株取引の節税目的で確定申告する場合は、住民税「不要申告」の理解が重要!
以前は、株取引について節税目的で確定申告をすると、自動的に確定申告での課税方式が住民税にも適用され住民税の負担増を招くことが多くありましたが、2016年の税制改正で、住民税において「申告不要」の手続きすれば、確定申告とは異なる課税方式の選択ができるようになりました。
株式運用の節税目的で確定申告する場合は、住民税の「申告不要」に留意されることをおすすめします。
住民税の課税方式は、原則、確定申告と同一に注意
市区町村での住民税の算定は、基本的には、税務署から送られてくる確定申告データーに基づいて作成されます。
従って、確定申告で、株取引の節税のために「総合課税方式」を選択すれば、住民税も同じ課税方式に基づいた基礎データーにより住民税を算定します。
株取引の譲渡及び配当所得に対する所得税と住民税の捉え方に差があることに注意!
所得税と住民税では、株式運用による譲渡所得や配当所得に対する考え方に大きな差があります。
住民税では、地域負担に応分の負担をという主旨から、配当控除や、過去の繰越損による本年度の利益圧縮には否定的で税負担の軽減という配慮は乏しいものになっています。
従って、確定申告で、折角、一番良い節税方法を選んだにもかかわらず、住民税ではかえって負担が増大してしまうというケースが生じます。
「申告不要制度」により住民税では確定申告とは異なる課税方式選択が可能に
折角、株取引に伴う節税目的で確定申告しても、住民税でかえって、負担が重くなり確定申告がしづらい面がありました。
このため、2016年の税制改正で、住民税で「申告不要」が行えるようになり、確定申告とは異なる課税方式を選択できるようになりました。
これにより、確定申告では最も有利な節税方法が選択できるようになりました。 (しかし、残念ながら、令和4年初めに岸田政権で、この制度の廃止が検討されることになりました)
従って、株取引の節税目的で確定申告する場合は、この「申告不要制度」の活用に留意が必要です。
住民税での「申告不要制度」は事前に届け出が必要!
確定申告とは異なる課税方式を選択すためには、「確定申告前」に、「住民税申告書」を市区町村へ提出し「申告不要」の旨を伝える必要があります。
詳細は、お近くの市区町村窓口にお問い合わせください。
異なる課税方式選択でメリットが出るケース
株取引による譲渡所得や配当所得等の申告において、異なる課税方式を選択することによりメリットが考えられるケースは主に次の2つが上げられます。
(「特定口座を持ち源泉徴収あり」を想定)
@配当控除を受ける為、所得税で総合課税を選択した場合、住民税は申告不要制度(または申告分離課税)」を選択する
税額控除の適用を受ける「配当控除」は、所得税では、配当所得の10%ですが、住民税では、配当所得の2.8%しか受けられません。
そもそも、配当を受け取った時は、所得税が15%、住民税が5%の税金を徴収されています。
確定申告で「総合課税」を選択し「配当控除」を受けて税軽減をはかる場合、確定申告を提出したままだと、住民税では、給与所得等に配当所得が加算され住民税が高くなる可能性があります。
従って、この場合、住民税で「申告不要」をとれば、住民税では配当の影響を排除できることになります。
A譲渡所得の節税目的で確定申告で申告分離課税を選択した場合に、住民税は「申告不要制度」を選択する
損益通算や損を繰り越したい場合、「分離課税方式」で確定申告をしますが、そのままにすれば、住民税でも「分離課税方式」により税還付を受けられる場合がありますが、翌年の住民税算定に譲渡所得(損益通算や繰越損との相殺で益が残った部分)が参入され負担増になる可能性があります。
特に、介護保険などでは、繰越損による今年度渡所得の利益圧縮が認められず保険料の算定基礎に含められて負担増を招くことになります。
従って、確定申告で分離課税、特に過去の繰越損を活用する場合は、住民税で「申告不要(別申告)」の手続きをすることによって、これらの影響を排除することができます。
但し、「申告不要(別申告)」の場合には、住民税の還付(源泉徴収された所得税を含む20%のうちの住民税相当の5%分)は受けられなくなります。
従って、介護保険料の負担増よりも住民税での還付金が大きく見込める場合は、あえて住民税を不要申告する必要がない場合もあります。
最後は、損得の大きさで選択するしかありません。
最後に
確定申告の際は、所得税の税軽減ばかりに囚われると住民税で思わぬ負担増に招きかねません。
従って、e‐taxで確定申告での節税メリットの大きさを見極め、住民税へのはね返り等を比較して住民税の申告方法(異なる申告を申し出るか否か)を決める必要があります。
必要な場合は、住民税申告書を活用し確定申告前に、市区町村に相談することをおすすめします。
ーーーーーーーーーーーー 完 ーーーーーーーーーーーーー
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