明るく前向きな曲ばかり残して後編が始まるわけですが、なんでわざわざ最後の曲から、
I ハイウェイのお月様
この曲だけ、リードギターの仲井戸 麗市(なかいど れいいち)氏が歌っていて、とうぜん曲の雰囲気もここだけちょっと変わっていて、最後にこの曲が来ることでアルバム全体がしまるような・・・ちょうど映画のエンドロールに流れる曲のような、ホッとした空気感があって、このところ、サイクリングの最中は、この曲ばかり脳裏(のうり)で鳴り響いてる、
すべて出し尽くして、ホッとひと息入れたような、良い意味の脱力感というか、聴いてる側もリラックスできるような、
このアルバム『BEAT POPS』の前年(ぜんねん)1981年に、大滝詠一氏が大ヒットさせた、永遠の夏休み定番(ていばん)アルバム『A LONG VACATION』も、最後にまったく異質な『さらばシベリア鉄道』を置くことで、それまでの色んな曲想がひと夏の印象にまとめられて、スッキリした気分で聴き終われるように、
タイトルからして、夏とは真逆な極寒(ごっかん)イメージの『シベリア』・・・曲じたいもひんやり・しんみりしていて、これを聴くことで浮かれて楽しかった夏ともお別れして現実の暮らしにもどってくような切なさもあって、
ちなみに、『ハイウェイのお月様』で、印象的な歌詞といえば、
『暗い暗い暗い道に 迷わせないで』、
明るい月の夜、バックシート(後部座席)に無言の女性を乗せて、街路灯もまばらな見知らぬ街の暗い道に迷いこまないよう祈りながらドライブするシーンやけど、なんか映画を観てるようで・・・
つぎはアルバム最初の曲・・・おなじ1982年に坂本龍一とコラボした資生堂のCMソング『い・け・な・い ルージュマジック』同様、1文字ずつ点で区切られておりますが、
@ つ・き・あ・い・た・い
歌詞に出てくる『アレ』は、最後までなにか明かされないんで大喜利のお題にも向いてるような、
どういうことすか、
『だけどそいつが、アレを持ってたら、オレは差別しない、おお付き合いたい』、この歌詞に登場する『アレ』とは、いったいナニ?
そこにお笑い芸人たちのスパイシーなひとことが入ると、
大喜利といえば、YouTubeで携帯電話のAUが、司会進行役に漫才コンビ、モグライダーを起用して『毎日大喜利』やってるけど、CMもこんな充実した内容でやってくれたら、視聴者はカットしないで自然と見始めるし、これまでにないCM効果も、
ブラウザをBRAVEにしてから、ユーチューブからうざいCMがいっさい流れなくなって夢のようですけど、この『毎日大喜利』は、CMでありながら中身の充実したエンタメ動画になってるんで、すすんで観たくなりますよね、
司会進行を芝(しば)さんにおまかせして、横の机で大喜利修行中のともしげさんも、ほのぼのとええ感じやし、
じゃあつぎ、
B こんなんなっちゃった
ウィキペディアによると、NHKの動物いやし系番組『ウチのどうぶつえん』のテーマ曲として、2020年からこの曲が使われてるそうで、
いま知ったけど、リードボーカルの忌野清志郎(いまわの きよしろう)って、もともと漫画家志望だったんや、
『…授業中 机に落書きしてた マンガ描くなら才能あるんだ・・・屋上に廊下にどこにでも描(か)くぜ 最高傑作が他にもあるんだ・・・特別に君だけに見て見てもらいたい…』
1曲目と同じように、軽快に駈(か)け抜けていくテンポで、
歌詞はおなじ日本語でも、フォークじゃ表現できないロックならではの爽快感が、
ロックといえば、アルバム中、もっともロックなのが、
E SUMMER TOUR(LIVE AT 横浜球場/1982)
レコードからCDへ時代が変わるころ、「黎紅堂(れいこうどう)」なんかの貸しレコード屋で安く借りて、カセットテープにダビングして聴く者も多かったけど、レコードを定価で購入したファンなら、前半5曲が終わってレコードひっくり返して、最初に鳴り響くのが、パワフルで軽快なこの曲だったはず、
「だったはず」ってレコード持ってなかったんすか、
同じアパートの友人の部屋で任天堂の花札(はなふだ)しながら聴いてたし、その友人も貸しレコード店で借りてカセットテープにダビングして、ラジカセから聴いてたわけで、
じゃあ、なんでこんなに詳(くわ)しいんすか、
月額制のアマゾン・ミュージック・アンリミテッドに入って、あれこれ自由に聴けるようになったんで、懐(なつ)メロシリーズで聴き返してみたらすっかり気に入ってしまい、歌詞まで覚えるほどに、
じゃあ、じっくり聴いたのは、ごく最近のことなんすか、
だから自分でも驚いてるんや・・・半世紀も昔のアルバムなのに、歌詞から音楽から全く色あせないで聴けてるわけで、
D エリーゼのために
これってピアノの練習曲で、たしかベートーベンが作曲した、
防音室完備の裕福な家庭で、半強制的なピアノのレッスンに苦しみながら、心の底では鼓膜が破れそうなロックギターをブチ鳴らしたがってる子供達のために作られた名曲、
曲の後半、当時の人気だったロックミュージシャンの名前がつぎつぎに、
RCサクセションは、僕らより少しお兄さんの世代なんで、レッドツェッペリンもエアロスミスもセックスピストルズも出てこないし、今の若い世代ならなおさら知らないミュージシャンだらけで、ベートーベンと同じくらいクラシックなイメージかも、
じっさい、われわれもジミ・ヘン(ジミー・ヘンドリックス)やジャニス・ジョップリンがスゴいとは聞いていても、ほとんど中身知らないわけですし、エアロスミスが影響を受けたヤードバーズにしても、名前だけでで素通り・・・ちなみに、次がラストの曲になりますが、最後にこの曲を持ってきたココロは、
F あの夏のGoGo
聴けば聴くほど絵が浮かんできて、漫画家志望だった忌野清志郎らしい歌詞やなあと、
午後とGoGoをかけてるんすね、どうでもいい話ですけど、
GoGoなんてもう死語やもんな、
われわれのお兄さんの世代で、すでに終わってたんちゃいます、
都会ではゴーゴー喫茶とかゴーゴーダンスとか流行(はや)ってて、YouTubeにも当時の映像あるんちゃうか、
モンキーダンスもありますよ、
「わたくし、思い起こせば恥ずかしきことの数々(かずかず)、今はひたすら後悔と反省の日々を送っております」(映画『男はつらいよ』シリーズの最後に、寅さんがいつもハガキに書いてくる決まり文句)、
後悔と反省じゃないすけど、『クシャおじさん』、『なんちゃっておじさん』、そして『風船おじさん』も、
哀愁(あいしゅう)ただよう『風船おじさん』・・・普通の風船、アホほど身につけて、ひとりアメリカ大陸目指してびわ湖から浮上したとこまではええけど、その後すぐに消息不明・・・いまも霊界の大空をアメリカ目指してふわりふわりとさまよい続けてるんかなあ、
ところで、この曲なんすけど、夏の午後、色んな人たちの色んな過ごし方をワンフレーズで絵にしてしまう才能というか、歌詞の一部を順に抜き出すとこんな感じなんすけど…
「迷いこんだサイクリング 思わず2人あとずさり」
「ベッドの上でトランポリン」
「遠くの空に渡り鳥 ひとり浜辺でスイカ割り」
「おばさん 洗濯おどり」
「あの子 砂場で逆上がり」
「おいら泣いたよ サルスベリ」
「心はまるで坊主(ぼうず)刈り」
曲の最後には、Go Johnny GO GO GO ・・・と、1959年にリリースされたロックの名曲『Johnny B Goode』の一節も、
いま知ったんやけど、アルバム6曲目の『SUMMER TOUR(LIVE AT 横浜球場/1982)』は、『Johnny B Goode』を作曲したチャック・ベリー本人と共演したときのライブ音源なんやて、
『Johnny B Goode』といえば、1959年に登場してから、いろんなロックミュージシャンにカバーされてますが、我々にとって最もなじみ深いのは、セックスピストルズが1979年にカバーしたコレすね、
いま聴いてもぶっきらぼうで荒削(あらけず)りで、パンクロックを初めて聴いた時の衝撃がよみがえってくる、
YouTubeでは、曲のあいだに無音部分がはさまれて興(きょう)ざめですけど、できれば次の曲『Road Runner』とつなげて聴いてほしいっす、
ちなみに、1959年のオリジナルバージョンは、1962年のアメリカ西海岸が舞台の青春コメディ映画『アメリカン・グラフィティー』にも使われていて、まるでこのために書きおろされた曲のよう、
というわけで、最後になんやけど、これって坂本龍一氏の追悼(ついとう)になってるんやろか、
さあ、どうすかねえ、「追悼の試み」なんで、これくらい自由でもええんちゃいます・・・ただ、
ただ?
坂本龍一氏の追悼というなら、高橋ユキヒロ氏も同じように、
たしかに、彼の立ち上げたブランド『Bricks』の服、着られなかったことが今も心残りやし、近々(ちかぢか)とりあげんとなあ、
世界的ファッションデザイナー山本耀司(やまもと・ようじ)氏のパリコレ用音楽も手掛けてますし、
ちなみに、山本耀司氏は、
今も健在です、
よかった・・・いっとき、高橋幸宏(ユキヒロ)氏の影響でミュージシャンに転身するほど音楽に入れ込んでたし、ユキヒロ氏のぶんもぜひ多めに活動していただきたい、
堀辰雄『聖家族』冒頭の1文「死があたかもひとつの季節を開いたかのようであった」で始めた三回連続の追悼企画ですが、やってみてどうすか、
ただのアルバム紹介と言われたらそれまでやけど、今ごろ天国では、忌野清志郎と坂本龍一が再会を祝(いわ)って、そこに他のミュージシャンも駆(か)けつけて、つぎつぎと新曲をリリースしてるかもしれんなあ、