コロナ感染者数の増勢が続く中、人工呼吸器の不足が早くから懸念され、既存メーカー(三幸製作所、テルモ、ニプロなど)も増産に乗り出しているが、現在のひっ迫状況から早晩不足が深刻な問題となるものと思われます。
コロナの重症患者の人命を救うための呼吸器不足を解消することが急務となっていますが、先の日経記事で「人工呼吸器 参入に壁 日本、緊急事態でも規制変更なし 車業界「協力」止まり 日経」と他業種からの参入を阻む現行規制の緩和が緊急時には必要ではないかと論調されていました。
国内既存メーカーの増産の規模
国内の人工呼吸器メーカーの増産体制の状況は次の通り。
・テルモは、全国で約1400台普及している人工心肺装置のトップメーカーで国内シェア7割を占めているが、今後数カ月以内に100台程度を増産する
・ニプロはECMOに使用する部品「ニプロコーティング膜型人工肺」の出荷体制を整えた。同社は国立循環器病研究センターなどと共同で可搬式のECMOを開発し、薬事承認を経て2021年の発売を目指している。
・他に、フクダ電子、JMS、川澄化学工業などもECMO(人工心肺装置)の増産を進めている模様
これでは近い将来に人工呼吸器が不足し、人工呼吸器の装着の患者を選ばざるを得ない残酷な医療現場となる恐れが危惧されます。
厚労省、やっと人工呼吸器の規制緩和を打ち出す。
新型コロナの医薬品、人工呼吸器など「優先審査の対象」 厚労省
厚生労働省は13日、新型コロナウイルス感染症とその関連する症状を対象とする医薬品、医療機器、体外診断用医薬品、再生医療等製品の承認審査を、優先審査の対象にする方針を明確化し、都道府県に事務連絡した。
既存医療メーカーの生産能力には限界、他産業の協力必須!
今の人工呼吸器等需要の増勢が続けば、いずれにしても既存医療メーカーの現有設備、人材では限界が生じるのは火を見るよりも明らかであり、このため、自動車メーカーなどの協力は不可欠な状況です。
規制緩和も、産業界に慎重論強く、規制緩和の効果は?と疑問符
人工呼吸器 規制緩和の効果は? 増産へ異業種参入期待/産業界には慎重論強く2020/4/15付
新型コロナウイルスの感染拡大で不足が懸念されている人工呼吸器の増産に向けて厚生労働省が規制緩和を打ち出した。自動車や電機など異業種のメーカーの参入を促す方針だ。産業界の反応を含め、実効性を探った。
Q なぜ規制緩和してまで増産が必要なのか。
A 人工呼吸器は自力の呼吸が難しい重症者の治療に使う。国内で現在利用可能なのは8千台。政府は今後の患者の増加を見据えて、1万5千台の確保を目指す。既存メーカーだけでは生産能力が足りない。
Q 規制を緩めても大丈夫なのか。
A 製造工程や品質管理の審査は書面で済ませて実地調査は事後としてスピードを優先する。
Q 産業界の反応は。
A 命にかかわる製品だけに慎重論が根強い。トヨタ自動車は「部品も含めて製造に参入する予定はない」。工程の効率化など増産に向けたノウハウの提供に特化する方針だ。政府から要請のあった三菱電機も「リスクが高い」として、産業ロボットを使った側面支援を模索する。パナソニックもどのような形で協力が可能か検討を始めた。
Q 海外との違いは。
A 米国は朝鮮戦争時に制定された「国防生産法」を発動した。
規制緩和だけでなく、設備投資などへの大規模な助成金支援が必要!
規制緩和だけでは、リスクを冒して他分野への参入に設備投資や人材投入に二の足を踏むのは当然であり、アメリカのような強制力がない限り協力を得るのは難しいと言わざるを得ないのではないでしょうか?
緊急時対応として大規模な協力企業への助成金投入を期待したい!
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