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2022年12月28日

日本人の生物観 日本の神5

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日本人は、日本の融和な自然に接して、それをよく観察したわけですね。
日本人の自然観察力っていうのはもう世界でも群を抜いておりまして、例えば人間というのは他の動物と同じである。この観察だけでも大したもんなんですね。

どうしても人間っていうのは自分勝手ですから、自分たちは他の生物と全く違うというふうに思ったりしますが、もちろんその頃には遺伝学なんてないわけで、イギリスの進化論は19世紀ですから、到底その紀元前なんかには全くそういう概念がない。
もともと遺伝という概念すらない。その時に、古事記なんかから推察される日本人の自然に対する目を見ますと人間ももちろん猿、ニホンザルですね、それから鹿も狼も狐も、それから虫けらですね、それから植物までも、同じような生物なんだという認識が非常に強いわけです。

後にインドの生まれ変わりっていうか輪廻転生という概念が、概念としては入ってくるんですが、私の見るところ日本はもう昔から輪廻転生っていうか生物の命というのは回り持ってるっていうそういう考えがあるんですね。

生物学をよく知らない人が、命あるもの必ず死ぬなんて言ってるんですけども、そんなことはないんですね。
38億年位前に生命というのが誕生して、10億年か12億年ぐらいにオス、メスっていうのが誕生するまでは、子供というのがいませんから。子供がいないってことは生きているものは死ねないっていうこと。原則としては死ねないわけですね。
どうしても死にますけれども、死んだら子供がいませんから絶滅してしまうわけですね。
ですから今とはちょっと違う考えで、死というのを迎えたわけであります。

子供ができるようになってから、死っていうのは本当は、今のその生物の死というのは、本当の死じゃないんですよね。自分の体の一部を子供に渡して、それで一部ですが、その他は体細胞はやり直さなきゃいけないんで、それで自分が死ぬということであって、本当にこう絶滅してしまうという、死ぬということではない。それも良く分かっておりました。
その意味では輪廻転生という概念も、日本とインドなんか、ほぼ同時期にできたものと考えられます。

すべての生物が同じである。同じレベルである。むしろ生物以上にですね、前回にお話したように、山でも川でも海でも誕生して成長して死亡する。だからもうみんな同じなんだと。それが非常に強い力、絡合力ですね、それによって結びついて、現在のこの世の中を作っている。そしてその一因が自分なんだ。で自分の周りに家族がいて、その家族の周りに地域があって、地域の周りに日本という国があって、それで日本という国の境がちょうど海だったものですから、それが概念の構築にはすごく役立ったわけですね。

従って、古事記なんかの中にはですね、生物を非常に深く観測した跡が見られます。
それはやがて神話となって現れているわけですね。

例えば男性と女性とを見ると、見かけ上は男性の方が強いように見えるけれども、実質は女性の方が主導的に動いた方がこの世の中はうまくいく。
これがイザナミ、イザナギの物語だとかですね。その他に反映してまして、それで常に女性が積極的で、男性がそれをサポートするという位置づけで、男と女の間は考えました。これは世界でも日本だけですね。

天照大神でも、天照大神が女性で、それを軍隊がサポートするってそういう形を成しておりますね。
これはどういうことかと言いますと、同じ生物、同じ人間といっても、人間と猿、人間と狐、というものの差と男と女の差っていうのは、それほど質的に違うもんじゃないっていう考え方なんですね。
同じような違いがあるんだと。それはオスとかメスとか、狐とか人間とかいうふうに区別するのがいけないんで、そのままありのまま見ようっていうことなんですね。

人間のオスは筋肉はあるし、論理的な頭も持っているけれども子供は産めない。子宮がないから子供を産めない。それから人間の男性にも乳房の乳首の跡が、痕跡がついてますが、乳はもう出ない。
そういうことをきちっと考えますと、やはり子供を産んで育てるのが女性であって、決して男が子供を育ててはいけない。これは浅はかな人間の頭で考えるんじゃなくて、自然が教えてくれたことを、そのまま素直に受け取ろうっていう考え方ですね。もしも女性が子供を産んで、男性が子どもを育てるのが一番良ければ、自然は女性に子宮を付けて、男性はおっぱいの出る乳首を付けるはずなんですね。ですけどそうじゃなかった。それはなぜかっていうと、自然が子供というものを大切に成長させるためには、産んだ性、つまり女性が育てるって事も両方する必要がある。従ってその分だけ、女性は仕事が増えますからね。そこで男性が命をかけて戦ったり、餌を持ってきたり、土木工事をやったりという役割をしなきゃいけない。そこで男性には筋肉をつけたと。それから頭脳で判断しなきゃいけないので、男性の頭脳を大きくしました。

男性の頭脳を大きくして、少しずつ少しずつ大きくなりますね、男性の方が。男性の方がなぜ頭脳が大きいかっていうと、男性の方が頭脳を使わなきゃいけないわけですね。つまり女性が子どもを産んだり育てたりしている間、男性は頭脳を使って外界と勝負しなきゃいけないので、男性の頭脳が大きくなります。しかし男性の頭脳が大きくなって、大脳皮質の体積が増えてくると、だんだん生物というものから離れてきます。男性の頭脳が1,000cc を越えたところで、火を使えるようになりますね。火というのを使うということは、ものすごく状態が変わったということですね。

どんな生物でも火を使うのを怖がるんですが、男性が火を使うのは、まず怖がらなくなる。これがだいたい今の研究では、180万年から200万年ぐらいでそうなったんだろうと考えられますね。

それと同時に、火を恐れるっていうのは本能の通り生きるっていうことなんで、本能が一部失われますね。その一つが男性の性欲が失われるっていうか、積極的性欲から誘導型性欲に変わりますね。それに基づいて女性がお化粧する。そういう変化も現れまして、そういう中で、日本の自然に対する考え方が決まっていきます。

もっと細かいところで決まりますね。現在の生物学でも分かってないのは、女の子は100人産まれますと、男の子が103人ぐらい生まれるんですね。これは男の子の遺伝子の中に、やや悪い遺伝子が含まれているってことと、それから男の子の方がちょっと乱暴な行動が必要なので、そうすると命を落とす可能性があると。
そういうことから、だいたい18から二十歳の生殖年齢になったときに、女性が100人いれば男性が100人になるように調整して、両親が子どもを産むんですね。つまり男の子の方を3人多く産んで、3人多く死亡するということなんですが、そういう事がなぜ行われるのかというようなことも考えまして、人間が子供を産む時には、男性が積極的にアプローチしないと奇形児って言いますかね、昔はヒルコと言ったんですけど、そういうものが産まれるというような、非常に鋭い、今の生物学でも必ずしもはっきりしてない所まで考えが及んでおりまして、これが古事記なんかにも反映しているという、驚くべき事実があるわけです。

いずれにしても非常に詳細に自然、稲の発達。昔はですね、稲が多分CO2を吸って、それで米粒にして、その米粒の炭素を人間が食べているというようなこととかですね、我々の体が大地からできたもの、日本の大地からできたもの、日本の海からできたものからできているというような本質的なことはですね、むしろ現在よりか、現在は頭でっかちで、何でも自分の頭で考えて、自分の頭がなんか、あたかもしっかりしているように思っているという、そういう状態ではなかった。もう少し人間は謙虚であったと思うんですね。

いずれにしても最終的には、自分を作っているものは水平軸でですね、大自然なんだ。山があり川があり、海があり、魚がいて、狐がいて、ミミズがいて、そして雨が降って、というですね、全体の風が吹いて、その全体の自然というものが自分を包み込んで自分というものが存在する。
こういう考え方が非常に強いわけですね。従って自然と共に生き、自然と共に死んでいくと。死んでいくっていうのは別に、生まれる時に、自分は生まれようと思って生まれたわけでないので、死ぬ時も同じように自然の中に溶け込んで死んでいく。そういうのは自分であるってことで、自然を神様というかですね、日本はですね、神様とは思わなかったんですよ。神っていったら天照大神とかそういうのは神であってですね、それでその自然っていうのは抽象化された神なんですね。だからヨーロッパと違うんです。ヨーロッパの多神教というのは山を神と思うんですが、そうじゃないですね。山も川も、全部含めた抽象概念を持って神としたと。これが日本の一つの神でありまして、これから無言の教えを受ける。これはまた大切ですね。

自然が自分たちに語りかけているから私たちに道徳ができるんじゃなくて、私たちの方から自然の方にアプローチして、必要な道徳を獲得するっていう、世界でも日本だけのですね、能動的、道徳獲得方法というものを作り上げたというのも、日本の特徴であります。

武田邦彦 ヒバリクラブ
【武田邦彦のブログ】2022年7月27日 シリーズ「日本」第二章 日本の神 D
https://youtu.be/p7z0yF4JuMI



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