で、7月にはマウンテンバイクと輪行袋を購入し、早くも翌月、京都から新幹線でふるさとに降り立ったと、
待ちに待った1996年8月のお盆休み・・・早朝、嵐山に最も近いJR嵯峨駅前で、たどたどしくマウンテンバイクを輪行袋に収納して出発・・・しかし、ずっと楽しみにしていた人生初の輪行は、予想外の心理的苦痛を伴(ともな)うもので、これに慣れるには数年かかったほど、
どういうことすか、
新幹線で現地に到着するまでは良かったけど、いざ自転車を組み上げて走り出したら、なんかいつもとぜんぜん違って、地に足が付いてないというか、自分がそこに居る実感が湧(わ)いてこないというか・・・自転車で自走して行ける範囲をはるかに超えた場所に居るせいか、自転車に乗ってるんやけど、カラダがまだそれを納得してないような、じつに変な気分で、
人生初の輪行だからじゃないすか、
さいわいそんな違和感も、駅から降りて小一時間も走れば自然と消えてくんやけど、最初の2〜3年はどこに輪行しても、必ずそういう変な気分で走り始めてた、
で、念願だった故郷の里山へ、マウンテンバイクで乗り入れたんすか、
1996年当時は、マウンテンバイクが里山からじわじわ追い出されていく直前の時期で、初回の盆休みや2度目となる正月休みは、思い切り里山走りを楽しむことができて・・・けど、それが最初で最後の里山となり、それ以降は、じわじわと迷惑者(もの)あつかいの空気が山々にただよいはじめ、せっかくのマウンテンバイクも山をあきらめ、ツルツルのスリックタイヤに履き替えて街乗り仕様へ成り下がっていくことに、
ちなみに、この輪行がきっかけになって、カメラも本格的な趣味になってくと、
マウンテンバイクで里山へ向かう途中、急にカメラが欲しくなり、コンビニで購入した『写ルンです』・・・これが自分で購入した最初のカメラに、
フィルムカメラを知らない世代も多くなってるし、簡単な説明が必要じゃないすか、
1996年といえば、デジタルカメラが世に出る直前で、フィルムカメラの全盛期・・・なもんで、カメラもフィルムもありとあらゆる選択肢から選べたけど、中でもいちばんお手軽な使い捨てカメラが『写ルンです』・・・お菓子と同じようなアルミコーティングの外袋を破くと出てくるフィルムカメラは、安っぽい紙やプラスチックのボディに、固定焦点レンズが付いていて、シャッター押すたびに指でフィルムを巻き上げるタイプ・・・枚数写し終わると、カメラごと店の人に渡し、後日フィルムが現像処理されて印画紙にプリントされもどってくるという仕組み、
使い捨てカメラなんで、カメラ本体は店の方で回収すると、
レンズはリサイクルされたんかどうか・・・それすら知らんけど、後(あと)にも先にも、『写るんです』を手にしたのはこの時だけやったなあ、
使い捨てカメラという発想自体、フィルムカメラ全盛期ならではの退廃(たいはい)的症状というか・・・ちなみに、現在のデジタルカメラでいう、フルサイズやAPS-Cというセンサーサイズも、この当時のフィルムカメラが元になってると、
当時ごく一般的に使われてた35oフィルムが、今でいうフルサイズに相当していて、これより少し小さいフィルムサイズが APS-C やけど、この規格が登場したのがちょうどこの頃で、
Advanced Photo System (アドバンスド・フォト・システム) の略で『APS』と、
CはクラシックのCやけど、これはデジタルでなくフィルム時代に作られた規格ですよと言うほどの意味あいか、
ともあれ、コンビニで『写ルンです』を購入後、ふるさとの慣れ親しんだ里山を走っては、立ち止まってパシャリを繰り返し、すっかり自分のカメラが欲しくなったと、
で、インターネットが無いもんで、自転車の時と同様、カタログをあれこれ集めるだけ集めて、ああでも無いこうでも無いと、夢をふくらむだけふくらまし、けっきょくカメラ業界の販売戦略にまんまと乗せられて、APS規格のカメラの中でも人気独走だったキヤノンのコンパクトカメラIXY(イクシ)を4万ちょっとで購入、
現在もコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)の第一線で活躍するイクシですが、初代はフィルムカメラだったんすね、
写りはさておき、今まで無かった斬新なデザイン性で人気が爆上げされたようで、自分もまんまとそのデザイン戦略にハマってもうた、
しかし、写りはイマイチだったと、
だもんで、さっそく手放すことになり、写りと経済性から、ミノルタ(ソニーの前身である歴史あるメーカー)の一眼レフをしばらく愛用・・・しかし、写りはともかく外観があまりに安っぽいので、最終的には写りと外観の美しさが両立した、京セラ CONTAX RX とカールツァイスの50o標準レンズの組み合わせと、RICHO GR シリーズ初号機となる高級コンパクトフィルムカメラ RICHO GR1(リコー・ジーアールワン) の2台体制で落ち着くことに、
フィルムの方も、カラーネガやリバーサルをへて、最終的にはランニングコストが最も安いモノクロフィルムに落ち着くと、
いちいち店に出して現像してたらカネかかるし、カラーフィルムの現像は、劇薬もあつかうから素人(しろうと)には危険すぎるし、けっきょくモノクロフィルムをロールで購入・・・36ショットずつ、パトローネ(フィルムケース)に詰め替え、自分で現像するのがいちばん経済的で、これでやっと出費を気にせず、好きなだけ枚数写せるように、
じゃあ、印画紙にプリントすることも無く、
ほんのたまにプリントする程度で、基本的にはネガフィルムを、専用装置でテレビに映して楽しむていど、
もったいないすね、せっかくの高画質なのに、
だもんで、膨大なネガフィルムは今もだいじに保管していて、いつかきっと、デジタル技術の助けを借りて、手早く高画質で復元させてやりたいんや、
四半世紀も前の記録なんで、それだけでもじゅうぶん新鮮な驚きがありそうすね、
今はデジタルで、驚くほど安く高画質な画像が楽しめるんで、スマホもええけど、どうせなら持つ喜びを感じられる分身のようなカメラと共に自転車生活を送って欲しいなあ、
現在は、PENTAX KPをメイン機とする APS-C光学一眼レフカメラひとすじの筆者ですが、一眼レフに移行する直前まで愛用していたソニーサイバーショット『RX100』は、今もときどきメーカー修理に出して現役復帰させようかと本気で思うほど、写りや操作感や持つ喜びがきわだっていて、程度の良い中古であれば迷うこと無く購入をお勧めします。
こちらの写真家さんの気持ちが痛いほどよくわかるくらい、初代は価格や性能や外観など、すべてのバランスが優秀で、とりわけフィルム時代に何度も回したツァイス標準レンズのマニュアルフォーカスリングとRX100のレンズまわりの多機能ダイヤルの感触が全く同じなのはゾクッとするほど感動的でした。