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2019年04月30日

去りゆく時代


私は突然頭にいろんなことが浮かぶタチで、唐突なタイミングでそれとはなんの脈絡もないことをふと思い浮かべてしまうのでときおり周りに不気味がられるのだが、こないだもふとしたタイミングで、まだ少年だった頃の水谷豊が出ていたオオカミ男のドラマのことを思い出した。モノクロの古いドラマだ。そのドラマで水谷豊は月を見ると突如苦しみだしてオオカミに変身するのだが、そのシーンが陰鬱な白黒の映像のせいもあってか子どもの目には少しおそろしかった。

といっても私はそのドラマをリアルタイムで見ていたわけではない。ドラマの名場面ばかりを集めたような番組で見たことがあって覚えているのだ。私が子どもだった頃は「テレビ探偵団」だとか、懐かしいTV映像を振り返るような番組がけっこう頻繁に放送されていた(ような気がする)。ドラマの名シーンといえば他にもいろいろあって、例えば有名なところでは「近藤正臣の足ピアノ(柔道一直線)」や、「突然病院の廊下でバレエを踊り出す宇津井健(赤い激突)」などがあったが、いずれもそもそも生まれていないか、幼すぎたかでリアルタイムでは全く見た憶えがない。ほとんどが後々になってから昔の映像を振り返るような番組を見て知ったものばかりだった。

しかしいつのころからか懐かしい映像をテレビで見かけることは少なくなった。とくに昭和のドラマに気軽に触れられる機会は激減した。今、地上波のテレビでは、昭和のドラマの再放送はおろか名場面集的なものもめったに目にすることがない。近藤正臣の華麗なる足ピアノも、病院の廊下で踊り狂う宇津井健もかつては事あるごとにばんばん放送されていた気がするのにいつしか全く見かけなくなった。これはどうしたことか。昔のドラマが再放送されなくなったのは、ひとつには肖像権や著作権といった権利的な問題があるらしいが、やはり最大の原因は、放送コードがどんどん厳しくなって今では放送できないものが多くなってしまったというところにあるらしい。残念だ。私はただ、口からぶわーっと白い霧を吐く松坂慶子(@ウルトラセブン)がもいちど見たいだけなのに。と思ったらあったわ。動画配信サービスに。まあでもちょっとしたノスタルジーに浸るにも、逐一お金が必要な時代になってしまった。

ウルトラセブン 第31話 悪魔の住む花

ドラマは世相を映す。昭和という時代は子どもの目線でもそれとわかるほどエネルギッシュで猥雑で、ドラマも有機臭がぷんぷん漂ってくるようなものが多かった。平成になると雑多のものはどんどん整頓されてスタイリッシュになっていき、くわえてインターネットの普及で世の中は格段に便利になったけれど、その一方で社会の目がどんどん厳しくなって、なんとなく窮屈な世の中になった。そんな空気を受けてドラマもすっかりおとなしく品行方正な優等生のようになってしまった印象だ。過激な暴力もおっぱいもなくなって家族の前で心置きなく鑑賞できるようになったのはありがたいけれど。さて、令和はどんな時代になりますやら。

もうまもなく平成が幕を閉じる。過ぎてみれば30年なんて意外とあっという間なものだ。

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