2014年04月27日
ダイバーシティ・マネジメント
とある企業の中で聞いた噂で、ちょっとびっくりするものがあった。
「この会社で一番過酷な部署は人事部である」
個人的にはバックオフィス系の部門より、数値目標のきつい営業部門の方が大変なイメージがあった。
正直、その話を聞いたときには、「?」という感じだった。
が、全く別の機会に人材採用の大変さを切々と語られて、1番かはともかく、少し人事部の大変さを考え直した。
@ 就職市場(人材市場)の情報が非対称
転職エージェントに頼んだり、新卒向けのセミナーを色々開いたり、まず、いい人材にたどり着くのが大変だ。
今、世間ではこういうスキルの人が年収いくらで新しいポジションを探している、という情報がオープンになっているわけではないので、社内のデータの蓄積や転職エージェントの情報を分析して、いい人材のいそうなところまで人を探しに行かなくてはいけない。
良さそうな人に出会ったら出会ったで、希望をいちいち聞いて本当にほしい人材像に合致しているか確認して・・・と手間がかかる。相手のいることだから、自分のペースで進まない話もある。マーケティングも営業もやっているようなものかもしれない。
Aコストとダイバーシティのバランスをとる必要がある
今、企業に言われているダイバーシティというと、一般的には、女性、外国人、障害者、高齢者ぐらいだろうか。
これらの多様な人材の能力を活かし、経営に成果をもたらすことがダイバーシティ・マネジメントだ。
では、彼らの能力を活かす、とは具体的にはどういう状況で、経営にどんな成果が出るのか。
まず、わかりやすいのは「男性ばかりの企業で、女性向け商品を女性が開発した」のように、多様な人材の視点がマーケティングに活かされることだろうか。これは社外ばかりでなく、パートのおばちゃんたちのマネジメントを、元パートの社員のほうがうまくできるのような社内マネジメントにも活かされると思う。この、わかりやすい例は、要するには社員の持つ知見を多様化して使っていくという発想から、多様な人材の経験を積極的に活かしている。
一方、「4時間正社員」のように、一定の能力を持った人材をかき集めてうまく使っていくというダイバーシティもある。こちらは、どちらかというと、働く場所や時間に制限のある人材を許容し、消極的に使っている事例だと思う。経営視点からみると、働く場所や時間に制限のある人とない人では、制限のない人の方が使いやすいはずだ。どうしたって、リモートの仕事や短時間の仕事では引き継ぎ回数が増えてコミュニケーションのコストが増えるし、頭数を増やすほど、社会保障の負担だって増えていく。しかし、正社員の残業コストや採用の難易度と、ある一部の条件においては使いにくい社員のコストを冷静に比べて、働き方のダイバーシティを認める方がコストが減ると判断されたから、4時間社員のような制度が少しずつ採用されているのではないかと思う。
就職・転職市場の情報が非常にオープンで(つまり@の制約がなく)、かついくらでも年収を釣り上げて人材を採用していいのなら、すぐに辞めてしまうかもしれない女性や、言葉も文化もすれ違いの多い外国人なんて面倒だから採用しない! という企業があってもおかしくないと思う。
私は、ダイバーシティ・マネジメントのメインは、後者の消極的なマネジメントだと思っている。マーケティングや商品企画のためにあえて多様なバックグラウンドの人材をぶつけて検討するということはあるとおもう。だが、誰だって、自分と同じバックグラウンドを共有していてツーカーで話の通じる部下と仕事をした方が楽なはずだ。ただし、そんな都合のいい人材は世間にそんなにいない。自社の採用数が増えるほど、仕事を遂行するための最低限の条件を守って、残りはダイバーシティという(主にコミュニケーション・休暇の)コストに転嫁していくのだと思う。その見極めは、かなり難しいのではないかと思う。
Bどう頑張っても、組織は老化する
コンサルティング・ファームでUp or Outを厳密に守っている場合は例外かもしれないが、日本の企業の離職率は精々3年3割で、まだまだ定年まで一つの会社で勤め上げるという価値観も根強い。年齢ピラミッド型を維持しようと思ったら、毎年採用数が増えるように、企業が常に急成長していないといけない。
ここまで来ると、もはや人事だけの問題ではなく、企業全体の流れに従うしかないのが現実だろう。
しかし、企業の成長が鈍化し、年齢ピラミッドが崩れることで、Aのダイバーシティの問題が顕在化しやすくなる。
組織が若返らないので、若者向けのマーケティングに必要な発想が生まれなくなる。あるいは、10年前の成功体験しか知らないミドルマネジメントが、新しく入ってきた女性・外国人社員に戸惑う等である。予め研修をしておくことはできるが、多少の混乱は人事部の努力だけでは不可避と言えると思う。
消極的なダイバーシティ・マネジメントは、ある程度の規模まで拡大した企業ならどこでも大なり小なり問題がある気がする。
今日はここまで。
「この会社で一番過酷な部署は人事部である」
個人的にはバックオフィス系の部門より、数値目標のきつい営業部門の方が大変なイメージがあった。
正直、その話を聞いたときには、「?」という感じだった。
が、全く別の機会に人材採用の大変さを切々と語られて、1番かはともかく、少し人事部の大変さを考え直した。
@ 就職市場(人材市場)の情報が非対称
転職エージェントに頼んだり、新卒向けのセミナーを色々開いたり、まず、いい人材にたどり着くのが大変だ。
今、世間ではこういうスキルの人が年収いくらで新しいポジションを探している、という情報がオープンになっているわけではないので、社内のデータの蓄積や転職エージェントの情報を分析して、いい人材のいそうなところまで人を探しに行かなくてはいけない。
良さそうな人に出会ったら出会ったで、希望をいちいち聞いて本当にほしい人材像に合致しているか確認して・・・と手間がかかる。相手のいることだから、自分のペースで進まない話もある。マーケティングも営業もやっているようなものかもしれない。
Aコストとダイバーシティのバランスをとる必要がある
今、企業に言われているダイバーシティというと、一般的には、女性、外国人、障害者、高齢者ぐらいだろうか。
これらの多様な人材の能力を活かし、経営に成果をもたらすことがダイバーシティ・マネジメントだ。
では、彼らの能力を活かす、とは具体的にはどういう状況で、経営にどんな成果が出るのか。
まず、わかりやすいのは「男性ばかりの企業で、女性向け商品を女性が開発した」のように、多様な人材の視点がマーケティングに活かされることだろうか。これは社外ばかりでなく、パートのおばちゃんたちのマネジメントを、元パートの社員のほうがうまくできるのような社内マネジメントにも活かされると思う。この、わかりやすい例は、要するには社員の持つ知見を多様化して使っていくという発想から、多様な人材の経験を積極的に活かしている。
一方、「4時間正社員」のように、一定の能力を持った人材をかき集めてうまく使っていくというダイバーシティもある。こちらは、どちらかというと、働く場所や時間に制限のある人材を許容し、消極的に使っている事例だと思う。経営視点からみると、働く場所や時間に制限のある人とない人では、制限のない人の方が使いやすいはずだ。どうしたって、リモートの仕事や短時間の仕事では引き継ぎ回数が増えてコミュニケーションのコストが増えるし、頭数を増やすほど、社会保障の負担だって増えていく。しかし、正社員の残業コストや採用の難易度と、ある一部の条件においては使いにくい社員のコストを冷静に比べて、働き方のダイバーシティを認める方がコストが減ると判断されたから、4時間社員のような制度が少しずつ採用されているのではないかと思う。
就職・転職市場の情報が非常にオープンで(つまり@の制約がなく)、かついくらでも年収を釣り上げて人材を採用していいのなら、すぐに辞めてしまうかもしれない女性や、言葉も文化もすれ違いの多い外国人なんて面倒だから採用しない! という企業があってもおかしくないと思う。
私は、ダイバーシティ・マネジメントのメインは、後者の消極的なマネジメントだと思っている。マーケティングや商品企画のためにあえて多様なバックグラウンドの人材をぶつけて検討するということはあるとおもう。だが、誰だって、自分と同じバックグラウンドを共有していてツーカーで話の通じる部下と仕事をした方が楽なはずだ。ただし、そんな都合のいい人材は世間にそんなにいない。自社の採用数が増えるほど、仕事を遂行するための最低限の条件を守って、残りはダイバーシティという(主にコミュニケーション・休暇の)コストに転嫁していくのだと思う。その見極めは、かなり難しいのではないかと思う。
Bどう頑張っても、組織は老化する
コンサルティング・ファームでUp or Outを厳密に守っている場合は例外かもしれないが、日本の企業の離職率は精々3年3割で、まだまだ定年まで一つの会社で勤め上げるという価値観も根強い。年齢ピラミッド型を維持しようと思ったら、毎年採用数が増えるように、企業が常に急成長していないといけない。
ここまで来ると、もはや人事だけの問題ではなく、企業全体の流れに従うしかないのが現実だろう。
しかし、企業の成長が鈍化し、年齢ピラミッドが崩れることで、Aのダイバーシティの問題が顕在化しやすくなる。
組織が若返らないので、若者向けのマーケティングに必要な発想が生まれなくなる。あるいは、10年前の成功体験しか知らないミドルマネジメントが、新しく入ってきた女性・外国人社員に戸惑う等である。予め研修をしておくことはできるが、多少の混乱は人事部の努力だけでは不可避と言えると思う。
消極的なダイバーシティ・マネジメントは、ある程度の規模まで拡大した企業ならどこでも大なり小なり問題がある気がする。
今日はここまで。
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