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2022年10月13日

風力発電は、実は自然に優しくないんです。

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太陽光発電をやれば、これは一番ひどいことになります。太陽の光を人間を含めた全生物で分け合って使ってますんで。
水力発電もずいぶん失敗しました。川の流れるエネルギーを人間が横取りするとどうなるか。これはもう実績がありまして、最近では、本当に自然を大切にしようという人は、水力発電なんてこと発言しないんですが、今でもじゃあマイクロ水力発電はどうだって、色々、まあごまかしにかかってるわけじゃないんですよね。要するに水力発電を作ったら、どういう自然に影響があるかということを、ちゃんと国も扱わないし、学会も扱わない。割合素人の人がこういうアイディアがいいんじゃないかっていうんですけど。エネルギーはね、あの毛沢東が一時人民製鉄と言って、大きな製鉄所を作らなくていい、ちっちゃいものをいっぱい作ればいいんだっていうんで、ものすごく多くの人が中国共産党のもとでやって讃嘆たることになりましたね。大規模な工業っていうのはやっぱり大規模にやらないとダメなんですが、大規模にやって自然が壊れるっていうのは、ダメなんですね。今日はその3番目で、風力発電をやります。

風力発電っていうのは、風を利用して電気を起こすものですから、皆さん風が無駄に吹いてると思うんですよね。それで風を使ってるのは人間だけぐらいのもんだろうと、こう考えるわけですけど、風は太陽エネルギーの変形で、太陽エネルギーとかそういう熱エネルギーが偏在するっていうんですけど、こっちは強くてこっちは弱いとかね、気圧の谷なんか出来まして、ひどい時には台風みたいなものが起こるんですね。台風みたいな膨大なエネルギーを持ってて、かつ人間が使いものにならないというものを使うんだったらいいんですけど、いつもいつも風が吹いているというようなところでですね、風力発電をやるっていうのは最初はスタンダードなことを考えなきゃいけないですね。こういうところならできるって言うんじゃなくて、まず普通のところに風力発電を作ると、どのくらいの規模の方が、10万kWなら10万kWの風力発電所を作ると、どのくらい付近の自然が痛むかということを最初に計算とか、そう優しいものをやっといて、それがこういうその台風を利用すればどうかとかいう話になるならいいんですけど、最初からどうも逆のことをやりそうなんですね。もちろん風を自然は大いに利用しております。一番利用しているのは木ですね。

木は葉の表面から水が蒸発しますね。これはあのお花の生け花なんかやってる人がよく知ってますけど、生け花って、水が減ってきますよ。それはなぜかったら木とか花の表面からね、水が蒸発して、それで樹木とか草木っていうのは体を冷やしてるわけですね。どんな生物でも活動するためには体を冷やさないいけません。これは熱力学の原理で決まってるわけですね。人間の場合は体温が37度で、周りが26度ぐらいですと11度の温度差がありますからね、そこで放熱するわけです。それと同じように木みたいな動かないものはですね、体温もそんな高くありません。高く保つことができませんからね。ですから風は非常に有力で、簡単に言えば風のエネルギーが半分になったら樹木の生育は半分になる。まあそういう簡単にもまずは考えていいでしょうね。

私がここで太陽光発電とか水力発電とか風力発電って言ってるのは、自然エネルギーが自然にいいという変な仮定があるわけですね。自然エネルギーを使うってことは、人間が自然エネルギーを横取りすると、まずこう言わなきゃいけませんね。水力発電だったらそれまで川に流れてるのをですね、砂利の運搬に使い、魚とか苔が生え、そして川の両側に染み込んでいく水ですね、これ染み込んでいくのも染み込んでいくエネルギーがいりますからね。染み込んでいく水を利用した木が生え、そして木に鳥が群れると、こういう風になってるわけですね。
風力発電の場合はまずは木の数が減る。それから地面が湿気ってきますね。風が少ないと土の水が蒸発しませんからね。それからもちろん鳥が飛ぶためには風が必要ですし、タンポポの種が飛ぶためにも風が必要だと、こういうことになりますね。だから風もやはり特別な風でなければなかなか利用できない。しかし風っていうのはかなり強くなったり、弱くなったりしますんでね。強くなった時のための強度を保つために風車を作ると、今度は風車が重たくなって、回るのが重たくなってですね、それでなかなかうまく回らないと、そういうことになりますね。そういうのをうまく風力センサーなんか使ってコントロールしてやるってことはできますが、そういう計算もなされていない、ということですね。ですから風力発電は何も影響がないだろうと思われますけども、やはり相当な影響を及ぼす。これは現在日本人がエネルギーを非常に使ってるからということになるわけですね。

こういうことを全体的に考えなきゃいけないっていうのが環境学です。日本の環境学があまり発達してないわけじゃないんですけど、国からのお金がすごく流れますので。自然エネルギーに国策でやったりですね、小池都知事かなんかが旗振ってる。計算は全くやらないよというようなことでですね、計算っていうか20世紀におけるその地球のね、環境の破壊っていうのは何が原因だったかというと、エネルギーだけ得ようとか、そういう風に都合よく考えた。
やっぱり地球の中で生きてるわけだから、自然も考えて、全体を考えて、ちゃんとやらなきゃいけないっていうのが、我々が主に1970年から2000年の間に勉強したことなわけですね。しかし喉元過ぎれば熱さ忘れるというか、最近の風潮の、今だけ金だけ自分だけという、そのことを考える。この場合は、自然エネルギーを使っても自然は傷まないという、自分だけ人間だけのことを考えてるって事ですね。
ですから風も非常に自然破壊になるということは確かであります。というかむしろですね、自然エネルギーを考えるもう少し国際的に筋が通ったという意味ではですね、人口密度の高い国は不利なんですね。自然エネルギーを利用するには。それは当たり前ですね。自然がものすごく豊かにあって、人間は少ないと言うんだったらいいんですね。それともエネルギーを使わないということか、なんですね。人間社会を見てみれば分かりますよ。アメリカみたいにものすごくエネルギーを人が使うところは都市部が発達しますね。そこで集中してエネルギーを使います。
誰もいないサハラ砂漠みたいなところで太陽光発電やる。これはまあいいわけですね。そこでは自然なエネルギーが溢れてて、それを利用する生物が、砂漠でもあったりして利用できない。例えば太陽光は十分であるけども、水がないとかですね、まあそういうようなことですが、高さがなくて川が流れないとかですね。まあそういうところは自然があるものに変していて人間が余ってるものを使うということはできますが。

日本くらいですね、とにかく37万平方キロメートルに1億2500万も住んでいるというようなところではですね、世界の中で自然エネルギーは一番利用が難しいわけですね。それに対して例えば日本は周りが海に囲まれてますから、だからCO2を出してもCO2が海に吸収されて温暖化にならないというそういう利点もあるわけですね。それから地熱エネルギーなんていうのもよく言われますね。日本は火山国だから、地熱のエネルギーが得られるって言いますけども、地熱をものすごく大規模にやって冷却水を大量に海岸から組み上げてくるというようなシステムでしたら別なんですが、温泉が湧くからとかいう程度でボウリングして、そこに地熱発電所を作りますと、日本人の使うエネルギーが相当なものですから。5万kWくらいの地熱発電所までは、まあ可能であるとも言えますね。ただかなり自然は破壊します。地下の温水を使っているものは随分いますからね。それが全部痛むんですが、それでは少し可能だと思います。ただやはり日本の電力を賄う中心的な存在、例えば10%、20%の電気を賄おうとすると、やっぱり大きな自然破壊になりますね。

1回、国の委員会に私が出てる時に、地熱発電を一所懸命主張してる先生がおられましたので、私が2、3質問しました。例えば冷却はどうするんですかと。熱があることは分かるけど、それから地下の水脈ですね。温水水脈っていうのはずいぶんいろいろに利用されているわけですね。もちろん温泉もそうですけど、それ以外にも利用されてますが、それとはどういう関係ですかと。発電するっていうのは高い温度と低い温度がいりますんでね。低い温度の方をどうするかということをご質問したら、その先生は非常に元気よくそれまで説明されてたんだけども、そういう検討しておりませんということで、その会議をそこで終わりになるというような事態もありまして、とてもダメなんですね。
自然エネルギーが悪いと私言うんじゃないんですね。自然エネルギーを利用するときには、20世紀の教訓を生かして、まず太陽光を利用しても付近の生物、特に希少生物なんかが絶滅しないか、それから太陽エネルギーのうち、人間が使うのはどのくらいか、それで環境破壊の影響はどうかということを考えてみる必要ありますね。まあ私が直感的に考えますと、石油とか石炭なんかを使って環境が破壊する分に比べれば、比べればですよ、人間が何かやって全然何も残さないってことはできないんですが、比べれば自然エネルギーの利用っていうのはものすごく大きく自然を破壊するということはほぼ間違いないだろうと思いますね。

石油とか石炭はですね、間接的にCO2を出して温暖化すると言ってる方もおられますが、それは非常に部分的なことなんですね。それに対して自然エネルギーを使うと、直接的に自然エネルギーが使えますから、それだけ自然が痛むってことですね。もちろんその結果としてはコストが高くなるわけですね。だからドイツは電気代が、昔10米ドル/kWぐらいだったんですが、今は3倍、40米ドル/kWぐらいになってますね。イギリスも結構寒いもんですから、電気を使うので、ちょっと大きな一般家庭ではもう、1年の電気代の消耗が100万を超えるという家庭も出てきて四苦八苦してますね。こういうのはやはり科学的合理性を欠いて、ただ感覚だけで水力発電だからいいだろう、水力発電でとことこと水車なんか回ってるといいように思いますが、それは人間が見た景色がいいんであって、そこに住んでる生物にとって、それがいいのかどうかってことをよく考える必要があると思いますね。
風力発電でどういう生物が傷むのかということを、1回ご自分で考えてみるということも大切ですね。木が少なくなるというのはいいにしてですね、トンビも飛ばなくなる、スズメが一体何で飛んでるんだろうか、スズメの役割とはどういうんだろうか、タンポポも蝶々も。それから洗濯物が乾かない、もしくは地面が乾かないということは、どういうことをもたらすんだろうか。我々はみんなそんなのはすごく少ないよなんつってるんです。少ないというのは一体どういうことなのかってことですね。これについては、なかなか今難しい状況にある。

例えばよくこの頃豪雨で雨がひどいと、1日で1ヶ月分の雨が降りましたなんてよく気象庁がテレビでありますけども、もともと雨というのは時々しか降らない。1ヶ月に降る雨を連続的に降るとすると、だいたい3日分しか降らないんですよ。3日しか降らないんですね。大体皆さんも分かるでしょうけども、雨の日ってのはトータルで時間で10分の1ぐらいしかないんです。たまには雨が降るんですね。それからまあ3日に1回とか5日に1回雨が降ってもですね、1日中降るって事はそれほど多くありません。まあ2時間、3時間ざあっと降ったら、あとはしとしと雨が降るぐらいのことはあるんですけどね。まあそういうことで、非常に自然に対して間違った表現を、最近テレビで出しますからね。普通の時には1ヶ月に3日が雨というぐらいですが、それが今度は3倍で1日で降りましたって言ったらよく分かるんですが、気象予報士が気象によく知ったような感じをしてですね、この1日で1ヶ月分の雨が降ったんですと。へーって解説者が驚いて、1日で1ヶ月分も降ったんですか。こういう相槌を打つということで、我々は本当に自然に対してどういう態度で臨めばいいかってことを冷静に考えることすらできなくなった。それが現代であります。

私たちは、20世紀に一度環境が壊れかかりましたが、それを押しとどめていろんな改正をしてきたんですけど、またこれからやることも、何も考えずにやるということの間違いを繰り返さないようにしなきゃいけないと思います。

武田邦彦 ヒバリクラブ
木が減り、洗濯物が乾かない風力発電【武田邦彦の科学教室24】
https://youtu.be/K8S-okXQarE



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