2012年11月16日投稿。
「私は貴方の宿り木になりたいの」
彼女は言った。
共に育ち共に人生を進む相老になどならなくていい。そこに今存在している貴方の、宿り木になりたいの、と。
「貴方にずっと寄生していたいのよ」
貴方の養分を吸って、貴方を身体に吸い続けて、一生貴方に生かされたいの。
ねぇ。
彼女は言って、髪を掻き上げる。
いいよ、もう、僕のこと、吸い尽くしていいよ。
口から本音が出そうになる。
だけど、言えない。
言ってしまったら、嘘になる。
「一生なんて短い間じゃダメだよ」
君はもっと、もっともっともっともっと生きていかなけりゃ。
もうすぐ終わる命に寄生したところで、
「そうね」
彼女は悲しそうに微笑んだ。
「それなら私、ずっとずっと、死ぬまで独りぼっちだわ」
その表情は、ひどく、ひどく、美しかった……。
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