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2019年04月09日

4月9日は何に陽(ひ)が当たったか?

 1983年4月9日は、アメリカのロック・グループ、Styx(スティクス)がStyx初の公式ライブ・アルバム、"Caught in the Act(邦題:スティクス・ライヴ)"のレコーディングを始めた日です。ニュー・オリンズのSaenger Theatre(ゼンガー・シアター。ウェブサイトはこちら)で1983年4月に行われたライブを音源に、2日間制作が行われ、同年同月にリリースされました。Styxにとっては初の公式ライブ盤で、かつ初の2枚組アルバムとなりました。

 1976年発表の"Crystal Ball(邦題:クリスタル・ボール)"以来、Dennis DeYoung(デニス・デヤング。vo,key)、John Panozzo(ジョン・パノッツォ。drums)、Chuck Panozzo(チャック・パノッツォ。Bass)、James [JY] Young(ジェームズ・ヤング。gtr,vo)、Tommy Shaw(トミー・ショウ。gtr,vo)の5人で創り上げた音楽は、1977年発表の"The Grand Illusion(邦題:大いなる幻影。全米6位)"よりヒット街道を直進していきます。1978年発表の"Pieces of Eight(邦題:古代への追想。全米6位)"、1979年発表の"Cornerstone(邦題:コーナーストーン。全米2位)"はいずれも大ヒットを記録、特に"Cornerstone"からのシングル、"Babe(邦題:ベイブ)"はBillboard HOT100シングルチャートで1位を記録し、幅広い聴衆層を獲得しました。
 そして1981年には"Paradise Theatre(邦題:パラダイス・シアター)"がリリースされ、このアルバムはBillboard200アルバムチャートNo.1を記録、文字通りグループは全米のロック&ポップスの頂点に立ち、グループの黄金時代を築き上げたのです。

 1983年2月リリースの"Kilroy Was Here(邦題:ミスター・ロボット〜キルロイ・ワズ・ヒア〜。全米3位)"もシングル、アルバム共に大ヒットを記録して、翌3月からツアーも行われました。ツァーは"Kilroy Was Here"のストーリー性を織り交ぜた、シアトリカルなロック・コンサートとなりましたが、ツァー終了後にTommyがグループ活動を消極化していき、"Caught in the Act"に唯一収録されたスタジオ録音の"Music Time(邦題:ミュージック・タイム)"のプロモーション・ビデオ制作中にはTommy自身のソロ・アルバム"Girls with Guns(邦題:ガールズ・ウィズ・ガンズ)"の制作を並行させておりました。

 制作陣の盟友Gary Loizzoが営むPumpkin Studiosにて"Caught in the Act"の制作が行われました。これまでと同様、Styxのセルフ・プロデュース、Gary Loizzo、Rob Kingsland、Ted Jensenらのエンジニア陣で制作が行われました。
 またアルバムと並行して、ビデオ"Caught in the Act"も制作され、"Kilroy Was Here"のショート・フィルム(監督:Brian Gibson)をオープニングに、Saenger Theatreのライブ模様を、アルバム曲目とは一部違えてリリースされました(プロデュース:Jerry Kramer)。

 まずアルバムのトラックリストです。

 Side-1(アナログ盤)
 
  1. "Music Time(邦題:ミュージック・タイム)"・・・Dennis作
  2. "Mr. Roboto(邦題:ミスター・ロボット)"・・・Dennis作
  3. "Too Much Time on My Hands(邦題:時は流れて)"・・・Tommy作
  4. "Babe(邦題:ベイブ)"・・・Dennis作

 Side-2
 
  1. "Snowblind(邦題:白い悪魔)"・・・JY,Dennis作
  2. "The Best of Times(邦題:ザ・ベスト・オブ・タイムズ)"・・・Dennis作
  3. "Suite Madame Blue(邦題:スィート・マダム・ブルー)"・・・Dennis作

 Side-3
 
  1. "Rockin' the Paradise(邦題:ロッキン・ザ・パラダイス)"・・・Dennis,JY,Tommy作
  2. "Blue Collar Man (Long Nights)(邦題:ブルー・カラー・マン)"・・・Tommy作
  3. "Miss America(邦題:ミス・アメリカ)"・・・JY作
  4. "Don't Let It End(邦題:愛の火を燃やせ)"・・・Dennis作
  5. "Boat on the River(邦題:ボート・オン・ザ・リヴァー)"・・・Tommy作

 Side-4
 
  1. "Fooling Yourself (The Angry Young Man)(邦題:怒れ!若者)"・・・Tommy作
  2. "Crystal Ball(邦題:クリスタル・ボール)"・・・Tommy作
  3. "Come Sail Away(邦題:永遠の航海)"・・・Dennis作


 ビデオのトラックリストです
 
  1. Kilroy Was Here(Short Film)
  2. "Mr. Roboto"
  3. "Rockin' the Paradise"
  4. "Blue Collar Man"
  5. "Snowblind"
  6. "Too Much Time on My Hands"
  7. "Don't Let It End"
  8. "Heavy Metal Poisoning(邦題:ヘヴィ・メタル中毒)"・・・JY作
  9. "Cold War(邦題:冷たい戦争)"・・・Tommy作
  10. "The Best of Times"
  11. "Come Sail Away"
  12. "Renegade(邦題:逃亡者)"・・・Tommy作
  13. "Haven't We Been Here Before(邦題:時が過ぎれば)"・・・Tommy作
  14. "Don't Let It End (Reprise)(邦題:ロックンロールの火を燃やせ)"・・・Dennis作


 さらに、ビデオのDVD化に伴い、以下の bonus tracksが加えられました。
 
  1. "Come Sail Away(1977 Promo Video)"
  2. "Borrowed Time(邦題:虚飾の時。1979 Promo Video)"
  3. "Babe(1979 Promo Video)"
  4. "Boat On the River(1979 Promo Video)"
  5. "A.D.1928(邦題:1928年〜パラダイス・シアター・オープン〜)"・・・Dennis作)"/"Rockin' the Paradise(Previously Unreleased Music Video)"
  6. "The Best of Times(Music Video)"
  7. "Too Much Time on My Hands(Music Video)"
  8. "Mr. Roboto(Music Video)"
  9. "Don't Let It End(Previously Unreleased Music Video)"
  10. "Heavy Metal Poisoning(Previously Unreleased Music Video)"
  11. "Haven't We Been Here Before(Previously Unreleased Music Video)"
  12. "Music Time(Previously Unreleased Music Video)"


 アルバムは1975年発表の"Equinox(邦題:分岐点)"以降の作品から"Kilroy Was Here"まで満遍なく選曲されておりますが、ビデオは"Kilroy Was Here"の収録曲を中心に選曲されています。ライブ・バンドとしての下積みが長いグループだけに、コンサートでの熱い臨場感が体の芯まで伝わってくるような、非常に感動的なライブ盤です。
 アルバムでは、"Best of Times"のイントロに"Paradise Theatre"の最終章であるDennisの作品、"State Street Sadie(邦題:ステイト・ストリート・セイディ)"を聴かせてくれたり(ビデオもあり)、"Suite Madame Blue"の"〜You conquered the world and more heaven's door〜"のパートでDennisが"more"の部分を伸ばし、ビブラートを効かせながら息継ぎなく熱唱するという、これぞプロフェッショナルの歌唱を見せてくれたり、ビデオにおいては、"Rockin' the Paradise"に入る前のJYのテクニカルなギター・ソロ、"Heavy Metal Poisoning"におけるJY,Panozzo兄弟の軽快なダンス、"Cold War"での観客に飛び込みながらのTommyの華麗なギター・ソロ、"Come Sail Away"のDennisでの熱唱に酔い痴れた観客の女性がステージに上がり込んでDennisに抱きつくシーン、"Renegade"のエンディングから続くJohnの見事なドラム・ソロ、"Don't Let It End (Reprise)でのTommyの感動を呼ぶギター・ソロなど、実に味わい深く楽しませてくれるシーンが山ほどあります。

 Billboard200アルバムチャートでは、1984年4月21日に69位で初登場、以後49位→34位→33位と上がり、5月19日付より2週連続で31位を記録後、後退して計15週のチャートインしました。ロック部門においてはメインストリームロックチャート(当時はThe Rock Albums & Top Tracks charts)でのThe Rock AlbumsチャートにおいてもTop50には入らず、いわゆるエントリー予備軍のチャートであるTop Adds(HOT100やBillboard200でいうBubbling Under)でも4月21日に10位内の10位にランクされるのみにとどまりました。UKアルバムチャートでは、1984年5月5日付で44位にエントリーし、これが最高位となって翌週67位に後退、2週間のチャートインでした。当時の2枚組ライブ盤はスタジオ盤に比べて、チャートには反映しにくい面もありましたが、"Kilroy"ブームがやや冷めた時期でのリリースからか、すでにStyxの内部紛争が知れ渡っていたか、その後リリースされるメンバー各自のソロ・アルバムに気が移っていたのか、いずれにしても結果的には全盛期のチャート・アクションにようにはなりませんでしたが、個人的にはチャートでは評価し得ない、ライブの素晴らしさが伝わる名盤だと思います。ビデオを観ても、Styxのライブならではの熱狂ぶりであり、非常に趣ある作品です。

 "Caught in the Act"は全盛期を現出した、この5人で制作された最後のアルバムとなりました。レコードからCDへの移行期にあたる80年代の後半はメンバーのソロ・アルバムが中心となり、グループとしては、1986年発表の" A&M Gold Series"、1987年発表の"Styx Classics Volume 15"など、過去のナンバーで構成されたベスト盤のリリースにとどまりました。Styxの次作スタジオ盤としては、離脱したTommy Shawに代わり、Glen Burtnik(グレン・バートニック。gtr,vo,1999年以降はbassも)が加入した"Edge of the Century(邦題:エッジ・オブ・ザ・センチュリー。1990年10月発表)"を待たねばなりませんでした。現在、全盛期のメンバーはTommy、JY、Chuckの3人ですが、彼らはしっかりとStyxの暖簾を守っており、2017年も最新作"The Mission"で健在ぶりを示してくれています。

さて、"陽当たって精進"は昨年の4月10日から始まり、ちょうど1年を迎えました。365日すべて、"陽"を当てましたが、非常に精進できた1年でした(自分が)。これをもちまして、一旦充電したいと思います。歴史は世界史を、洋楽は主にStyxでしたがロック・アーチストをそれぞれ中心にしてご紹介させていただきました。自身についても大いに勉強させていただきました。
1年間、ありがとうございました。

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