科学的哲学的論考で福島原発について考える: 武田邦彦先生の提言

2022年10月23日

科学的哲学的論考で福島原発について考える

原子力発電所については、非常に難しいんです。どうして難しいかっていうと、原発が難しいんじゃなくてですね、報道とかですね、それから僕は非常に残念なんですが、メディア、政府、原子力関係者も含めて、福島原発事故で相当なショックを受けてですね、その時にかなりまあ、ウソって言ったら失礼なんですけど、本当のことを言う勇気がなかったと言ったらいいでしょうね。それは被ばく限度の1年1ミリシーベルトばかりじゃなくてですね、原発事故の真相はですね、そのまま語られなかったってことですね。その後のメディアの取材もですね、本当に日本人としては恥ずかしいような、いろんな行動がメディア側にはありましたし、それから実施側にもあった。それは日本人の精神的な、誠実さの力っていうのが弱かったんじゃないかなというふうに思ってるんですね。
それで今まで原発推進とかですね、政府とか朝日新聞も含めたマスメディアとか文化人はですね、どちらかというと原発のメリットを受ける方なんですよ。エネルギーが、電気がもらえるとかいうのを含めましてね。ところが原発が爆発したりして被曝する人はですね、原発のメリットはそれほど受けられずに、被害だけ受けるという構造になってるんですね。これがやっぱり原子力発電所の難しい問題なんです。
それから私は原子力を研究している時にですね、原子力発電所というもの対してね、疑問を感じたんで、これはぜひ自分は原子力の推進をしているけれども、原子力反対の人の意見を聞きたいと思いまして、ずいぶん原子力反対派の人に接近したり、研究会に出席しようとしたんですけど、ことごとく、はじかれましたね。1回か2回はですね、原発反対集会っていうのに行ってみたんですけど、この原発反対集会に出ている方には誠に失礼なんですが、出てた方でもですね、自分を見直すということができる方もおられると思うので、あえて言いますとね、仲間内で気勢を上げてるって感じだったんですよ。せっかく私がそこに行ってですね、質問をしようと思っても、質問もさせてくれないっていう感じでしたね。ですからこれではねぇ、対立のための対立になってしまって、本当に国民のためのエネルギー確保ってことができないなぁと思いましたね。それは原発反対派側だけではなくて、原発推進の方もそうですね。

私自身はね、実に申し訳ないと思ってるんです。これは原発事故の直後から、私がずっと10年間言い続けてきたことなんで、よく知っている方も居るしは、私のそういう態度をものすごく非難している人もいるんですけどね。

私はなんで原子力の研究を始めたかというと、いろんな人の推薦があったんですが、やはりNHKの1972年かなんかの放送が、僕にものすごく大きな影響を与えたんですよ。石油がもう30年でなくなる。母親は石油がなくなったら大変だってトイレットペーパーを買いあさる。そういう、いわゆる石油ショックがありましたね。それで私は物理でしたから、これはもう日本はエネルギーがないから、石油も石炭もないからですね、もう大変だと思って、原子力がいいんじゃないかと思ったんですよね。若気の至りで。しかしそれはもうすっかりNHKにだまされて。その後、僕が洋書を自分で読んですぐ分かったわけですから、学生時代に洋書を読んでなかったのが問題だったんですが。洋書を読んでみたらですね、ちゃんと石油がなくならないということいくらでも書いてあるって事が分かったわけですね。実際にも1970年からもう50年以上経つんですけど、まだ全然石油がなくなる気配っていうのはないんですね。ですからあの当時の報道が、本当に間違いだった。
さらにその後、私の力が伸びて、その頃の色々な報道の状態を調べると、アメリカとイギリスの石油メジャーと言われる、石油を国際的に大量に使用するところがですね、石油の値段がその当時1バレル2ドルだったんもんですから、これをまあ10倍の20ドルに上げなきゃいけない、それで大儲けをしようと思って、石油がなくなるっていうキャンペーンを始めた。そのためには、学者にも金を渡し、彼ら白人のやる事っていうのは、特にアングロサクソンは非常に作戦的ですからね、当然下地を作るという点で、学者に金を渡して、石油がなくなるという論文を書かせる。さらに石油会社は、もちろん石油の値段が上がった方がいいもんですから、石油会社の技術者に解説を書かせる。それで国連にも働きかけて、石油がなくなって、世界の文化、文明がですね、スピードを落とすという、人間の成長は限界がある、成長の限界という本も書かせるために、マサチューセッツ工科大学を中心として、金をばらまくというようなことをやっていたという事も段々分かってきた。しかしこれは、欧米に住んでる記者とか、それから国連に関係する人たちはもう知ってたことなんですね。私は後で知った。私が失敗したなぁ、これは作戦に乗ったんだってことが分かったのは、もう35歳ぐらいで、その時は原子力にどっぷり浸かってましてね、なかなか原子力からすぐ足を洗えるということではなかった。もう日夜、化学ウラン濃縮という方法をですね、どんどんやってたということなんですね。ですからもちろん私のNHK嫌いというか、NHKに1回はこれ反省してほしいと。NHKが大きな番組をつくってですね、成長の限界のマジックっていうのはどういうマジックだったのか。その時に、石油メジャーはどう動いたのか。それから日本の文化人とか科学者はどうしたのか。何を日本は間違ったのか、っていうことを、NHKの社運をかけてですね、やっぱり真相をやらないと。私のようにNHKの報道によって、人生を誤ったっていう人がいっぱいいると思うんですね。いずれにしても誤って、それから原子力関係、エネルギー関係を一所懸命やりました。

原子力とかエネルギーをやりますとね、やっぱり社会的なことを知らなきゃいけないから、私の人生では20年くらいを研究として無駄にしましたが、私の社会を見る目というのはですね、原子力をやったことによって非常に広がりましたね。そして35歳ぐらいにはもう、薄々ですね、これは石油はずいぶんあるんだなということと、原子力発電所というのは危険なんだなということ、さらには日本が原子力発電所をやってるのは、原子力発電所で電気が必要なんじゃなくて、爆弾を作りたいんだな、という3つのことが分かってきましたね。つまり石油はなくならない。原子力発電所は危険である。日本政府が原子力発電所をやるのは、核武装のためだ。簡単にはその3つがですね、原子力発電がいいとかコストが安いとか、なんか最近ではCO2が出ないとかいうことを言ってる原因である。
しかしこれはものすごく力が強いんですよ。っていうのはですね、だいたい大雑把に原子力発電から出てくる電気を売るとですね、5兆円ぐらい儲かるんですね。しかし原子力発電所は危険の下で、手を抜いて運転すれば結構儲かるんですよ。ですから研究費と活動費、地元対策費なんか全部合わせますと、5000億円ぐらいを使ってもですね、まだ電気会社としては原子力発電所をやったほうが得だということになってたと。なるほどと。これはね、ものすごく強いなと。それからそこからの広告費なんかがあって、メディアも原子力発電には悪く言わない。朝日新聞の動きっていうのは、朝日新聞は常に表面上は原子力発電所反対だったんですけど、実は非常にそうではない作戦をとってたんですね。その朝日新聞の特殊な戦略ですね。朝日新聞らしい戦略なんですが、表面上は原子力発電所に反対のように見えて、実は原子力発電所を増やすことによって、自分たちの販売が増える。つまり常に原子力発電所の問題点を指摘することによって、国民を恐怖に陥れて、それで新聞を売るっていう作戦であるって事を、そのうち分かってくるんですね。で、もう43位になりまして、もうこれは、自分が自分の人生で、原子力をやるということは間違いであると思ってやめました。だからこの原発講座の難しいところはですね、ものすごく大きなウソを、私一人が真相を言ったから、みんなが納得してくれるかと。これは非常に問題なんですが、まあとにかく苦情は言わずに頑張りたいと思っています。

武田邦彦　ヒバリクラブ
【武田邦彦のブログ】2022年3月15日　科学的哲学的論考

原発講座（１）福島原発爆発の真相
https://youtu.be/_SVyvgiz-BQ

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