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2022年12月22日

恵まれた自然の中で日本人の精神的支柱は育まれた 日本の神2

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だいたい紀元前5,000年ぐらい前から、日本人の精神的支柱となる考え方ができてきたと思います。
もちろん瞬時にできたわけじゃなくて、かなりの時間を経る必要があった。一つは一人の胸の中、もしくは小さい集団の心の中に、ある考えができるのですら、若干時間がかかったでしょうけれども、それがさらに日本、その頃の遺跡の状態から見ますとだいたい九州から瀬戸内海、東海地方、関東、それから東北の一部ぐらいまでが文化圏でしたので、そこのところで次第次第に交流が行われて、統一された考え方が出てきたと考えるのが適当で、それにはかなりの時間がかかっただろうというふうに思います。
まだ全くそういう研究が行われていませんので推定ですが、千年位はかかったかなと思いますね。

そうしますと、4、5千年前、紀元前4、5千年位から始まったそういう日本人の精神統一活動っていうのは、例えば紀元前2、3千年前位ですね。紀元前2、3千年のところでできたと思います。

これはおおよそ、そういうふうに推定するのは、気象の状態とか、日本の国土の動植物の状態が収まり、人間が活力的になり、食料も安定し、かつまあ神話のレベルですが、だいたい日本人の精神的構造っていうのは紀元前千五百年ぐらいには固まってきたというような神話的な記録もありますので、そういう点ではだいたい妥当な所っていうと、紀元前2千年から3千年程度でそういう思想が固まってきたと思います。

これと諸外国と見ます。諸外国ではその当時メソポタミアを中心として、精神的な発達があり、だいたい紀元前千年頃に、モーセなり、ゾロアスター(※注1)と言った精神的活動が急激に見られるようになりますし、それの前では、古代エジプトにおいてはだいたい紀元前3千年から4千年頃に見られますので、だいたい人間の発達というのはだいたい同じ歩調を取りますので、そろそろその頃に、人間の精神的な発達が進んだと考えるのは、まあまあ全体の歴史から言って妥当ではないかというふうに思います。

そしてその時に2つの軸がありました。これは各国ともその地形によってすごく地形、気候によってすごく大きな差がありまして、当然古代エジプトではナイル川というものを中心に文化が発達しますので、ナイルの神もしくはやや砂漠的な気候の中で育ちます。
それからメソポタミア地方では現在のような乾燥状態ではありませんが、しかしかなり自然は厳しかったものですから、厳しい神からの怒りといった表現が相当多く取り入れられるわけであります。

そういうようなことですね。で、そういうその人間の精神的な最初の状態というのは固まっていくんですが、そういう意味では日本では日本の自然、これはもうエジプトなりメソポタミアなり、インドなり中国といった当時割合早い時期に発達した文化の中では、もう特異的に穏やかでありました。
これは私が前から注目していたんですけれども、地球上で温帯の島国というのが日本だけであり、かつ37万㎢っていうのは小さ過ぎもせず、大き過ぎもしておりません。

小さ過ぎるって言うのはどういう状態かといいますと、人間のように1メートル50から2mぐらいの動物が力を持ってくると、他の動物とか自然がその動物に圧迫されて、衰退していくようになります。
例えば典型的にはガラパゴスのようなものですが、あの位小さくなりますと、ほぼほぼ単一の生物種が育つということになりますね。
それから大陸からの離れ方もそうですね、1,000キロ、2,000キロというように離れると、ほとんど生物は往復できませんので、そのところに固有の種だけになります。

ところが日本は37万㎢というように、まあかなり大きい島であり、かつ陸から100キロとか200キロと言った距離にあって、そういう面でもかなり隔絶してるけど、海によって分断されているけれども、交流は可能であるという非常に適切な距離にあったということですね。

それからだいたい動物というのは、大型動物がその地区、地方で勢力を伸ばしますと、大きさが限定されてきます。
例えばスマトラのトラが有名ですけども、スマトラトラっていうのはかつてスマトラに人間がほとんど住んでいなかった時には、スマトラトラがスマトラ島を支配しておりましたが、人間がスマトラ島に徐々に移動するに連れてですね、スマトラトラがそれに比例して下がっていきます。
まぁ簡単に言うと、人間の数+スマトラトラの数が一定になるっていうことですね。足し算をしたら一定になるようになります。
まぁ日本の場合はですね、またこれについてもやや特殊な状況にあって、山谷が多いんですね。つまり山と山の間の谷はですね、その谷から次の山を越えて別の谷に行ったり別の平野に行くのにかなり大変なもんですから、まあそういう意味では多様性が保たれるわけですね。

動植物の多様性という点では日本は格別に多いわけです。例えば秋の紅葉ですと、紅葉は大陸ではだいたい3種類ぐらいの紅葉になるんですけども、日本は昔から錦織りなすというように27種類ですね。ですからこれはどうしてかって言いますと、37万㎢で山谷が大きく、山林の占める面積がだいたい7割、川も急流であり、谷も多いというそういう特別な日本列島の構造によります。これは日本列島が割合近年、割合近年と言っても地質学的ですから3,000万年とか2,000万年前なんですが、大陸から離れて東に移動し、そして新たに形成された島なもんですから、まあそういった複雑な地形をしているわけです。そういう地形の中では、極めて自然は多様でありかつ穏やかである。

ここで穏やかっていうのはですね、最近のその近代都市国家における被害というのは、台風にしても地震にしても非常に大きいんですね。しかしかつて、まあ人間がもちろんビルなんかはなく密集した人家でもなく、それからもともと自然の脅威を避けて住むという基本的な考え方があるときにはですね、災害は大きくないんですね。これのはっきりとした日本以外の記録では、カリブ海のハリケーンがあります。カリブ海のハリケーンは最近大きくなった、大きくなったって言うけどそれは違ってて、昔の方が大きいんですね。気圧とか、風速とかいう点では、かつてのハリケーンの方が大きいんですが、被害は近代の方が全然大きいんですね。それは人類が密集した土地に住み、それもしかも海岸線とかそういう比較的危険なところに住んだということの結果であって、自然現象そのものではないんですね。ですからまあ日本の地震とか日本の台風、その位は、まあ悠々と回避できるわけです。

これはまあもう一つのあの証拠を挙げますと、この前の大東亜戦争後、沖縄がアメリカ軍に占領されていましたが、アメリカ軍が沖縄の人が谷間に住んでるのを一時非常にバカにしまして、日本人とはどうしてあんな暗いとこに住んでんだろう。もっと快適なところがあるのに、と言って、丘の上に住宅を建てましたら、次の夏に全部台風で吹き飛んでしまって、それでああなるほど、日本人がそういう所に住んでいる理由が分かったということがあるわけですね。
現在沖縄の建物は全部コンクリートでできておりますので、比較い風の強いところにも建っておりますけれども、昔は鉄筋コンクリートで家を造るってことはそれほど容易なことではありませんでしたので、したがって谷間に作ったわけです。
まあこれは人間の文明というのがですね、かつてはまあ自然に従って生きるということだったわけですね。したがって日本の自然というのは、今人が考える地震とか台風と言ったものは、それほど脅威ではありませんでした。

もちろん各国ともそれはありまして、アメリカでもカリブ海のハリケーンありますし、非常に強い竜巻だとか気候の変動ですね。それから暑さ寒さは大陸気候ですから、物凄く激しいわけです。これは砂漠化が進んでくるところもそうですので、世界的にみて日本の気候が、平均として世界平均よりか激しいということは全くありません。
もちろん中学校で習うように、周りが海洋に囲まれておりますので、海洋の影響で非常に穏やかであり、かつ雨が適切に降り、そして川が氾濫するったって、川が氾濫するところに住んでなければいいわけですから。

そういう知恵をわずか出せばですね、人口は非常に、何百万人というぐらいの少なさでしたから、十分に土地の広さはあったということで、安全な場所に、自然の中に隠れるようにして住む。そうすると、日本の自然というのは非常に優しかったということで、日本人はまず、この母なる大地と自分達を包んでくれる優しい自然というものをよーくよーく見たと。これがよーくよーく観測して、みんなで話し合って、おそらくはですね、そして自然に対する自分たちの考えをまとめて、それを精神的な支柱の一つにしたということが言えると思います。

武田邦彦 ヒバリクラブ
【武田邦彦のブログ】2022年7月24日 シリーズ「日本」第二章 日本の神 A
https://youtu.be/Un_xFLNIJyw

※注1 ゾロアスター イランの宗教であるゾロアスター教の宗祖。ゾロアスターのドイツ語読みがツァラトゥストラ。


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