2016年10月22日
二百九十六話 お題:メガホン(遠くまで音声を届かせるために、口に当てて用いる、らっぱ形の筒) 縛り:内政干渉(他国の政治・外交に介入して、その国の主権を束縛・侵害すること)
友人の映画監督の話である。
彼は還暦をすぎてもメガホンを握り続け、先日もとある大国が近隣の小国に行った内政干渉を非難する映画を公開したのだが、
「予想以上に苦情がたくさん来てなぁ。まぁ反響がないよりはいいんだが」
私が、政治映画はどうしたって苦情がたくさん来るだろう、と言うと彼は、
「苦情の数も問題だが、内容も問題なんだよ。映画で取り上げた小国の人達から、私達を虐げている大国をどうしてもっと醜悪に描かないんだって苦情が殺到してな。中には内臓でも家族でもなんでも売って金を作るから、その金で大国を極限まで残酷に描いた映画を撮ってくれっていう人までいた」
その大国はどれだけひどいことをしたんだ、と聞くと、
「うーん、それなんだが、明らかに大国の方が正しいことをしてるんだよ。俺の映画で取り上げた小国は女性と子供を人間として扱ってなかったらしくて、大国が女性と子供の人権を守るよう圧力をかけたんだ」
私は彼に、それが本当なら大国の方が正しいし、わざわざ映画を撮ってまで非難する必要はないだろう、と言った。すると彼は、
「いや、どんな理由があろうと他国の内政に干渉するのは悪だろう。だから俺は映画を撮ったんだ」
と言った。私は思わず、お前もよくわからんやつだなぁ、と言ってしまった。それを聞いた彼は不思議そうな顔で、
「皆からそう言われるが、未だにどうしてそんなことを言われるのかわからない」
と呟いた。
彼は還暦をすぎてもメガホンを握り続け、先日もとある大国が近隣の小国に行った内政干渉を非難する映画を公開したのだが、
「予想以上に苦情がたくさん来てなぁ。まぁ反響がないよりはいいんだが」
私が、政治映画はどうしたって苦情がたくさん来るだろう、と言うと彼は、
「苦情の数も問題だが、内容も問題なんだよ。映画で取り上げた小国の人達から、私達を虐げている大国をどうしてもっと醜悪に描かないんだって苦情が殺到してな。中には内臓でも家族でもなんでも売って金を作るから、その金で大国を極限まで残酷に描いた映画を撮ってくれっていう人までいた」
その大国はどれだけひどいことをしたんだ、と聞くと、
「うーん、それなんだが、明らかに大国の方が正しいことをしてるんだよ。俺の映画で取り上げた小国は女性と子供を人間として扱ってなかったらしくて、大国が女性と子供の人権を守るよう圧力をかけたんだ」
私は彼に、それが本当なら大国の方が正しいし、わざわざ映画を撮ってまで非難する必要はないだろう、と言った。すると彼は、
「いや、どんな理由があろうと他国の内政に干渉するのは悪だろう。だから俺は映画を撮ったんだ」
と言った。私は思わず、お前もよくわからんやつだなぁ、と言ってしまった。それを聞いた彼は不思議そうな顔で、
「皆からそう言われるが、未だにどうしてそんなことを言われるのかわからない」
と呟いた。
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