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2022年11月18日

日本の自給率の低さを倫理面から考える 食と添加物10

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今日は科学教室、食と添加物の基礎編の最後になります。第10回目になりますね。
自給率と倫理という少し硬い名前がついております。
日本は非常に特殊な国っていうか、現在非常に特殊な国で、何かこう日本の国内しか見てないっていうかですね、国際化の時代と言っておりますが、さらに言えば自分だけしか見てないという、若干ちょっと情けない国民になってしまったんです。それはこの食料自給率とか添加物でもよく現れているんですね。

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この図はちょっと難しい図ですが、根気良く説明します。横軸がその国の人口で、縦軸が自給率です。
縦軸のところに横に黒い線が引っ張ったのが自給率100%のラインです。ですからこの100と書いてある横の線の上が自給率が100%以上の国ですね。
インドがギリギリですが、あとアメリカ、ドイツ、フランス。ここら辺が人口が多い国で、自給率が100%超えてる国ということになりますね。
それでこの人口が多くなるに従って、この上の方に曲線があるわけです。それがなだらかに100に近づいてますね。
それから食料自給率が低い方は、この下の方。人口の低いところはすごく低いところがありまして。それはなぜかと言いますと、人口が100万とか500万とかいう国は、例えば食料自給率が低くても何かの時には周辺から食料を買うことができますね。だいたい世界人口が70億人ですから、70億人もいれば、それがいつも毎日毎日食事をしてるわけですから、インドとか中国のように10億を超えるような国は、自分のところで自分の食料を確保しておかないと。
例えば中国が大飢饉に陥って食料がもうなくなったっていう時に、他の国が一所懸命中国を助けようと思っても、助けられないですよね。ところがまあ小さい国、この図で言えば左の方、人口の少ない国は食料が余ったと言っても量が少ない。食料っていうのはその国の人口が少なければ量も少ないわけですから。ですからぶれててもいいわけですよ。それで結果的にはこの図で示しているように、人口の少ない国は割合と食料が過剰にある国と、食料が少ない国との2つに分かれてるわけですが、人口が大きくなると、食料自給率は、ほぼ100%になっていくということになるわけですね。

世界のどの国もそれに入ってるんですが、日本だけがちょっと特別なところにありますよね。これは一般的に言われる日本の自給率は40%というよりか、もっと低くなってますが、これは理由がありましてね。厳密に食料自給率を見ますと、例えば豚を飼うときに、アメリカからトウモロコシを買ってその豚に食べさせるっていうと、豚肉1キロに対してトウモロコシを4キロ買わなければいけません。牛肉の場合には牛肉1キロに対して11キロの穀物がいるんですね。従って本当にその国がどのくらいの自給率かっていうときは、豚肉とか牛肉1キロを国内で飼育したということを計算するんじゃなくて、その豚を飼育するのに必要だった穀類も食料自給率に入れるかどうかとか、こういうことが1つずつあるんですね。それも入れますと、実はもっと低いということになります。それでそれがプロットされております。
実は日本はもうちょっと低いと言ってもいいんですね。っていうのは漁船が海に出てって魚を獲ってくるとか、それから農薬を撒くとか、それからビニールハウスを作るとか、そういうの全部エネルギーがかかりますよね。そのエネルギーも、外国から買ったものも食料自給率の計算の中に入れますとね、もっと低くなるんですね。ですから日本は食料自給率がもう本当に低いと言えるんですね。これは世界で特別だと言えるわけです。しかしこれだけ食料自給率が低くても、日本には食料があふれてて、いくらでも食べることができるわけですが、これは日本が工業生産が強いからですね。

例えば自動車をよく売るとかそうことになるわけですね。だからもし日本で自動車産業なんかが全部ダメになってしまうと、食料も入らなくなるっていう、そういう関係にあるってことをちょっと頭に入れといてほしいんですね。
それでそうしますと日本だけが1億2,500万人もいるのに食料自給率が、まあ厳しく見ると30%とかそういった食料自給率で、よく平気だなと世界の人は思ってるわけです。しかもあまり道徳的でもないんですね。例えば食料がすごく少ないような開発途上国なんかから日本は食料を買ってるわけですけども、それはお金があるから買えるんですけどね。そこの国の人は飢えていることが多いんですよ。で飢えてますから、そういう国は有刺鉄線を畑の周りに張り巡らして、その国の近くに住んでいる人が日本に輸出する食料を取れないように、盗まないようにしてるわけですね。そして日本がそこからお金で穀類を、食べ物を買ってくるという、そういうことをしてるわけです。ですから、まあそれはあまり過度に道徳的に考えなくてもいいけども、やはりそれが日本人の頭の中にあって、ずいぶん外国に迷惑をかけて食料を輸入したりしてるので、日本人は少し食料については慎重にしなきゃいけないなっていう心は、私はいると思うんですよ。ところがもう今度は日本国内を見ますとね、ダイエットをやってる人が多いんですよ。

僕はダイエット、それは非常に食料が豊かならば、自分が必要な食料以上に食べて、そしてダイエットするという人も出てきても、それは悪くはないと思うんですけれども、食料のほとんどを外国に頼っている日本が太り過ぎちゃった。例えばアフリカのすごく食料の少ないところから金で食料を買ってきてということになると。
これ昔からよく言われるんですけども、ある村に非常に金持ちがいると。その金持ちが村でできた小麦を買い取って、パンを買い取って、そして悠々と食べてる。その村には10人ばかり、非常に貧困で食料が不足して、食うに食わずの人がいる。しかしそれにはもう目もくれないで、パンを食べてる。ある日すごく寒い日が来た。それでちょっと薪が足りなかった。じゃあそのパンをくべろと言って、屋敷の外には食べられないで餓死寸前の人がいるにも関わらず、自分の金で買ったパンだから暖炉で焼いていいだろうというのはダメだと、人間の道徳ではそうなってるんですね。それはお金でできるからって何でもやっていいっていうんじゃないっていうことを言ってるわけですが、まさに現在の日本はそういう状態なんですね。

私が実はこの添加物のこの危険性の問題についてやや冷たいのは、添加物っていったって、それほど危なくないよ、アメリカ、ヨーロッパの論文を使ってんじゃないの?とか言って牽制してんのはどうしてか。
1つには、現在のこのような食料自給率であって、世界の食料が足りないところから無理やりお金で買ってるような現状なのに、食べ過ぎてダイエットしてる人が多いとかね。それはもうネットなんか見るともうダイエット、ダイエットですからね。それをメタボと言い直したり、それで厚生労働省の役人が儲けようとしたりしてるわけですよ。
そうすると今度はダイエット食品の中の添加物が悪いとか、それからお菓子をサクサクと食べるために体に悪い添加物を入れてるとかいうことになるとですね、これは人間としての全体像というのは、非常に惨めなものではないかと思うんですね。

それからもう一つ私が思うんですけども、今まで日本が大変な時は、例えば少し体に悪いものも、産業としては少しごまかして売るとか、それからできるだけまあサラダオイルがあまり良くないもんだっていうことは隠すとか、さらにそういうことを放送しようと思った放送局に圧力をかけて喋らせないとか、そういうようなことをやってたわけですけども。それから素晴らしく高いホテルですと、大体食料っていうのは食材を100買って90捨てるんですよ。10だけ使うんですね。それはそうですね。ホテルに行ったらだいたい何でも良質のものが出てきますよ。それでお客さんがあれを食べると言ったらそれを出す。もうあの食品はありませんってあんまり言いませんよね。だからそれをじゃあリサイクルしよう、食品をリサイクルしようと言ってますけども、食品っていうのは基本的にリサイクルできません。当たり前ですよね。腐っちゃいますからね。ですからホテルで余ったものをリサイクルするっていうのは、言ってみればややペテンなんですね。嘘なんですよ。
で数年前にコンビニエンスストアが、まあ人気を得ようと思ってコンビニエンスストアで売り切れなかった弁当をリサイクルする。これもリサイクルはできないんです。つまりリサイクルっていうのはペットボトルをペットボトルにするとか衣服を衣服にするとかいうのはリサイクルですが、食品はどうするかというと、豚に食べさせるっていうのは一つは一応あるんですけどね。普通は畑に堆肥として撒く。そうすると堆肥として使うっていうのは100分の1も次の食品にはならないんです。ですから例えばコンビニで弁当が余った、それは畑の堆肥にしましたと。じゃあどのくらい次の食品ができたんですか。100分の1ぐらいできました。こういうことになるわけですね。しかしそれはやっぱり外国から100の食品を買って贅沢するために90を捨てて、その90から0.9とったとしてもですね、それはやっぱり100のうちの10だけ使ったものを10.9になったっていうだけなんですね。ですからまあそういう商売上、自分が何かいい子のように言うっていうのもいけないと思うんですね。ですからまあこれはこの図をよくご覧になってですね、個人としてもやっぱり食品っていうのは生物の命をいただくものであるというのはまず一つですね。

それから2つ目は世界中で食品は分け合ってやっぱり食べるのは基本であると。だから日本が工業製品があって、非常にいいからといって必要以上に肥満をしたり食べ過ぎたりですね、それからリサイクルなんか本当は全然意味ないのにリサイクルと言ったりしてごまかしながら、それから食品メーカーとか添加物メーカーとかそれからお菓子メーカーなんかもですね、やはりあの健康に良いものをやると。それでまた極端に今度は無農薬だとか、無肥料だとか言って、実はその裏無農薬ではやっぱり虫がつくからって隠れて使ってるっていうね、そういうここでその倫理というのを書いたんですが、やっぱり日本人としての誠のある農業、誠のある食品業、そして我々消費者も食べる方も誠のある生活というのをしていくことが必要だろうと。その上で添加物の安全性とか。それは安全性ですからいつでも必要なんですが、やはりバランスという考え方はあるだろうというふうに私は思っております。

武田邦彦 ヒバリクラブ
食と添加物(10)自給率と倫理【武田邦彦の科学教室37】
https://youtu.be/IWQo5Kl_gB4

グラフ出典
武田邦彦(中部大学) 2011年2月8日 特別な国:日本を考える(2)ノーテンキな国民性と穀物生産
http://takedanet.com/archives/1013801259.html



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