2023年04月19日
心掛けていること
今日は、私がいつも自分でこう反省して、ああこうだなと思ってることを、まあ大変おこがましいんですが、お話をしたいと思いまして。
子供を教えられる大人はいない
まず第一は、「子供を教えられる大人はいない」。
大人っていうのは本当に人間社会に汚れてしまって、私なんかも、「自分は失敗して絶対言い訳はしない、言い訳するぐらいだったら自分というのは情けない」と思って覚悟してても、いざになりますとちょっと言い訳がましいことを言ったりしますんですよね。
子供はその点、最初に聞かれた時から、本当にほとんどの子供は素直に言いますね。「やっちゃった」とかね。
そんな口が利けなくても、申し訳なさそうな顔なんかしたりしますね。
だから教育っていうのは別に漢字教えたり足し算教えたりするもんじゃなくて、人間を立派にするために教えるわけですから、子供を教えられる大人はいない。
そうだよな、自分は子供から今になって何を成長してきたのかなというふうに思うことがあります。それを戒めるために「子供を教えられる大人はいないからな」と、こう思うことがあります。
昨日は土砂降りでも晴れでよい
それからこれは、「昨日は晴れ、今日は朝」ということをよく書くんですけども。僕の色紙なんかに書く文字の内容なんですけどね。昨日はいつも土砂降りなんで、土砂降りでも、もう晴れと思っていいと。
実は過去っていうのは戻って来ないっていう、非常に特殊な状態にありましてね。過去が戻って来ないというのはちょっとこう理論的にはややおかしいところがあるんですが、おかしいっていったって、事実は過去戻って来ませんからね。
量子力学なんかで、過去と未来が逆転するような実験データもありますけど、現実の問題としては、なかなかそういかないんで、これを逆に使って、過去は土砂降りだ、つまり昨日はまずいこといっぱいあった。だけど晴れと思えば、もう二度と再び昨日は来ませんから、これで自分の人生明るくなるんじゃないかと思ったんですね。
これは私が異常に体が弱くて、とにかく辛い日々をずっと過ごしてましたもんですから、昨日のことを思い出してると気分が晴れないっていうか、元気が出ないんですよね。だから昨日はまあ大変な目に遭ったけども、良かったと思えばいいんだ、忘れてしまおうと思いますと、不思議と人間は、「昨日は晴れ」、「昨日は晴れ」って言ってるとですね、昨日のまずいことを忘れていきますね。
これもしよろしかったら、どなたかお使いになったらいいと思うんですね。なんかもう過去のことですごく苦しんでる人おられましたらね、「昨日は晴れ」、「昨日は晴れ」ってこう思ってるだけで、昨日の悪い事って本当に忘れますね。
人間とは忘れるって事がいいんでしょうね。近親者をお亡くしになって非常に落ち込んでも、僕もまあ両親失ってますが、それでも忘れようと思ったらもう本当にこう、恩讐のかなたっていうのかな、そういうふうになりますね。
今日は朝だけは一所懸命できる
それから「今日は朝だけは一所懸命できる」。
昨日か一昨日か、「幸せ砂時計」で、トルストイの「人は何で生きるのか」っていうのを解説したんですけど、実は人間っていうのは、未来を見ることができないんですよ。未来を見る能力を与えられてないんですね。ですから、今日は朝だけは一応分かる。1時間ぐらいは分かるかなと。だけど夕方はもう分かんないなっていうんで、私は「今日は朝だけは一所懸命できる」と思ってるんですね。
「昨日は晴れ、今日も朝」と書くのはそれなんですね。今日もベッドから起きて、朝起きたらもうそれだけで頑張ろう、とにかく、朝だけでも頑張ろうと。で、昼になったら昼を頑張ろう、夕方になったら夕方頑張ろう。1日はどうかっていうことは、ちょっと長すぎて言えないってのが僕の感じですね。ここに書いてあるやつは、僕の人生で私がそう思ったってやつですから、まああまり客観性はないんですけど、まあまあご参考までに、っていうことですね。
降ったら濡れる。酔ったら吐く
それからテレビに出てる非常に有名な、皆さん名前言ったらもうすぐ分かるような方が私に、「武田先生のブログを見て、私は生き返った感じがした」と言われたことがありましてね。私にとってはとても名誉なことなんですが、その時に私の何を読んだんですかって言ったら、「降ったら濡れる、酔ったら吐く」っていうのをすごく感心されたんですよ、その人はね。
これは何か。雨が降ったら濡れてもいいじゃないかと。雨が降ったら困ると思うことが、つまり雨降ったらどうしようか、雨降ったらどうしようかとこう思うことが、自分を暗くする。もう別に雨降ったらそれ濡れればいいじゃないかっていうのが「降ったら濡れる」なんですね。 こういうふうにそこで書いたんですよ。雨で土砂降りになる。11月頃の寒い日に、傘持って出なかった。外に出たら土砂降りになった。雨でずぶ濡れになって、背広も靴もぐちゃぐちゃ。体は冷え切って家に着く。そこでお風呂の栓をつけると、湧くまで20分か30分かかる。その間に濡れた着物を片付けたりなんかして、ガタガタ震えてお風呂に入る。そうすると体が冷えてますから、じっとこうなるぐらいあったまる。そのうちこう指先までこうあったまってきましてね、とっても気持ちいい。それからずぶ濡れになった背広も、靴も、この際変えようかと思って買い換えられる。思い切ってね。それから1ヶ月ぐらいは、誰か友達と一杯飲んだら「あの時はひどい目に遭ってね」って酒の肴にもなると。人間考えようだというのが「降ったら濡れる」なんですね。
酔ったら吐く。車に乗ってですね、よく私、中でパソコンなんかやってますとね、運転してる人が気遣ってもらって、「先生車の中でパソコンやって気持ち悪くならないですか」ってこう言うんですね。親しくなかったら言いませんが、親しい人だったら、「酔ったら吐きますから」ってこう言うことがあるんですね。
酔うんじゃないか酔うんじゃないかということが、人間は人生を暗くすんじゃないか。酔ったら吐きゃあいいんだ。車を止めてもらって、みっともないけども道路端で吐けば、1分か2分は苦しいけど、それでスッキリするよと。つまりこの「降ったら濡れる」と「酔ったら吐く」2つともですね、将来を心配してたら世の中が暗くなるって事なんですね。
「昨日は晴れ」っていうのもそうなんですけど、過去の思い出したくないことをいつまでも覚えてると、やっぱり人間は辛い。それから将来も雨が降ったらどうしようか、車に酔ったらどうしようかと考えると暗くなる。もういいや。来たら来たでそれを引き受けようと思うと楽になるっていうのがこの2つのあれなんですね。
その方が、これに非常に感激してくれたのは、僕記憶で今でも本当にあってですね、良かったなと思っております。
社会は自分ではない
それから最近よく言うのは「社会は自分ではない」。
社会がこんなんなきゃいけないじゃないかと怒ったり、相手が俺と違うって怒ったりするんだけど、人には人それぞれの考えがあり、それぞれの人は一人一人は自分が正しいと思うことを言ってるんですよね。コメントなんか見ても、私と全然違う考えの人もいるんですが、その人はそれが正しいと思い、僕は僕が言ったことは正しいと思ってるんですね。つまり社会っていうのは自分とは違う人の集合体なんですからね。だから社会でなんか腹立つことがあったら、社会は自分じゃないんだ。自分じゃないんだからね、という風にですね、まあ言い聞かせた頃があったということですね。
自分が正しいと思うことは間違っている
それからまあそれの延長線上ですね。「自分が正しいと思うことは必ず間違ってる」と私思うんですね。これは私が物理の研究をずっとしてきたことからですね。
物理っていうのは実験があるんで、非常にいいんですね。実験があるものっていうのは、自分が間違ったことを正しいと思っても、実験で覆されますから。ところが私が好きなのは、物理ですから割合と精密に計算したりなんかするんですよ。だからまず間違いないと思って実験しても、全然違う答えが出てくることが多いんですね、実験の結果が。それからまたもう1回考え直すと、実はもちろん実験の結果ですから、実験さえちゃんとやれば合ってるんですよ。つまり大自然の知恵と自分の知恵と比べると、大自然の知恵のが上なので、自分が正しいと思ったことは間違ってたわけです。
もうしょっちゅうなんですよ。政治とか経済とか人のことに対すると、自分が正しいって頑張ることできるんですけどね、自然を相手には頑張ることもウソつくこともできないんですよ。やがてバレるんですね。ですから文化系の人、なんていうかそう言っちゃいけないんですけど実験系じゃない人ね。例えば哲学だとか経済とか。経済は若干は結果が出てくるんですけど、いろんなことはだいたい人間関係なら特にそうなんですけど、どっちが正しいか分かんないで喧嘩してるうちに物別れになって、もうその人と会わなくなるとかね。そういうことがあって逃げるところがあるんですね。自分が正しいと思っててそれを貫くことができるんですけど、まあ私みたいに自然を相手にしてるとね、どうしても間違ってるものは、お前は違ってると言われます。それがずいぶん人生で繰り返されたもんですから。
私がこうバリバリに研究してる頃は、やっぱり自信もあったし研究も随分成果を上げたんで、だんだん自分が傲慢になってくるんですね。だけども実験があったから、私はいつも実験で、実験の結果で諌められましたね。君の言ってることは違うよと、自然が言うわけですよね。
私は人生で体が弱かったこと。それは、昨日が非常に土砂降りだったわけですが、晴れると思おうと思ったことですね。
それからそういう体が弱かったこともあって、今日はどうなるかな、明日どうなるかなと思って心配をするということも多かった。
それから物理の研究をしたおかげでね、自分が正しいと思うことは間違ってるって事も分かりまして、今や私は人から罵倒されても文句を言われても、あまり腹立たない。それはたまにはね、私は怒ったふりはするんですよ。ここは怒ってふりをしなければ相手に失礼だっていう時もありますからね。だけども心の底から怒ったってことはもうここ何年もありませんね。
この前、ニュース女子だったかななんかで、武田先生いつも怒ってたって。あれは怒って見せないといけない場面で怒ってました。例えば北朝鮮に出しちゃった人なんかはね、拉致された人にかわいそうだから、そんなことをニコニコ笑いながら言っちゃいけない。やっぱりその人はかわいそうだっていうのは怒りに燃えて言わなきゃいけないので、僕は必ず北朝鮮に拉致された人のことを言う時には怒っていました。それは拉致された人の気持ちになってっていうことでありますので、ちょっとここに書いてあること違いますから、私の言ってることが2段3段構えなんですからなかなかそこがですね、もう少し僕も言い方を少し深くして、聞いてる人がそれが2段3段の構えであるって事が分かるようにしなきゃいけないなというふうに思っております。
武田邦彦 ヒバリクラブ
人生の意義(6)「人生を豊かにするために心掛けていること」 令和5年3月30日
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