構造設計(選択理由記述式4肢択ー問題)
[ No.1 ]
図のように、鋼管の中にPC鋼棒が挿入されており、このPC鋼棒に初期導入張力Niが与えられている。なお、初期導入張力Niは、PC鋼棒の降伏軸力に比べて十分小さく、鋼管も降伏しない範囲の理想的なモデルを考える。また、セットロス及びリラクセーションは生じないものとする。この両端のナット部分をつかんで引張力を与える場合、次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 初期軸剛性の理論値は
( Eb・Ab+Ep・Ap )/ L
である。
2. 鋼管が剛体(Ep = ∞ )であると見なせる場合、ナットがエンドプレートから離間するときの引張力は、Ni よりも小さくなる。
3. 鋼管が剛体と見なせない場合、ナットがエンドプレートから離間するときの引張力は、Niよりも大きくなる。
4. ナットがエンドプレートから離間した後の軸剛性の理論値はEb・Ab/Lである。
答え
2
[ 解答解説 ]
1.◯
初期は鋼管とPC鋼棒ともに張力の導入に伴う応力が生じているため、軸剛性は鋼管とPC鋼棒の累加となる。記述の通り。
2.×
鋼管が剛体であると見なせる場合、鋼管の変形は0であるため離間するときの引張力はNiと等しくなる。よって不適当。
3.◯
初期状態での鋼管の縮み量は (L・Ni)/(Ep・Ap)
離間するまでの剛性は鋼管とPC鋼棒が両方とも有効なため、
(Eb•Ab+Ep•Ap)/L
よって、離間するのに必要な軸力は、
(Eb•Ab+Ep•Ap)/L × (L•Ni)/ (Ep•Ap)
= (Eb•Ab+Ep•Ap)/ (Ep•Ap) × Ni
Eb•Ab > 0より
(Eb•Ab+Ep•Ap)/ (Ep•Ap) > 1
よって、記述の通り。
(平成30年度4肢択ー式No.2)
4.◯
離間後は鋼管の軸力はなくなり、PC鋼棒のみの剛性となる。記述の通り。
[ No. 2 ]
コンクリートの特性及び鉄筋コンクリート造の構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 圧縮力を受ける鉄筋コンクリート造柱のコンクリートは、時間経過に伴い乾燥収縮ひずみや圧縮クリープひずみが生じ、コンクリートの負担する圧縮応力が徐々に増大する。
2. 骨材の種類が同じ場合、強度の高いコンクリートほど、同じ応カレベルのひずみが小さく、圧縮強度時のひずみは0.0015〜0.003程度である。
3. 鉄筋コンクリート造の柱及び梁のせん断補強筋比は 0.2%以上と規定されているが、高強度コンクリートを用いる場合には、コンクリートの設計基準強度に応じてせん断補強筋量を増やす必要がある。
4. 鉄筋コンクリート部材の許容応力度計算に用いるコンクリートに対する鉄筋のヤング係数比は、コンクリートの種類、荷重の長期•短期にかかわらず同一とし、コンクリートの設計基準強度に応じて定められた値が用いられる。
答え
1
[ 解答解説 ]
1.×
クリープひずみが生じることでコンクリートの剛性は下がるため、圧縮応力は対的に剛性が上がる鉄筋側に集まる。よって、不適当。
(令和2年度4肢択ー式No. 15)
2.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第1章2-2鉄筋コンクリートP. 131)
3.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第3章3-6部材の強度と剛性P. 283)
4.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第3章3-1コンクリートの材料特性P. 273)
[ No. 3 ]
構造計画 構造解析に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 鉄筋コンクリートの構造物で、耐震壁の偏在によりX方向加力時の偏心量が大きくなる場合には、直交するY方向の建築物の両サイドに耐震壁を設け、建築物のねじれ剛性を大きくすることも、偏心の影響を小さくするのに有効である。
2. 鉄骨大梁の設計においては、鉛直荷重による梁のたわみや振動障害の低減策として「梁の断面を大きくする」、「使用上問題にならない位置を選び、鉄骨間柱を上下階の梁に接合する」、「格子梁として二方向に負担荷重を分散させる」などが有効である。
3. 建築計画は建築設計者と建築主の間で綿密な打ち合わせによりできあがっていくものであり、建築計画ができあがってから構造計画を行い、構造方式等を決めていくことが合理的かつ経済的である。
4. 剛強な地下壁で囲われた建築物の上層階の地震力は、1階のスラブを介して外周の地下壁に流れるが、地下階の柱には地震力の作用方向とは正反対のせん断力、すなわち逆せん断力が作用する。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第1章3-4主体構造の計画P. 145)
2.◯
記述のとおり。
3.×
設計の初期の段階から、建築家と構造設計者の協働が重要であるため、不適当。
(テキスト第1編第1章1構造設計者の役割と責任P. 6)
4.◯
壁の量やスパン数によっては、逆せん断力が必ず発生するわけではないが、一般的には逆せん断力が発生することもあると考えられるので3よりは適当であると考えられる。 (テキスト第II編第1章4-2構造解析とモデル化P. 158)
[ No.4 ]
耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 静的荷重増分解析により算定される保有水平耐力は、架構により一義的に決まる値ではなく、水平力の高さ方向の分布形状に影響される。
2. 静的荷重増分解析を用いた保有水平耐力計算における必要保有水平耐力に達する時点の変形は、極めて稀に発生する地震動に対する架構の最大応答変形と同じと見なすことができる。
3. エネルギーの釣合いに基づく耐震設計法は、鋼構造のように靭性が大きく、繰返し力に対してエネルギー消費が安定している構造物には有用である。
4. 時刻歴応答解析による耐震設計において、地震動に与える表層地盤の影響は、工学的基盤より上部の地盤による入力地震動の増幅を評価することで考慮される。
答え
2
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第2章2-2耐震設計法P. 178)
2.×
漸増載荷解析では一定の水平力部分布を仮定するなど、保有水平耐力の計算は地震時の応答変形を求めるものではないため、必要保有水平耐力が発揮される時点の変形は、極めて稀に発生する地震動に対する架構の最大応答変形とは必ずしも一致しないため、不適当。(テキスト第Il編第2章2-2耐震設計法P. 179)
3.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第2章2-2耐震設計法P. 184)
4.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第2章2-3時刻歴応答解析による耐震設計P. 185)
[ No.5 ]
木質構造の構造設計等に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. ボルトやドリフトピンなどの接合具を用いた接合部の降伏せん断強度は、複数の降伏モードを仮定して計算するが、いずれの降伏モードも脆性的な破壊モードである。
2. 小屋裏にロフトを設ける場合には、ロフトの床面積に所定の係数を乗じた面積を、直下階の床面積に加算して、必要壁量を決定する。
3. 木質ラーメン構造の変形を求める場合、機械的な接合部は半剛節を考慮して計算する必要がある。
4. 木材の繊維直角方向のヤング係数は、繊維平行方向のヤング係数の1/50から1/25程度である。
答え
1
[ 解答解説 ]
1.×
ボルト等の曲げ降伏など脆性的な破壊でない降伏モードもあるため不適当。
2.◯
記述のとおり。
(平成12年建設省告示第1351号)
3.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章1-3鉛直架構のモデル化と靭性P. 237)
4.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章1-2材料 許容応力度P.225))
[ No.6 ]
鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 衝撃試験において、シャルピー吸収エネルギーが高いほど脆性破面率は小さい。
2. JISに規定される建築構造用圧延鋼材のSN490材にはB種、C種の2種類があり、柱梁接合部の通しダイアフラム等、板厚方向に力を受ける箇所にはC種を使用することが望ましい。
3. H形鋼梁の横座屈を防止するには、梁の両面に鋼板を溶接し、日の字断面などの閉断面にして、ねじり剛性を高めることも効果的である。
4. 細長比が限界細長比を超える圧縮材の座屈耐力を向上させるためには、より降伏強度の高い鋼材を使用することが有効である。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章2-1鋼材の特性P. 252)
2.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第1章2-1鋼材P. 124)
3.◯
日の字断面のような閉断面とすることで、ねじり剛性だけでなく弱軸剛性の増加が図られ横座屈防止には有効である。
記述のとおり。
4.×
細長比が限界細長比を超えた領域での座屈耐力は弾性座屈となり、ヤング率と長さが影響し、鋼材の降伏強度は影響しない。したがって、降伏強度の高い鋼材を使用しても座屈耐力は向上しないため、不適当。
[ No.7 ]
鉄筋コンクリート造部材の変形性能に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 梁の変形性能の確保では、柱に比べて軸力が小さいため曲げ降伏後のせん断破壊が早期に生じないようヒンジ領域のせん断設計に配慮すればよいが、引張鉄筋比が大きい短スパン梁では、それに加えて付着割裂破壊の防止に対する配慮が必要である。
2. 曲げ破壊する耐震壁の変形性能には、圧縮側柱の軸力比やコンクリートの圧縮特性が大きく影響するため、圧縮側柱の軸圧縮強度の増大や、柱脚部への拘束筋の配筋が耐震壁の変形性能の改善に有効である。
3. 曲げ破壊する柱の変形性能の確保には、コンクリートの拘束が重要であるため、降伏強度及び帯筋比が同じであれば、中子筋を用いずに外周筋のみで拘束するほうが有効である。
4. 柱の変形性能の確保では、降伏ヒンジの塑性回転量に応じたせん断強度の低下やヒンジ領域の拡大に伴う付着長さの減少を考慮し、せん断破壊や付着破壊に対する余裕度を大きくすることが重要である。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P. 290)
2.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P.291)
3.×
中子筋の採用は主筋の座屈防止にも有効であり変形性能の改善に大きな効果があるため、不適当。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P. 287)
4.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P. 287)
[ No. 8 ]
免震構造・制振構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 免震材料の種類は機能別に支承材、減衰材、復元材の3種類からなっており、いずれも国土交通大臣認定材料となっているが、免震戸建て住宅や超高層免震建築物等に用いられる台風により建築物が水平方向に移動するのを止めるための拘束装置は大臣認定材料ではない。
2. 免震構造の点検には、竣工時検査、通常点検、定期点検、応急点検、詳細点検等があるが、竣工時検査を行っていれば、定期点検では省略できる項目もある。
3. 制振ダンパーには、変位に依存する鋼材ダンパーと速度に依存する粘性ダンパーがあるが、鉄骨造の超高層建築物に制振ダンパー設置を計画する場合、性状の違う鋼材ダンパーと粘性ダンパーとを組み合わせて使用したほうが、応答低減効果がよくなる場合が多い。
4. 超高層建築物にせん断型制振装置を配置する場合、地震時の柱の軸変形の小さいスパン内に配置するより、柱の軸変形の大きいスパン内に設置したほうが制振装置の地震エネルギーの吸収性がよくなる。
答え
4
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
2.◯
記述のとおり。
(テキスト第11編第3章6-1免震構造P. 323)
3.◯
性状の違う鋼材ダンパーと粘性ダンパーを組み合わせることは、最大変位と最大速度の位相差を利用することになる。その結果、応答低減効果が向上することがある。
記述のとおり。
4.×
一般に柱の軸変形の大きいスパンでは全体変形の中における曲げ変形成分の影響が大きいと考えられることから、せん断変形が相対的に小さいと考えられる。そのため、せん断型制振装置の場合にはエネルギーの吸収性は下がると考えられるため、不適当。
[ No. 9 ]
地盤・基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 標準貰入試験を実施すると対象地盤のN値が求められるが、試験時にサンプラーにより採取した試料を分析して、液状化判定に必要な粒度分布などの物理特性を求めることができる。
2. 液状化判定の対象とすべき地盤は、一般に、地表から20m以浅の飽和砂地盤で、細粒分含有率が35%以下、粘土分含有率が10%以下の沖積層または埋立て地盤である。
3. 杭の鉛直方向の抵抗要素として先端抵抗と周面摩擦抵抗があり、杭頭部に鉛直力が作用したときに沈下の発生により先端抵抗が先行して発揮され、沈下が増加するとともに周面摩擦抵抗が発揮される。
4. 超高層建築物において、地下部分が深く基礎底直下の地盤の支持性能が比較的高い場合などに、杭基礎と直接基礎を併用したパイルド・ラフト基礎が合理的な基礎として設計できる可能性がある。
答え
3
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第1I編第3章7-3地盤調査P. 338)
2.◯
テキストにあるように、液状化判定の対象とすべき地盤の条件には、「沖積層または埋め立て地盤」という言葉はなくなっているが、注意が必要と記載されており内容的にはほぼ適当と考えられる。(テキスト第1I編第3章7-2地盤に関する基礎知識P. 333)
3.×
杭頭部の変形の発生とともに周面摩擦抵抗が先行し、その後に先端抵抗が発生するのが通常の杭基礎の抵抗であるので、不適当。(テキスト第1I編第3章7-5基礎の設計P. 347)
4.◯
記述のとおり。
(テキスト第1I編第3章7-5基礎の設計P. 350)
[ No. 10 ]
建築物の耐震診断•耐震補強に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ。
1. 平成7(1995)年に発生した兵庫県南部地震を契機として制定された建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)は、その後、より一層の耐震改修促進のため一部の特定建築物に対する耐震診断の義務化等を内容とする改正が行われている。
2. 鉄筋コンクリート造建築物の「下階壁抜け柱」では、地震時に大きな変動軸力が作用するため、第2次診断手法を適用することはできない。
3. 鉄骨造建築物の耐震診断における構造耐震指標 lsiは、保有水平耐力Quiを有する構造物が完全弾塑性応答をすると仮定したときの等価な弾性応答層せん断力をQui × Fi(Fi:層の靭性指標)として、二次設計レベルの地震入力による弾性応答層せん断力に対してどの程度上回っているかを表したものである。
4. 木造住宅の「一般診断法」において、保有する耐力と必要耐力の比で求められる上部構造評点が1.0未満の場合、上部構造は倒壊する可能性がある。
答え
2
[ 解答解説 ]
1.◯
(テキスト第II編第4章1-2既存建築物に対する耐震化対策P.375)
2.×
下階壁抜け柱の検討の際には、2次診断であっても、フレーム解析の概念を用いて変動軸カレベルの検討を行うなど有効であることから、適用できないわけではないので不適当。(テキスト第II編第4章2-2耐震性の判定P. 381)
3.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第4章3-2耐震性の判定P. 386)
4.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第4章4-2一般診断法P. 389)