b.高低差100mほどのきっつい坂を一気に登れば、峠のように下ってら、これが持越(モチコシ)峠か、
a.いやいや、これはニセ赤木のようなニセ峠、引っかかったらあきまへん(=いけません)、
b.坂を下れば、日本昔話のような民家、
a.ひなびてんなあ(=田舎風(いなかふう)やなあ)、
b.桂川にそって下を走る幹線道路とまるで雰囲気ちゃい(=ちがい)ますねえ、空気がピッタリ止まってどこか気高い、
a.クルマの往来があると空気ざわめくしなあ、どうしても、
b.これを右すか、
a.うむ、ここから道幅もぐっとせばまって、50m登れば、これがホンマの持越(モチコシ)峠、
b.これがそのホンマもんか、軽でもすれ違うの大変そうや、
a.昔のまんまの雰囲気やなあ、昔のすがたも知らんけど、
「変わらんなあ むかしの事も 知らんけど」、
b.峠の下りに入ると、さらに谷が深くなって昼なお暗いっす、坂も急で濡れた路面もけっこう荒れてるし、転びそうでちょっと気い(=気を)使いますねえ、
a.この道くだり終えたら、日吉ダムの少し下流やけど、こうして昔ながらの峠道を走ると、全然雰囲気ちゃう(=ちがう)なあ、ダムのへんと、
b.やっぱり風景、一変したんちゃいますか、
a.ダムは大きいしなあ、工事用の広い道路も必要やし、
b.ダムを囲む道、とりわけ北側の道はクルマも少なく道も広く、ダム湖を見渡しながら爽快に走れるけど、何度か走ると大味で(=味わいの細やかさがなくて)飽きが来るのも早い、
a.そうやなあ、歴史の古い集落や道路は、熟成の期間がハンパなく長いしなあ、じわじわっと複雑な旨味(うまみ)がしみこんでて、何度走っても飽きへんなあ、
b.というわけで、終着点のJR園部駅へも、
a.ずいぶんな遠回りになるけど、桂川ぞいの府道19号線はやめて府道80号線を行こう、
b.しかし、19号線も昔ながらのルートでは、
a.そうかもしれんけど、今じゃトラックをはじめクルマが多すぎてなあ、味気なくていかんわ、
b.きっと日吉ダム建設の時にダンプが通り過ぎて、雰囲気がほこりっぽくなったんとちゃいますか、
a.それはあるやろなあ、
b.しかし、今走ってるこの迂回ルートもそれほど古道という感じはしませんけど、
a.たしかに道幅も広がってるし、クルマもわりと走ってる、でも、何度か走るうちに古道の波動が伝わってきた、
b.古道の波動ねえ、そんで木々もこんなきれいに色づくんすか、
a.さあ、それは別やろ、
b.この府道80号線って、やんわり峠道なんすね、
a.そうみたいや、JRの踏切が標高158mで、そこから221mまで登って165mまで下る、
b.しかし、例によってそろそろ疲労がじわじわと、
a.ここの公園でひと休みや、ストレッチをしばらくやって中山峠に備えよう、
b.道の駅「丹波マーケス」のすぐ南、小川にそった小さな公園やけど、しっかり作られてますねえ、
a.こういうのがあると助かるなあ、休憩とかするし、トイレがあったらもっとええけど、
b.琵琶湖まわりはたくさんあるけど、丹波地方は少ないすね、この手の公園とか四阿(アズマヤ)とか、
a.まあ山がち(=山が多い)で、使えるスペースも限られてるしなあ、
b.さあ、じゃあ園部駅まであと一息で行きますか、
a.いや、その前にまず中山峠まで一息で参ろう、
b.神社でもあるのか、立派な二本杉をバックにみごとな色づきっす、
a.しんどくて、カメラで止まんのもおっくうやけど、この中山峠は四季を通してええなあ、
b.とくに南側のワインディング(=ウネウネ道)が素晴らしいっすね、
a.「いつ来ても 中山峠 良い峠」、
b.ああ、今日もあとわずかですね、
a.よく走ってよくながめたなあ、目と足がお腹いっぱいや、
b.お、最後にもう一枚、桂川の支流、園部(ソノベ)川に架かる橋から、
a.これもええなあ、今日はそればっかしやなあ、