2010年04月15日
ポツネン
集団は20人くらいで皆女性だった。
「事件でもあったかな?」
と思わせる、そんな光景だった。
お互いに談笑している小さな集団と少しだけ離れて、
ポツネンと佇んでいる若い女性の姿が目に入った。
ポツネンさんの顔の表情は不安そうに、
「わたしに近づかないでほしいな」
「そっとしておいてほしいな」
と訴えていた。
ちょうど、先生に連れられて新一年生がやってきた。
先生が何か話した後に、
こどもたちは集団のなかに合流して、
目当ての人をさがし始めた。
集団は新一年生を迎えに来たおかあさんだった。
男の子は母親であるらしいポツネンさんを見つけると、
緊張した顔を緩ませながら駆け寄った。
ポツネンさんの顔に、
「わたしに近づかないで」といった表情はなかった。
穏やかなおかあさんの顔になっていた。
色取り取りの傘がペアになって四方八方に歩きだした。
大きな傘と小さな傘が並んで歩く。
大きなランドセルを背負い、黄色い布袋を引きずって
小さな傘が歩く。
右折合図のウィンカーが5回ぐらい明滅する時間、
ポツネンさん親子を見届けた。
フロントガラス越しに誰もいなくなったのを確認し、
信号機のない小さな四差路を右折した。
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