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2020年07月02日

琥珀のまたたき 小川洋子 講談社文庫

ママと三人のきょうだいは、魔犬から逃れるために別荘でひっそりと暮らす。もう、壁の外の世界とは関わりを持たない。きょうだいはそれまでの名前を捨てて、オパール、琥珀、瑪瑙になった。

小川洋子独特の世界観。おとぎ話のような優しい手触りの物語の底に、悪意や狂気が横たわっている。が、壁の中にいればそれらは姿を現さない。姿を現わすのは、外の世界と関わりを持った時だ。

壁という物理的な囲い、曖昧な時間という囲い、百科事典という世界の全てを詰め込んだ囲い。いくつもの囲いが重なり合い、クロスした特異点で反応してエネルギーを発生する。そのエネルギーは、囲いを壊すのか、それともより強固なものとするのか。

囲いの中にいれば、安定するし安心する。しかし、囲いを意識した途端に外の世界が誕生する。触れてはいけない境目。

これは、普遍的な物語だ。

琥珀のまたたき (講談社文庫) [ 小川 洋子 ]

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