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2017年07月29日

持参金

今は十円と言ったら大した金額ではありませんが
昔は十円に価値があった時代の話です。

おはよう

おっどうしましたか?

お前のことだからまだ寝ているだろうと思いながら来たんだけど起きてたな

いつもだったらまだ寝てるんだけど
どいう訳か今日は早く目が覚めてしまった

朝早く起きることはいいことだ
昔の人は良い事を言ったな
早起きは三両、宵寝は五両って言ってな
でも朝早く起きてもお前みたいに床でゴロゴロしていたんではいけないぞ
まぁそんなことはいい
ちょっと頼みが在ってきたんだ

なんですか?

ずっと前にお前に二十円を用立てたことが在ったな

申し訳ございません
ほったらかしにしてしまって

いや、偉そうに催促できないっていうのは
あれを貸した時に昔お前のお父さんに世話してもらった
恩返しとして貸すんだからいつまでに返せと言わない
都合がついたら返してくれたらいいって生意気な事を言ってしまった。
そんなことを言って申し訳ないけど返しくれないか?

そんな言い方されたらこっちが辛い
今度の節季までには、

今度の節季って悠長なことを言ってもらっては困る

お急ぎですね。
まぁ七日待って頂けたら

七日も待てないんだ

四、五日までに

四、五日も待てないんだ

二、三日・・・

二、三日も具合悪いんだ

明日、、、

明日も困るんだ
無理は承知で言っている
今日の晩方までには用意してくれ、手元になったら他所で借りて
借金は借金としてわしが返してもいいから晩方まで必要なんだ
頼むぞ!さようなら

あっ!!ちょっと待って!
行ってしまった
たまに早起きしたらろくなことが無い
借りた金忘れてたんだ
財布を逆さに振っても五十銭もないのに晩方までに二十円なんて
もう一回寝直そうかなぁ


おはようさん
お前のことだからまだ寝ていると思ったんだが、朝早く起きることは良い事だ
早起きは三両、宵寝は五両って言って

それは先ほどやったは
昔の人が言ったことは当てにならん

そんなことないと思うけどな・・・
しかしお前みたいに寝床でゴロゴロしてるのは勿体ない
一遍外を歩いてくるなりしたらどうだ?
中でぐうたらしていたら病気になるぞ
それと言うのもお前がやもめ(独り身)だからだぞ
嫁でも貰ったらどうだ?

一人でも食いかねてるのに、嫁なんか貰えませんよ

昔から・・・

また昔ですか

まぁ黙って聞け
一人口は食えぬが二人口は食えるって言われてるんだ

一人だったら駄目なのに二人だったら食っていけるのか?

独り身ほど金のかかることは無い
おかずを作るのが面倒になってお店で食べてきたりする。
お店で食べるお金で嫁さんがおったら一日三度夫婦のおかず代になる
酒でも外で飲んできたら金がかかるが、酒屋で買った酒で嫁さん相手に飲んだら倍飲める
着るものも、汚れたり破けたりしたら嫁さんが直してくる
朝でもお前が顔を洗っている間に、ちゃんと寝床が片付いて御飯まで出来てる
上と下ではえらい違いだ!嫁を貰え

しかし俺みたいな所に来る奴なんか要るのかな

自分だってあても無く言ってるわけではない
歳は二十二で、すごく美人ってわけではないけど、背がスラッと

高い?

低くって
色がくっきりと黒い

スラッと低くって、くっきりと黒いんですか、、、

まぁ鼻はちょっと遠慮してるほうだな
両方の眉毛の長さが違うところに愛嬌があるな
目は小さいけど、口は大きい
まぁ縫い針とか女一通りさせても半人前だけど飯は五人前食べる
人との応対とか折り目切目の挨拶は上手くやらないが要らないこと良くしゃべる 
仕事は遅いが、つまみ食いは早いぞ
しかしこれ言っておかないといけないのはこの女には一つ傷が在る

一つ!!
まだ何かあるのか?!

お腹に子供がおってもうすぐ産み月なんだ
この女を嫁さんにもらう気はないか?

・・・ちょっと考えさせてもらいます

悪い話じゃないと思うけどな

あまりいい話でもないでしょ

気に入らないならしょうがない
これは縁の問題だからなぁ
こんな女でも金の二十円もつければ誰かしら貰ってくれるだろう
それじゃ、邪魔したな

ちょ、ちょっと待った!
そう気を短くしないでじっくりと

何を言ってるんだ

金が二十円つくのか?

こんな女だからな
持参金というものじゃないけど二十円だけ用意させてある

左様か、貰おう

えっ?
この女を貰うのか?

嫁さん付きで二十円貰いましょう

違うだろ
二十円付きで嫁さんを貰うんだろ

どっちだっていいって

真面目に言ってるのか?
この傷のことも承知だな?

傷って何ですか

お腹の子供のこと

お腹に子供がおったら傷ですか?

これから縁談する相手のお腹に子供がおったら立派な傷だ

そうですか?
私はそうは思わない
男のお腹に子供が在ったら傷ですが、女のお腹に子供が在るのは当たり前だろ

考えて見なさい
長年連れ添った夫婦でも子供いなかったら、赤の他人を養子に迎えて身代を譲る人もおる。
それを考えたら、こちらは片方は本物だ

考えようだな
この話は進めてもいいな

進めていいって悠長なこと言ってないで今晩貰いましょう

猫の子を貰うんじゃないぞ
嫁を貰うんだぞ
誰かに相談するなり、

それが誰もいない
親もいないし、兄弟もいない、親類は付き合っていない
己が得心したらそれでいい

身軽な身体だな
でも今晩って

今晩だから貰うんだ
明日になったらいらん

お前の話どっか間違ってないか?

なんなら、二十円だけ今晩で嫁さんは来年でもいい

そんなこと出来るか
そうと決まったら向こうも事情が事情だから急いでるんだ
本人が得心したなら今晩連れてくることにしよう

よろしくお願いします。
お茶も出さずに

そうと決まったらこの部屋をちょっとは小奇麗にしとけよ
乞食も身祝っていうからイワシでもいいから尾頭付きを用意して
悪い酒の二合でもいいから、あとお前のところに盃はないだろ
大家のところに行って借りて来い
こんな貧乏長屋でも盃の真似事でもしたい
それでは今晩

えぇすみませんな



起きてすぐに忘れていた借金を催促されたかと思うと
今度は同じ額の金を持って嫁さんが来るって
昨夜寝るまで何も考えてなかった



先ほどは、、おい
また寝床でゴロゴロしているんのか?
走って金の工面してくれよ

それが出来たんだ

えっ。金の段取りができたって?
寝床でゴロゴロしてて金の算段が出来たのか?

面白いもんだな
出来ないときは走ってもできないのに、
出来るときは寝てても向こうから転がり込んでくる

ほんどかそれは?当てにしても良いのか?

えぇ暗くなった時分になったら来てください

助かった、すまん
それじゃな


ややこしい一日が終わり、この男は掃除したり、風呂行ったり、盃を借りたり酒を買ったりと用意しているところに、金物屋の佐助さんが花嫁を連れてやってきました。


はい、こんばんは
誠にお日柄も宜しくって

あぁ!二十円!!

まぁまぁ待て!
さぁ上げて貰いなさい
遠慮しないでいい、今日からあなたの家になるんだから
盃の準備は出来てるか?


さて話をしていたのはこの人だ
お前さん同様に身寄り便りの誠に少ない人だ
一つ目をかけてやってくれ
それでなあまり気になることをポンポン言ってやるなよ
お前も困ったことがあったら一人で悩まないでこっちに相談したらいいから

さぁこれをぐっと飲んだら、盃を、

これをこっちに回して納の盃だ
もうわしも何遍も仲人をさせてもらった
わしが仲人した者たちはみんな上手く言っている
ちゃんと収まって幸せになってもらうように
これで盃事も無事に終了した
仲人は宵の口と言うからな
わしはこれでお開きということで

ちょ、ちょっっと、、あれは?!

あれってなんだ?

二十円!!

あぁ二十円・・・。
ちょっと忘れた

忘れたら駄目だろ
嫁さん忘れてもいいけど

ちょっと都合が在って明日の朝ってことになったんだ

だけど今晩って

わしだって金物屋の看板をかけてやってんだ。
二十円やそこいらの額で逃げ隠れしないぞ
明日の朝間違いなく届けてやるから

早くに頼みますよ!



何か騙されたな
二十円明日になって嫁だけおいて行きやがって

なんか照れくさいな
隅の方で小さくなってないでもうちょっとこっちに来なさい
将棋、、は知らないか・・・
もう寝ようか・・・


明くる日の朝


おはよう

あ、どうも

昨日はすまなかった。
田舎の取引先が来て、その人は私が相手しないといけなかった
後の酒の席まで付き合ってしまって遅くなってしまったんだ
二十円出来てるか?

それがうちも今朝ってことになって・・・。

えぇ?大丈夫か?

確かな人が請け負ってくれてますので大丈夫です。
もうそろそろだと思います。

いやぁわしもな番頭だと言っても奉公人だ
そうそう出たり入ったりは出来ないから
ちょっとここで待たしてもらうことは出来るか?

一服してください
もう持ってきてくれると思います。

いやでも今回はお前が胸を叩いてくれて助かった
わしだってこの町内古いんだ
わしが頼めば二十円の金貸してくれる人はいる
でも今度ばかりはちょっと事情が在って人に言いにくいんだ


恥を言わないと分からないが、実は中持の寄り合いが在って
旦那が風邪で代わりに行ったんだ。
酒の席で旦那の名代なら飲まないかんって、うちの旦那酒が好きだから
で八方から酒を飲んで悪酔いしてしまって家に帰って上げたり下げたりして
で、うちにお鍋って女中がいるんだけど知ってるか?
知ってると思うんだけどなぁ
不細工な女子なんだけどそれが顔に似合わず親切な子で
わしが苦しんでいたら水を汲んでくれたり薬持ってきてくれたり介抱してくれた

こっちも気分が落ち着いてくるとうちの二階は誰もいない
若い男と女が二人っきり酒の勢いも手伝ってややこしい事になってしまった
そうなると一人者同士だろちょいちょい通うようになって相手は受け身でお腹が・・・。
別居を前に旦那にこんなことを知られたら大変だ
そこで金物屋佐助さんに相談したら、
金の二十円くらいつけたらどこかの阿保が貰ってくれるだろうって頼んでいたんだ
そうしたら昨日その阿保がおったんだって気の変わらないうちにまとめたいから。
お前ばっかり攻め立てて本当に申し訳ない

ほおぉ・・・実は私昨日嫁を貰いました

えぇ!なんで言ってくれなかったんだ
そんなお取込み中の所に、こんな話持ってこなかったのに
しかし、めでたいな

めでたいような、めでたくないような・・・

何がだ?

金物屋の佐助山から紹介を受けまして嫁さんを貰いました

えっ?
それは別の話では

別じゃない
お腹が身ごもっていて不細工な女子

あのお鍋?!
じゃ貰ってくれるあ、、相手っていうのはお前のことだったのか?

そうらしい

どうしたらいい?

どうしたもこうしたも、昨日杯から何から済ましてしまった
まぁあの人を私が引き受けたら宜しいんでしょ

何もかも承知の上で収まってくれるか?

もう夫婦の盃をしてしまった
私だってお腹の子供の父親が誰か分からないよりは
あんただって分かっていたら何かの時に頼りにするから
気にしなくって大丈夫、あの人を引き受けたらそれで宜しいんでしょ

重ね重ね本当にすまん
あの二十円はどうなる?

もう佐助さんが持ってきてくれるはず

佐助さんはうちでわしが二十円持って帰るのを待っているぞ

えぇ!
じゃいくら待っててもしょうがない理屈になる

そうなるな

まぁこの手ぬぐいを二十円としましょう
あなたに返します
長々と有難う御座いました。

確かに受け取った
これを佐助さんに渡して、そうしたら佐助さんがここに持ってくる

ぐるっとひと回りしますね
本当に金は天下の回り物だな



タグ:夫婦 お金
posted by 落語の世界 at 06:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年07月27日

ちりとてちん

喜さん、気を使わずにやっておくれ、あり合わせの料理が並んでいるだけだから
お酒だけがな、ちょっと上等のを仕入れてあるんだ
京都の知り合いが送ってくれた白菊と言う銘酒らしいが知っているか?

なんでございますか旦様、白菊が手に入った?!
京都の中でも一番の銘酒として有名なお酒で中々手に入らないと言われている
えぇ私も名前だけは知っていますが頂くの初めてでございます
左様でございますか、えぇそれでは頂戴いたします。
.
これはいい香りしておりますな。
どんな味がするんでございましょう

ごくごくごく

あぁ〜〜!
評判通り銘酒間違いございません
昔から良いお酒は呑もうと思わずとも酒のほうから自然に口に入ると言われております。
このお酒はまさしくその通りでございます。

私はどんな味かと口をつけただけなのに
お酒のほうから勝手に口の中に流れ込んできます

ごくごくごく

引っかかりませんな
いえいえ、そんなガブガブ呑んでしまったら
酔っ払って帰れなくなってしまいます
・・何をおっしゃいますか、、ですか、、それでは一杯頂戴いたします

昔から初物頂いたら寿命が七十五日伸びると言われておりますがおかげで長生きさせて頂きます
有難うございます

いやいや、気に入ってもらえたら結構
どんどんやっておくれ
つまんで貰わないといけないけど
あり合わせの物ばかりだからな
口に合うか分からないけど、この鯛の造り
この刺身はどうだ

鯛の刺身!
初めてでございます

鯛の刺身くらい食べたことがあるだろ

いえいえ、鯛の塩焼きぐらいは食べたことがありますが
活造りなんて初めてでございます
これが鯛の造り綺麗でございますな
頂戴いたします。

もぐもぐ

うん!
身がぷりぷりしていて
あぁわさびが効きすぎて・・・
これは呑まないとしょうがない

ごくごく

鯛も初めてでこれでまた寿命が延びます

いちいち大層に言うことない
あのな、うちの家内がこしらえた茶碗蒸しどうだ?

茶碗蒸し?!
初めてでございます

何でも初めてだな・・
茶碗蒸しくらい

いえいえこんな料理があるなんて
蓋してありますな
取らせていただきます

うわぁ湯気が上がっていい香りが
上に柚子の皮が乗せてございますな
手間なことを、まるで料亭なようなことをなさっておりますな
中に具が入ってございます
これは海老ですか贅沢ですな
この黒い食べ物は、、アナゴ?
田んぼに跳んでいる?、、あれはイナゴですか
おっこれは何ですか
・・えっ銀杏??
あらぁ前から銀杏どんなん、こんなんでございますか?

あんた一人でよく遊びなさるな
・・え?鰻が焼けてきた?
丁度良かった。鰻が焼けてきたそうだ
酒の肴にするのも良いけど丁度炊き立てのご飯がある
うな丼にして食べて帰ったらどうだ?
遠慮することない

ご飯??
初めてでございます

アホなことをご飯初めてって
いや、しかしあんたは嬉しい人だな
何を出しても美味しいと喜んでくれる
あんたに比べたら裏に住んでるの竹という男、憎たらしい男だ
何を出しても旨いとか美味しいとか言ったことが一度もない

何時もお昼時に来て、私がご飯食べている時だから「食べていくか?」って言うと「食べたくないけど、食べてあげましょうか?」って
ご飯をよそってあげると「色が悪い」とか「芯が有る」とか
おかず食べて「しょっぱい」だの
これでご飯を五杯食べて行くんだ
これはむかつくだろ?

珍しいもの出しても喜ばないんだ
「前これ食べました。知っています。あんま美味しいことありません」
本当は知らないんだけど知ったかぶりをするんだ
あんたも笑っているところをみると同じめに会ったか?


これこれ!
そっちで何を騒いでいる?
豆腐が腐って面白くなっている?
もったいない何をしているんだ・・・
そうだ話のネタにこっちへ持ってきなさい

うわぁこんな風になるのか?
小さく黄色く縮んで、あっちこっちから赤や緑のカビが生えてる
うわぁ臭い、、えらい酸っぱい臭いが
見てみなさい豆腐の腐ったやつだ

豆腐の腐ったやつなんて初めてでございます

食べる気ですか??
流石にあんたでもこれは食べれないだろ
もったいないなぁ
世間には変わった人がいてこれが洒落ていると言って食べる人もいるけど・・・
・・・わしにちょっと面白いこと思いついたんだけどな

だいたい分かりますよw

分かるかい?
豆腐の腐ったやつをあの知ったかぶりの竹に食べさせるんだ
どこぞの名物名産の珍味だって言って前に出したら知っているって言うに違いない
これを口に入れてもがき苦しむだろう、、、その姿みて楽しもうじゃないか

旦さん、盛り上がってまいりましたなぁ!
是非ともやりましょう

豆腐っていうことが分からないように潰して
醤油を入れて味付け味付け、、、
味見はできないけどもな
毒消しにワサビを入れておこう
これをあいつの前に出して珍味の名前をつけないと
そうだあいつ長崎に行っていたって言うから長崎の名産にしよう

ほう、長崎の名産はどういう名前がよいでしょうな?

そうだな長崎らしい名前が良いな
カステラやチャンポンなんかそういう感じが良いな

長崎の名産・・・カスポンはどうでしょう

それはカステラとチャンポンを合わせただけだろ
なんか無いかな・・・

あら、、奥から三味線の音色が聴こえてきますね
お嬢様が習い事している

ちんとんしゃん ちんとんしゃん♪
     ちりとてちん ちりとてちん♪

旦様、この音色のちりとてちんって言うのはいかがでしょう

そんなの合うか?
長崎名産「ちりとてちん」・・・合うじゃないか!!

これ!これをそっちに持って行ってしっかりした折箱に入れて
蓋をして厚手の半紙で包んでくれ竹に食べさせるんだけど
名前が決まったから「長崎名産ちりとてちん」って書いといてくれ
また理屈つけてくるからな「元祖」って入れといてな
それから竹を呼んできておくれ


竹が来た

旦さん!
呑んでいるんだったら呼んでくださいよ
いや、お酒の相手しますけど口が肥えているから
しょうもないお酒は呑みませんよ
何呑んでいるんですか?
え?白菊・・しょうもないお酒だ
名前ばかり売れて甘くってべたべたで美味しいことない
初めて?情けないな・・
こんなお酒何回も呑んでますよ
いや付き合いだから頂きますけど

ごくごくごく

あっま〜

ごくごくごく

ぷふぁ、なんて言う名前だっけ?
白菊??もう一杯!

文句言うんだったら呑まなきゃいいのに、相変わらずだな
つまんで貰わないといけないのに鯛のお刺身だったり茶碗蒸しだったり・・

旦さん。あのね私をこういう席に呼ぶんだったら
そんなありきたりなものじゃなくって粋なものや洒落たもの
なかなか手に入らない珍味を用意しないと駄目ですよ

・・・お前さん今何言った?珍味が食べたい。
いきなり珍味から食べますか???
いやいや実は珍味を一つ用意してあるんだ、食べるか?

食べますけど何処の珍味ですか?

長崎の名産らしい

長崎行っていました
知っています

これは本当に珍しいから多分おたくさんでも知らないと思うがな

何言ってるんですか
長崎に行っていたから知っています

あのな長崎名産ちりとてちんって言うんだ

長崎名産ちりとてちん?
・・・・知っています

ちりとてちん知っているか?

知っていますよ
あれは朝・昼・晩と三食、食べていましたから

ほう好物みたいだな

もちろん
お酒の肴によしご飯のおかずによし
旦さん、あのね最近は偽物も出回っているんです
本物の「ちりとてちん」じゃないと美味しくない

ほぉお・・・ちりとてちんに偽物がある・・・・
そこまで言うか・・・・
いやいや見てもらおう持ってこさせるから


これ!!こっちに持ってきてくれ
さっき貰って置いといた「ちりとてちん」
竹が大好物だそうだ

長崎名産ちりとてちん「元祖」、本物です!
本物は「元祖」で偽物は「本家」って書くんです。
やっぱりね、元祖のちりとてちんは・・くっさ!!
えらい臭いですね

え?えらい臭いって知っているんじゃないのか?

あっ、懐かしい臭いです
私この臭いだけで涙が止まりません
これは腐っているんじゃなく醗酵しているんです
お宅らは駄目なんですか?
情けない・・こんな洒落たものを食べれないなんて
珍味ですからがばがば食べるもんじゃないんです。
ちょっと、一口、これだけでお酒が進みます
これね、、目がピリピリしています
長崎の人は食べる前に目で味わうんです
ええ、、頂きます、、

もぐ

うぐぅ。。
うんんんあ゛ぁぁ
がぁっ・・・・・・・オイシ

涙が出てるぞ

涙が出るほど美味しいです

そうか、わしは食べたことないけど
ちりとてちんは、どんな味がするんだ?

丁度、豆腐が腐ったような味です



posted by 落語の世界 at 07:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年07月24日

手紙無筆

昔は字が読めないかけない無筆が多くいました。
特にお職人は腕さえあればどんどん出世が出来ました。
そういう時代のお話です。

こんにちは

おう、どうした
こっちに上がれ

良かった
兄貴がいなかったらどうしようかと思って
実はとんでもないことが持ち上がっちゃって
相談に乗ってくださいよ

お前たちは決まってやがるよ
兄貴だのなんだのって持ち上げて困ったことが在ると俺のところにやって来る
まぁまぁいいやな
俺も退屈していたんだよ
相談事を聞いてやるよ、どんなことだ?

実はね、手紙が来ちゃって
いつもは隣の提灯屋で読んでもらうんだけど今日は居ないんですよ
だからどうしようと思っていたら兄貴のことを思い出して
兄貴は普段から言ってるでしょ
「俺は職人だけどお前たちと違って学問ってもんがある」
兄貴のところに行ったら何とかなると思って
手紙を読んでほしいんです。

あっ、、、あぁぁ手紙かぁ、、、。
そうか、よしよしよし・・・。
まぁそうだな、俺は学問が在るんだお前たちとは訳が違う。
お安い御用だ
そこに置いといてな一週間したら取りに来い
それまでに読んどいてやるから

一週間っていうのは困るんだ
今読んでほしいんだ

今は忙しいから駄目だよ

忙しいって退屈してるって言ってましたよね。

今までは退屈だったんだ
お前が来た途端に忙しくなった

そんな馬鹿な事を言わないで読んで下さいよ

本当のことを言うと俺は鳥目なんだよ

鳥目って夜目が見えなくなるんですよね

そうよ

だって今は昼間ですよ

だからさ俺はミミズクの鳥目なんだよ

馬鹿なこと言ってないで読んでくださいよ

駄目だよ

あぁそうか
兄貴は実は字が読めないんだ
だからそんなこと言って誤魔化してるんだ
俺はみんなにこの事を話しちゃうから
兄貴はあんなこと言っても無筆だ。
字が読めないって

おいおい待て
誰が無筆だってんだ?
その言い方だったら俺が無筆みたいじゃないか
じゃ分かった、分かった読んでやるからこっちに貸せ

すみません
これなんですけど

なんだ無筆とかって馬鹿にしやがって。
あぁこれは手紙だな。

えぇそうです。

そうじゃないって奴がいるか?

いいえ、いません

いなきゃ良いんだよ
いるっていうならそいつと議論を戦わせてな
それでも違うって言うなら取っ組み合いの喧嘩を始めて、、、

それは手紙ですから先に進めてください。

あぁ手紙はいいもんだな
これはどっから来たんだ?

どっから来たってそこに書いてありますよ

まぁ書いてあるけどお前に聞いた方が早いから

早いとか遅いとかの問題じゃ
赤坂のおじさんから届きました。

お前のおじさんは赤坂に住んでるの
あ、書いてあった、ここのところに書いてあった
赤坂のおじさんよりハチ公へってしてある

ハチ公?
ずいぶん乱暴な言い方ですね
いつも提灯屋で読んで貰う時は八五郎様や八五郎殿って
読んでもらってるんですけど、今日はハチ公ですか?

別にいいだろうが
おじさんってお前より上だろ?
大体ハチ公が気に入らないっているけどそれは素人だ
昔から偉い人は公の字がついてる
家康公、秀吉公、信長公、中堅ハチ公なんて

犬と一緒にしないでください
まぁ良いので中を読んでください

黙ってろ読んでやるから
おや、随分と書いたね
これは字ばかりで絵がないな

当たり前ですよ

しかしお前のところのおじさんは長いことないね

そうですか
年も年ですからね
何か患ってるとかって書いてますか?

それはどうだか分からないけど
昔ら墨色判断って言って薄墨で書く人は短命とされている
お前のところのおじさんもこう薄墨で書く所を見るとそう長くないね

そうですか
そんなことが分かるんですね。
・・・・兄貴、それ裏返しじゃないですか?

えっ?裏返し?
あぁ裏だった、表から見ると長命だ
じゃ読んでやるけど、俺が読むと早いよ
立て板に水だよ、もう一回読んでくれって言っても駄目だよ
二度読むと文句が変わってくるから
じゃ読むぞ

すみません
よろしくお願いします。

えぇぇっと
拝啓謹啓前略前文御免下されたく候然らば一筆啓上火の用心お先泣かすな馬肥せっと
この中からどれが良い?

どれが良いって書いてあるやつをやって下さい

お前手紙の書きだしなんて誰が書いたって読んだって同じなんだよ
どうせならお前の贔屓なやつでやってやろうと思って

贔屓も何もそこに書いてあるやつでいいですよ

そうか、じゃ前文でどうだ?

それでいいですよ

前文御免下され候然らば
どうだ読めない奴がこうスラッといくか?

なるほどね
さすが兄貴は学問がある

今更そんなこと言ってもも間に合わねぇよ
えぇ前文御免下され候然らば、前文御免下され候然らば
、前文御免下され候然らば、前文御免下され候然らばって息もつかずに百回言えるか?

そんなこと言えませんよ
ちゃんと読んでくださいよ

ちゃんと読んでやるよ
前文御免下され候然らば、さてハチ公やあばよ

あばよって、それじゃ始めっから全文じゃないですか?
使いの人が返事をもらいたくって家で待ってるんですよ

使いが来ているの?
それを先に言わないといけないよ
俺は急がないと思うから
その使いの奴はどういう恰好してた?

どういうって半纏(はんてん)着てたから職人ですよ
それで手に大きな風呂敷を持ってました

手に大きな風呂敷・・・。
それが手がかりだな
お前はおじさんに借りている物が在るんだろ?
それを代わりに取りに来たんだ

いや、借りている物なんてありません

じゃおじさんに最近会わなかったか?

あっそうだいつの日だったか、近所の子供を連れてね
上野動物園に行った帰りに広小路のところでばったり会いました

そのとき何か言ってなかったか?

そう言えばね
今度家でお客するからお店から本膳を借りて欲しい言ってました

馬鹿野郎なんでそれを先に言わないだ
それがここにきちんと書いてある
待ってろ読んでやるから
前文御免下され候然らば、さてハチ公やいつの日だったか、近所の子供を連れて
上野動物園に行った帰りに広小路のところでばったり会ったけな

なんかあっしが言った事と同じ事が書いてあるんですね。
第一その「会ったけな」って、いつも読んで貰うと御座候って決まるんですけど
今日はあったけなですか?

うるさいよ
御座候が欲しければすぐ付くよ
広小路のところにばったり会ったけな御座候
その時にお前に頼んであった本膳を借りておくれよっとしてあるな

またおかしい・・・。
御座候の後に借りておくれよって

良いだろ別に
いちいち文句が多いんだよ
おくれよって気に食わないようだけど、以前は里言葉って花魁が使ったんだ
こういう粋な言葉を知ってるところを見るとお前のおじさんは昔花魁か?

そんなわけないでしょ
そもそもおじさんは男ですよ
それよりも本膳は何人前ですか?

そこだよ
多くても、少なくっても困るって奴だな
ん人前って書いてあるからそれだけ持っていけばいいんだよ

えっ?
何人前ですって?

だから、ん人前って書いてあるって

あぁ五人前ですか?

そうだよ
さっきから五人前って言ってるだろ

おかしいな十人前って聞いてたんだけど

だから、なんでそれを先に言わねぇんだよ・・・。
そうそう五人前と五人前で締めて十人前だ

おかしな所で締めるんですね。
そう言えば本膳と言えば細々としたものが付き物ですが
それは書いてありますか?

あぁ書いてあるよ
大皿小皿は頼むよ御平も頼むよ箸なんかは荒物屋で買うから良いよ

今聞いてるとお猪口が出てきませんが
本膳にはお猪口が付きもんですが書いてませんか?

猪口か
在った在った

在りましたか?

御平の陰で見えなかった



posted by 落語の世界 at 05:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年07月23日

権兵衛狸

村はずれに権兵衛さんという床屋のおじいさんがおります。
毎晩毎晩、村の若い者が大勢寄りますと馬鹿話をはじめ
狐がどういう風に人を化かす狸がどう化ける等くだらない話をしては帰っていきます。

あんまり遅くなると、とっさまに怒られるでな
また明日遊びに来いや

明日遊びに来ます
片さないでごめんなせぇ

はいよ、お休みなせぇ

ごめんなせぇまし


ゾロゾロとみんなが帰っていきます。
後片付けをしますと戸締りをし、布団を敷きます。
独り者の気散じで腕を枕にごろりと寝ますと表の戸を


ドンドン、権兵衛
  ドンドン、権兵衛

誰だい?木佐衛門か?
若い奴はみんな帰えちまったって誰もいなねぇだよ
おら一人だ、明日遊びに来いや

ドンドン、権兵衛
  ドンドン、権兵衛

おら布団に入っちまって起きるの大儀だ
明日来いや、お前誰だ?

ドンドン、権兵衛
  ドンドン、権兵衛

あれ?
お前誰だってのに
おらの名前「権兵衛、権兵衛」って呼びやがって
待て待て開けてやるべ、しょうがねぇ野郎だ


土間に降りますと戸に手をかけてカラカラっと開けてみると
足音もしなければ姿も見えません


誰だい悪さをぶつのは?
隠れてて面だしたら、ウワッて脅かすつもりだなぁ
・・・さてな?悪さぶつなら足音ぐらいしそうだなぁ
足音も無ければ姿もねぇ・・・
朧夜(おぼろよ)だ、野郎裏山の狸だなぁ??
いつおらの名を覚えやがった
若い奴らが毎晩、権兵衛ぇ権兵衛って来るでな覚えただな
今度悪さぶつと、とっ捕まえてやるからな!


戸締りして寝てしまいます。
明くる晩に若い者がわぁわぁ騒いでいる内は出てきません
ゾロゾロと帰ってしまい一人になって床を敷いて枕に着くと同じ刻限に


ドンドン、権兵衛
  ドンドン、権兵衛

来たな野郎
待てよ、返事をせずに・・・


布団をはねのけ、抜き足で土間に降ります
戸にしっかりと手をかけて待ってます

狐狸は尾で人の家を叩くと申しますが嘘だそうですな
尾で叩いたのでは人間が拳で戸を叩くような音はしませんので頭で叩きます。
戸に背中をよっかかり、腕組み?しながら叩きますと
丁度人間が叩いているように聞こえます


ドンドン、権兵衛
  ドンドン、権兵衛


ドンと来たやつをガラッと開けると二度目の分で土間に転がりこんで
表の戸を閉めて土間で権兵衛さん狸と取っ組み合いです。

狸だってむざむざ捕まるのは嫌ですから引掻いたり食いついたり
ミミズ腫だらけになりながらとっ捕まえました


あっ痛て、おぉ痛てぇ
毎晩来やがって「権兵衛ぇ権兵衛」って抜かしやがるのは
われがみてぇなのに友達はねぇ
あぁ痛てぇ・・・っ捌きやがって
待てよ、夜が遅せでな明日になったらしょっ引いてくれべぇがな


狸の四足を結わいつけ田舎の家なので梁が出ています
この梁に縄を通しまして天井へ吊るし上げると
そのまんまグーグーと寝込んでしまいました。

明くる朝早く起きましてすっかり掃除をしましてお茶を飲むのが習いです


五左衛門か!寄ってけや!

おはようございます

いかく早ぇの
何処へ行くだ?

隣村まで借り物があって行くだがな
何か用があったか?

別に用はねぇがな
茶が入ったで飲めや

そうかい
それじゃ御馳走になるべぇかな

いかく早起きしただな
よくこんだら早く起きれた

起きたじゃねぇだよ、起こされた
夕べなんか一番鳥が鳴いてから寝たで、眠くって、眠くって、、、
とっさま頑固だで、寝かしてくれねぇだ
「起きろー!起きろ!」って抜かしやがってよ
ちょっと位寝てでぇけど布団ひんむきやがって
火吹き竹でケツをプープーって吹くだ
寒くって寝ていられねよ

起きたってあんにも用はねぇ、藁べ打ってるだ
飯食っちゃとっさまクークーって寝るだもの
あんだら何ぼでも早起きできるだ
権兵衛どんは相変わらず早えの

おらは星見て起きねぇと気持ち悪い性分だよ
茶が入ったで飲め
面洗わねぇか?

面どころじゃねぇ
床も上げづに来ただ

茶飲め

折角だから茶呼ばれるか

お前の妹が病気してたってどうした?

この頃良くなっただ
米の飯食わしたら直ぐに治っちゃったよ

茶飲め

御馳走さんです
ありゃりゃ?なんじゃこれりゃ?
すすだらけで毛だらけだ

馬鹿こけ
おらぁ掃除きちがいだって言われてるだ
すすなんか有るもんじゃねぇ

ほれ見なせぇ
こけやすすだらけだじゃ
茶は飲んだけ、毛が入ってる

毛が? あっ!!!
そうか、すまねぇすまねぇ
毛は入るべぇや、われの頭の上見ろ

頭の??
うわぁっ!!びっくりこいた!
あんじゃこりゃ??

狸だあなぁ

いけぇ(でかい)狸だのぉ
どうやってとっ捕まえた?
罠作ってけ?

なに、手で捕まえだ

こんないけぇ狸罠で捕まえたんだろ
手では無理だ

罠じゃなねぇ
毎晩うちに来ては「権兵衛、権兵衛」呼ばがっての
戸を引っ叩くでの我慢できねぇからな
戸に手をかけて待っていたら野郎きやがって
ガーって開けると土間に転がりこみやがってよ
後の戸を断ってよ取っ組み合いしただ
とっ捕まえた時に掻っ捌かれて、傷を見ろ

えれぇ傷ぶったな
こんなもの捕まえるなんて
こん畜生だろ方々で悪さぶつのは?
おらの妹が土橋の上で、こげんな大きな大入道を見て帰ってきた
それから熱が出て今まで寝ていただ
こん畜生の業だ!


いい事を思いついた
こいつをぶち殺してな村中の若い衆で狸汁にして食うべ

いかねぇいかねぇ
おらも何にも気づかずにとっ捕まえただよ
考えたらとっさまの小月命日だ
若いうちからいかく手ぇ焼したとっさまの命日に、
こんなもんの命とるでもねぇわ
因果を含めて放してやるだ

よしなせぇ権兵衛どん
そんなことしたって畜生だって、ありがてぇって思うもんじゃない
忘れてすぐに悪さぶつべぇ
とっさまの命日なんて構うもんじゃねぇ
狸汁こしらえたら仏壇に供えるだ

そんだらもん、あげられるかい
こんだらもんでも逃がしてやったら功徳になるべぇと思うんだ
これから悪さしたら狸汁でもなんでもしべぇが今日はいがねぇ

惜しげなもんだ・・・
このモモの肉見れや
でくでくと太りやがって生でもかじれそうだな


狸は気が気ではありません
片っぽでは助けてやるって言っているのに
片っぽは生でも食えるって言われてビクビクしています。


使い遅くなってとっさまに怒られるといげねぞ
使い行ってこいや

では行ってきます。

早く行ってこいや
帰りにでも寄れや


若けぇから元気だ
さぁ降りろ
今帰ったやつが言うたことを聞いてたか?
狸汁にして食うべぇって、おらが良しって言えば鍋の中で煮られてるだぞ
とっさまの命日だで放してやるべ、功徳になれよ
あっと!こん畜生め放してやるっていうのにおらの手を食いつく気だな
このまま放すと畜生だから忘れて悪さぶつべ


奥に飛んでいきますと大きなハサミを一丁持ってきました
狸の頭の毛と背中の毛を刈り始めました。


こげんに頭に毛を生やすからのぼせて人に悪さぶつだ
ちょっとくれぇ刈りこんでやるべ
悪さをぶちたくなったら頭へ手を伸ばしてみるだ
ええか?
おらは毛がないのは人間に悪さぶったからお仕置きをぶたれったって
動くでねぇじっとしてろ!


狸の頭を刈りこんでしまいますと表へ放り出して
恩を感じましたのもか二、三回後を振り返ると山の中へ帰っていきました。


あっはははは!
逃げおった、良いことしたな


その晩になって床を敷いていると同じ刻限に表の戸を・・・


ドンドン、権兵衛さん
  ドンドン、権兵衛さん


また来ただぁ?
昨夜まで「権兵衛、権兵衛」って言っていたのに
今朝命を助けてもらったと思って権兵衛さんになっている
頭を刈りこんでやったのに何の用で来やがった?


戸をガラガラっと開けると土間に狸が入って来て

親方、今度はひげをやってくれ



タグ: 動物 権兵衛
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2017年07月22日

半分垢

こんにちは、奥さんですか?
いやどうも急にすみませんな

誰かと思ったら徳さんじゃないですか
いつもうちの人ご贔屓有難う御座います。

何を仰います、ご贔屓やなんて
こっちが勝手に応援しているだけです
関取が江戸から帰ってきたって聞いてね
あっ、びんつけ油の香りが堪らんな。
関取どっか出て行かれましたか?

さっきまで私としゃべっていましたが、
流石に江戸からの長旅で疲れて
居眠りしているので今のうちに休んだ方がいいって二階で休んでいます。

もうちょっと早くきたら良かったなぁ
今そこで聞いたものでな
えっ?起こす?起こしたりしたら贔屓の引き倒しですよ!
しかしだいぶ大きくなって立派になって帰って来たんでしょうな

もう大きくなってびっくりするくらい

びっくりするくらい?!
どれくらい大きくなりました?

今帰ったという声でこの家がぐらぐらと揺れました

おぉ声でこの家が揺れる?!
身体はどのくらい大きくなりました?

慌てて表に出たらおへその当たりから上がひさしに隠れて見えなかった
それで一遍二階に上がって雨戸を開けたらちょうどうちの人の顔がそこにあって
おかえりなさいと挨拶したとこ

えぇ顔?!
大きくなりました?

えぇ顔の大きさがちょうど畳一畳分です。

畳一畳って大きいな
そんな大きい人よくこの家に入れましたね

なかなか入れなかったのですが、うちの人が一遍この家を持ち上げて
そこからガバッて入りました。

うわぁ!
そんなら酒や御飯なんか良く食べますか?

菰樽(こもだる)って言うんですか?
それを片手でもって人差し指で開けて一口で飲みました

喉乾きませんか?

そうそう喉乾いたって言って琵琶湖まで水を飲みに行ってきました。

本当ですか?
御飯の方は?

町内の方がハマチ十本差し入れてくれましたが、
それを三枚に下ろして私の分も残してくれと言う前にペロッと全部食べてしまいました。

ハマチってかなり大きい魚ですよ?!
うわぁすごいなぁ
江戸から帰る時に何か面白い事はありませんでしたか?

面白いかは分かりませんが、なんか可哀想なことをしたって
帰る途中で暴れている牛を三頭踏み殺したって

人間が暴れている牛を三頭も踏み殺すって!
どんだけ力強いんですか。
会いたいなぁ。
晩になったらまた来ます。
今の話ちょっと表でしてきます。


おい嬶(かかあ)

何ですか、起きていたんですか。
今まで徳さんがいたんですから降りてきて挨拶してくれても良かったのに

挨拶の一つもできるものか、できないものか。
上で聞いていたら大きくなった、大きくなたって。
わしの顔が畳一畳ってどんな顔や?
で、中に入られないからって家を持ち上げて入った・・・。
あまり阿保な事を言うもんじゃないぞ

私もあの徳さん大阪の方だから、いつツッコミしてくれるのかと思ってました。
なのにあの人は感心するばかりで、あの人阿保ですよ。

あのな、そこに座りなさい。
お前にこんな話がある。
親が我が子の自慢をする、亭主が我が女房、女房が亭主の自慢をする
これほどな傍で聞いてて嫌なものはない


江戸からの帰りに三島の宿をとった話だ。
窓を開けるとそれは実に見事な、日本一の富士の山だ
見事だなぁ、きれいだなぁっと見とれているとお女中が入ってきた。
わしは、
「あなた方は実に幸せな方ですな、朝夕とこの日本一の富士の山を眺めることができる
これはきっと先の生で人の役に立って善い行いをしたからに違いない、うらやましいな」
と言ったらそのお女中は三つ指をついたまま
「お客様、朝晩と見慣れておりますのでさほど大きいとは思いません」
「大きい無いわけないだろ、いまにも頭が雲に届きそうだ」
「お客様、ああ見えましても半分は雪で御座います。」


どうだ、これが謙遜と言うものだ。
大きくなった、大きくなったって、阿保な事を言うんじゃないぞ。

すみません。
今度から気を付けます。
分かってくれたら良い
この話はもう二度としないからな
わしは晩までゆっくりと休ませてもらう


関取は二階に上がって寝てしまいます。
奥様の方は久しぶりに会ったのに叱られてしまい落ち込んでいます。
しかし相撲好きの連中はお構いなしに入れ代わり立ち代わりやってきます。


こんにちは
奥さん今さっき徳さん会って聞きましたよ。
あっ言ってた通りにびんつけ油の香りが堪らないね
関取帰ってきたそうですね
しかも大きくなって、大きくなって帰ってきたそうですね!

いいえ
小さくなって帰ってきました。

いやいや!
今帰ったという声でこの家がぐらぐらと揺れたって!

いいえ

そうそう!気のせいかと思って外に出たら、
おへその当たりから上がひさしに隠れて見えなかったって

いいえ
溝(みぞ)にはまって見えませんでした。

溝!?
表の溝ってだいぶ低いですよ
関取そんな所にはまったんですか?あれ?
あっ顔の大きさが畳一畳もあるって

いいえ
煎餅一枚の大きさです。

この煎餅一枚分ですか?
なかなか家に入れなかったから一遍家を持ち上げて入ったって

いいえ
障子の破れ目から飛んで入りました。

ノミですよ、、、
どうなってんだろう。
ハマチ十本差し入れて三枚に下ろしてペロッと食べたって話は?

いいえ
ハマチではなくシラスを三枚に下ろしてペロッと食べました。

シラスを三枚に下ろすのってなかなか難しいですよね
あれ??あの話も嘘ですか?
菰樽を片手でもって一口で飲んだって言うのは?

酒三滴の匂いを嗅いだだけでコテッとひっくり返りました。

ほんとですか?
帰る途中で暴れている牛を三頭踏み殺したって話は?

牛じゃなく虫です。

暴れている虫三匹を踏み殺した・・・。
なんだ徳さんはどんな話してるんだろう


あぁこれは、これはご町内の若い衆
いつもご贔屓ごっちゃんで御座います。

うわぁあ!関取!!
大きくなりましたねぇ!!!
こんなに凄い人が本当にうちの町内から出たんだろうか!
拝ましてもらいます。
本当に大きいなぁ!!
ちょっと奥様、いい加減な話ばかりして
小さくなった、小さくなったって
こんなに大きくなってますよ!

お客様、朝晩と見慣れておりますのでさほど大きいとは思いません。

何を仰ってるんですか?いまにも頭が天井に届きそうですよ

お客様、ああ見えましても半分は垢で御座います。



タグ:相撲
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2017年07月18日

寿限無

こんにちは
ごめん下さい

はいはい、おぉどうした
今日は何の御用だい?

子どもが産まれましてね
あっしら夫婦で色々と名前を考えたんですが
中々良い名前が思いつかなくってね

今日は和尚さんに名前を付けてもらいたいと思って来たんでございますが
何かめでたくって、すくすくと育つような名前がありましたら
教えて貰いたいのですがね

おぉそうかい
あたしが名前を付けるこれは嬉しいことだ
お寺の方にある経文の中にも大変めでたい言葉がいくつもある
寿(ことぶき)限り無しと書いて寿限無(じゅげむ)というのはどうだい

あぁなるほど寿限無ね
めでたいことがいっぱいって事ですか
それで決めてもいいのですが他には何かありますか

五劫(ごこう)の擦り切れっというのがあるぞ

えっ牛蒡(ごぼう)がなんですか?

牛蒡じゃない五劫の擦り切れだ
これはな一劫というのは三千年に一度
天から天女が降りてきて羽衣を大きな岩をなでるんだ
この大きな岩がなでられて無くが一劫
これが五劫だからこれも果てしの無い時間ということから
おめでたいとされているなぁ

あぁなるほどねぇ
他には何かございますか

海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)っていうのはどうかな

海砂利水魚ってなんですか

うん、海の砂利取っても取っても取り尽くせない
水の中の魚も取っても取っても取り尽くせないという事から
おめでたいとされているなぁ

なんだかめでたい感じがしますね
他にも何かありますか

水行末、雲来末、風来末っていうのもあるぞ
水の行く末、雲の行く末、風の行く末だ
何処から来て何処へ去って行くのか
これは無限の広がりがあり
これもまためでたいとされているな

あぁそうですか
他には?

食う寝る処に住む処っていうのはどうだい?

なんだか名前らしくないですね
何ですかそれ

人というのは衣食住が足りていないと生活ができない
それが食う処と住む処がずっと付いて回ったらめでたいだろ

なるほど食う寝る処に住む処ですか
他にありますか


藪(やぶ)ら柑子(こうじ)の藪柑子っていうのもあるぞ

なんですか藪柑子っていうのは

これはめでたい木とされていてな
春には芽が出、夏には緑の葉をたたえ、
秋には赤い実を付け、冬の寒さにじっと耐える
これはとっても元気で丈夫でおめでたい木とされている

へぇなるほどねぇ〜
他には何かありませんかね

昔唐土でなパイポという国があってなぁ
そこの王様でシューリンガン、お妃でもってグーリンダイという方がいた
このお二人の間に産まれたのがポンポコピーのポンポコナー
このお二方が大変長いきされたとして、これまたおめでたい名前だな

長生きをしておめでたいですね
他にはありますか

う〜ん・・・
長く久しい命と書いて長久命(ちょうきゅうめい)っていうのはどうだい?

これはめでたいですね
他には?

これはね私がいつか付けてあげたいと思っている名前で
考えていたのは長く助けると書いて長助だ
これはどうだろうな

長助ね良い名前ですね
う〜んどうしようかな・・・
今ここで決めるのはなかなか難しいのでね

家に帰って家内と相談して決めますんで
すみませんがこの紙に書いてくれますか

どうもありがとうございました


おい行ってきたよ

どうだった?

やっぱりねぇ〜和尚さんは色んな事を知っているよ
こんなに色々考えてもらったんだ
この中から決めようと思っているんだけど
どれにしようね

そうだね
たくさん良い名前があるね

寿限無を付けて、病気になって長久命を付けていれば良かった
なんて事になるといけないしなぁ・・・
これ全部めでたいんだからこれそっくり付けてしまおうか

のんきな話があったもんですが、付けられた子供は大変です
さらに大変なのは友達だったりご近所の方です

名前が良かったのですか病気一つ無く
すくすくと育っていきました

お友達が学校へ行くために誘いに来てくれます

じゅげむじゅげむ、ごっこうのす〜りきれ
か〜いじゃりすいぎょのすいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ
くうねるところにすむところ
やーぶらこうじのやぶこーじ
ぱいぽぱいぽ、ぱいぽのしゅ〜りんがん
しゅうりんがんのぐ〜りんだい
ぐーりんだいのぽんぽこぴいのぽんぽこな〜っの
ちょうきゅうめいのちょ〜すけさんがっこうに行きましょう



まぁよく来てくれたねぇ
うちの寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ
海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助はまだ寝てます
ちょっと待っててください
今起こしますから

これ寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ
海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助や!

お友達が誘いに来ていますよ
早く起きて学校へ行きなさい!
これ寿限無、寿限無、五劫の・・・

おばちゃん、もういっかい聞いていたら
がっこうおそくなるから先にいきます

病気一つしなかったのですが腕白で喧嘩早い子になりました
この子に殴られた子供が泣きながら言い付けに来ています

うわぁ〜〜〜ん
おばちゃ〜ん
あんたの子のなぁじゅげむじゅげむ、ごっこうのすりきれ
かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつ、うんらいまつ、ふうらいまつ
くっ、くうねるところにすむところ
やぶらこうじのやぶこうじ
ぱいぽぱいぽ、ぱいぽのしゅうりんがん
しゅうりんがんのぐーりんだい
ぐーりんだいのぽんぽこぴいのぽんぽこなの
ちょうきゅうめいのちょうすけさんがぁ
ぼっぼくの頭をたたいて大きなこぶができたぁ(涙)

まぁ!!なんだってうちの
寿限無寿限無、五劫の擦り切れ
海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助が頭叩いてこぶを作ったって?!

ちょっとあんた!
うちの寿限無寿限無、五劫の擦り切れ
海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助がこの子の頭叩いて大きなこぶをつくたって!!

なんだって寿限無寿限無、五劫の擦り切れ
海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末
食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助がお前の頭叩いって大きなこぶをつくたって?!
それは悪い事をしたなぁ
おじさんが見てやるから何処を叩いたんだ?

・・・おい嘘ついたダメだろ
何処に大きなこぶがあるだ?

おじさん大きなこぶはあったんだけど
名前をいっているあいだに長いから
こぶがひっこんじゃった

柳家喬太郎 1 寿限無・子ほめ・松竹梅 [ 柳家喬太郎 ]



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posted by 落語の世界 at 07:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2017年07月16日

あたま山

ケチな方がサクランボを食べていて
種ももったいないと思い一緒に食べてしまう

この種がお腹の中で体の温かみで種から芽が出て
これがだんだん成長して木になります。

頭を突き抜けて、これは立派な幹になった

枝を広げますと立派な桜の木に成長いたしまして
春になると綺麗な桜の花が咲きました。



ごめんくださいまし、旦那様

おいでになりましたね

今日お留守だったらどうしようと思ってました。
実はね、あたま山の桜を。

私も噂を聞かない事はないが立派なそうだな
一度行ってみたいと思っているんだけどね

それでございますよ
たった一本の桜の木でございますが、それは見事な事というのは実に大したもので
それがために人が出ますよ
どうですか旦那様、今日は別段お差支えはございませんか?


ございませんか。あぁ良かった
実はねあたしどもで趣向を凝らしましていつもの女の子を残らず味方につけまして、
もう食べるものから飲むものまで一切合財支度をして酒屋の四つ角で待ってるんですよ
これからお出ましになりませんかな?

そうだね、花を見に行くのに何も着物を着替えて改めて行かなくっても良いわな
じゃ、このまんまで羽織でもひっかけて出かけるか

是非ともお供いたしますよ


旦那様、ご覧ください
この人の多さ、賑やかなものですね
あっちの方じゃ一塊になって歌を歌っている
酒を飲んで歌うのは発散して身体には極良いもので
ところで手前どもはどこに陣取りしましょうか?


ここいらで良いでしょうか?
それじゃみんな毛氈を敷くから、お重箱やおにぎりは真ん中に置いて
さて旦那様、正面にお座りください。
家に良いお酒が御座いましたので、旦那様お注ぎいたします。

これはいい酒だ

御酒が回ったところで、向こうは歌で盛り上がっております。
こっちはきれいなお姉さん方いますので踊りと行きましょうか?
手踊りでもって奴さんといきましょう。


♪♬♪♬♫♩♪♬♪♬♫♩♪♬♪♬♫♩♬♪♬♫♩

良いね!ご苦労様でした。
こっちに来てお食事と行きましょう
えっ?お前もやったらどうだって、あたくしがですが?
駄目ですよ男の踊りなんて、、えっ俺が言いつけるからやれっと?
困ったらな・・・。
それじゃステテコと参りましょう

♬♩♬♪♬♫♩♪♬♪♫♩♬♪♬♫♬♬♪♬♫

その陽気なことは御座いません。
別の方ではお酒ばかり飲んでいます。

おい注いでくれよ

もうお終いだよ
何を??
酒がねぇのか?

飲んじゃったんだからねぇよ

無ければ買って来いよ

買って来いって言ってもこの山に酒屋なんてありはしない

山にねぇって言っても日本中の酒屋が辞めちまった訳じゃあるまい
探して買ってきたらどうだ?

そんな無理を言っても・・・

何が無理なんだよ!
無理も提灯袋もあるか!!

おぉお前茶飲み茶碗を俺に投げつけたな!
てめぇは喧嘩を売るつもりか?!

売るつもりだったらどうした!
てぇめは買うつもりか?!

当たり前だ!


といって取っ組み合いの喧嘩が始まりました。

もう日が一日騒々しい
頭を一つ振りますとみんな地震だと言って逃げていった


こんな木があるから人が寄ってくる
頭に生えている木を引っこ抜くと大きな窪みが出来ました
この人が用足しに参りますと夕立があってこの窪みに水がたまった。
根がケチな人だからこの水を捨てません
そうこうする内に魚が泳ぐようになりました。

そうなると朝から子供が釣りに来ます。
子供っていうのは妙なもので、糸が切れたら泣きわめく
隣の子供の糸と絡まるとすぐに喧嘩になる。
夜になると舟を漕いてきて網を打つ人もいる。
何が取れただの、ゴミしか取れないだの実にうるさい。


うるさくって敵わないと思い
自身の頭の池に身を投げてしまいました。

談志百席 「あたま山」/「開帳の雪隠」/「二度目の清書」 [ 立川談志 ]



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タグ:ケチ 名作
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2017年07月15日

時そば


 蕎麦屋   そ〜ば〜ぁ

 お 客   お〜い蕎麦屋さん何ができるんだい
       花巻にしっぽこかい
       しっぽこひとつ頼むよ
       うぅ寒いねぇ

 蕎麦屋   大変冷えますな

 お 客   おれはすっかり風邪ひいちまったよ

 蕎麦屋   陽気が悪うございますんで

 お 客   なに、おれは鼻風邪だよ
       風邪なんかさ熱いの食べてしまえば治るだろ
       ひとつ熱いの頼むぜ

 蕎麦屋   へぇいへぇい
       よろしゅうございます

 お 客   どうだい蕎麦屋さん景気のほうは?

 蕎麦屋   どうも不景気でいけませんね

 お 客   そうかい、あまり気にしねぇ方がいいぜ
       まぁな悪い後は必ず良いって言うよ
       ひとつの商売をぶら下がってると芽が出てくるから
       商いってくらいだから飽きずやった方がいいぜ

 蕎麦屋   うまいこと仰りますね
       商いだから飽きずにやれって

 お 客   いや、おれはそうだと思ってんだけどね
       おめぇの所の行灯変ってるね
       的に矢が当たってるじゃねぇか

 蕎麦屋   手前どもでは「当たり屋」と申しまして

 お 客   当たり屋!
       いいね縁起を担ぐわけじゃないけどよ
       これからお前の行灯見たら一杯ずつ食うからよ
       ひとつおれの顔を覚えておいてくれよな

 蕎麦屋   ありがとうございます
       どうぞひとつご贔屓に

 お 客   なにご贔屓ってことは出来ないけどもよ

 蕎麦屋   へいお待ちどう様で

 お 客   早いね。もう出来たの?
       ちょっと世間話をしている間にお待ちどう様でって嬉しいね

       江戸っ子だよこっちは気が短いかならね
       あつらえた物がなかなか出来ない
       催促してやっと持ってくる
       旨いものも不味くなっちまうからさぁ

       おぉ割り箸使ってるんだ
       偉いねこの界隈さたくさん蕎麦屋が出るけども
       割り箸使ってるのはお前の所だけだよ
       てぇげぇ箸なんか割れてるじゃねぇかな
       丸箸なんって言ってな誰が使ったのか分からい汚くっていけないよ
       きれい事でいいよな

       また良い丼ぶりを使ってるじゃねぇか
       物は器で食わせるってまったくだね
       中身が少々不味くっても器がいいとうまく食えるんだよ

       ふぅふぅ〜
       おぉ良い匂いだね
       匂いを嗅いだらうまいか不味いか分るんだよ
       おれは自慢じゃねぇが蕎麦っ食いだからね
       汁加減も良さそうだね

       ふぅ〜ふぅ〜
       ズズ〜ズズズ〜
       うん!!鰹節を盛ったねぇ!
       うめぇよこれは
       いいね蕎麦って言うのはこう細くなくっちゃ
       中には、うどんみたいに太いものがあるんだよ
       あんなもの江戸っ子が食っちゃいけねぇな

       ふぅ〜
       ズズ〜ズルズル〜〜
       うん!腰が利いてるね

       ふぅふぅ
       ズズ〜ズルズル〜
       お前の所、竹輪厚く切ったね
       いいのこんなに厚く切っちゃって?
       どこも紙みたいに切るからさ

       ふぅ〜ぱくぱく
       おっ本物じゃねぇか
       ここら辺はほとんど竹輪ぶを使ってるんだぜ
       本物使ってるんだ二八蕎麦にしたら出来すぎてるよ

       ふぅ〜ふう
       ズズ〜ズルズル〜〜
       いや〜蕎麦屋さんね
       もう一杯と行きたいんだけど
       わきで不味いの食らっちまったんだ
       口直しだよおまえのは、一杯か勘弁しといてくれ

 蕎麦屋   へい
       ありがとうございます

 お 客   いくらだ?

 蕎麦屋   十六文でございます

 お 客   銭は細っかいよ構わないかい?
       じゃ手を出してくれ勘定するからよ
       いくよ、いいかい
       一、二、三、四、五、六、七、八、
       今何時だい?
 蕎麦屋   九で
 お 客   十、一一、一二、一三、一四、一五、一六

と払うとぽっいと行っちまう
これをわきで突っ立って見ていた男がいた

 主人公   ちきしょう!頭にきちまうな!!
       なんだいあの野郎は?!
       寒いのによ突っ立って見てたよ
       あんなに世辞並べてるんだ
       絶対に食い逃げだって思ったよ
       終いには蕎麦屋と取っ組み合いの大喧嘩になると思って
       楽しみにしてたのによ!
       そしたら普通に銭払って帰ってやんの
       江戸っ子の面汚しだね

       いろんな事言ってやがったね
       べらべらと男のお喋りは嫌われるんだよ

       行灯見やがってね的に矢が当たって当たり屋で縁起がいい
       箸が割りばしで綺麗事でいい
       丼ぶりが綺麗で器で食わせる
       蕎麦が細くって竹輪が厚ぺらい

       おれ全部覚えっちゃったよ!
       いくらだいって終いに値を聞ているのが気にくわねぇ
       二八の十六文なんてガキでも知ってるぜ
       蕎麦屋の手の上で勘定しやがって
       一、二、三、四、五、、、

       あれ?そういえば、途中で時を聞いたね
       そんなのは後で聞けばいいじゃねぇかな

       一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、、えっ?

       あれ・・・
       一、二、三、四、五、六、七、八、、、、んっ?

       一、二、三、四、五、六、七、八、
       今何時だ?九で、十、、おっ!

       やったねあいつは、ここで一文かすめてるよ
       これをやたいが為に世辞並べて蕎麦屋を持ち上げたんだよ

       あの蕎麦屋は生涯気がつかないよ
       面白いもん見ちゃったね
       よし俺もやってみよう


その日は細かいお金がなかったので、あくる晩いつもより早く飛び出して


 蕎麦屋   そぉ〜ばぁ〜

 主人公   お〜い蕎麦屋さん何ができるんだい
       花巻にしっぽこね分ってるよ
       しっぽこ熱く頼むね
       うぅ寒いねぇ
 
 蕎麦屋   今日は暖かいですね

 主人公   暖かい・・・あっそうだねぇ
       いや違うんだよ夕べが寒かったんだよ

 蕎麦屋   そうですな
       夕べすごく寒かったですね

 主人公   あれですっかり風邪ひいちまって

 蕎麦屋   あたしもそうなんですよ鼻風邪をひいてしまいましてね
       ほんと大変でしたよ、ちょっと聞いて下さいよ

 主人公   ・・・いやだよ
       話の芯を持って行かないでくれる?
       なんで俺がお前の話を聞かなくっちゃならないの
       まぁまぁそうだな風邪なんかさ熱いの食べてしまえば治るだろ
       ひとつ熱いの頼むぜ

 蕎麦屋   へい、よろしゅうございます

 主人公   どうだい蕎麦屋さん景気のほうは?

 蕎麦屋   まぁ世間様では不景気だっとおっしゃる方もいるみたいですが
       おかげ様で私には多くのお得意様がおりましてね
       もう笑いが止まりませんなぁ〜

 主人公   嫌野郎だな自慢してやがる
       でも笑えるってことはそれだけ余裕があるんだもんな
       もうどんどん笑った方がいいよ、うん
       ほら昔からよく言うやつだな良い後は必ず悪いって、あっごめんなさい
       これ言っちゃいけなかったね

       いや違うんだよ
       ひとつの商売をぶら下がってると芽が出るとか花が咲くとか
       商いってくらいだからさ

 蕎麦屋   へいへい飽きずにやってますよ

 主人公   ・・・知ってんだね、もうお馴染のこと?
       もう二度と言わないようにするそれね

       おめぇの所の行灯良いよな
       矢が的に当たって・・・ないね
       おかしいねお前の所これで何と言うの?
       「当たってない屋」?
       変な名前だね〜これでお得意様がいるの

       え?食いものに当たらないのが良い
       なるほどね!なんでも当たっていりゃ良いってもんじゃないよな
       じゃ俺はお前の行灯見たら一杯ずつ食うようにするからよ
       おれの顔を覚えておいてくれよな

 蕎麦屋   ありがとう存じます
       どうぞご贔屓に

 主人公   なにご贔屓って言われると困っちゃんだけどね
       覚えておくぜ「あっ当たって ない屋」だったなぁ・・・

 蕎麦屋   ・・・・・

 主人公   ・・・・・

 蕎麦屋   ・・・・・

 主人公   ・・・まだ??

 蕎麦屋   はい?

 主人公   普通どの蕎麦屋もこの位がね頃合いで出来るんだけど
       全然そんな感じじゃないね
       なんかやってる?作ってる?大丈夫?

 蕎麦屋   申し訳ありません
       今湯が冷めておりまして火を熾(おこ)しております
       今しばらくお待ちいただいて

 主人公   冗談じゃないよ!こっちは江戸っ子だよこっちは!!気が短いよ!!
       あつらえた物がなかなか出来ねぇ!催促してようやく出てくる
       旨いもんだって不味くなっちまう!
       それをお前はいつまでも!・・・まっいいかぁ
       うん、、、もういいやって感じになった
       江戸っ子が気が短いって言っても全員じゃないもんな
       世の中にはそうじゃないって奴がいるって考えたら
       その気の長〜い奴ってだれかなって思ったら俺だった・・・
       俺だったからゆっくりどうぞ

 蕎麦屋   ・・・・

 主人公   ・・・・

 蕎麦屋   ・・・・

 主人公   ・・・手伝う??
       いやいや大丈夫!待ってる待ってるよ

 蕎麦屋   へいお待ちどう様で

 主人公   あぁ持ってくれば良いんだよ〜
       すごい!俺は褒めるよ
       この界隈さたくさん蕎麦屋が出るけどもここだけ割り箸使ってる
       たいてい箸なんか割れてるんだよな
       ネギなんかぶら下がって汚くっていけないよ
       お前ん所はちゃ〜んと、、あっ割れている方だったの
       良いよ良いよ!割る世話が無くって良いよ
       お客に箸を割らせようってそんなのは良くないよ

       ・・・ネギです

       うん!良いよ拭いとけば、大丈夫
       そう物は器で食わせるってまったくだと思うんだよね
       中身が少々不味くっても器がいいと旨く食えるんだよ
       そん所に来るとお前ん所の丼ぶり汚いね〜〜
       これ猫のお椀?違うってそうだろうけどさぁ
       持っているだけで不愉快になってくるもん

       今のは洒落でね言っただけなんだけどさ
       これふち欠けているよ
       昔ね唇切ったことがあるんだよ
       危ないから回すっと・・・こっちも欠けてるね
       あれこっちも、、、
       もう丼ぶり回せなくなってるよ

       ちょっと待ってくれ俺も飲むときに唇が危ないけど
       お前だって洗う時に手を切って危なくないか?

 蕎麦屋   うちは洗いませんから

 主人公   なるほどね!!だから汚ねぇんだよ
       まぁまぁ物は器なんて言ってるのは負け惜しみだよ
       うん良い匂いだね
       俺は匂いだけで旨いか不味いかか分るんだよ
       おれは自慢じゃねぇが蕎麦っ食いだからね
       汁加減も良さそうだね

       ふぅ〜ふぅ〜
       ズズ〜ズズズ〜
       ブッ−−−−−!!!

       湯っ足してこれ
       俺は甘いとか辛いとかは知ってるけど渋いは初めてだよ

       あぁ入れた入れた
       はいはいはい良いんだよ別に
       お前の所は汁屋じゃない蕎麦屋だろ
       蕎麦って言うのは細くなくっちゃ
       中には、うどんみたいに太いものがあるんだよ
       お前は何やってんのって?
       うどん屋になっちぇえよって感じのがあるよな
       そこん所に来るとお前ん所は・・・うどん屋になっちゃえよ!!

       いやいや怒ってないよ
       太いとか細いとか言っているうちは蕎麦っ食いじゃない
       腰があるかどうかだよ

       ふぅ〜
       ズズ〜ズルズル〜〜

       べちゃべちゃだね
       噛まない蕎麦なんか初めて食べたよ
       さぁ竹輪だ、竹輪しか楽しみがないよな

       ねぇ竹輪入れ忘れたんじゃない?

       いれた?いやいや入ってないよ
       えっもう食べちゃたんじゃないかって?

       いや食べてないよ!
       こんなに探してんだよ

       あっった〜〜!!
       ごめん器に張り付いてた
       薄いねこれ包丁で切ったんじゃなくカンナで削ったんだろ
       包丁で切ったの!良い腕してるね!
       なんで蕎麦に活かせなかったんだろう

       ふぅ〜ぱくぱく
       おっ本物の!!!竹輪ぶだ・・・
       二八蕎麦にしたら出来すぎてるよ
       あぁ〜あ・・・

       ふぅ〜ふう
       ズズ〜ズズル〜〜

       ふぅ〜ふう
       ズズ〜ズルズル〜〜

       いや〜蕎麦屋さんね
       もう一杯と行きたい所だけど
       わきで不味いの食らっちまったんだ、これでも
       一杯で勘弁しといてくれ

 蕎麦屋   ありがとうございます

 主人公   いくらだ?

 蕎麦屋   十六文でございます

 主人公   銭は細っかいよ構わないかい?
       じゃ手を出してくれ
       勘定するからよ
       いくよ、いいかい
       一、二、三、四、五、六、七、八、
       今何時だい?
 蕎麦屋   四で
 主人公   五、六、七、八、、、

時そば・まんじゅうこわい 親子できこう 子ども落語集 二 [ (キッズ) ]



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猫の皿

ほんとついてないなぁ。
大概ひと月出れば掘り出し物に巡り合えるんだけどなぁ ・・・
蔵に入っていくと伊万里の皿が在ったり、壺が在ったりする。
それを何かとうまいこと言って安く買って江戸に持って帰って道具屋に高く売りつけるとその利鞘でずいぶん儲けたもんだけど今回の旅はなんんんんにも出てこない。
骨折り損のくたびれ儲けって良く言ったもんだ。
今日はもういいやあそこの茶店で一服して宿を決めるか。


おい!ごめんよ

どうもお客様いらっしゃいませ

とりあえず一服させて貰うよ

どうぞお座りくださいませ
何かお持ちしましょうか?

酒と行きたいところだけど、昨夜の酒が残ってしまって
こういう時は甘味にするか、そうだな、団子でも貰おうか

かしこまりました。

どうでもいいけど、くたびれちまったなぁ


どうぞお待ちどう様です。

お!良い艶をしているねぇ。
俺は旅をしているからいろいろ団子なんか食べるんだけどな。
良い団子に出会ったときは旅の疲れを忘れるな。
うまい団子だなと思う団子もあれば、
食べてみるとどうやって作ったんだよって言いたくなるような団子もある。
数多く食べて来たから俺は色艶だけで大体うまいかまずいか分かる様になった。

もぐもぐもぐ

どうやって作ったんだよ!おやじ!!

えぇこれは餡子をこねまして・・・

そういう事を聞いてるんじゃねぇ
もう良いよ!向かい酒だ!熱燗で頼むぞ
ついてないことが重なるな、、、
商売にはならないし、入った茶店はまずい団子だ



ここまでついてないかな、、猫だ・・・
俺は猫なんか大っ嫌いなんだよ
そもそも、なんで食い物屋でこういうものを飼ってるんだ


お待たせいたしました。

・・・ぬるいよ!なんでこんなにぬるいの?
俺は熱燗って言わなかったっけ?耳が遠いのか?
もう良いよ!燗直ししてこなくっても、それよりもなんで店に猫がいるんだよ
あれだけは許せないよ

猫で御座いますか?
お好きでございますか?

目も悪いのか?
嫌な顔してあれだけは許せない!って言っているんだよ
なんで食い物屋で猫なんか飼っておくんだよ

失礼いたしました。
これ!どっかに行きなさい。
お客様がお嫌いなようだ、向こうに行きなさい
申し訳御座いません、ばあさんが猫を好きなもので。

この野郎、飼い主が行けって言っているんだから行けよ
本当に言う事を聞かねぇ猫だなぁ
おい向こうに行けってんだよ!しっしっ
痛い!!
おやじ血が出たよ

申し訳御座いません
すぐに手拭いを持ってきます。

この野郎!客がここで銭を落とすからお前もそうやって飯を食っていられるんだ。
それを客の手を引っかいて・・・どうして平然と飯を食っていられるだ?
・・・お前になんか飯を食わせたくないね。
また手を出すと引っかかれるから、この棒を使って、、、高麗?!!
そんな馬鹿なことは無い。いやでもこれは本物の高麗の梅鉢だ。
何だってこんな物があるんだ?
五枚一組だって千両はくだらない、一枚だって二百両は・・・。
成程な始めは五枚一組でお金持ちが持っていたんだ、
流れ流れて落ちぶれた奴が一枚、一枚と流してばらばらになってここに来たってんだな。
それにしたって知らないって恐ろしいな、こんな所で猫の皿になってるんだからなぁ。
しかしついて来たな。ここで上手く言ってこの皿を手に入れれば掘り出し物の五つや六つに値する。

どうもお客様お待ちどう様で御座いました。
手拭いを

おぉありがとう
しかし暑いなぁ

いいえそうでは御座いません
手の傷が・・・

あっ手の傷
引っかき傷、あぁこんなの大した事じゃない
そう言えばおやじ、思い出したことがあってうちの嬶(かかあ)が大の猫好きなんだよ
俺は嫌いだから我慢させていたんだけど、この前長い旅から帰ってきたらやっぱり寂しいと言うんだ。
だから猫の一匹でも飼っちゃくれないかと俺に言うんだよ。
まぁ間違いが起こるといけないし俺
の留守中だけ飼って帰ってきたら他所にやるんだったらいいかと思っていた矢先にこの猫だ。
どうだろう。ここで会ったのも何かの縁だ。
俺は嫌だけど嬶の為に一つ譲っちゃくれないか。

左様で御座いますか。
手前も猫が好きじゃ御座いません。
ただうちのばあさんが好きなもので奥のほうにいっぱい飼っております。
ですから私が差し上げるとかそういう事は・・・。

あぁばあさんがね。
そういう事なら話をつけ易い様にしようじゃないか。
ここに三両ある。それでそのこの猫を譲ってくれるように話を付けちゃくれないか。

お客様何を仰っているんですか?!
こんな猫に三両の大金なんて!!

いやいや三両あれば文句はねぇだろ
だからばあさんにそう言って譲ってくれないか?

文句がるとかではなく、これはお客様・・・

良いってことよ
確かに大金だよ、けどこの猫を持って帰って嬶の喜ぶ顔が見れるなら安いもんだ

とりあえず話だけでもしてみますが。


おう!どうだった?

どうもこうも御座いません。
もうばあさんは大喜びで動ければここまで来てご挨拶に来んでございますが、
あいにく腰を悪くしておりまして。

挨拶なんか構やしない
知っての通り俺は猫が大嫌いだから、かごに入れてくれよ。
それとな、近くの宿をとって泊まるだけど猫だって飯を食べなくちゃいけない。
食い付けないものではなかなか食わないし、女中に猫の器をと言うと嫌がるからな。
そこで食っている汚い皿を紙に包んで間に入れといてくれないか。

有難う御座います。お優しい方で御座いますね。
なんだかんだと言いながら猫のご飯まで心配して頂き。
今すぐ奥からお椀を持ってきますので、、

いや、いいんだよお椀は、そこにある皿を包んで

そのお皿は重う御座いますので、お椀のほうが綺麗で軽う御座います。

重さは関係ないんだよ、そこにあるんだからこの皿を持たせてくれたら良いよ。

それは駄目なんで御座います

なんで駄目なんだよ。良いだろこんな汚い皿。

お客様には汚い皿に見えるかもしれませんが、こちらは高麗の梅鉢と申しまして、
五枚一組あれば大変な価値が御座いますが一枚でも二百両はくだらない品物で御座います。

はぁ??こ、こ、高麗の、、二百、、、、
これがか、そんなわけないだろ??

嘘では御座いません、これはちゃんと調べて頂いております。

し、調べてもらってるの??(このじじい知ってやがるんだ)
来るなよこっちに、懐くなよ、もうお前に要はねぇんだから!
おい、なんでそんな高価なもので猫に飯を食わしてるんだ?

あぁそれで御座いますが、このお皿で猫に飯を食わしておきますと
どういう訳か、時々猫が三両で売れるんで御座います。

NHK落語名人選2 ◆猫の皿 ◆唐茄子屋 [ 古今亭志ん生[五代目] ]



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2017年07月12日

テレスコ

本日漁を致しましたら、こげんな魚とれまして
村中で相談ぶちましたが何ちゅう魚か分かんねぇ。
今までとれたことねぇ
年寄りのものに聞いても知らねぇって言うんです。
次とれた時に何ちゅう名前か分かんねぇじゃ済まねぇ
お役人様に見て貰うべぇと思いぶら下げて来たで御座います。

本日この沖合にて珍魚が取れたというのか


手に取り上げましたがわかりません。
商売人の漁師が見て分からないのにお役人様が見て分かるはずがありません。
学問の力は別です。古い書物を参考に調べてみましたが分かりません。
分からんで済まないので追って調べおくと下げました。

お役人様が大勢相談の末にこの魚の姿を絵に写し取りました。
辻々に張り出して庶民の目にとめて懸賞募集です。
この度この沖合にてかような珍魚が取れた
この魚の名前を存じおるものは役宅まで申し出ろ
褒美として百両金を使わす。

お願い申し上げます。

なんだ

村はずれにおります田戸屋茂兵衛と申しますが、お貼り出しになりました魚の名を存じおりますので申し出でまして御座います。

おぉ珍魚の名を存じおるか
何と申す魚だ

絵を見たきりで品物を拝見致しませんと、
違うといけませんので念のため一応見せて頂きたいと心得ます。

念の入った話だ
見て取らせよ

存じております。

何と言う魚だ

これは「テレスコ」と申し上げます。

なにテレスコ??

そうじゃない、違うだろうと言えない。調べるお役人が知らないですから。
これはうまく考えました。テレスコじゃなくっても何でもよい。

御同役、あれはテレスコだそうです。

え?

テ、レ、ス、コ

テレスコで百両は高いなぁ、、、


百両やりますとよろこんで引き下がりました。
この事をお奉行様へ申し上げます。
上に立つものはお頭が違うものです。

然らばこの魚を干してみろ

乾燥いたしました。
乾燥いたしますと形が全然違います。
これをそっくり紙に写しましてまた辻々に張り出しました。

この度この沖合にてかような珍魚が取れた
この魚の名前を存じおるものは役宅まで申し出ろ
褒美として百両金を使わす。

また辻々は人の山です。

お願い申し上げます。

なんだ

村はずれにおります田戸屋茂兵衛で御座います。
お貼り出しになりました魚の名を存じおりますので申し出でまして御座います。

出てきました。

来たか、入れろ

何と申す魚だ?

それが絵を見ましたきりで、品物を拝見致しません
もしも違うといけませんので、念の為一応見せて頂きたいと心得ます。

如何致しましょうか。
品物を見せろと申します。

見せたらよい

宜しゅう御座いますか?
その魚だ。しかと見よ。

これなら存じおります。

以前の珍魚を「テレスコ」と申した田戸屋茂兵衛と同人だな

左様で御座います。

如何致して多くの珍魚の名を存じておる。

代々海藻問屋を営んでおり如何なる珍魚の名をも存じております。

この度の魚の名も存じおるか?
しかと見よ。

存じております。

何と言う魚だ。

これは「ステレンキョウ」と申します。

田戸屋茂兵衛、よく承れ。以前尋ねる魚テレスコを干しただけだ
一つ魚にて上を偽り百両金騙る不届きな奴
吟味中自牢を言い渡す


牢屋に放り込まれ、これからテレスコ裁判

田戸屋茂兵衛、面(おもて)を上げい
尋ねる魚「テレスコ」を「ステレンキョウ」と偽り
百両金騙った不届きな奴、打ち首申し渡すぞ

打ち首で御座いますか・・・。

忌野際(いまわのきわ)に申し残すことが在るならば何なりと申せ
一つだけ聞き届けつかわす。

別にこうと言って御座いませんが、ご憐憫のお沙汰持ちまして
忌野際に女房子に一目お引き合わせ程を願わしゅう存じます。

聞き届けつかわす。
田戸屋茂兵衛の妻子を呼び

おかみさんがやつれた姿で乳飲み子を抱いたままお白砂へ

あなた・・・。

おぉお先か。大層やつれなさった
何か家に変わったことは無いか

別に変った事とて御座いません。
あなたがお牢に入ってから一日も早く青天白日の身になりますよう断食を致しました。
乳が出ませんで、乳飲み子が可哀想で御座いますので断ち物に変えました。
只今では蕎麦粉を水で溶いたものばかり頂いております。
それが故にやつれました。

お前にまで苦労をかけてすまない、、私は打ち首だ
言い残すことがたった一つある・・・
お前が抱いている子供が大きくなってもイカを干したのをスルメと言わせるな


昔はお奉行様へ控訴という事はできません。
しかし倅(せがれ)への遺言という事には差し支えありません。

生と乾物で名前が違うものが数多くあります。
つまりこれは生でテレスコ、干してステレンキョウという意味なのです。

これにはお奉行様も感心しました。

田戸屋茂兵衛、言い訳分かった
本日無罪を言い渡すぞ

無罪で御座いますか!!
有難う御座います。

イカの干したスルメ一枚で命が助かりました。

助かるわけです。
火物(干物)断ちをしたのですからあたりめぇの話です。

三遊亭圓生[六代目]/佐々木政談/てれすこ 【CD】



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