2016年09月09日
二百五十四話 お題:弟(兄弟のうち、年下の男) 縛り:蒔絵(器物の表面に漆で文様を描き、金・銀などの金属粉や色粉を蒔きつけて付着させる、日本独自の漆工芸)
私の祖母の話である。
祖母はとても優しい人で、私は祖母が怒ったところを一度も見たことがなかった。ある時弟が、祖母のお気に入りの美しいシロツメクサの蒔絵が施された硯箱に傷をつけてしまったが、祖母は微笑んで、
「お祖母ちゃんの大事なものだからもう傷をつけちゃ駄目だよ」
と言っただけだった。それからしばらくして、弟が死んだ。祖母と一緒に散歩をしている時に川に入り、流されてしまったとのことだった。弟の葬式の日、私は祖母が、
「あの馬鹿が上手いこと死んでくれて本当によかった」
と微笑んだまま呟いているのを見てしまった。勇気のない私は、未だにこのことを両親に話せないでいる。
祖母はとても優しい人で、私は祖母が怒ったところを一度も見たことがなかった。ある時弟が、祖母のお気に入りの美しいシロツメクサの蒔絵が施された硯箱に傷をつけてしまったが、祖母は微笑んで、
「お祖母ちゃんの大事なものだからもう傷をつけちゃ駄目だよ」
と言っただけだった。それからしばらくして、弟が死んだ。祖母と一緒に散歩をしている時に川に入り、流されてしまったとのことだった。弟の葬式の日、私は祖母が、
「あの馬鹿が上手いこと死んでくれて本当によかった」
と微笑んだまま呟いているのを見てしまった。勇気のない私は、未だにこのことを両親に話せないでいる。
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