京都駅からびわ湖へ向かう各駅停車の車内は、たいていこんなガラ空き状態。
野洲駅なのでブラインドごしに近江富士も。
a.ときどき今でも、京都や滋賀の何気ない風景がふと脳裏をかすめて、すぐにでも飛んで行きたくなる、
b.いま浮かんでるのは?
a.JR琵琶湖線の野洲駅と近江八幡駅の間にあるひっそりしたJR篠原(シノハラ)駅、
b.どっち側の駅前っすか、
a.いや小さな駅なんで改札口は琵琶湖側にひとつだけや、
b.その駅前の景色が浮かんでるんすか、
a.いやここから広々した清潔感みなぎる住宅街を抜けてくと、ポリテクカレッジって、これまた広くて新しい職業訓練校があって、
b.それっすか、
a.いやそれでもなくて、まあ落ち着いて聞いてくれ、その学校の前から477号線に合流して日野川を渡り、
b.しかし、なんで最初から477号線走らないで、住宅街のなか迂回するんすか、わざわざ、
a.分かる人には分かると思うんだけど、なにも急ぐ旅じゃないし、とにかくクルマと出来るだけ被らないような道を選んで走ると幸せになれるんだ、
b.なんで幸せになれるんすか、それっぽっちのことで、
a.クルマはタイヤノイズだけでもそうとうデカイから、それが無いだけで色んな音を拾うことが出来るんだ、
b.たとえば、
a.虫の声、鳥のさえずり、風に揺れる木や稲穂のざわめき、何気ないヒトの声、それに空気自体もきれいだ、
b.確かに、排ガス規制で乗用車は驚くほどクリーンな排気やけど、ダンプや原付は野放し状態、で、
a.古川橋わたって川堤(カワヅツミ)を降りてくと、昔ながらの集落に新しい住宅街が寄り添うような古川ってエリア、まあじっさい地図で確認すると、新しい住宅街はそれだけ別個に緑町って新しい町名になってるけど、
b.歴史ありそうな、寺院があります、なんて読むんだ?
a.「古斉寺」と書いて「こさいじ」って読むのか、
b.「こせいじ」と読むのかと思った、日本語って色々むつかしいな、すぐ横にも「重願寺」や「西源寺」っていう小さなお寺ありますが、
a.まあ、このお寺はいいか、
b.失礼じゃないすか、
a.そうだな、このさい、地域密着を貫くぞ、さっそくウェブで調べてくれたまえ、
b.ええ、近江八幡市は古川町っと、出ました、「重願寺」と書いて、「じゅうがんじ」、「西源寺」と書いて「さいげんじ」、ともに浄土真宗仏光寺派っす、
a.古斉寺は?
b.本願寺派、おなじ浄土真宗、
a.そういえばお寺や神社多いなあ滋賀県、あっちこっちで見かけるわ、
b.あまりに多くて住職が掛け持ちするケースも多いそうです、ニュースでやってた、
a.こういう大小の寺院を中心に歴史的集落が細い路地を四方に巡らせて小島のようなエリアを形成する、
b.小島って、じゃあ周囲は海なんすか、
a.海のような田園、広々して、田植えの時はじっさい水を引くから広い海のようだ、
b.じゃあ夏は、
a.青々した稲穂が南風にあおられてサヤサヤと乾いた音を立てながら波のようにうねる、だから驚くほど暑くないんだ、真夏でも、
b.じゃあ夏は青々した稲穂の海に小島のような集落が点在するのか、いいなあ、
a.自転車乗りが琵琶湖一周にチャレンジする気持ちはよく分かるけど、クルマだらけの湖岸道路と終日付き合わされる、それじゃあまりに寂しい、
b.琵琶湖エリアの素晴らしさは、観光地と無縁なそんな村々に隠されてんのかなあ、
a.白い雲、青い空、みどりの稲穂、通りを彩る(いろどる)家々の花々、他にいったい何が要るってんだ、
b.まあ滋賀県に寄せるその熱いお気持ちは分かりますが、昨夜ふと浮かんだ風景ってどこっすか、いったい、
a.すっかり忘れてた、この三つのお寺のすぐ先には白山神社があるんだけど、その境内にそびえる大樹がふと浮かんだんだ、脳裏に、
b.神社と言うより、ゲートボール場みたいな公園っすね、
a.いやこれは境内の外側から眺めているからじゃ、
b.姿の良い立派な樹木っすね、なまえ分かんないけど、
a.オレも分かんないけど、遠目からハッキリ分かる樹木の生えるとこには、たいてい神社や寺院がある、
b.じゃあ信仰目的というより、
a.樹木が目当てで立ち寄るばあいがほとんど、
b.この樹木の下にもベンチがふたつ置かれて、暑い日はこの木陰にじいちゃんばあちゃん寄り集まって小一時間過ごすんでしょうねえ、あれこれ世間話しながら、
a.あるいは休日に緑町の住宅街から若夫婦が子供遊ばせにやって来たり、
b.こんな何気ない一枚の写真からも、あれこれ想像できるもんやね、
a.そうだなあ、自転車で通り過ぎるときは一瞬だけど、写真だとゆっくり立ち止まれる、そこが良いとこなんだろうなあ、カメラの、
篠原駅からわずか1.5キロ。白山神社の姿よき大樹。
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