2020年01月10日
ドラマ「ミス・マープル」/カリブ海の秘密(1989)
ミス・マープル カリブ海の秘密
A Caribbean Mystery
放送:1989年
主演:ジョーン・ヒクソン(ミス・マープル)
内容
病後の静養のため、甥っ子のすすめでカリブ海に浮かぶバルバドス島へとやってきたミス・マープル。美しい若夫婦が経営する海辺のホテルに一人で滞在することになったが、平穏すぎる毎日にすっかり退屈していた。
ある日彼女は、ホテルの滞在客の一人である退役軍人のパルグレイブ少佐から、妻殺しの疑いがあるという男の話を聞かされる。少佐の話によると、その男はこれまでに二度、自分の妻を自殺に見せかけて殺した可能性があるという。しかも少佐はその人物が写った写真を持っていると言い出し、財布から出してミス・マープルに見せようとした。しかしミス・マープルの肩越しに何かを見たとたん、あわてて写真を隠し話題を変えてしまう。結局ミス・マープルはその写真を見ることはできなかった。
そしてその翌朝事件は起きる。なんとパルグレイブ少佐が自室で亡くなっているのが発見されたのである。
主な登場人物
ミス・マープル
- 推理好きのスーパーおばあちゃん。一見編み物好きのごく普通のお年寄りだが、警察も一目置くほどの鋭い観察眼を持つ。
ホテルの関係者
ティム・ケンドル
- ミス・マープルが滞在するリゾートホテルの若きオーナー。
- ティムの妻。夫とともにホテル経営に携わっている。ブロンド髪の痩身の美女。
- 現地人のホテルの客室係。親切で頭が良い。退屈そうにしているミス・マープルを何かと気にかけてくれる。
ホテルの宿泊客
ジェイソン・ラフィール
- 車いすに乗った大金持ちの老人。気難しく毒舌家。仕事と休暇を兼ねて秘書らとともに島に滞在している。
- ラフィールの女性秘書。ラフィールに日々憎まれ口を叩かれながらも健気に職務をこなしている。ブロンド。
- ラフィールの使用人。いつも体を鍛えている。ひげマッチョ。
- 昆虫学者?グレッグ・ダイソンに雇われ蝶の研究をしている。物静かな男。
- エドワードの妻。浅黒の肌に黒い髪。知的で落ち着いた雰囲気。
- エドワードに資金を提供し蝶の研究をさせている男。アメリカ人?薄毛のふとっちょ。ふてぶてしい雰囲気。
- グレッグの妻。派手で妖艶。したたかな雰囲気。髪はブロンドだがヘアカラーか?
- 年老いた退役軍人。片目は義眼。無類のおしゃべり好きで常に話し相手を探しているが、話がおもしろくないので、皆に迷惑がられている。
その他
グレアム医師
- ホテルに出入りする親切な医師。
- 現地の有能な警察官。今回の事件の捜査にあたる。
- ホテルの客室係ヴィクトリアの伯母。姪から話を聞き、ホテルで退屈しているミス・マープルを自宅に招いた。
- 現地の行政官。
- グレッグの先妻。病気で亡くなっている。
ひとくち感想
どの登場人物にも疑いの目がいく、なかなか飽きのこないつくりになってます。いかんせん、人間関係の細かいところなど、字幕だけではなかなか読み取れないところもあったので、こんど原作を読んでみてからもういちど見てみようと思います。
細かいあらすじ
ここからはネタバレ&長文です
事件のまとめ
一連の犯行はすべてティムによるもの。
少佐は過去に事故で片目をつぶし、左目が義眼だった。少佐が例の写真をあわてて隠した時、ミス・マープルは、少佐が自分の右肩越しに何かを見ているものとばかり思っていたが、よくよく考えるとそちらは失明した義眼の方の目。見える方の目は実は全く違う方向を見ていて、その方向にいたのがテラスでモリーとともに帳簿付けをしていたティムだった。ミス・マープルは少佐が義眼だったことをラッキーの遺体の目を見て思い出した。
ティムは結婚相手を次々自殺に見せかけて殺す「妻殺し」の常習犯。いつもの与太話だと誰も真剣に取り合わなかったが、パルグレイブ少佐の話していたことは本当だったのだ。少佐はティムの正体に気づいてしまったために殺された。
今回の犯行の動機はラフィールの遺産。ティムは近い将来、秘書のエスターにラフィールの莫大な遺産の一部が転がり込むことを知り、次の妻にしようといち早く彼女をたぶらかし愛人にした。用済みになったモリーは、いずれ自殺か事故に見せかけて殺すつもりで日々薬漬けにし、神経症が疑われる状態にした。本人にも自分は病気なのだと思わせるため、部屋にわざと心の病気に関する本を置き、暗示をかけた。
ヴィクトリアには少佐の部屋に入っていくところを見られてしまったため、口封じのために殺した。
ラッキーは「人違い殺人」。ティムはモリーを溺死に見せかけて殺すつもりで、彼女を夜の海で泳ごうと沖合に浮かぶいかだに誘い出した。しかしそのいかだがラッキーとエドワードの夜ごとの密会場所になっていることをティムは知らなかった。不運なことにラッキーはモリーと同じ水着を着ていた。髪の色もブロンドで似ている。それでモリーと間違えられティムに殺されてしまったのだ。モリーがいかだに泳ぎ着いたのはラッキーが殺された後だった。
セント・メアリー・ミードの自宅に戻ったミス・マープルは、雨に濡れそぼつ庭を見てひとこと。「ここがいちばん!」
おしまい
- 自室で死亡していたパルグレイブ少佐は、元々高血圧だったことや、前の晩に大量の飲酒をしていたことなどから、病気による自然死と判断される。身寄りのない少佐は現地で埋葬されることになった。
- 少佐の部屋を片づけていた部屋係のヴィクトリアが、浴室の棚に少佐が亡くなる前にはなかったはずの薬の瓶が置かれているのに気づく。
- 前日の元気な様子から、少佐が病死したとはどうしても思えないミス・マープル。写真のことも気かがりだった。そこで一計を案じたミス・マープルは、少佐の遺体確認をしたグレアム医師に「昨日少佐に自分が見せていた写真を間違って持ち帰られてしまった」とうそをつき、病院にあるという少佐の遺品から写真を持ってきてもらうことにした。
- ミス・マープルが島郊外の村にあるヴィクトリアの伯母・ジョンソンおばさんの家に招待された。ホテルで寂しそうにしている彼女を気にかけ、ヴィクトリアがお膳立てしてくれたのだ。彼女はそこで思いがけなくホテルの経営者であるケンドル夫妻の妻・モリーの来歴を知る。 ジョンソンおばさんの話によると、モリーはこの島にも広大な農園を持つイギリスの大富豪の娘。実はモリーには好きな人がいたが、その男性との交際を家族に猛反対されていた。そこに今の夫であるティムが現れ「前の男よりはまし」という理由で結婚を許されることになったのだという。
- ヴィクトリアが少佐の部屋にあるはずのない薬があったことをモリーに報告する。記憶力に優れている彼女は、少佐の部屋にどんな私物があるかをすべて覚えていたのだ。彼女はその薬が少佐の死と何か関係があるように思っているようだった。ティムとモリーは、ミス・マープルと私的な交流を持ったことも含め、好奇心が強く、気も利きすぎてときに職務以上のことをしてしまうヴィクトリアのことを不安視する。ヴィクトリアに薬のことを口外されてはたまらないと、ティムは薬の一件をグレアム医師に相談することにした。
- グレアム医師から写真はなかったと報告をうけたミス・マープルは、実はこないだの自分の話はうそだったと白状したうえで、少佐が亡くなる前に自分に殺人犯の写った写真を見せようとしたこと、しかしその寸前で誰かの姿に気づき、あわてて写真を隠してしまったことをグレアム医師に話した。「最初は半信半疑だった。でもその晩少佐が亡くなり、そして写真までもが消えてしまった」と・・・。不審な薬のこともあり、自身も少佐の死に事件性を感じ始めていたグレアム医師は、ミス・マープルの話を受けてますますその疑いを深め、官邸に顔見知りの行政官ネイピアを訪ね、無理を承知で少佐の墓地の掘り返し許可を願い出る。最初こそ手続きが面倒だと渋るネイピアだったが、最終的には警察に通報。死因再調査のため少佐の遺体は掘り返されることになった。(ウェストン警部の登場)
- 日常的な仕事のストレスに加え、少佐の死以来ますます気が休まらない様子のモリー。彼女はこのところ自分の身に起きる数々の不調を自覚し人知れず悩んでいた。特に健忘症のような症状が日に日に酷くなっていた。モリーは心配して声をかけてくれたヒリンドン夫妻の妻・イーブリンにその苦悩を打ち明ける。
- ヴィクトリアがダイソン夫妻の夫・グレッグのもとに薬の瓶を持ってやってきた。薬はグレッグのものだったのだ。ヴィクトリアは「この薬はある人がある男性の部屋に置いた薬です。そしてその男性は亡くなった。きっとお墓の中で悔しがっているでしょう」と意味深な言葉を残して去っていく。そしてその夜、ヴィクトリアは庭で刺殺体となって発見された。第一発見者は夕食後散歩に出ていたモリーだった。ヴィクトリアの遺体の傍らで血まみれのナイフを手に取り乱すモリー。
- ヴィクトリア殺害をうけ、警察はホテルに取り調べ室を設置。ウェストン警部が本格的捜査に乗り出した。ウェストン警部はまずモリーから事情を聴こうとしたが、モリーは鎮静剤を打たれて眠っており、聴取は翌朝に持ち越された。一方、宿泊客の間でも新たな動きがあった。これまでミス・マープルに対して洟もひっかけないような態度をとっていた大富豪のラフィールが、事件のことについて語り合いたいと彼女に歩み寄ってきたのだ。なんでもミス・パープルが当初からパルグレイブ少佐の死に他殺の疑いを持っていたことをどこかで聞きつけてきたらしく、思いのほかの切れ者だと彼女に興味を持ったらしい。
- 翌朝、ミス・マープルはラフィールの部屋に招かれ、お互いの推理を語り合った。二人は少佐の死と今回のヴィクトリアの事件は何らかの関連があるという点では意見が一致していたが、肝心の犯人像というところでは意見が食い違った。ミス・マープルは「誰も少佐の話を信じようとしなかったが、彼が言っていたとおり、このホテルには本当に『妻殺し』がいるのかもしれない」と考えていた。しかし、ラフィールは妻殺しなど突拍子もない話だと信じようとしない。いずれにしても、犯人の真の目的はまだ果たされておらず、このままでは第三の殺人が起きる可能性があると危惧するミス・マープルは、それを阻止するためにも、非力な年寄りの自分に代わって、社会的信用のあるラフィールから、自分の推理を警察に伝えてもらえないだろうかと頼む。しかしミス・マープルの推理にどうにも納得がいかない様子のラフィールに協力を断られてしまう。がっかりして部屋を出ていくミス・マープル。
- ホテルではウェストン警部による宿泊客の取り調べが進んでいた。警部は、少佐の部屋に置かれていた薬がグレッグのものだったことから、まず彼を聴取。しかしグレッグは事件への関与を否定する。
薬のこと以外にもウェストン警部は、グレッグと少佐は過去にも接点があった可能性があると考えていた。まだ現役の軍人だったパルグレイブ少佐がセント・キッツという島で植民地警察の任務に就いていた頃、時を同じくしてグレッグもまたヒリンドン夫妻らとともに蝶の調査のため同地に滞在していたからである。さらにウェストン警部は、グレッグに死別した妻がいたこともつきとめていた。
そこで警部は、当時の状況にくわしそうなエドワードを尋問。セント・キッツにグレッグの妻として同行したのは先妻のメアリーだったこと。しかしメアリーは当時がんに侵されていて、セント・キッツに行った頃にはすでに余命幾ばくもない状況だったこと。そのメアリーを現地で看病していたのが今の妻ラッキーだったこと。そしてグレッグとラッキーは、メアリーの死後、数ヶ月足らずで結婚していることを聞きだした。
- グレアム医師立ち会いのもと、モリーの聴取が行われた。しかしモリーはヴィクトリアを抱き起してナイフを抜き取ったこと以外ほとんど何も覚えていなかった。モリーは聴取のプレッシャーに耐え切れず、再び情緒不安定に陥った。
- ヴィクトリアとパルグレイブ少佐の遺体解剖の結果が出た。 ヴィクトリアは切れ味のにぶい刃物で胸部を二度刺されて殺されていた。女性でも若くて体力があれば殺害は可能だという。少佐の死因はやはり毒殺だったが、自然死と判断を見誤られてもしかたがないほど功名な手口で殺されていた。
- ウェストン警部は、グレッグとラッキーが共謀して先妻のメアリーを病死に見せかけて殺したのではないか?そしてその証拠をパルグレイブ少佐に握られていたのではないか?と疑い、取り調べの席でその疑惑を直球でラッキーにぶつける。が、一筋縄ではいかないラッキーにのらりくらりと詰問をかわされる。しかしラッキーは明言こそ避けたものの「苦しむ姿を見ていられなかった」「自分のしたことを恥じてはいない」と、メアリーに大量のモルヒネを投与したことは否定しなかった。(未必の故意?)
- ラッキーがエドワードのもとに乗りこみ、警察にメアリーの話をしたことを激しく責めたてた。実は二人はもう長いこと不倫の関係にあり、この旅行中も人目を忍んで何度も密会を重ねていた。イーブリンも二人の関係を知っており、そのせいでエドワードとの夫婦仲はもうだいぶ前から破綻していたのだった。「あなたのせいで人殺し呼ばわりされた」と憤るラッキーに対し、「でも結局は殺した。僕まで巻き込んで。妻とも仲違いさせられて」と、静かに恨み節をぶつけるエドワード。(どうやらメアリーの死の真相を知っているようだが、詳しくは語られない)しかし二人はもはや切るに切れない奇妙な絆のようなもので繋がっていて、この先も今の関係を断ち切るつもりはないようだった。
- ラフィールがウェストン警部のもとを訪ねた。あれからミス・マープルの言っていたことはやはり正しいと考え直し、彼女の推理を警察に伝えにきたのだ。ウェストン警部はラフィールの口から「ミス・マープル」の名前を聞くと、驚きで目を輝かせた。いくつもの難事件を解決している凄腕の人格分析者として、警察学校時代の講義でも話題にのぼらない日はなかったほどの有名人だという。ラフィールはすっかり驚いてしまう。
- ミス・マープルがヴィクトリアのお葬式に参列した。ヴィクトリアには幼い娘がいた。内縁の夫との間に生まれた子どもだという。ヴィクトリアが母親だったという事実を知り、悲しみを新たにするミス・マープル。
ヴィクトリアの埋葬を見届け、墓地から帰ろうとするミス・マープルを、ラフィールから話を聞いたウェストン警部が迎えに来ていた。(ミス・マープルとウェストン警部の初対面)
ヴィクトリアは鞭を手に持たされて埋葬された。ウェストン警部によると、これは現地の風習で、通夜がとり行われる9日目の晩に、死者が恨みを晴らせるようにとの意味が込められているという。「復讐の夜です」とウェストン警部は言った。
- モリーが大量の睡眠薬を摂取する事故を起こしたが、幸い一命はとりとめた。グレアム医師はモリーが妄想神経症の初期段階にある可能性を示唆する。しかし、何か思うところがあるのか「ティムは反対するだろうが、彼女の場合はその原因をよく調べてみる必要がある」と慎重な姿勢を見せた。モリーに付き添うことになったミス・マープルは、彼女の部屋で心の病気に関する本を見つけた。
- モリーに付き添ううちについうとうとしてしまったミス・マープルは、人の気配を感じてハッと目を覚ました。窓の外に目をやると、ジャクソンが早足で立ち去っていくのが見えた。ジャクソンは二人が眠っているうちに、こっそりモリーの部屋に忍び込み、浴室にある薬品を物色するという謎の行動をとっていた。
- 事件のことで何か思うところがあるらしいミス・マープルは、「個人的なことで恐縮だが」と断ったうえで、ラフィールに、死後、エスターとジャクソンへの財産分与をどのように考えているかをたずねた。彼は二人の給与に関することは日頃から手厚い待遇をしてやらねばならないと考えているようだったが、遺産を分け与える考えは持っていないようだった。それより彼らは高給取りなので、私が長生きした方が二人にとっては得だろうとラフィールは言った。
- 「9日目」の夜が来た。ミス・マープルはイギリスへの帰りを明日に控え、モリーは何事もなかったように仕事に復帰していた。ラッキーは相変わらず自由奔放に振舞い、グレッグは昼間に妻の浮気現場を目の当たりにしてしまったことがよほどこたえたのかあまり元気がない。子どものためを思って長いこと仮面夫婦を続けてきたエドワードとイーブリンは、いよいよ離婚に向けての話を本格化させていた。
- 夕食後、部屋に戻っていたミス・マープルのところへジャクソンがラフィールからの伝言を携えてやってきた。モリーが行方不明になり、皆が探しているという。しかしジャクソンはそれより大事な話があると言って、昼間、ラフィールがしていた遺産の話はうそだと言い出した。二人の会話を盗み聞きしていたという。ジャクソンは「ラフィールはエスターに遺産として5万5000ポンド渡すつもりでいる。この目で遺言書を確かめたので間違いない」と言った。そしてそのことはエスターにも話してあると言った。ミス・マープルは「なぜラフィールは私にうそをついたのだろう」と訝しがる。(→この遺産のくだりは続編につながる伏線のようです)
- なおも強気な態度で今度は「モリーに何か起こると思うか?」と迫ってくるジャクソン。しかし一枚上手のミス・マープルに「あなたこそどう思うの?モリーの浴室を探っていたでしょう?」とあっさり切り返される。不意をつかれた格好のジャクソンはさすがに観念した様子で「彼女は薬物中毒です」と言った。実は薬に精通しているジャクソンは、前々からモリーの異変に気づいており、それが薬物によるものではないかとひそかに探りを入れていたのだった。
時を同じくしてホテル前のビーチでは再び騒動が起こっていた。ラッキーが溺死体となって発見されたのだ。生気が消え今やただのガラス玉のようになってしまったラッキーの遺体の目を見てハッと何かに気づくミス・マープル。
- 「急がなければまた事件が起きる!」ミス・マープルは殺人を防ぐため、急ぎラフィールに助力を仰いで屈強なジャクソンを助っ人に借り出し、二人で事件が起きるだろう場所へと急行した。決定的瞬間を待つ間「実は遺産の話をエスター以外の人にも話してしまった」とおもむろに打ち明けるジャクソン。「そんなことだろうと思った」とすべてお見通しな様子のミス・マープル。
- 一方、行方不明になっていたというモリーはふらふらと水着姿で自室に戻ってきた。ティムと真夜中の海で泳ぐ約束だったが、すっぽかされて一人で泳いできたらしい。ティムは部屋におり、約束を破ってしまったことをモリーに謝った。モリーは遊泳中にラッキーの死体を見てしまったらしい。怯え泣くモリーを落ち着かせようとティムが飲み物を運んできたところに、物陰に隠れていたジャクソンが勢いよく飛びかかった。飲み物はおそらく毒物。犯人はティムだったのだ。しかしもう一人意外な人物がそこに現れる。ラフィールの秘書エスターだった。「この人はそんな人じゃない」と必死にティムをかばうエスター。彼女はいつのまにかティムの愛人になっていた。
警察隊に取り押さえられたティムにジョンソンおばさんが叫ぶ。(いつのまにか登場)
「ヴィクトリアが復讐に来たのよ!」かくして9日目の夜に復讐は果たされたのだった。
事件のまとめ
一連の犯行はすべてティムによるもの。
少佐は過去に事故で片目をつぶし、左目が義眼だった。少佐が例の写真をあわてて隠した時、ミス・マープルは、少佐が自分の右肩越しに何かを見ているものとばかり思っていたが、よくよく考えるとそちらは失明した義眼の方の目。見える方の目は実は全く違う方向を見ていて、その方向にいたのがテラスでモリーとともに帳簿付けをしていたティムだった。ミス・マープルは少佐が義眼だったことをラッキーの遺体の目を見て思い出した。
ティムは結婚相手を次々自殺に見せかけて殺す「妻殺し」の常習犯。いつもの与太話だと誰も真剣に取り合わなかったが、パルグレイブ少佐の話していたことは本当だったのだ。少佐はティムの正体に気づいてしまったために殺された。
今回の犯行の動機はラフィールの遺産。ティムは近い将来、秘書のエスターにラフィールの莫大な遺産の一部が転がり込むことを知り、次の妻にしようといち早く彼女をたぶらかし愛人にした。用済みになったモリーは、いずれ自殺か事故に見せかけて殺すつもりで日々薬漬けにし、神経症が疑われる状態にした。本人にも自分は病気なのだと思わせるため、部屋にわざと心の病気に関する本を置き、暗示をかけた。
ヴィクトリアには少佐の部屋に入っていくところを見られてしまったため、口封じのために殺した。
ラッキーは「人違い殺人」。ティムはモリーを溺死に見せかけて殺すつもりで、彼女を夜の海で泳ごうと沖合に浮かぶいかだに誘い出した。しかしそのいかだがラッキーとエドワードの夜ごとの密会場所になっていることをティムは知らなかった。不運なことにラッキーはモリーと同じ水着を着ていた。髪の色もブロンドで似ている。それでモリーと間違えられティムに殺されてしまったのだ。モリーがいかだに泳ぎ着いたのはラッキーが殺された後だった。
セント・メアリー・ミードの自宅に戻ったミス・マープルは、雨に濡れそぼつ庭を見てひとこと。「ここがいちばん!」
おしまい
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