b.2003年10月4日(土)午前10時30分、JRびわ湖線(=滋賀県内の東海道本線)の安土駅前、
a.前回の近江八幡行きからわずか6日後、
b.ホンマ好きなんすね、近江が、
a.ド田舎も無論好きやけど、近江(滋賀県)は洗練された田舎っていうか、とくに琵琶湖の東エリアは中山道と東海道が京都へ通じてるから、全国の情報に明るく土地が開かれてるというか、
b.いなか特有の閉鎖性がないと、
a.そう、土地に関係ない者もはじかれないで居られるという、旅人に優しい風土、
b.でも、そんなこと分かるんすか、自転車こいでるだけで、
a.目で見てすぐに分かるもんや無いけど、時間がたつにつれじわじわとな、
「旅人が のびのびあそぶ 近江かな」
b.ところで、今回はJR安土駅からスタート、次の近江八幡駅まで反時計回りに大きく迂回するわけですが、最初の1枚がこれとは・・・なんか力不足じゃ、
a.そうやな、安土駅前でいばってる信長像を写すのが定石(じょうせき=決まりきったやり方)やけど、それじゃあまりにベタ(=形式的)やしなあ、あまり写されたこともない駅前のひっそりした一角からおもむろに始めてみよう、
b.安土城とは逆方向へ進んでるけど、どこへ向かってるんすか、
a.全国の佐々木さん専用の沙沙貴神社へ、
b.これすか、
a.いや、これは浄厳院(じょうごんいん)、この土地の武家、佐々木氏ゆかりの寺院が戦火で焼け、その跡地に新しく建てられた信長ゆかりの寺院らしい、
b.りっぱな建物ですね、
a.近江を旅すると、これくらいの大寺院がありふれた農村の中心にそびえてることがしばしばあって驚く、
b.モノクロ3枚見たあとの色つきコスモス、なんかホッとすんなあ、正面の丘や民家も広重の浮世絵風で雰囲気満点、
a.左手の森が沙沙貴神社になる、
「全国の 佐々木さんたち この森へ」
b.気のせいか、彼岸花までなにやら気高い、
a.蜘蛛の糸までキレイに見える、
b.ここが楼門(ろうもん=二階建ての門)、提灯の四角い絵柄は家紋かなあ、
a.佐々木氏の家紋は平四ツ目結(ひらよつめむすび)ってことやったけど、最近の研究では隅立て(すみたて)四ツ目結がホントらしい、
b.塗りのはげた楼門も味があるなあ、
a.作りがしっかりしてるから、ハゲても味になる、
b.前回おとずれた近江八幡を代表する日牟禮(ひむれ)八幡宮にも引けをとらない格式、
a.屋根のてっぺんにも家紋が、これも今は隅立て(すみたて)四ツ目結に変わってるんかなあ、
b.わずか45度の回転とはいえ、大変な作業すね、
a.相手は由緒正しい家紋やし、下手なことでけへん、
b.山のふもとじゃないから日牟禮八幡宮よりずいぶん明るい、
a.それにしても、人っ子ひとり見かけんなあ、
b.これだけのもん、安土城だけじゃもったいないっす、
a.ふと思い出すんや、会社の近くに神社や寺院を専門に手がける建築屋さんがあって、そばを通るとヒノキの香りがただよってる、作業場には見たことないような巨大な丸太が横たわっていて・・・
b.これじゃないすか、もしかして、
a.そうこれや、奥谷組、観光案内に出てたんか・・・工場やマンションが立ち並ぶエリアなんやけど、会社の帰りにこの香りを嗅ぐため、わざわざ寄り道して思いっきり深呼吸してた、
「なに気ない 町に社(やしろ=神社)の 木の香り」