだいたい真犯人の見当がついてしまう。序盤の方こそ「えっ??」という雰囲気で話が進んでいくが、途中、半分ネタばらし的な展開をむかえたところで「ほらもうやっぱあんたしかおらんやん」という感じになる。まあでもなんだかんだで飽きることなく最後まで見通した。なんとなく昔見た松田優作の「野獣死すべし」を思い起こさせる映画だった。
きのう何食べた?
これも見たい見たいと思いながら、リアルタイムではいつも見逃しているうちに気がついたら終わってしまっていたドラマ。ありがたいことに早くもプライムビデオにラインナップされていた。
男性同士のカップルの日常をほんわか描く。主人公のゲイカップルを西島秀俊と内野聖陽が演じている。内野聖陽はつねづね私の中で、男性フェロモンが服着て歩いている人というイメージだったが、このドラマではみごとおちゃめなゲイの男性になりきっている。俳優さんというのはやっぱりすごいんだなと思った。
毎回登場する西島秀俊が作る料理が楽しみ。家庭の台所を預かる身としてはレシピがとても参考になる。「鮭の炊き込みご飯」「小松菜と厚揚げの煮びたし」「手羽先の水炊き鍋」等々、このドラマで見た料理がおかげさまですでに数品我が家の食卓にもあがった。
田中美佐子や山本耕史、梶芽衣子、志賀廣太郎など、脇を固める役者さんたちも皆いい味出しててとってもいい。
あんまり面白くて思わず6話まで一気見。時間を見つけて早く続きも見なくっちゃ。
タグ:Prime Video
2019年09月28日
わたしのトラウマ映画館(洋画編)
photo by Felix Mooneeram@unsplash
ごくごく個人的なトラウマ映画の記憶と記録。順不同。思いつくまま見たままに。
洋画編です。(最終更新日:2020年8月18日)
※U-NEXTについて
本ページの情報は2020年8月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
家
BURNT OFFERINGS
公開年:1976年
製作国:アメリカ
人間の生気を糧に何百年もの間”生きながらえる”豪邸のお話。原題は「生贄」の意らしい。直接的な恐怖描写は少ないがとにかく不気味で恐ろしい。
オーメン
The Omen
公開年:1976年
製作国:アメリカ
悪魔の子・ダミアンをめぐる物語。ナゾの黒犬、不気味なベビーシッター、避雷針串刺しにまさかの首チョンパとまさに恐怖のつるべ打ち状態。クラシックホラーの傑作。
オーメン2/ダミアン
Damien: Omen II
公開年:1978年
製作国:アメリカ
凍った湖でアイスホッケーしてはいけません(震)
コックと泥棒、その妻と愛人
The Cook, the Thief, His Wife & Her Lover
公開年:1989年
製作国:イギリス・フランス
浮気がばれ、夫に愛人を殺されてしまった妻が夫に衝撃のリベンジ。一気に食欲なくなりました。
ポゼッション
Possession
公開年:1981年
製作国:フランス・西ドイツ
イザベル・アジャーニ主演。夫の単身赴任中に妻がとんでもないことをしでかす。
物語が難解過ぎて何が何だかよくわからない。
ハンニバル
Hannibal
公開年:2001年
製作国:アメリカ
ディナーのシーン。タラの白子かと(泣)
ローズ家の戦争
The War of The Roses
公開年:1989年
製作国:アメリカ
壮絶な夫婦ゲンカの顛末を描くブラックコメディ。
思いのほか激しすぎました。
ドライ・クリーニング
Nettoyage a Sec
公開年:1997年
製作国:フランス・スペイン
不気味なテイストのラブストーリー。田舎でクリーニング屋を営む地味な中年夫婦が、二人そろって妖しい美青年に魅了され禁断の三角関係に陥っていく。とにかくしんどい。
ルームメイト
Single White Female
公開年:1992年
製作国:アメリカ
王道系のサイコ・スリラー。ブリジット・フォンダ演じる主人公が、気まぐれに募集したルームメイトの女性に恐怖のどん底に陥れられる。ルームメイト役の女優の怪演ぶりが見もの。
サイコ
Psycho
公開年:1960年
製作国:アメリカ
ヒッチコックの名作。入浴中の殺人シーンが大の苦手です。昔はサスペンスドラマなどでもよくあってものすごく嫌でした。モノクロなのがせめてもの救いです。
汚れなき悪戯
Marcelino Pan y Vino
公開年:1955年
製作国:スペイン
高校生の頃、学校の授業(芸術鑑賞)で鑑賞。
ラストひじょうに複雑な思いに駆られる。
ジョーズ
Jaws
公開年:1975年
製作国:アメリカ
パニックムービーの金字塔。
狡猾巨大人喰いザメの恐怖(泣)
冬の旅
Sans toit ni loi(Vagabond)
公開年:1985年
製作国:フランス
初見時の邦題は「冬の旅」。その後一時「さすらう女」というタイトルに変更されていたこともあったが元に戻ったみたい。冬の田舎道で凍死していた身元不明の少女の生前の足跡をたどっていく物語。主人公の女浮浪者を演じるサンドリーヌ・ボネールのみごとな汚れっぷりに舌を巻きます。スクリーンを突き抜けて臭気が漂ってくるようです。ワインの澱を投げ合うへんてこな祭りのシーンが不気味です。
ゆりかごを揺らす手
The Hand That Rocks the Cradle
公開年:1992年
製作国:アメリカ
逆恨みリベンジものの良作。患者にセクハラ行為をはたらいていた医師が被害者に訴えられ自殺。夫の死で何もかも失ってしまった医師の妻は復讐を決意し、夫を訴えた夫婦一家のもとへ乳母として潜り込む。主役のレベッカ・デ・モーネイ の悪女ぶりが見もの。
ミザリー
Misery
公開年:1990年
製作国:アメリカ
キャシー・ベイツがほんとうに怖かった。
痛い、足が。
ザ・ファン
The Fan
公開年:1996年
製作国:アメリカ
異常なファン心理とその常軌を逸した行動を描くサスペンスの佳作。ロバート・デ・ニーロがとにかく不気味。刃物メーカーの社員という設定がこれまた。
2019年04月30日
去りゆく時代
私は突然頭にいろんなことが浮かぶタチで、唐突なタイミングでそれとはなんの脈絡もないことをふと思い浮かべてしまうのでときおり周りに不気味がられるのだが、こないだもふとしたタイミングで、まだ少年だった頃の水谷豊が出ていたオオカミ男のドラマのことを思い出した。モノクロの古いドラマだ。そのドラマで水谷豊は月を見ると突如苦しみだしてオオカミに変身するのだが、そのシーンが陰鬱な白黒の映像のせいもあってか子どもの目には少しおそろしかった。
といっても私はそのドラマをリアルタイムで見ていたわけではない。ドラマの名場面ばかりを集めたような番組で見たことがあって覚えているのだ。私が子どもだった頃は「テレビ探偵団」だとか、懐かしいTV映像を振り返るような番組がけっこう頻繁に放送されていた(ような気がする)。ドラマの名シーンといえば他にもいろいろあって、例えば有名なところでは「近藤正臣の足ピアノ(柔道一直線)」や、「突然病院の廊下でバレエを踊り出す宇津井健(赤い激突)」などがあったが、いずれもそもそも生まれていないか、幼すぎたかでリアルタイムでは全く見た憶えがない。ほとんどが後々になってから昔の映像を振り返るような番組を見て知ったものばかりだった。
しかしいつのころからか懐かしい映像をテレビで見かけることは少なくなった。とくに昭和のドラマに気軽に触れられる機会は激減した。今、地上波のテレビでは、昭和のドラマの再放送はおろか名場面集的なものもめったに目にすることがない。近藤正臣の華麗なる足ピアノも、病院の廊下で踊り狂う宇津井健もかつては事あるごとにばんばん放送されていた気がするのにいつしか全く見かけなくなった。これはどうしたことか。昔のドラマが再放送されなくなったのは、ひとつには肖像権や著作権といった権利的な問題があるらしいが、やはり最大の原因は、放送コードがどんどん厳しくなって今では放送できないものが多くなってしまったというところにあるらしい。残念だ。私はただ、口からぶわーっと白い霧を吐く松坂慶子(@ウルトラセブン)がもいちど見たいだけなのに。と思ったらあったわ。動画配信サービスに。まあでもちょっとしたノスタルジーに浸るにも、逐一お金が必要な時代になってしまった。
ウルトラセブン 第31話 悪魔の住む花
ドラマは世相を映す。昭和という時代は子どもの目線でもそれとわかるほどエネルギッシュで猥雑で、ドラマも有機臭がぷんぷん漂ってくるようなものが多かった。平成になると雑多のものはどんどん整頓されてスタイリッシュになっていき、くわえてインターネットの普及で世の中は格段に便利になったけれど、その一方で社会の目がどんどん厳しくなって、なんとなく窮屈な世の中になった。そんな空気を受けてドラマもすっかりおとなしく品行方正な優等生のようになってしまった印象だ。過激な暴力もおっぱいもなくなって家族の前で心置きなく鑑賞できるようになったのはありがたいけれど。さて、令和はどんな時代になりますやら。
もうまもなく平成が幕を閉じる。過ぎてみれば30年なんて意外とあっという間なものだ。
2018年06月16日
「バチェラー」を見てみた
最近TVのCMでよく見かける「バチェラー・ジャパン」という番組を見てみた。
Amazonプライムビデオのみで見れる番組なのらしい。
知らなかったがこの「バチェラー」という番組は、元々、アメリカで人気のある恋愛リアリティー番組らしく、「バチェラー・ジャパン」はその正式日本版ということのようだ。おそらく「あいのり」とか「テラスハウス」だとかあの手の番組なのだろうと思い、個人的な好悪の都合でなんの気なしにスルーしていたのだが、身近なところから「面白いらしい」という声が聞こえてきたので、話のタネにと見てみることにした。
最近CMで流れているのは、最新作の「シーズン2」らしいのだが、せっかくなので未見の「シーズン1」から見ることに。
バチェラー・ジャパン シーズン1@Amazon
バラの花をかかげて微笑む男性。
どうやらこの男性の花嫁候補の座をかけ、総勢25人の女性が火花を散らし合うという、恋愛生き残りゲーム的な内容のようだ。見る前からもうきな臭い。
さて、怖いものみたさで見始めてはみたが・・・
男性が待ち受けるパーティー会場へ女性参加者たちが次々とリムジンで乗りつける序盤のシーンだけで早くも胃もたれ状態に。もう品位だとか節度とかいうことはとりあえずどこかに捨ておいてきてしまったようなあまりにアグレッシブな女性たちにすっかり閉口してしまい、早くも視聴リタイアの予感がよぎる。
しかし、職業=愛犬家(職業なのか?)、「初めまして〇〇と申します」と自己紹介する男性に対し「ご存知です!」とナゾの返しをする女性、こんな肝心なときにどうも歯が抜けたまま来てしまったっぽい今風ギャルなど、少なくとも3分に1回は不覚にも吹きだしてしまうシーンがあり、これはひょっとしたら壮大なコント番組なのかもしれないと思い、気を取り直して見続けてみることにした。
出鼻からアクセル全開の女性たちだが、その争奪戦のターゲットになる”初代バチェラー”というのが35歳の青年実業家の男性。顔よし、頭よし、運動神経よし、の3拍子そろったもうまるでマンガみたいな好男子である。
男性に一人ずつ、ときにはボディタッチも辞さない熱烈な自己アピールを終えた女性たちは、次にカクテルパーティー形式のフリートークへと臨む。最初は女性たちの輪に入って談笑している男性だが、そのうち気になる女性に声をかけ、二人きりの時間をつくりはじめる。このときお声のかからなかった他の女性たちのリアクションが怖ろしい。自分以外はみな敵。青い炎の燃やし合いだ。中には二人でいい雰囲気でいるところに「そうはさせまい」とあえて邪魔立てに入る斬り込み隊長のような御仁もいる。やはり人間、おとなしく待っているだけでは幸せはつかめないようだ。
初回ではまず候補を20人にしぼるようで、気の毒にも5人の女性が男性のおめがねにかなわず脱落していった。中には去り際に「見る目ありませんね」などと捨てゼリフを残していく者もいる。正直、男性の女性に対する選考基準がどういったところにあるのかこの段階ではまだよくわからない。まあおおよそ、第一印象が薄かったとか、あまり話ができなかったとかそういうところなのかもしれない。かなり好みがわかれそうだし、真剣に見てしまうとだいぶストレスがたまりそうなタイプの番組だが、飲んでくだでも巻きながら見るにはちょうどいい番組かもしれないと思った。気が向いたときにでもまた続きを見てみよう。それにしても、この番組の豪華なロケ地はいったいどこなんだろう?恋のゆくえよりもそっちの方が気になったりして。
Amazonプライムビデオのみで見れる番組なのらしい。
知らなかったがこの「バチェラー」という番組は、元々、アメリカで人気のある恋愛リアリティー番組らしく、「バチェラー・ジャパン」はその正式日本版ということのようだ。おそらく「あいのり」とか「テラスハウス」だとかあの手の番組なのだろうと思い、個人的な好悪の都合でなんの気なしにスルーしていたのだが、身近なところから「面白いらしい」という声が聞こえてきたので、話のタネにと見てみることにした。
最近CMで流れているのは、最新作の「シーズン2」らしいのだが、せっかくなので未見の「シーズン1」から見ることに。
バチェラー・ジャパン シーズン1@Amazon
バラの花をかかげて微笑む男性。
どうやらこの男性の花嫁候補の座をかけ、総勢25人の女性が火花を散らし合うという、恋愛生き残りゲーム的な内容のようだ。見る前からもうきな臭い。
さて、怖いものみたさで見始めてはみたが・・・
男性が待ち受けるパーティー会場へ女性参加者たちが次々とリムジンで乗りつける序盤のシーンだけで早くも胃もたれ状態に。もう品位だとか節度とかいうことはとりあえずどこかに捨ておいてきてしまったようなあまりにアグレッシブな女性たちにすっかり閉口してしまい、早くも視聴リタイアの予感がよぎる。
しかし、職業=愛犬家(職業なのか?)、「初めまして〇〇と申します」と自己紹介する男性に対し「ご存知です!」とナゾの返しをする女性、こんな肝心なときにどうも歯が抜けたまま来てしまったっぽい今風ギャルなど、少なくとも3分に1回は不覚にも吹きだしてしまうシーンがあり、これはひょっとしたら壮大なコント番組なのかもしれないと思い、気を取り直して見続けてみることにした。
出鼻からアクセル全開の女性たちだが、その争奪戦のターゲットになる”初代バチェラー”というのが35歳の青年実業家の男性。顔よし、頭よし、運動神経よし、の3拍子そろったもうまるでマンガみたいな好男子である。
男性に一人ずつ、ときにはボディタッチも辞さない熱烈な自己アピールを終えた女性たちは、次にカクテルパーティー形式のフリートークへと臨む。最初は女性たちの輪に入って談笑している男性だが、そのうち気になる女性に声をかけ、二人きりの時間をつくりはじめる。このときお声のかからなかった他の女性たちのリアクションが怖ろしい。自分以外はみな敵。青い炎の燃やし合いだ。中には二人でいい雰囲気でいるところに「そうはさせまい」とあえて邪魔立てに入る斬り込み隊長のような御仁もいる。やはり人間、おとなしく待っているだけでは幸せはつかめないようだ。
初回ではまず候補を20人にしぼるようで、気の毒にも5人の女性が男性のおめがねにかなわず脱落していった。中には去り際に「見る目ありませんね」などと捨てゼリフを残していく者もいる。正直、男性の女性に対する選考基準がどういったところにあるのかこの段階ではまだよくわからない。まあおおよそ、第一印象が薄かったとか、あまり話ができなかったとかそういうところなのかもしれない。かなり好みがわかれそうだし、真剣に見てしまうとだいぶストレスがたまりそうなタイプの番組だが、飲んでくだでも巻きながら見るにはちょうどいい番組かもしれないと思った。気が向いたときにでもまた続きを見てみよう。それにしても、この番組の豪華なロケ地はいったいどこなんだろう?恋のゆくえよりもそっちの方が気になったりして。
2018年02月06日
ヒッチコックの「鳥」
Amazonプライムの会員特典で、ヒッチコックの「鳥」を観た。
昔からいつかは観たいと思いつつ、ついつい後回しになっていた映画だった。
思いがけず無料で観れて、ちょっと得した気分である。
鳥がある日突然、狂ったように人間たちを襲い始めるという怖ろしい映画だが、
コワい前に、なかなかおしゃれな印象の映画だった。
ファッション、小物、色使いなど、総じて趣味良い感じで目を引く。
まずもって、主人公の女優さんが、とってもお綺麗である。
ティッピ・ヘドレンさん
グレース・ケリーばりのクール・ビューティー。クラシカルファッションをばっちり着こなし、ひと目で、ヒッチコックの好みのタイプなのだろうことがわかるが、かなりご執心だったようで、近年になって、ヘドレン氏が、当時のあれやこれやを告白なさった模様。ヒッチコック、お前もか!MeToo系事案ですね。(T・ヘドレン氏 BBCインタビュー映像)
御年88歳とのことだが、それにしても若いし、お美しい。びっくり。
さてさて、肝心の映画の方だが、
鳥が原因不明の異常行動をとりはじめ、人間たちを恐怖に陥れる物語なのだけれども
徐々にエスカレートしていく鳥の凶行が、登場する人間たちの深層心理とリンクしているかのようで、なかなか興味深いものがあった。一口に言えば「鳥も怖いが、人間はもっと怖い」という感じである。
そもそもこの話は、サンフランシスコの小鳥店で、メラニーという社長令嬢と、ラブバード(ぼたんインコ)を探しに来たミッチという男性が出会うことから始まる。あまり多くは語られないが、メラニーはどうも今で言う、パリス・ヒルトンのような、街の有名お騒がせセレブ的存在のようで、ミッチは初対面ながら、そんな彼女を皮肉るような言動をとるだけとって、鳥探しもそこそこに店を出ていく。当然、見も知らない男にいきなり恥をかかされた格好のメラニーは面白くない。そこでいたずら心から、車のナンバーを手がかりにミッチの住所を調べ上げ、自宅にこっそりラブバードのつがいを届け、彼を驚かすことを思いつく。しかしなんだかんだあって、市内の自宅に届けるつもりが、サンフランシスコから遠く離れた田舎町のミッチの実家まで小鳥を届けに行かねばならないはめになる。一見、どたばたラブコメディーのような雰囲気で始まった物語が、ここから徐々に恐怖の物語にシフトしていく。
北カリフォルニア沿岸の町、ボデガベイ。実在する町のようだが、ここが物語の舞台になる。
閉鎖的なムード漂うさびれた田舎町に、シャネル風スーツに毛皮のコートという、バリバリのセレブファッションで降り立つメラニーは、どう見ても場違いで、さしずめ招かれざる客といった雰囲気だ。ここで一発、メラニーは、手荒い歓迎のようなカモメの一撃を頭に喰らう。まるで「よそ者お断わり」と牽制されているかのように。
しかしこのときの傷の手当をきっかけに、ミッチとメラニーは急速に距離を縮めていく。ありふれたラブストーリーを見ているような気にもなるけれど、ここで二人の恋路を阻む最恐の人物が登場する。
ジェシカ・タンディ演じる、ミッチの母親・リディアである。
怖い・・・。見るからにオカルト顔である。
私がリアルタイムで知っている頃の彼女は、もうすっかりおばあちゃんになっていたが、今思えばたしかに目力は強かったような・・・。「ドライビング Miss デイジー」とか思い出す。たしかとってもいい映画だった。
話が思わずそれてしまったが、息子にメラニーを紹介されたリディアは、嫉妬とか猜疑心とか様々な負の感情を入り混じらせたような、実に冷えた視線をメラニーに浴びせる。リディアは子離れできない、過干渉な母親だったのである。ワガママお嬢サマらしく、あちこちでうらやましいぐらいの華麗なる図々しさをふりまいていたメラニーも、さすがにこのモンスターママの前ではカタなしという感じで、家に招待したいというミッチの申し出をそれとなく何度も断り、サンフランシスコに戻ろうとする。しかし、どうしてもメラニーと別れ難いミッチは、これまたすっかりメラニーのことを気に入ったらしい幼い妹とともに、怒涛の引き留め攻勢をかけ、断り切れなくなったメラニーは、ミッチの思惑どおり、ボデガベイにしばし滞在することになる。息子の思わぬメラニーへの入れ込みように、リディアは気が気でない。
物語には、もう一人、重要なキーパーソンが登場する。アニーという女性である。メラニーは、町でミッチ一家の情報集めをしている過程で偶然このアニーに出会い、懇意になるが、後に彼女がミッチの元カノであったことを知る。さらに、破局の一因が、リディアの嫉妬であったことも知らされる。もう終わったことだという一方で、ミッチへの未練ものぞかせるアニー。思慮深く人の好い彼女は、表向き決してメラニーを拒むようなことはしないが、やはり思いがけない恋敵の登場に、心中穏やかではないといった感じである。
ぎりぎりのところで色々なことの均衡が保たれているような小さな田舎町は、メラニーという異物が混ざりこんだことで、明らかに動揺し始める。リディアが、アニーが、町の人々が、皆が心をざわつかせ、その人間たちの心の動きに呼応するかのように、鳥の異常行動もますます顕著なものになっていく。角度を変えてみれば、ミッチとメラニーが仲を深めていくにつれ、鳥の行動もエスカレートしていくようにも見える。逆に、そんな七面倒なことはいっさい抜きに、純粋なパニック映画として楽しめる感じもあるし、いかようにも捉えることができるからおもしろい。
なぜ、鳥が人間を襲ったか、その真相は結局判然としない。
ラストもハッピーなのか、バッドなのか、どうにも釈然としない尻切れトンボのようなかたちで幕を閉じる。まるで置いてけぼりを喰らったような気持ちになるが、この不穏な後味がこれまたたまらない。
観終わった後もまだいろんな疑問が残る。ラブバードは結局何の象徴だったのだろうとか、物語終盤で、鳥との死闘で傷ついたメラニーを胸に抱きながら一瞬だけ見せる、リディアの母のような慈愛に満ちた微笑みは、はたして額面通りに受け取ってよいものなのだろうかとか…。あと、変なところで一番気になったのは、ミッチの家族関係である。どう見ても四十前後のおっさんという雰囲気のミッチに、11歳の妹がいるという設定がどうにも腑におちないのである。ほんとに妹なのか?まあでも、この時代のアメリカ映画の二枚目は、実年齢よりも老成した雰囲気の人が多いから、ミッチは実は20代ぐらいの設定なのかもと思ったり。
いずれにせよ、なんだか不思議な映画だ。もう一度観てみよっと。
昔からいつかは観たいと思いつつ、ついつい後回しになっていた映画だった。
思いがけず無料で観れて、ちょっと得した気分である。
鳥がある日突然、狂ったように人間たちを襲い始めるという怖ろしい映画だが、
コワい前に、なかなかおしゃれな印象の映画だった。
ファッション、小物、色使いなど、総じて趣味良い感じで目を引く。
まずもって、主人公の女優さんが、とってもお綺麗である。
ティッピ・ヘドレンさん
グレース・ケリーばりのクール・ビューティー。クラシカルファッションをばっちり着こなし、ひと目で、ヒッチコックの好みのタイプなのだろうことがわかるが、かなりご執心だったようで、近年になって、ヘドレン氏が、当時のあれやこれやを告白なさった模様。ヒッチコック、お前もか!MeToo系事案ですね。(T・ヘドレン氏 BBCインタビュー映像)
御年88歳とのことだが、それにしても若いし、お美しい。びっくり。
さてさて、肝心の映画の方だが、
鳥が原因不明の異常行動をとりはじめ、人間たちを恐怖に陥れる物語なのだけれども
徐々にエスカレートしていく鳥の凶行が、登場する人間たちの深層心理とリンクしているかのようで、なかなか興味深いものがあった。一口に言えば「鳥も怖いが、人間はもっと怖い」という感じである。
そもそもこの話は、サンフランシスコの小鳥店で、メラニーという社長令嬢と、ラブバード(ぼたんインコ)を探しに来たミッチという男性が出会うことから始まる。あまり多くは語られないが、メラニーはどうも今で言う、パリス・ヒルトンのような、街の有名お騒がせセレブ的存在のようで、ミッチは初対面ながら、そんな彼女を皮肉るような言動をとるだけとって、鳥探しもそこそこに店を出ていく。当然、見も知らない男にいきなり恥をかかされた格好のメラニーは面白くない。そこでいたずら心から、車のナンバーを手がかりにミッチの住所を調べ上げ、自宅にこっそりラブバードのつがいを届け、彼を驚かすことを思いつく。しかしなんだかんだあって、市内の自宅に届けるつもりが、サンフランシスコから遠く離れた田舎町のミッチの実家まで小鳥を届けに行かねばならないはめになる。一見、どたばたラブコメディーのような雰囲気で始まった物語が、ここから徐々に恐怖の物語にシフトしていく。
北カリフォルニア沿岸の町、ボデガベイ。実在する町のようだが、ここが物語の舞台になる。
閉鎖的なムード漂うさびれた田舎町に、シャネル風スーツに毛皮のコートという、バリバリのセレブファッションで降り立つメラニーは、どう見ても場違いで、さしずめ招かれざる客といった雰囲気だ。ここで一発、メラニーは、手荒い歓迎のようなカモメの一撃を頭に喰らう。まるで「よそ者お断わり」と牽制されているかのように。
しかしこのときの傷の手当をきっかけに、ミッチとメラニーは急速に距離を縮めていく。ありふれたラブストーリーを見ているような気にもなるけれど、ここで二人の恋路を阻む最恐の人物が登場する。
ジェシカ・タンディ演じる、ミッチの母親・リディアである。
怖い・・・。見るからにオカルト顔である。
私がリアルタイムで知っている頃の彼女は、もうすっかりおばあちゃんになっていたが、今思えばたしかに目力は強かったような・・・。「ドライビング Miss デイジー」とか思い出す。たしかとってもいい映画だった。
話が思わずそれてしまったが、息子にメラニーを紹介されたリディアは、嫉妬とか猜疑心とか様々な負の感情を入り混じらせたような、実に冷えた視線をメラニーに浴びせる。リディアは子離れできない、過干渉な母親だったのである。ワガママお嬢サマらしく、あちこちでうらやましいぐらいの華麗なる図々しさをふりまいていたメラニーも、さすがにこのモンスターママの前ではカタなしという感じで、家に招待したいというミッチの申し出をそれとなく何度も断り、サンフランシスコに戻ろうとする。しかし、どうしてもメラニーと別れ難いミッチは、これまたすっかりメラニーのことを気に入ったらしい幼い妹とともに、怒涛の引き留め攻勢をかけ、断り切れなくなったメラニーは、ミッチの思惑どおり、ボデガベイにしばし滞在することになる。息子の思わぬメラニーへの入れ込みように、リディアは気が気でない。
物語には、もう一人、重要なキーパーソンが登場する。アニーという女性である。メラニーは、町でミッチ一家の情報集めをしている過程で偶然このアニーに出会い、懇意になるが、後に彼女がミッチの元カノであったことを知る。さらに、破局の一因が、リディアの嫉妬であったことも知らされる。もう終わったことだという一方で、ミッチへの未練ものぞかせるアニー。思慮深く人の好い彼女は、表向き決してメラニーを拒むようなことはしないが、やはり思いがけない恋敵の登場に、心中穏やかではないといった感じである。
ぎりぎりのところで色々なことの均衡が保たれているような小さな田舎町は、メラニーという異物が混ざりこんだことで、明らかに動揺し始める。リディアが、アニーが、町の人々が、皆が心をざわつかせ、その人間たちの心の動きに呼応するかのように、鳥の異常行動もますます顕著なものになっていく。角度を変えてみれば、ミッチとメラニーが仲を深めていくにつれ、鳥の行動もエスカレートしていくようにも見える。逆に、そんな七面倒なことはいっさい抜きに、純粋なパニック映画として楽しめる感じもあるし、いかようにも捉えることができるからおもしろい。
なぜ、鳥が人間を襲ったか、その真相は結局判然としない。
ラストもハッピーなのか、バッドなのか、どうにも釈然としない尻切れトンボのようなかたちで幕を閉じる。まるで置いてけぼりを喰らったような気持ちになるが、この不穏な後味がこれまたたまらない。
観終わった後もまだいろんな疑問が残る。ラブバードは結局何の象徴だったのだろうとか、物語終盤で、鳥との死闘で傷ついたメラニーを胸に抱きながら一瞬だけ見せる、リディアの母のような慈愛に満ちた微笑みは、はたして額面通りに受け取ってよいものなのだろうかとか…。あと、変なところで一番気になったのは、ミッチの家族関係である。どう見ても四十前後のおっさんという雰囲気のミッチに、11歳の妹がいるという設定がどうにも腑におちないのである。ほんとに妹なのか?まあでも、この時代のアメリカ映画の二枚目は、実年齢よりも老成した雰囲気の人が多いから、ミッチは実は20代ぐらいの設定なのかもと思ったり。
いずれにせよ、なんだか不思議な映画だ。もう一度観てみよっと。