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2022年12月25日

自然と人間とのつながり 日本の神3

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現在の我々は、自然を無機物のように見ているわけですね。
これは現在の我々の科学がまだ未完成で、山とか川とか海とかいうのが、どのような全体的な調和で動いているかということを必ずしも科学的には明らかにしてないんですが。

これは昔から、ヨーロッパのような合理的な国でも、ジャーナリストのマーチンという人が書いているように、山は生きてるんだろうか、死んでるんだろうか。

収縮活動で山が発生し、若い時の山は切り立っていて激しい。そこで流れる渓流も激しいし全体として荒削りである。これは人間の青年時代に相当する。やがて山はだんだん成熟し、山には木々が生え、川もゆっくり流れるようになり、山の端には色々な苔とかも生えて魚も誕生し、そこで鳥が木の上で鳴く。つまりこれが川の最も反映したときの状態で、これが人間でいえば青年期って言いますか盛りのある時ですね。ちょうどその川も盛りを迎える。それから山は少しずつその川によって削られて低くなり、また、なだらかになって優しい形になり、穏やかな山となる。これが人間で言えば老年期である。
さらに少し経つと、山はほぼ平らになって、そこでその山とか川の一生が終わる。
これを見ると一体、山とか川というのは生きているんだろうか。生きていないんだろうか。誕生して青春期を迎え、栄えが頂点があり老化して衰えて死んでいく。これは全く生物と同じではないか。それでは山がなぜ生物でないかというと、例えば子供を産まないとか動き回らないということがあるけれども、生物でも全く動き回らない生物もいる。生きているというのと山とどこに関係があるんだろうか。
という記述を、かなり詳細にいろんなものについてしております。

もちろん古代の日本人は、長い尺度で山を見ますね。それから川を見る。それから川と海の関係を見ますと、海と川は非常に強く関係していて、川の流れの海に注ぐところは、海と言っても川の注がない海のところと大きく違い、それはまさに躍動しているように見えたでしょう。

そして人間の一生はその頃は、大体20歳から25歳くらいだったと推定されますが、平均寿命が、その中でも父母また祖先から色々な自然のことを聞き、そして目で見て観察する。自然への観察の力っていうのは、今の我々とはもう比べ物にならないほど強かったと思います。
それは自然と今言いましたけども、今言ったのは例えばお天道様である、太陽である、月である、まあ空を見るとですね、今と全く違う全くキラキラとした、螺鈿(らでん)のような輝いた星を見ておりましたし、それからやはりなんてったって風の音だとか川の音を、雷の音、それはもう今の我々とは全然違う強さでもって、当時の古代日本人には響いたと思いますね。

それからそういう無機物とまた違って、植物もまた日々、花が咲き枯れていく。
例えば晩秋ですと、だんだん葉っぱが落ちて枯れていく姿を見てですね、自分の一生との関係を非常に強く感じたでしょうし、また春の花、秋の花を見るにつれてですね、多くの感情が湧いてきたと思うんですね。

そしてまたその動物と絡み合うようにして昆虫がいて、蝶が飛んで、そして大型動物が住んでいる。まあ日本ですから最も大型動物って言いますとクマだったと思うんですが、鹿もずいぶんいましたし、狼もいました。
その他の小動物ですね、民家の近くにはキツネとかタヌキ、イタチというようなものがいっぱいいましたし、それらによる害も受けながらまたメリットもあったと言う、そういうこう、今の我々とは比べ物にならないほど自然と人間との距離は近かったわけですね。

そこで自然の全体の動きですね、これは山とか川とか海といった、それから天体といったものとそれから動物、植物の全体像を自分たち人間との関わりにおいて直感的にもまた解析的にもつかんだと思うんですね。
その点ではそれらを結ぶ、まあ私が言っている絡合なんですが、それは現代科学でもやっとやっと感じることができるものであります。
例えば九州では、鹿児島の方でどんぐりの生育が悪いと、博多の方で動物の数が減るというようなこともありまして、これはドングリが減りますと山の食料が減るので、餓死を免れるような感じで動物の数があらかじめ減ったりいたします。これは非常に奇妙なことだというふうに言われることがあるんですが、奇妙であるということは我々の科学ではまだ分からないことを言うことが多いんですね。

一部分かっておりまして、例えば植物におけるエチレンのような存在ですが、植物ではエチレンがいろんな情報の伝達物質で使われておりまして、植物からエチレンが放出されるとその放出されたエチレンを非常に高感度で他の植物がそれを受け取ってですね、そしてどういう状態になったかっていう状態の変化をですね、感じ取るというのは現代の科学でもやってやっとわかる範囲であります。

植物でもそうなんですから、動物ですと特に敏感にそれらを嗅ぎ分けるということがまあしてるわけですね。いずれにしても、その全体の像はですね、今まで我々が感じるよりか、はるかに敏感であるということですね。
そしてその中における人間もまたそうで、例えば我々は森林浴という言葉を作っておりますが、森林浴がなぜ森林に入ると人間の心が穏やかになるか。もちろん現在の科学ですから、森林に入った時のアドレナリンとかそういうものの分泌の状態の変化、もしくは心の変化を測定して、それと森に入った時に人間と接するものがどういうものかということを分析いたします。

木の中心部を成している芯材っていうところがあるんですね。これは木というのは動きませんから、太陽の光を十分に受けることができません。したがって太陽の光だけで木は生息してますから、極めて厳しいんですね。したがって木というのは基本的には、数年生きると全部細胞が死んでしまいます。しかし木が太くなるためには、ある程度細胞数が必要なものですから、木というのは一番外側に皮がありますね。その内側に形成層っていう、これが本当に活発に生きている細胞層、これはまあ普通は1層ぐらいしかありません。皮が3層、形成層が1層、そしてその中に10年分ぐらいの生きている細胞があります。生きていると言っても全部が生きてるわけじゃなくて、最低の細胞だけが生きてます。普通は腐ることを防ぐための細胞が残って、ほとんど98%ぐらいの細胞が死んだ状態で芯材を形成してるって場合が多いんですね。それからさらにその内側、それが10層ぐらいあります。その内側の細胞、樹木の芯の部分は少し黄色とか茶色なんですけれども、それは防腐剤を出しまして、全部の木を殺して、そして腐敗しないように防御する、その色が茶色なんですけども、そこが少し芳香臭っていうですね、匂いがします。
10年ぐらい前までは、この匂いが人間を穏やかにさせる。つまり森林浴の正体であると言われていましたが、最近の研究ではそうではなくて、木々の葉っぱが擦れる音で、しかも人間の耳では聞こえない音、今は聞こえない音ですね、おそらくはこれはかつて古代の、今から5,000年位前の日本人にははっきりと聞こえたと思うんですが、その高い周波数の音が人間の耳もしくは人間の皮膚に、直接働きかけて、人間の心を穏やかにすると言われております。

これは人間が海に浸かった時にはもっとそうで、海からのいろいろな刺激によって、人間の精神が極めて穏やかになります。
こういうことを通じてかつての日本人は自然と自分とのつながり、それから大自然同士での絡合ですね、それぞれのつながりを強く感じていたと思われるんですね。従って山も川も海も太陽も月も、月なんか特にそうですね。満月、新月における生物の動きというのは非常に特殊なものがあります。
そういったものを感じて、今とは違って一体となった自然の中に自分たちは住んでいるんだという、非常に強い信念があったと思われます。
これは信念というか、むしろそれが本当なんですけども、現在は人間の文明的なものに取り囲まれ、我々の感受性は極めて低くなってしまったという風に考えるのが正しいかと思います。

武田邦彦 ヒバリクラブ
【武田邦彦のブログ】2022年7月25日 シリーズ「日本」第二章 日本の神 B
https://youtube.com/watch?v=cBj8klspfks&feature=shares



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